東方軌跡録   作:1103

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 天空章を購入し、現在プレイ中です。一応五面まで行きましたが、そこで苦戦中です。


冬の一日

秋が過ぎ去り、冬の季節がやって来た。山奥に存在する幻想郷では、一度雪が降れば、瞬く間に積もってしまう。

そういった場所で暮らしているせいか、幻想郷の住民は雪の対処を難なくこなしている。そんな中、人里のあちらこちらを歩き回っている人物がいた。

 

「やっぱり、ここも埋もれてましたか」

 

 早苗は雪に埋もれている守矢の分社の回りを雪かきし、参拝出来るように整えた。

守矢神社直通の索道(ロープウェイ)が出来る以前に、人里のあちらこちらに守矢分社が建てられており、早苗はその清掃に人里を回っていたのである。

 

「必要な事とは言え、冬は大変ですね・・・・・・」

 

早苗はぼやきながらも、分社の雪かきと清掃を行った。他の季節では、それほど手間では無いのだが、冬は雪が降る為、その分の労力が増えてしまうのだ。

 

「これで良し。さて、次に行きましょうか」

 

 早苗は分社の清掃を終わらせ、そしてまた次の分社へと足を進めた。

 

 

 次の分社に到着すると、そこにはジンと綺麗になった分社の姿があった。

 

「あれ? ジンさん?」

 

「ん? ああ早苗か、こっちの分社の雪かきと掃除を終わらせておいたぞ」

 

 どうやらジンは、分社の雪かきと掃除をしていてくれたようである。早苗は頭を下げて、ジンに礼を伝える。

 

「ありがとうございますジンさん。でも無理に里の分社の掃除しなくても、守矢の風祝である私に任せておいても良かったんですよ?」

 

「別に無理はしてないさ。たまたま手が空いたから、やっただけだ。それに、一人でやるのは結構大変だと思うが?」

 

「ええまぁ・・・ちょっと大変ですね」

 

「守矢には色々と世話になっているんだし、これくらいはやっておかないと。持ちつ持たれつって言うだろ?」

 

「ジンさん・・・・・・」

 

「それで? あと清掃していない分社は残っているか? 折角だし、最後まで付き合う」

 

「ええと、それじゃあ御言葉に甘えて」

 

 そうして二人は一緒に、分社の清掃と雪かきして回った。

 

――――――――――――――――

 

分社の掃除を終わらせた二人は、休憩がてら最近人気のある喫茶店に訪れていた。

 

「はあ~、仕事終わりの一杯は格別ですねえ~」

 

暖かい紅茶を飲み、至福の一時を味わう早苗。ジンもまた、紅茶を飲んで冷えた体を温めていた。

 

「それにしても、守矢の分社の数は多いな。やっぱ手入れとか大変じゃないか?」

 

「そうですね。でも、その辺りはしっかりやらないと信仰が集まりませんから」

 

「早苗は偉いな。言っちゃ悪いけど、霊夢だったら面倒くさがってやらないからな」

 

「ああ、確かに。霊夢さんはそういった方面はズボラですから」

 

本来分社の清掃等は神職の霊夢がやるのだが、霊夢はサボリ癖がある為、そういったのはジンが代わりに請け負っている。

最も、そういったこまめ事から、霊夢はジンに任せてしまいがちになっているのだが。

 

「少し前に、里に博麗神社の分社を作ろうって話が持ち上がったけど、管理出来ないから却下させてもらった。せっかく生まれた神様に申し訳無いのだがからな」

 

「そうですね。生まれたばかりの神様は力が弱いですから、こまめにケアをしないと直ぐに消えてしまいますから」

 

「神様であっても、世知辛い世って訳か」

 

 人間、妖怪、神であっても、生きていくのにそれ相応の苦労があるという事を、ジンは深く噛み締めるのであった。

 

――――――――――――――――

 

一時のお茶を楽しんだジンと早苗。その後一緒に買い物をし、早苗をロープウェイ乗り場まで送り届けた。

たが、ロープウェイ乗り場に到着すると、人混みとそれに対応する河童達の姿があった。

 

「何かあったでしょうか?」

 

「ちょっと聞いてみよう」

 

 ジンは近くの人に事情を聞く事にした。

 

「なあ、一体何があったんだ?」

 

「ん? ああ、ロープウェイの故障だよ。詳しい事はわからんが、何処か凍結したらしいって」

 

「ええええ!?」

 

それを聞いて一番驚いたのは早苗であった。

このロープウェイ、冬でも凍結せずに動かせるように作られた、と言われている。それなのに凍結してしまったとなると、話が違うという物だ。

 

「ちょっと関係者と話して来ます!」

 

「あっ、ちょっと待てよ早苗!」

 

足早に河童達の所に向かう早苗を、ジンは急いで後を追った。

 

 

 

 

 ロープウェイの責任者であり、河童達のリーダーであるにとり。ジンと早苗は彼女に、ロープウェイ凍結について事情を問いただしていた。

 

「凍結って、一体どういう事ですかにとりさん!」

 

 少し怖い顔でにとりを問い詰める早苗。そんな早苗を、ジンは諭した。

 

「落ち着け早苗、そんなんじゃ話せるものも話せなくなるぞ。にとり、一体何があったんだ?」

 

 にとりに尋ねると、彼女は困った顔をして答えた。

 

「ロープウェイの一部が凍結しているんだよ。一応対策はしていたんだけど、どうも甘かったみたい」

 

「甘かった。じゃないですよ! こういう事を含めていろいろお金を出しているんですから!」

 

ロープウェイの建設とその維持には、莫大なコストが掛かっている。それだけロープウェイに期待を寄せるだけあって、早苗は今回の件は許せなかった。

 

「それで? 復旧にはどれくらい掛かるんですか?」

 

「あー、今日は無理そうだね」

 

にとりのその言葉を聞いた早苗は笑顔を見せたが、それは明らかに攻撃的な笑顔であった。

 

「今日中に復旧させて下さい。お願いしますね♪」

 

「は、はい・・・・・・」

 

 早苗の威圧感に負けたにとりは、急いでロープウェイの修復作業に乗り出した。

 

――――――――――――――――

 

 復旧作業から数時間後、ロープウェイが復旧され、運行が再開された。

 

「はあ、運行は再開されましたけど、まだまだ課題はある物ですね。これは帰って対策案をしっかり練らないと」

 

「あまり根を詰め込めないように、何か力になれる事があれば遠慮無く言ってくれよ」

 

「はい、その時は遠慮無く相談させて貰いますね」

 

 そう言って、ロープウェイに乗る早苗を見送ったジンは、そのまま帰路につくのであった。


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