ある日、ジンが人里で散歩をしている時の事である。ふと、珍しい組み合わせの人物達を見かけた。
「あれは妖夢に・・・幽香?」
妖夢に幽香、あまり接点が無さそうな二人が、楽しそうに会話をしている姿に興味を持ったジンは、二人に声を掛けてみる事にした。
「おーい、妖夢に幽香」
「あっ、ジンさん。こんにちは」
「あら、貴方も買い物に?」
「まあそうなんだが、珍しい組み合わせだったから、気になって」
「珍しい組み合わせ?」
「もしかして、私と妖夢の事?」
幽香の問いに、ジンは頷いて答える。すると彼女は、心底楽しそうに笑った。
「ふふっ♪ 私と妖夢はこう見えてお友達なのよ」
「え? 友達? 二人が?」
「何かおかしな事でも?」
意外な答えに、ジンは首を傾げる。いくら考えても、二人が友人になるような接点が見当たらない。そんな思い悩んでいるジンに対して、幽香は悪戯な笑みを浮かべた。
「妖夢の職業を思い出してみなさい、そうすれば私達の共通点が分かるから」
「妖夢の職業・・・・・・」
ジンは言われた通り、妖夢の職業について思い出してみた。
魂魄妖夢、冥界の白玉楼に住んでおり、冥界の管理者である西行寺幽々子の従者である。また剣の指南役も勤めており、幽々子の世話の合間に、剣の修行をしている。
以上の事を思い返したジンは、二人の共通する点を見つけた。
「わかった! 料理友達だ!」
妖夢は日々、幽々子の食事を作っており、幽香もまあ料理が得意なのである。
料理のレパートリーを増やすため、幽香に料理を習ったのが切っ掛けで友達なったのでは? そう思ったジンであったが、妖夢は不思議そうに首を傾げた。
「ええまあ、料理に関しても話題には上がりますが・・・・・・」
妖夢の反応を見る限り、料理が切っ掛けという訳では無いらしい。ならばと、最後に思い付いた事を言った。
「もしかして、剣術仲間とか?」
「え? 幽香さん、剣を使えるんですか? 今度手合わせしませんか!」
「残念だけど、剣術は習っていないわ」
妖夢は目を輝かせていたが、幽香の否定の言葉でしょんぼり肩を落とした。
どうやらこれも違うようである。
ますます分からなり、ジンは再び首を傾げた。これには流石の幽香も、呆れ顔をしていた。
「貴方、本当に妖夢の職業を忘れたの?」
幽香の言葉に、何も言い返せず、ジンは素直に謝った。
「うっ、面目無い・・・・・・」
「まあいいわ。妖夢、貴方の肩書き、彼に教えて上げなさい」
「あ、はい」
幽香に言われ、妖夢は改めてジンに、自分の肩書きを語り始めた。
「白玉楼の剣術指南役兼“庭師”、です」
庭師、その言葉でジンはピンと来た。
庭師は庭を一つの造形空間として設計施工、製作し、それを管理する専門家である。その為、花や樹木等を手掛けたりするので、必然的に詳しい。
そして幽香はフラワーマスターと呼ばれ、花に関しては誰よりも詳しい妖怪である。つまり、この二人は―――――。
「ガーデナー友達って事か」
ジンの言葉に、幽香は笑って頷いた。
「ええ、妖夢にはいろいろと相談受けているのよ。庭に植えるのはどんな花が良いか? 育てるにあたっての注意点とか」
「冥界と地上では、環境がかなり違うので、一つ育てるのにとても大変なんですよ。幽香さんのアドバイスには、本当に助かっています」
「へえ」
ジンは楽しそうに会話をしている二人を見て、心底感心していた。
一見、共通点が無さそうに見えても、意外な所で繋がっている。この二人のように、他にも自分が知らないような縁を結んでいるのでは? と、ジンは心の中で思った。
「不正解をしたジンには、罰として、何か奢って貰おうかしら」
幽香は楽しそうにそう言った。
ランチタイムには早いが、ティータイムには丁度良い時間だった為、ジンは幽香の提案を承諾する事にした。
「なら、いい店を知っているからそこで御茶にしよう。もちろん、俺の奢りで」
「え、いいんですか?」
「それくらいの甲斐性を見せるのが、男ってものだ」
「そういう事、遠慮は反って、彼に失礼よ妖夢」
「なるほど、そういう事なら遠慮無く奢って貰いますねジンさん♪」
「ああ、任せろ」
こうして三人は、話題の喫茶店に向かい、そこでティータイムを楽しむのであった。