なかなか面白い話が思い浮かばず、ちょっと手抜きな感じになってしまいました。
ある日の事。ジンは魔理沙のスペルカードの練習に付き合っていた。
「いっくぞージン!」
「来い!」
「新符! “ブレイブスター!”」
新しいスペルカードを放つ魔理沙。ジンはそれを見極め、次々とかわしていく。
スペルカードの弾幕が終わると、魔理沙はジンに感想を求めた。
「どうだったジン?」
「うーん・・・今回のは駄目だな。確かに華やかで、かわしづらい弾幕だけど、致命的欠陥があった」
「致命的欠陥って、安置があるのか?」
安置とは、弾幕が全く当たらない場所の事である。
一度発見されてしまえば、そのスペルカードはまったくの役に立たなくなってしまい、二度と通用しなくなってしまう。
因みに、安地で最も有名なのは、チルノのアイシクルフォール(easy)である。
「ああ。少し分かりづらいが、確かにあった。改良した方が良いと思う」
「そっか・・・今回は自信作だったんだがな・・・・・・」
「でも、そんなに悪く無いと思うぞ。もう少し改良してみたらどうだ?」
「それもそうだな。よし、完成したらまた練習に付き合ってくれよジン」
「俺で良ければまた―――ん?」
ジンの頭にポツリと雨が降った。雨は徐々に強くなり、本降りとなってしまった。
「うわ雨か!? 最悪だな・・・・・・とりあえず、家に来いよ」
「ああ、助かる」
こうしてジンは、魔理沙の家で雨宿りをする事になった。
――――――――――――――――
魔理沙の家に到着した二人。彼女の家は案の定散らかっていた。
「相変わらず酷いな・・・・・・」
「うるさいな、文句を言うなら追い出すぞ」
「やれやれ・・・・・・」
「えっと、タオルはっと・・・・・・」
魔理沙は散らかっている部屋を探し始める。
「えっと・・・どこだったかな・・・・・・おっ、あった!」
魔理沙はやっとの思いで、タオルを見つけだし、一方をジンに手渡した。
「ほらよジン」
「ああ、ありがとう魔理沙」
ジンと魔理沙は、タオルで濡れた体を拭き取る。
タオルで拭いた事により、幾分かはマシになったが、やはり着替えをしなければならない。だが、そこには一つ問題があった。
「うーん・・・やっぱジンの着替えになりそうな物は無いな」
「あったとしても着ないぞ俺は」
「何でだ? そのままだと風邪を引くぜ?」
「女物の服を着るくらいなら、風邪を引いた方がマシだ」
そう、ジンの着替えになりそうな物は魔理沙の家になかったのである。あったとしても、女性物ばかりであろう。
それを着るのは、流石に抵抗があるジンであった。
「まあまあ、何事も経験だぜ。案外はまるかも知れないしな♪」
「・・・面白がっているところ悪いが、もし着るとしたら、魔理沙の洋服になるんだが。それでも良いのか?」
「・・・・・・やっぱさっきの話は無しで」
「それが良いだろ、お互いのために。・・・・・・ハックション!」
ジンはくしゃみを出してしまった。
残暑が過ぎ、気温が徐々に下がるこの時季。濡れた衣服の状態では、流石に堪えたのだろう。
「ちょっと待ってろ、何か無いか探してみる」
見かねた魔理沙は、何か着替えになりそうな物を再び探し始めた。
「何かなかったかなぁ・・おっ?」
魔理沙はふと、何かを見つけた。それは古いローブであった。
「これなら多少マシだろ?」
「まぁ、女物を着るよりはな」
ジンは魔理沙からローブを受け取った。
「着替えはここを使って構わないぜ。私は部屋で着替えるけど、覗くなよ?」
「覗かないって」
「はは、冗談だぜ」
悪戯な笑みを浮かべながら、魔理沙は自室へと入って行った。
着替え終わった魔理沙が、再びリビングを訪れると、散らかっていたリビングは、ものの見事に整理整頓されていた。
