東方軌跡録   作:1103

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 連載中の三月精を読んで、クランピースの愛称がピースになっているのに今頃気づきました。
 それなので今回、クランピースの愛称決めの話しを書いてみました。



地獄妖精のあだ名

ミズナラの御神木。その中にサニー、ルナ、スターの三人は暮らしていた。

今日はクラウンピースを誘ってお茶会をしていた。そんな時の事である。

 

「三人に折り入って相談があるだけど」

 

そう言ったのはクラウンピースであった。地獄から博麗神社にホームステイしているという、かなり変わった経歴をもつ妖精である。そんな彼女が、サニー達に相談を持ち掛けた。

 

「相談って・・・何の?」

 

「あたいにつける愛称についてよ」

 

「何でまた急に?」

 

「前々から思っていたけど、あたいの名前ってちょっと長くて呼びづらい気がするのよ」

 

「まあ確かに・・・・・・」

 

「時々噛みそうになるわね」

 

「そこで、短く呼びやすい愛称を付ければ、そんな事も無くなるし、何よりあだ名で呼ばれたい!」

 

クラウンピースはそう叫んだ。どうやら余程、愛称で呼ばれたいらしい。

 

「それはわかったけど、何で私達?」

 

「そうね、そういう事はジンに相談したら?」

 

ルナとサニーは疑問に思っていた。こういった悩み事なら、ジンは率先して協力してくれる筈、それなのに彼より自分達に相談を持ち掛けるのには、何かしらの理由があると二人は思っていた。だが―――――。

 

「ダメダメ、後で知らせて驚かせられないじゃない」

 

そんな深い理由も無く。ただジンを驚かしたい、それだけの理由であった。

 

「「「なるほど」」」

 

人を驚かしたい、悪戯したいというは妖精の本分なので、クラウンピースの理由にあっさり納得するサニー達であった。

 

「それでクラウンピース。貴女はどんな愛称が良いの?」

 

「そうねぇ・・・やっぱりいかす愛称がいいな」

 

「いかすあだ名?」

 

「例えば、ヘル・クラウン・ピースとか!」

 

それを聞いたサニー達は思わずずっこけた。

 

「いやいや、短く呼びやすい愛称なのに、どうして付け加えるのよ」

 

「あっ、それもそっか」

 

ルナの突っ込みにより、愛称第一号はこうして却下された。

 

「ここはやっぱり、私達みたいに省略化してみれば? サニーミルクのサニー、ルナチャイルドのルナ、そして私のスターサファイアのスターとか」

 

「その流れで行くと、クラウンピースだから・・・クラとか?」

 

スターの提案で、新たな愛称を作ったルナ。しかし、クラウンピースはあまりお気に召さなかったようである。

 

「うーん、ちょっと地味なような・・・・・・」

 

「なら、クラウンのクラとピースのピー。それを合わせてクラピーとか?」

 

「それちょっと変じゃない?」

 

その後も、色々な候補が出たが、それでも決まらず、愛称決めは暗礁に乗り上げた。

だが、その終止符を撃ったのがスターの一言であった。

 

「それならいっそ、下だけにしてみれば? 例えば“ピース”とか」

 

「「「・・・・・・それだ!!!」」」

 

この瞬間、クラウンピースの愛称が決定された。

 

――――――――――――――――

 

それから夕方頃、クラウンピースを迎えにジンがミズナラの御神木にやって来た。

 

「おーい、クラウンピース! そろそろ帰るぞー」

 

「あ、はーい! それじゃあ皆、今日はありがとねー」

 

クラウンピースの陽気な声と共に、彼女自身がミズナラの御神木から出て来た。彼女の顔は笑みに溢れており、今日も楽しく過ごせた事を容易に想像出来た。

 

「今日も楽しかったか?」

 

「うん! 皆であたいの愛称を決めてたんだよ」

 

「愛称?」

 

クラウンピースは今日の出来事をジンに話した。

 

「へー、それでどんな愛称になったんだ?」

 

ジンがそう尋ねると、クラウンピースは待ってましたと言わんばかりに、決まった愛称を自慢気に口にした。

 

「ピース。それがあたいの愛称だよ!」

 

「ピースか、良い名だ。それじゃあピース、一緒に帰ろう」

 

「うん!」

 

二人はまるで親子のように手を繋いで、神社に帰って行った。

その日から、彼女はピースと呼ばれるようになった。


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