東方軌跡録   作:1103

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小鈴の相性の良い魔法を考えてみたら、真っ先にこれが思い浮かびました。なんだか、彼女の為にあるように思えるほどピッタリだと思っています。


小鈴の魔法使い道、ルーン文字編

ここは紅魔館の地下図書館。そこで小鈴は、魔法の習得に励んでいた。

 

「それじゃ、さっき教えた通りにやってみて」

 

「は、はい!」

 

小鈴は慎重に、紙に文字を書き込み。すると紙から文字が浮き出る。

 

「きゃあ!?」

 

「なるほどね。小鈴、貴女の属性は文字ね」

 

「文字ですか? 何だか地味ですね・・・・・・」

 

「そんな事は無いわ。文字は魔法において、とても密接な関係があるのよ。極めれば、凄い魔法を使えるようになるわ」

 

「本当ですか!」

 

「ええ、私に任せておきなさい」

 

「おーい、私を忘れちゃ困るぜ」

 

少し離れた場所にいた魔理沙が、つまらなそうにしていた。

 

「貴女の教え方がおおざっばなのよ。最初に属性を知らなきゃ、教えら無いじゃない」

 

「どんな属性でも、努力すれば習得出来るものなんだぜ」

 

「その心意気は買うけど、順序良くやらないと」

 

「へいへい」

 

「それじゃあ小鈴には、これからルーン魔法を教えるわ」

 

ルーン魔法。北欧神話に登場する魔法である。二十四の文字それぞれに、魔法効果があり、それ単体または組み合わせによって、様々な効果を発揮するのである。

 

「先ずはこの二十四文字を覚えて頂戴」

 

「はい!」

 

小鈴はパチュリーが出したルーン文字のリストを、興味深そうに見始めた。

本来なら、ルーン文字を読めるようなる所から始めるのだが、小鈴は能力で最初から読めた。

 

「へぇー、こんな一文字だけなのに、色んな意味があるんだ・・・・・・」

 

「もう読めるようになっている・・・・・・」

 

「本当、羨ましい能力だぜ」

 

小鈴の能力の凄さを、改めて認識するパチュリーと魔理沙であった。

 

―――――――――――

 

翌日。小鈴は稗田の屋敷で、覚えたルーン魔法をジンと阿求に見せびらかしていた。

 

「そしてこれが、光のルーンです」

 

そう言って小鈴は、紙にルーンを刻む。すると紙が仄かな光を放つ。

 

「おおっ、ちゃんと光っているな」

 

「他にはどんなルーンがあるの?」

 

「えっとね――――」

 

小鈴は次々と、ルーン文字とその効果を二人に見せる。しかし、どれも効果が小さかった。

 

「随分しょぼいのね」

 

「なっ!?」

 

阿求の容赦無い言葉に、小鈴は固まるが、直ぐ様咳払いをして言う。

 

「ま、まだ魔力が少ないからしょうがないのよ。でも今に見てなさい、スッゴい魔法を使えるようになって見せるわ」

 

「ふーん・・・・・・まっ、期待しないで待っているわ」

 

阿求は興味なさげにそう言った。その言葉に、小鈴はカチンと来た。

 

「そんなに言うなら、直ぐにでもスッゴイ魔法を見せてやるわよ! 泣いて謝ってももう遅いんだから!」

 

そう言って、小鈴は客室から出て行ってしまった。

 

「良いのか? あんな事を言って」

 

「いいんですよ。どうせ数日後もしたら、向こうが謝って来るでしょうし」

 

そう言って、阿求は紅茶を飲む。そんな彼女に、ジンはこう言った。

 

「それで? 実際の所はどうなんだ?」

 

「・・・・・・何の事ですか?」

 

「何となくだが、いつも以上に辛辣のような気がしたから、てっきり嫉妬しているんじゃないかと思って」

 

「ぶほぉ!」

 

ジンのその言葉に、阿求は思わず咳き込んだ。

 

