本当ならば、一本にまとめるつもりが、話が少し長くなってしまったので、分けました。
夏の夜の博麗神社。
そこには何人ものの妖怪や妖精、人が集まっていた。
「今夜、集まってくれてありがとう!
それじゃ、第一回博麗肝試しを開始する!」
「「「「おー!」」」」
ジンの号令に応じるように、妖怪と人達は声を上げた。
何故このような事になったかというと、時間は数日前に遡る。
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数日前の博麗神社では、光の三妖精達がジンにある相談を持ち掛けていた。
「何? 悪戯がしたい?」
「そうよ!」
「そんなに威張らんでも・・・・・でも急にどうした?」
「最近、私達気づいたのよ。
全然妖精らしく無いって」
「妖精らしい?」
「えっとね、妖精って本来悪戯好きで、それを生き甲斐にしているの。
だけど、最近全然それらしい事をして無いのよ」
「そこで! 原典回帰ということで、人間達に悪戯をしようと思ったのよ!」
「ふむ・・・・・ルナはどう思っているんだ?」
「わ、私? う~ん・・・・・」
ルナは少し考えてから、自分の意見を言った。
「私は反対かな・・・・・?
せっかくミズナラの木に住まわせてもらっているのに、そんな事したら霊夢さんに追い出されちゃうかも・・・・・」
「もうルナ! 何を怖じけついちゃってんのよ!」
「いや、ルナの言うことも一理あるぞサニー。
参拝客に悪戯してみろ。
追い出されるどころか、下手すれば退治されるぞ」
ジンの言葉を聞いた三人は、背筋を凍らせた。
「わ、私も遠慮しようかな・・・・・?
別に悪戯しなくても、生きていけるし」
「スターまで何を言っているのよ!
神社の参拝客が駄目なら、人里の―――――」
「彼処は最近現れた妖―――送り犬がいるから手が出せないよ。
この前追われた事忘れたの?」
「うっ・・・・・そうだった」
「別に悪戯しなくても、平穏無事に生活出きりなら、それで良いじゃない」
「何を言ってるのよ! 妖精としてのプライドはどうしたの!
二人だって、本当は悪戯したいでしょ!」
「そりゃ・・・・・」
「やれるなら越したことは無いけど・・・・・」
「ふむ、要は合法的に悪戯が出来れば良いんだな」
「え? そんな事出来るの?」
「良い考えがある」
ジンは自分の考えをサニー達に伝えた。
「良い・・・・・良いじゃないそれ! 乗った!」
「これなら、霊夢さんに目をつけられなくて済む」
「大々的にやれるわ」
「良し。それじゃ、期日が決まったら教えるから、それまで大人しくしていろよ」
「「「はーい♪」」」
サニー達は満足して帰って行った。
ジンは早速行動に移すのであった。
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先ず最初に行ったのは、霊夢の報告である。
密かにやると、後が恐いので最初にやる事にした。
「肝試し?」
「ああ、博麗神社をスタート地点にしようかと思っているんだが・・・・・良いか?」
「良いわよ」
「・・・・・へ?」
「なに豆鉄砲食らった鳩のようになってんのよ」
「いや・・・・・即答で了承してくれるとは思わなかったから・・・・・」
「まあ、問題を起こさないっていう点を守れば、私は特に言う事は無いから」
「ありがとうな霊夢」
ジンは霊夢に礼を言ってから、次の行動に移った。
ジンの次の行動は、広告である。
そこで鴉天狗にして、文々新聞の発行者である射命丸文に広告を頼むのであった。
「なるほどなるほど、博麗神社で肝試しですか・・・・・」
「頼めるか文?」
「お任せ下さい!