「・・・いつ見ても、あり得ない程の掃除スキルだよな」
呆れているのか、感心しているのか、自分でも分からないまま、ジンにそう言う魔理沙であった。
「俺としては、よくあんな状態で生活出来ると思うな。病気になったりしないのか?」
「お生憎、やわな鍛えかたはしてないんで」
「そうか。でも、何かあったら頼れよ。いざというとき、一人じゃあ大変だからな」
「その時は、遠慮なく頼らせて貰うぜ。それにしても――――――」
「ん?」
「その格好、結構似合ってるぜ」
魔理沙はジンの今の格好を見て、笑いを堪えながら言った。
ローブのサイズが合っていない為、かなり滑稽な姿となっていた。
「仕方ないだろ、サイズが合っていないんだから。それとも何か? 脱いで裸になってみるか?」
「やったら問答無用で、マスタースパークを叩き込むからな」
「絶対にやらないから安心しろ。
それにしても、随分小さいな・・・・・・」
ジンが着ているローブは、ジンもそうだが、持ち主の魔理沙でもサイズ合っていなさそうであった。
「ああ、それは私の見習い時代の時のローブなんだ」
「へえ、見習い時代の・・・・・・」
「あの時はいろいろあったなぁ・・・・・・」
魔理沙はジンが着ているローブを見て、思い出にふけていた。
ジンはそんな魔理沙を見て、その思い出について聞いてみたくなった。
「魔理沙の見習い時代って、どんな事があったんだ?」
「ん? 聞きたいのか?」
「興味はある」
「まっ、隠すような事でもないし、退屈しのぎにはなしてやるぜ」
そう言って魔理沙は、話始めた。
――――――――――――――――
魔理沙は幼い頃、魔法使いに憧れていた。
いつか、おとぎ話の魔法使いになるのを夢見る日々を送っていたが、それが原因で親と喧嘩して、勘当されてしまった。
「あの時は大喧嘩したな・・・まっ、当時の情勢を考えたら、勘当されても仕方ない」
魔理沙は自嘲気味にそう言った。
それから色々あって、魅魔と出合い、弟子入りを果たした。
「魅魔様に出会った事が、私の人生最大の幸運だった。あの人がいなければ、今の私はいなかったぁ・・・・・・」
「なるほどな、俺にとっては霊夢みたいな存在なんだな」
「そうそう、その霊夢なんだが。実はあいつ、空を飛べなかったんだぜ」
「へ? 嘘だろ?」
「これがマジなんだよ。飛べなかったもんで、玄爺に乗っていたんだ」
「玄爺?」
「昔、霊夢に仕えていた亀だ。今は玄武の沢で隠居している」
「そうなのか、今度機会があったら会いに行ってみようかな」
「うーん・・・難しいと思うな。あそこはかなり入り組んでるし。洞穴もたくさんあるからな」
「大丈夫。俺には“能力”があるから」
「そうだったな。それじゃあ、あいつが好きそうな土産を教えてやるよ」
「ありがとう魔理沙、助かる」
「まっ、私は優しいからな」
魔理沙はニカッと笑いながら、清々しく答えた。
それからも、魔理沙はジンに昔の話を聞かせた。
当時の霊夢の修行に付き合った時もあるという。因みに、後に本人に聞いた話によると、“あれは修行ではなく、嫌がらせ”との事である。
その他にも、時には共に異変を解決したり、時には競ったりと、互いに切磋琢磨をしていたのだと、話を聞いていたジンはそう思ったのである。
――――――――――――――――
魔理沙の思い出話が終わる頃には、雨がすっかり上がり、夕方になっていた。
ジンは乾いた自分の服に着替え、帰ろうとしていた。
「今日は色々とありがとうな魔理沙」
「良いって、私も色々と話せて楽しかったし。今度はジンの話を聞かせてくれよな」
「ああ、機会があったら話そう。その時は、酒を飲みながらな」
「約束だからなー」
魔理沙はそう言って、ジンを見送った。
夕日の光を浴びながら、ジンは博麗神社に飛んで帰るのだった。