東方軌跡録   作:1103

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今回は漫画の三月精の話しをアレンジした物です。
本当ならば、一本にまとめるつもりが、話が少し長くなってしまったので、分けました。


博麗肝試し 前編

夏の夜の博麗神社。

そこには何人ものの妖怪や妖精、人が集まっていた。

 

「今夜、集まってくれてありがとう!

それじゃ、第一回博麗肝試しを開始する!」

 

「「「「おー!」」」」

 

ジンの号令に応じるように、妖怪と人達は声を上げた。

何故このような事になったかというと、時間は数日前に遡る。

 

―――――――――――

 

数日前の博麗神社では、光の三妖精達がジンにある相談を持ち掛けていた。

 

「何? 悪戯がしたい?」

 

「そうよ!」

 

「そんなに威張らんでも・・・・・でも急にどうした?」

 

「最近、私達気づいたのよ。

全然妖精らしく無いって」

 

「妖精らしい?」

 

「えっとね、妖精って本来悪戯好きで、それを生き甲斐にしているの。

だけど、最近全然それらしい事をして無いのよ」

 

「そこで! 原典回帰ということで、人間達に悪戯をしようと思ったのよ!」

 

「ふむ・・・・・ルナはどう思っているんだ?」

 

「わ、私? う~ん・・・・・」

 

ルナは少し考えてから、自分の意見を言った。

 

「私は反対かな・・・・・?

せっかくミズナラの木に住まわせてもらっているのに、そんな事したら霊夢さんに追い出されちゃうかも・・・・・」

 

「もうルナ! 何を怖じけついちゃってんのよ!」

 

「いや、ルナの言うことも一理あるぞサニー。

参拝客に悪戯してみろ。

追い出されるどころか、下手すれば退治されるぞ」

 

ジンの言葉を聞いた三人は、背筋を凍らせた。

 

「わ、私も遠慮しようかな・・・・・?

別に悪戯しなくても、生きていけるし」

 

「スターまで何を言っているのよ!

神社の参拝客が駄目なら、人里の―――――」

 

「彼処は最近現れた妖―――送り犬がいるから手が出せないよ。

この前追われた事忘れたの?」

 

「うっ・・・・・そうだった」

 

「別に悪戯しなくても、平穏無事に生活出きりなら、それで良いじゃない」

 

「何を言ってるのよ! 妖精としてのプライドはどうしたの!

二人だって、本当は悪戯したいでしょ!」

 

「そりゃ・・・・・」

 

「やれるなら越したことは無いけど・・・・・」

 

「ふむ、要は合法的に悪戯が出来れば良いんだな」

 

「え? そんな事出来るの?」

 

「良い考えがある」

 

ジンは自分の考えをサニー達に伝えた。

 

「良い・・・・・良いじゃないそれ! 乗った!」

 

「これなら、霊夢さんに目をつけられなくて済む」

 

「大々的にやれるわ」

 

「良し。それじゃ、期日が決まったら教えるから、それまで大人しくしていろよ」

 

「「「はーい♪」」」

 

サニー達は満足して帰って行った。

ジンは早速行動に移すのであった。

 

―――――――――――

 

先ず最初に行ったのは、霊夢の報告である。

密かにやると、後が恐いので最初にやる事にした。

 

「肝試し?」

 

「ああ、博麗神社をスタート地点にしようかと思っているんだが・・・・・良いか?」

 

「良いわよ」

 

「・・・・・へ?」

 

「なに豆鉄砲食らった鳩のようになってんのよ」

 

「いや・・・・・即答で了承してくれるとは思わなかったから・・・・・」

 

「まあ、問題を起こさないっていう点を守れば、私は特に言う事は無いから」

 

「ありがとうな霊夢」

 

ジンは霊夢に礼を言ってから、次の行動に移った。

 

 

ジンの次の行動は、広告である。

そこで鴉天狗にして、文々新聞の発行者である射命丸文に広告を頼むのであった。

 

「なるほどなるほど、博麗神社で肝試しですか・・・・・」

 

「頼めるか文?」

 

「お任せ下さい!

文々新聞の愛読者であるジンさんの頼みですから!」

 

「よろしく頼む」

 

「お任せあれ!」

 

そう言って文は、物凄いスピードで飛んで行った。

 

そして次の日には、噂を聞き付けた里の人達も参加したいという声もあり、次第に規模が大きくなって行き、一大イベントに発展して行った。

こうして、着実に肝試し大会の準備が進められて行った。

 

―――――――――――

 

当日。博麗神社にはかなりの数の人、妖怪、妖精達が集まっていた。

 

「まさか・・・・・ここまで集まるとはな・・・・・」

 

「そりゃ、合法的に人を驚かしたり出来ますから。

妖怪というのは、人の恐怖を糧にするものですからね」

 