「大丈夫か?」

 

「ごほっ、ごほっ、ジンさんが変な事を言うからですよ!」

 

「いやすまない。そこまで動揺するとは思わなかった」

 

「別に動揺なんかしていません。ただ――――」

 

「ただ?」

 

「・・・・・・少しだけ、寂しいと思っただけです」

 

「・・・・・・そうか」

 

ジンはそれ以上は何も言わず、彼女の側で紅茶を飲んだ。

 

―――――――――――

 

一方小鈴は、偶々通り掛かった魔理沙を捕まえて、これまでの経緯を話した。

 

「――――と、言うわけなんです! 直ぐに使えて、阿求をぎゃふんと言わせるような魔法はありませんか!?」

 

「いや、急に言われてもな。小鈴は魔力が少ないから、直ぐには使えないと思うが・・・・・・」

 

「それじゃ、使える魔力を増やせれば、凄い魔法を使えるようになるって事ですね!」

 

「まあな。ただ、魔力は一朝一夕で増やせる物じゃないし、無理に増やそうとすれば、それ相応の苦しみを味わう事になるぜ」

 

「うっ・・・・・・」

 

小鈴は思わずたじろぐが、阿求を見返したいという気持ちが強かった。

 

「ど、どんな事でも耐えてみせます!」

 

「よーし分かった。この霧雨魔理沙にどーんと任せろ」

 

魔理沙は胸を叩いて、自信ありげに言うのであった。

 

―――――――――――

 

小鈴を連れて、魔理沙は自宅へと戻って来た。

彼女の家は相変わらず散乱しており、歩くのだって一苦労する有り様であった。

 

「ちょっと散らかってるが、気にしないでくれ」

 

「ちょっと・・・・・・?」

 

「えーと、確かここに・・・・・・あった!」

 

そう言って魔理沙が取り出したのは、怪しい液体が入った小瓶だった。

 

「魔理沙さん、それは?」

 

「これはな、私が長年研究して作り上げた、魔力増強薬だ。これを飲めば、短期間で魔力が増やせるぜ」

 

「本当ですか! それじゃ早速――――」

 

「ちょっと待て、確かに魔力は増やせるが、元を正せば毒だ。使用法を間違えれば、間違いなく御陀仏だぜ」

 

「御陀仏・・・・・・」

 

「だから、そうとう薄めて飲むのがおすすめだ。と言っても、結構辛いけどな」

 

「・・・・・・」

 

「やっぱり辞めるか?」

 

「い、いえ! やらせて貰います!」

 

「分かった」

 

魔理沙は水に、液体を一滴垂らし、小鈴に差し出した。

 

「で、では、いただきます!」

 

小鈴は意を決して、それを飲みほした。

 

「大丈夫か?」

 

魔理沙がそう尋ねると、小鈴は顔を紅くしていった。

 

「に、苦いですね・・・あと、なんだか体が火照って来ました・・・・・・」

 

「それは薬の作用だな。一応、媚薬としても使える代物だからな」

 

「び、媚薬!?」

 

「落ち着けよ。あれぐらい量じゃ、少し体が火照る程度だ」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

「あっ、今いやらしい事を考えていたな?」

 

「ち、ちちち違いますよ! 私はそんなはしたない人じゃありません!」

 

「冗談だぜ。まあその様子だと、大丈夫そうだな。しばらく休めば、体の火照りは収まるだろうし」

 

「そ、そうですか・・・・・・」

 

それからしばらく小鈴は魔理沙の家で、体の火照りが収まるまで休んでいく事にした。

魔理沙いわく、効果は明日にならないと出ないので、その日は魔法の練習はせずに、帰る事になった。

 

―――――――――――

 

翌日。魔理沙の薬の効果が出たのか、小鈴のルーン魔法の効果が、今までの比にならないくらい強力なっていた。

 

「凄い凄い! こんな事が出来るなんて!」

 

その成果に、小鈴は嬉しそうはしゃぎ、魔理沙はとても得意気にしていた。

 

