幻想郷には数多の妖精が住んでいる。その種類、数などはとてもでは無いが数え切れない程である。
そんな幻想郷に、新たな妖精が一人やって来た。
「ふーん、ここがジンが言っていた幻想郷ね。なかなかおもしろそうなところね」
彼女の名はクラウンピース。月での異変に関与した地獄の妖精である。
彼女はジンから話を聞いて、この幻想郷にやって来たのだ。
「さてと、ジンのいる神社は・・・・・・」
クラウンは手描きの地図を取り出し、ジンのいる博麗神社の場所を確認するが―――――――。
「えっと・・・こっちね!」
彼女は博麗神社とはまったく逆の方へと進んで行ってしまう。地図を逆さにして見てしまった事に気が付かないまま。
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そんなこんなで、クラウンピースは博麗神社とは真逆の位置にある、魔法の森へとやって来た。
「なかなかいい場所ねここは。それにしても、神社はどこにあるんだ?」
「おい、そこのお前!」
「ん?」
呼び止められ、クラウンピースは立ち止まり、声がした方を向くと、そこには氷の羽を持った妖精がいた。
「ここ辺りじゃあ見かけない顔だな、どこの妖精だ?」
そう尋ねて来た妖精対して、クラウンピースは待ってましたと言わんばかりに、自分の事を大々的に答えた。
「あたいか? あたいはクラウンピース! 地獄からやって来た最凶の妖精だ!」
クラウンピースはそう言って、得意気な顔をした。
すると相手は、何故か反抗的な態度を取ってきた。
「最強だって? それは聞き捨てならない! どうしても最強を名乗りたかった、この最強妖精であるあたいを倒してからにしな!」
そう言って、この自称最強妖精――――チルノは、クラウンピースに対していきなり宣戦布告を出した。
それに対してクラウンピースはというと―――――――。
「ふーん、お前も最凶を名乗るか、いいだろう! どっちが最凶妖精の名に相応しいか、勝負だ!」
こうして、最凶妖精クラウンピースと最強妖精チルノのサイキョウを賭けた戦いが始まった。
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魔法の森にある大妖精の住みか。そこで彼女は友人のチルノの為に、クッキーを焼いていた。
「あっ、焼けた焼けた♪」
オープンから焼きたてのクッキーを取り出すと、大妖精はとても満足そうに笑った。
そんな時、玄関のドアからドンドンと叩く音がした。
「大ちゃんいるー?」
「あっ、ちょっと待ってチルノちゃん。今出るから」
大妖精は玄関におもむき、ドアを開けた。するとそこにはチルノの他に、もう一人妖精がいた。
「え、えっと・・・どなた様でしょうか?」
「あたい? あたいはクラウンピース。チルノのサイキョーライバルよ!」
クラウンピースのその言葉で、大妖精は理解した。
彼女はチルノと同タイプの妖精だと。
自己紹介も終え、大妖精は二人を家へと招いて、おもてなしをしていた。
「美味しい! このクッキー凄く美味しい!」
「そりゃそうだ。大ちゃんの作ったクッキーだからね」
「ふふっ、まだまだたくさんあるから」
クラウンピースは大妖精が作ったクッキーを、美味しそうに食べていた。
「ところで、クラウンちゃんはどうして幻想郷に?」
「ん? 知り合いの人間から幻想郷の話を聞いて興味を持ったのよ。それはご主人様の許可を貰って、その人間の所にホームステイする事にしたんだ」
「ほーむすてい?」
「寄宿の事だね。なんて名前の人なの?」
「確かジンっていう名前だった」
「おおー、クラウンもジンの知り合いだったのか」
「チルノもジンを知っているの?」
「うん! ジンはあたいのマブダチでライバルさ!」
「むむっ、ならあたいもジンとはマブダチだ!」
「何を! あたいの方がマブダチの中のマブダチだ!」
「いーや! あたいの方がマブダチのマブダチのマブダチだ!」
チルノのとクラウンが、奇妙な喧嘩をしている一方で、大妖精は何かに気づいた様子であった。
「あ、あの、クラウンちゃん。ちょっと良いかな?」
「ん? なあに?」
「ジンさんがいる博麗神社は、ここから反対の場所にあるんだけど、どうしてここに?」
「え? だって地図によると、こっちの方にあったわよ。ほら」
そう言ってクラウンピースは持っていた地図を広げる。そこで大妖精は更に気づいた。
「・・・・・・あのクラウンちゃん、この地図逆さまになってるよ」
「あっ!」
大妖精の言葉で、クラウンはようやく地図を逆さに見ていた事に気づいた。
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その頃博麗神社では、クラウンピースの歓迎会の準備を終え、後は主役を待つだけなのだが、その主役がまだ来ない事に、ジンは少し不安を感じていた。
「遅いな・・・もう着いてもいい頃なのに」
「そんな心配しなくても大丈夫よ。大方地図を読み間違えて、変な所に行っているだけでしょ」
「迎えに行った方が良いか? 幻想郷には凶暴な妖や妖怪もいるからな」
「過保護ねぇ貴方も、そこらの雑魚妖精ならともかく、クラウンピース位の妖精なら、並大抵の奴なら撃退出来るわ。それに、そろそろ来るんじゃない」
「それは勘か?」
「勘よ」
霊夢が自信満々でそう言った。
彼女の勘は最早、未来予知に近いほど正確で、実際に勘だけで相手を占い、的中させる実績を持っていた。
そんな彼女の言葉だから、ジンは信じる事にした。
「それなら待つか、入れ違いになったら大変だからな」
「それが良いわ。あっ、来たみたいよ」
霊夢が指をさした先には、こちらに向かって飛んで来るクラウンピースの姿があった。
どうやら無事に来れたようで、ジンはホッと安心するのであった。
冬が終わる頃、地獄からやって来た妖精は博麗神社に住み着いた。
チルノとの絡みは絶対にやりたかった。後悔はありません、寧ろ満足です。
そう言えば、クランピースが登場したおかげで、ボス級(中ボスも含む)妖精が六人になりました。
もしかしたらその六人が何らかの異変を起こすかも知れませんね(笑)。