東方軌跡録   作:1103

146 / 194
 今回は短めの話しです。
なかなか面白い話が思い浮かばず、ちょっと手抜きな感じになってしまいました。


魔理沙との一日

ある日の事。ジンは魔理沙のスペルカードの練習に付き合っていた。

 

「いっくぞージン!」

 

「来い!」

 

「新符! “ブレイブスター!”」

 

新しいスペルカードを放つ魔理沙。ジンはそれを見極め、次々とかわしていく。

スペルカードの弾幕が終わると、魔理沙はジンに感想を求めた。

 

「どうだったジン?」

 

「うーん・・・今回のは駄目だな。確かに華やかで、かわしづらい弾幕だけど、致命的欠陥があった」

 

「致命的欠陥って、安置があるのか?」

 

安置とは、弾幕が全く当たらない場所の事である。

一度発見されてしまえば、そのスペルカードはまったくの役に立たなくなってしまい、二度と通用しなくなってしまう。

因みに、安地で最も有名なのは、チルノのアイシクルフォール(easy)である。

 

「ああ。少し分かりづらいが、確かにあった。改良した方が良いと思う」

 

「そっか・・・今回は自信作だったんだがな・・・・・・」

 

「でも、そんなに悪く無いと思うぞ。もう少し改良してみたらどうだ?」

 

「それもそうだな。よし、完成したらまた練習に付き合ってくれよジン」

 

「俺で良ければまた―――ん?」

 

ジンの頭にポツリと雨が降った。雨は徐々に強くなり、本降りとなってしまった。

 

「うわ雨か!? 最悪だな・・・・・・とりあえず、家に来いよ」

 

「ああ、助かる」

 

こうしてジンは、魔理沙の家で雨宿りをする事になった。

 

――――――――――――――――

 

魔理沙の家に到着した二人。彼女の家は案の定散らかっていた。

 

「相変わらず酷いな・・・・・・」

 

「うるさいな、文句を言うなら追い出すぞ」

 

「やれやれ・・・・・・」

 

「えっと、タオルはっと・・・・・・」

 

魔理沙は散らかっている部屋を探し始める。

 

「えっと・・・どこだったかな・・・・・・おっ、あった!」

 

魔理沙はやっとの思いで、タオルを見つけだし、一方をジンに手渡した。

 

「ほらよジン」

 

「ああ、ありがとう魔理沙」

 

ジンと魔理沙は、タオルで濡れた体を拭き取る。

タオルで拭いた事により、幾分かはマシになったが、やはり着替えをしなければならない。だが、そこには一つ問題があった。

 

「うーん・・・やっぱジンの着替えになりそうな物は無いな」

 

「あったとしても着ないぞ俺は」

 

「何でだ? そのままだと風邪を引くぜ?」

 

「女物の服を着るくらいなら、風邪を引いた方がマシだ」

 

そう、ジンの着替えになりそうな物は魔理沙の家になかったのである。あったとしても、女性物ばかりであろう。

それを着るのは、流石に抵抗があるジンであった。

 

「まあまあ、何事も経験だぜ。案外はまるかも知れないしな♪」

 

「・・・面白がっているところ悪いが、もし着るとしたら、魔理沙の洋服になるんだが。それでも良いのか?」

 

「・・・・・・やっぱさっきの話は無しで」

 

「それが良いだろ、お互いのために。・・・・・・ハックション!」

 

ジンはくしゃみを出してしまった。

残暑が過ぎ、気温が徐々に下がるこの時季。濡れた衣服の状態では、流石に堪えたのだろう。

 

「ちょっと待ってろ、何か無いか探してみる」

 

見かねた魔理沙は、何か着替えになりそうな物を再び探し始めた。

 

「何かなかったかなぁ・・おっ?」

 

魔理沙はふと、何かを見つけた。それは古いローブであった。

 

「これなら多少マシだろ?」

 

「まぁ、女物を着るよりはな」

 

ジンは魔理沙からローブを受け取った。

 

「着替えはここを使って構わないぜ。私は部屋で着替えるけど、覗くなよ?」

 

「覗かないって」

 

「はは、冗談だぜ」

 

悪戯な笑みを浮かべながら、魔理沙は自室へと入って行った。

 

 

着替え終わった魔理沙が、再びリビングを訪れると、散らかっていたリビングは、ものの見事に整理整頓されていた。

 