「だろ? これでも作るのに苦労したんだぜ」

 

「あの薬を毎日飲めば、あっという間に凄い魔法を使えるようになるんじゃ―――――」

 

「いや、あの薬の使用は一ヶ月に一回にしとけ」

 

「何故ですか?」

 

「最初、調子に乗って続けて飲んだら偉い目にあったからなぁ・・・・・・」

 

そう言って、魔理沙は何処か遠い目をしていた。どんな目にあったか気になった小鈴であったが、敢えて触れない事にした。

 

「まあともかく、それぐらいの魔力なら、阿求の奴をギャフンと言わせられるぜ」

 

「はい! でも、どんな魔法が良いんでしょうか?」

 

「ふふん、派手な魔法なら私の専売特許だ。ピッタリな奴を教えてやるぜ」

 

「お願いします! 魔理沙さん!」

 

こうして魔理沙と阿求の魔法レッスンが始まった。

 

―――――――――――

 

それから数週間が過ぎた。

小鈴は魔理沙の指導の元、一つの魔法を修得した。そして今日、阿求にそれを見せるのであった。

小鈴は阿求を博麗神社に呼んだ。

 

「よく来たわね阿求! 今日こそ、あっと言わせる魔法を見せてあげるわ!」

 

「・・・・・・それはいいんだけど、何で博麗神社?」

 

「今回の魔法は派手だから、人里の中じゃあ使えないのよ。あっ、霊夢さんの許可は取ってあるから大丈夫よ」

 

「いや、そう言う訳じゃなくて・・・・・・」

 

「ともかく! そこでちゃんと見ておきなさいよ!」

 

そう言って、阿求は準備を始める。阿求は不安そうに、隣にいる霊夢とジンに尋ねた。

 

「あの・・・大丈夫なんですか?」

 

「まあ、大丈夫でしょ。何かあったら、教えた本人に修理代を請求するから」

 

「いや、そういう問題ではなく――――」

 

「まあまあ、あれだけ自信があるんだ。見てあげよう」

 

「うーん・・・何だか不安だなぁ・・・・・・」

 

そうこうしている内に、小鈴の準備が終わったようである。

 

「準備完了! それじゃ行くわよ!」

 

すると小鈴は、手に持ったルーン文字が刻まれた紙に魔力を込める。すると、境内に設置されていた紙も、呼応するように光輝き始める。

 

「こ、これは・・・・・・」

 

「光符!“アースライトレイ”!」

 

次の瞬間、紙から次々と光の閃光が空に向かって放たれた。それは紛れもなく、魔理沙の魔法であった。

 

「へぇ、それらしくなっているじゃない」

 

「ああ、これは驚きだな」

 

「・・・・・・」

 

「どう阿求? これでも私の魔法がしょぼい?」

 

勝ち誇った小鈴に、阿求は降参したかのように言う。

 

「はあ、私の負けね。貴女の魔法は凄いわ小鈴」

 

その言葉を聞いて、小鈴はとても嬉しそうに笑った。

 

―――――――――――

 

翌日。紅魔館の地下図書館で、小鈴は昨日の成功を魔理沙とパチュリーに報告していた。

 

「よーし、ちゃんと上手く出来たんだな」

 

「はい! 魔理沙さんのおかげです!」

 

「でも、私としては、薬品で魔力を無理に増やすのはどうかと思う。体の負担を考えて、もう少し時間を掛けた方が――――」

 

「魔力が自然に増えるのを待ってたら、年寄りになってるって。少しでも早く凄い魔法を使えるようになる為なら、多少のリスクはつきものだぜ」

 

「そういうものかしら? でもまあ、それだけ魔力があるのなら、ある程度の魔法が使えるわね。今日はルーン文字の応用を教えるわ」

 

「はい! お願いします!」

 

こうして小鈴は、二人の指導の元、新たな魔法を修得するべく、今日も頑張るのであった。


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