東方軌跡録   作:1103

182 / 194
 天空章を無事にクリアしました。今回は曲がとてもよく、特に五面のボス曲が自分的に一押しです。


名前は災いの元

ここは人里の自警団の駐屯所。例年になると。彼女達は異様に殺気立っていた。それは何故かというと――――――――。

 

「いい皆! 今年こそ、あのサンタを扮した邪仙を捕まえるのよ!」

 

「「「「おおー!!!」」」」

 

自警団のリーダーである小兎姫がそう叫ぶと、自警団員を声を張り上げて応えた。今年も後僅かとなったこの時期に出没するという“青娥サンタ”。彼女を捕まえる為、一段と気合いを入れる自警団であった。

 

――――――――――――――――

 

 ところ変わってここは紅魔館。今日はここでレミリア主催のクリスマスパーティーが行われていた。

そこには博麗神社の一同も参加をしといた。

 

「毎年毎年、派手にやるわよねぇレミリアは」

 

霊夢はパーティー会場を眺めながら、ワインを飲んでいた。クリスマスとはキリスト教の祭なのだが、タダ飯とタダ酒が飲めるという事で、頻繁に参加しているのである。その隣には、ジンの姿もあった。

 

「そうだな。でも、せっかくのクリスマスなんだし、派手でも良いだろ? 皆楽しんでいるみたいだし」

 

 そう言った彼の視線の先には、各々楽しんでいる博麗神社のメンバーの姿があった。

 

「あと一週間もすれば大晦日で忙しくなる。英気を養うっていう意味では、うってつけだろ?」

 

「まあ、それもそうね。昔と違って、今は人が来るんだし。稼がないと」

 

「まっ、今はその事は置いといて、パーティーを楽しもう霊夢」

 

「ええ、そうね」

 

 二人はお互いのグラスをカチンと当て、乾杯をするのであった。

 

――――――――――――――――

 

 一方その頃、人里では自警団が提灯を手にある人物を追いかけていた。

 

「居たぞー! 青娥サンタだー!」

 

「ご用改めであるー!」

 

「毎年毎年、御苦労様ね」

 

 その人物こそが、この時期になると巷を騒がす青娥サンタである。いつもと違う赤い衣を身に纏い、その手には白い大きな風呂敷が握られていた。

 得意の壁抜けを利用し、追っ手を軽くあしらっていた。たが、そんな彼女に立ちはだかる者がいた。

 

「こんばんわ。貴女が青蛾という仙人ね」

 

「あ、貴女は!?」

 

青蛾の目の前には、純狐が立っていた。その後ろには禍々しいオーラを漂わせて。

 

「なるほど、似ても似つかないのは知ってはいたけど、やはり気に入らないわね」

 

「え? な、何の事?」

 

「青蛾、言葉だけならまだしも、字にすると嫦娥を思い浮かんでしまうのよ。不思議よね、たかが一字しか合っていないのに、まったく関係の無い人なのに」

 

「え、ええ?」

 

「安心なさい。これはただの八つ当たりよ、死にはしないけど憂さ晴らしになって貰うわ!」

 

「ちょ、ちょっとー!?」

 

青蛾の無情の叫びが人里に木霊した。

 

――――――――――――――――

 

ところ変わって紅魔館。霊夢が会場を見回すと、ふとある人物がいない事に気がつく。

 

「あれ? そう言えば純狐の奴はどうしたの? 誘わなかった?」

 

霊夢の質問に、ジンは不思議そうな顔をして答えた。

 

「誘ったんだが、何でも“名前がむかつく奴をしばくから、今回は遠慮するわ”とかなんとか」

 

「名前がむかつく? 何よそれ?」

 

「さあ? 余程嫌な人と名前が似てたんだろう。そうじゃなきゃ、あそこまで不快な顔をしないと思う」

 

「っていうか、止めないで良いの? あんたの性格なら、止めると思うんだけど」

 

「話によると、その人は泥棒なんだとさ。やり過ぎ無いように注意しておいたから、多分大丈夫だろう」

 

「……それって魔理沙の事じゃあ」

 

「魔理沙なら、菫子と一緒に楽しんでいたよ。多分違うんじゃないか? それに、相手は人間じゃないらしいし」

 

「なら大丈夫か。名前だけで、あの純狐に目の敵にされるなんて、そいつは運がわるいわねぇ」

 

「まったくだ。まあ、悪さをしているようだから、これを期に泥棒から、足を洗えば良いのに」

 

「それは当人次第ね。死ぬ思いをしたら、足を洗うんじゃない?」

 

「……少しだけ不安なってきた」

 

見知らぬ泥棒の身を案じながら、ジンはパーティーを楽しむのであった。

それから数日後、“青蛾サンタ成敗”という見出しの文々。新聞が発行され、そこにはボロボロになった青蛾と、満面の笑みを浮かべる純狐の姿があった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。