「なるほど、この肝試しは絶好の食事って訳か。

だが、里の人達も集まるとは思わなかったな」

 

「それはもう、どこぞの巫女とは違い。ジンさんは人望ありますから」

 

「それって誰の事かしら?」

 

「さあ、誰の事でしょう?」

 

「二人とも、喧嘩は止めろ。

さて、そろそろ始めるか」

 

こうして、第一回博麗肝試しが開催された。

 

 

今回の肝試しのルートは、ここ博麗神社をスタートし、人里でゴールである。

オバケ役、驚き役は種族関係無く参加が可能である。

 

「それでオバケ役を選んだのか霊夢・・・・・」

 

「そうよ。

いつもは退治する側だから、妖怪の真似事してみようかなって」

 

「それは良いが・・・・・巫女としてはどうなんだ?」

 

「今夜ぐらいは良いでしょ。

それじゃ私は行くから」

 

「ああ、気を付けてな」

 

霊夢は何処か楽しそうに、配置に向かって行った。

 

 

開始してからしばらく経過した。

参加者の悲鳴が、博麗神社まで良く聞こえて来て、余計に不気味さを増していく。

 

「想像以上だな・・・・・さて、俺も―――ん?」

 

スタートしようとした時、調度二人の人物を見掛ける。

一人は妖夢、もう一人は鈴仙であった。

 

「珍しい組み合わせだな。

どうたんだ二人とも?」

 

「あ・・・・・ジン」

 

「ジンさん・・・・・」

 

「何か、元気が無いみたいだが・・・・・どうした?」

 

「実は・・・・・」

 

二人の話を聞くことにしたジン。

話によると、二人の上司である幽々子と永琳に命じられ、強制参加させられたらしい。

 

「“オバケを克服する良い機会よ”と言われまして・・・・・」

 

「私なんか、“輝夜の為に精一杯驚きなさい”なんて言われたのよ・・・・・」

 

「輝夜も参加していたのか・・・・・」

 

「あと、てゐもオバケ役で参加しているわ」

 

「・・・・・罠禁止も設定しと置けばよかった」

 

「そんな訳で! 私達、苦労仲間として、一緒に行く事にしたんです!・・・・・と、思ったんですが・・・・・」

 

「悲鳴を聞いてしまうと、尻込んちゃって・・・・・」

 

「なるほど、それなら一緒に行かないか?」

 

「え? 良いんですか?」

 

「俺も一人で心細かったんだ。

そっちが良ければ、同行させて貰えないか?」

 

「もちろん! こっちがお願いしたいくらいよ!」

 

「ジンさんが一緒なら、心強いです」

 

「それじゃ、ゴールを目指して行くぞー!」

 

「「おー!」」

 

こうして三人の肝試しが始まるのであった。

 

―――――――――――

 

此処はゴール近くの柳の木下。

そこでサニー達は、自分達の能力を駆使して、参加者達を驚かしていた。

 

「「キャアーー!?!!」」

 

そしてまた、一組の参加者を脅かした所である。

参加者が逃げて行ったのを確認すると、サニー達は能力を解除し、姿を現す。

 

「「「大成功~♪」」」

 

「いや~、今のは良かったわ。

見た? あの人間の顔」

 

「うん見た見た♪」

 

「何かスカッとするわね」

 

「やっぱジンに相談して良かったわね」

 

「うん♪ 霊夢さんより頼りになるし、優しいし、ちゃんと話を聞いてくれるし」

 

「そうそう、霊夢さんだったら有無言わさず退治する所があるもんね」

 

「ちょ、ちょっと二人とも、誰かに聞かれたらどうするのよ」

 

「ルナは臆病ね。

大丈夫だって、此処は霊夢さんの配置から離れているし、スターの能力なら誰かが近くにいればすぐに分かるわ」

 

「そうそう、周囲に誰もいないから、思いっきり言って大丈夫よ」

 

「そうかも知れないけど・・・・・霊夢さん、最近はそんなに凶暴じゃないと思う」

 

「そう言えばそうね・・・・・どうしてかしら?」

 

「御賽銭が入るようになったとか?」

 

「参拝客が来るようになったとか?」

 

「ジンが来たからかな?」

 

「「「???」」」

 

「まあ、私達考えても分かるわけ無いし、今は肝試しを楽しみましょ♪」

 

「それもそうね。・・・・・ん?」

 

「どうしたのルナ?」

 

「その岩の下、何か光ってるみたい」

 

そう言ってルナが指した岩を見てみると、確かに僅かながら光が漏れていた。

 

「本当だ・・・・・なんだろう?」

 

「きっとお宝よ! 掘り起こそう!」

 

「え!? そんな事して大丈夫かな・・・・・?」

 

「大丈夫、大丈夫。

ほら、二人とも手伝って!」

 

三人は力を合わせて、岩をどかす事にした。

そして、岩を退かした瞬間、眩い光が解き放たれた


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