「・・・いつ見ても、あり得ない程の掃除スキルだよな」

 

呆れているのか、感心しているのか、自分でも分からないまま、ジンにそう言う魔理沙であった。

 

「俺としては、よくあんな状態で生活出来ると思うな。病気になったりしないのか?」

 

「お生憎、やわな鍛えかたはしてないんで」

 

「そうか。でも、何かあったら頼れよ。いざというとき、一人じゃあ大変だからな」

 

「その時は、遠慮なく頼らせて貰うぜ。それにしても――――――」

 

「ん?」

 

「その格好、結構似合ってるぜ」

 

魔理沙はジンの今の格好を見て、笑いを堪えながら言った。

ローブのサイズが合っていない為、かなり滑稽な姿となっていた。

 

「仕方ないだろ、サイズが合っていないんだから。それとも何か? 脱いで裸になってみるか?」

 

「やったら問答無用で、マスタースパークを叩き込むからな」

 

「絶対にやらないから安心しろ。

それにしても、随分小さいな・・・・・・」

 

ジンが着ているローブは、ジンもそうだが、持ち主の魔理沙でもサイズ合っていなさそうであった。

 

「ああ、それは私の見習い時代の時のローブなんだ」

 

「へえ、見習い時代の・・・・・・」

 

「あの時はいろいろあったなぁ・・・・・・」

 

魔理沙はジンが着ているローブを見て、思い出にふけていた。

ジンはそんな魔理沙を見て、その思い出について聞いてみたくなった。

 

「魔理沙の見習い時代って、どんな事があったんだ?」

 

「ん? 聞きたいのか?」

 

「興味はある」

 

「まっ、隠すような事でもないし、退屈しのぎにはなしてやるぜ」

 

そう言って魔理沙は、話始めた。

 

――――――――――――――――

 

魔理沙は幼い頃、魔法使いに憧れていた。

いつか、おとぎ話の魔法使いになるのを夢見る日々を送っていたが、それが原因で親と喧嘩して、勘当されてしまった。

 

「あの時は大喧嘩したな・・・まっ、当時の情勢を考えたら、勘当されても仕方ない」

 

魔理沙は自嘲気味にそう言った。

それから色々あって、魅魔と出合い、弟子入りを果たした。

 

「魅魔様に出会った事が、私の人生最大の幸運だった。あの人がいなければ、今の私はいなかったぁ・・・・・・」

 

「なるほどな、俺にとっては霊夢みたいな存在なんだな」

 

「そうそう、その霊夢なんだが。実はあいつ、空を飛べなかったんだぜ」

 

「へ? 嘘だろ?」

 

「これがマジなんだよ。飛べなかったもんで、玄爺に乗っていたんだ」

 

「玄爺?」

 

「昔、霊夢に仕えていた亀だ。今は玄武の沢で隠居している」

 

「そうなのか、今度機会があったら会いに行ってみようかな」

 

「うーん・・・難しいと思うな。あそこはかなり入り組んでるし。洞穴もたくさんあるからな」

 

「大丈夫。俺には“能力”があるから」

 

「そうだったな。それじゃあ、あいつが好きそうな土産を教えてやるよ」

 

「ありがとう魔理沙、助かる」

 

「まっ、私は優しいからな」

 

魔理沙はニカッと笑いながら、清々しく答えた。

それからも、魔理沙はジンに昔の話を聞かせた。

当時の霊夢の修行に付き合った時もあるという。因みに、後に本人に聞いた話によると、“あれは修行ではなく、嫌がらせ”との事である。

その他にも、時には共に異変を解決したり、時には競ったりと、互いに切磋琢磨をしていたのだと、話を聞いていたジンはそう思ったのである。

 

――――――――――――――――

 

魔理沙の思い出話が終わる頃には、雨がすっかり上がり、夕方になっていた。

ジンは乾いた自分の服に着替え、帰ろうとしていた。

 

「今日は色々とありがとうな魔理沙」

 

「良いって、私も色々と話せて楽しかったし。今度はジンの話を聞かせてくれよな」

 

「ああ、機会があったら話そう。その時は、酒を飲みながらな」

 

「約束だからなー」

 

魔理沙はそう言って、ジンを見送った。

夕日の光を浴びながら、ジンは博麗神社に飛んで帰るのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。