文々新聞の愛読者であるジンさんの頼みですから!」
「よろしく頼む」
「お任せあれ!」
そう言って文は、物凄いスピードで飛んで行った。
そして次の日には、噂を聞き付けた里の人達も参加したいという声もあり、次第に規模が大きくなって行き、一大イベントに発展して行った。
こうして、着実に肝試し大会の準備が進められて行った。
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当日。博麗神社にはかなりの数の人、妖怪、妖精達が集まっていた。
「まさか・・・・・ここまで集まるとはな・・・・・」
「そりゃ、合法的に人を驚かしたり出来ますから。
妖怪というのは、人の恐怖を糧にするものですからね」
「なるほど、この肝試しは絶好の食事って訳か。
だが、里の人達も集まるとは思わなかったな」
「それはもう、どこぞの巫女とは違い。ジンさんは人望ありますから」
「それって誰の事かしら?」
「さあ、誰の事でしょう?」
「二人とも、喧嘩は止めろ。
さて、そろそろ始めるか」
こうして、第一回博麗肝試しが開催された。
今回の肝試しのルートは、ここ博麗神社をスタートし、人里でゴールである。
オバケ役、驚き役は種族関係無く参加が可能である。
「それでオバケ役を選んだのか霊夢・・・・・」
「そうよ。
いつもは退治する側だから、妖怪の真似事してみようかなって」
「それは良いが・・・・・巫女としてはどうなんだ?」
「今夜ぐらいは良いでしょ。
それじゃ私は行くから」
「ああ、気を付けてな」
霊夢は何処か楽しそうに、配置に向かって行った。
開始してからしばらく経過した。
参加者の悲鳴が、博麗神社まで良く聞こえて来て、余計に不気味さを増していく。
「想像以上だな・・・・・さて、俺も―――ん?」
スタートしようとした時、調度二人の人物を見掛ける。
一人は妖夢、もう一人は鈴仙であった。
「珍しい組み合わせだな。
どうたんだ二人とも?」
「あ・・・・・ジン」
「ジンさん・・・・・」
「何か、元気が無いみたいだが・・・・・どうした?」
「実は・・・・・」
二人の話を聞くことにしたジン。
話によると、二人の上司である幽々子と永琳に命じられ、強制参加させられたらしい。
「“オバケを克服する良い機会よ”と言われまして・・・・・」
「私なんか、“輝夜の為に精一杯驚きなさい”なんて言われたのよ・・・・・」
「輝夜も参加していたのか・・・・・」
「あと、てゐもオバケ役で参加しているわ」
「・・・・・罠禁止も設定しと置けばよかった」
「そんな訳で! 私達、苦労仲間として、一緒に行く事にしたんです!・・・・・と、思ったんですが・・・・・」
「悲鳴を聞いてしまうと、尻込んちゃって・・・・・」
「なるほど、それなら一緒に行かないか?」
「え? 良いんですか?」
「俺も一人で心細かったんだ。
そっちが良ければ、同行させて貰えないか?」
「もちろん! こっちがお願いしたいくらいよ!」
「ジンさんが一緒なら、心強いです」
「それじゃ、ゴールを目指して行くぞー!」
「「おー!」」
こうして三人の肝試しが始まるのであった。
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此処はゴール近くの柳の木下。
そこでサニー達は、自分達の能力を駆使して、参加者達を驚かしていた。
「「キャアーー!?!!」」
そしてまた、一組の参加者を脅かした所である。
参加者が逃げて行ったのを確認すると、サニー達は能力を解除し、姿を現す。
「「「大成功~♪」」」
「いや~、今のは良かったわ。
見た? あの人間の顔」
「うん見た見た♪」
「何かスカッとするわね」
「やっぱジンに相談して良かったわね」
「うん♪ 霊夢さんより頼りになるし、優しいし、ちゃんと話を聞いてくれるし」
「そうそう、霊夢さんだったら有無言わさず退治する所があるもんね」
「ちょ、ちょっと二人とも、誰かに聞かれたらどうするのよ」
「ルナは臆病ね。
大丈夫だって、此処は霊夢さんの配置から離れているし、スターの能力なら誰かが近くにいればすぐに分かるわ」
「そうそう、周囲に誰もいないから、思いっきり言って大丈夫よ」
「そうかも知れないけど・・・・・霊夢さん、最近はそんなに凶暴じゃないと思う」
「そう言えばそうね・・・・・どうしてかしら?」
「御賽銭が入るようになったとか?」
「参拝客が来るようになったとか?」
「ジンが来たからかな?」
「「「???」」」
「まあ、私達考えても分かるわけ無いし、今は肝試しを楽しみましょ♪」
「それもそうね。・・・・・ん?」
「どうしたのルナ?」
「その岩の下、何か光ってるみたい」
そう言ってルナが指した岩を見てみると、確かに僅かながら光が漏れていた。
「本当だ・・・・・なんだろう?」
「きっとお宝よ! 掘り起こそう!」
「え!? そんな事して大丈夫かな・・・・・?」
「大丈夫、大丈夫。
ほら、二人とも手伝って!」
三人は力を合わせて、岩をどかす事にした。
そして、岩を退かした瞬間、眩い光が解き放たれた