東方軌跡録   作:1103

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妖々夢ノーマル記念話です。今現在EXをやっているのですが、橙がかなり厄介です。

特に二枚目のスペルカードが凄く動き回るので、咲夜の殺人ドールでは、発動タイミングを間違えると、全部躱されてしまいます・・・・・。

EX中ボスに関しては、パチュリーより難しいです。果たしてクリアできるか、不安が募ります。


過去編、半霊の落とし物

ジンが幻想郷に訪れて数ヵ月が経った。

レミリアとパチュリーの助力もあって、ジンは自分の能力を徐々に使いこなしていった。

そんなある日、人里で買い物をしていた時の事である。

 

「えーと・・・後は――――ん?」

 

ふとジンの目に写ったのは、道端に落ちている財布であった。辺りを見回すが、持ち主らしき人物は見当たらなかった。

 

(困ったな・・・元の世界だったら、警察に届けるんだが・・・・・・)

 

この幻想郷には警察どころか、明確な法律すら存在しない場所である。仮にジンが財布をネコババしたとしても、咎められたりはしない。最もジンはそんな事はしない人物である。

 

「まいったな、一体どうすれば・・・・・・あっ」

 

ジンはそこで自分の能力に気づく。もし今日落としたものなら、その人物の軌跡が残っている可能性があった。

 

(駄目もとでやってみるか)

 

ジンは能力を発動させ、軌跡を見始める。すると刀を持った一人の少女の軌跡が浮かび上がる。

 

(彼女が持ち主か? それにしても、大きな刀を持っているな・・・・・・)

 

軌跡の少女は、身の丈を優に越える刀を背負っていた。

 

(まあいい、ともかく彼女の後を追おう)

 

こうしてジンは、少女の軌跡を辿り出すのであった。

 

―――――――――――

 

少女の軌跡辿って人里の外に出たジンであったが、歩けども歩けども、その少女に出会えず、やがて日が沈み始めた

 

(不味いな・・・そろそろ戻らないと危険だな)

 

周囲は段々と暗くなっていき、もうすぐ妖怪の時間となる。一応護身用の札を持ってはいるが、それでも心もとなかった。ジンは仕方なく、神社に帰ろうとしたその時―――――。

 

「あっ!」

 

前の方からこちらに歩いて来る少女がいた。その少女こそ、財布の持ち主であった。

ジンは、大声を出しながら少女の元へ走った。

 

「おーい!」

 

「え?」

 

少女はジンに気づくと、きょとんとした表情をしていた。

 

「あ、あの、一体何の用でしょ?」

 

「君の財布を拾ったんで、それを届けに」

 

そう言って少女に財布を見せると、彼女は驚いた表情をし、そして安堵の笑みを浮かべる。

 

「あっ! 私の財布! わざわざ届けに来てくれたんですね! ありがとうございます!」

 

「どう致しまして、それじゃ俺はこれで――――」

 

「待ってください!」

 

そう言ってジンは、その場を去ろうとすると、少女に呼び止められる。

 

「もうじき夜になります。夜道を普通の人が歩くのは危険ですので、送ります。こう見えても私、結構強いですから」

 

「え? でも良いのか? 君だって、家の人が心配するんじゃ――――」

 

「大丈夫です。幽々子様に、“財布を見つけるまで、帰って来なくて良い”と言われていますので」

 

「なんだが随分厳しい人だな」

 

「そんな事無いですよ。まあ、怖い時もありますけど・・・・・・」

 

「まあそっちの都合が良いなら、お願いしようかな? 俺はジンだ、よろしく」

 

「ジンさんですね。私は魂魄妖夢です。よろしくお願いします」

 

こうしてジンは、妖夢と共に夜の幻想郷を歩くのであった。

 

―――――――――――

 

「へぇー、妖夢は半霊半人なのか」

 

「はい、こっちの半霊を含めて私なんです。代々魂魄家は半霊半人の種族なので」

 

夜道を歩きながら、ジンは妖夢に色んな話をしていた。

彼女が冥界にある白玉楼という屋敷で庭師と剣術指南をしていること、そこにいる西行寺幽々子に使えていることなど知った。

 

「幽々子様は亡霊で、そこで冥界の幽霊達を管理しておられるのです」

 

「そっか、そしたら死んだら彼女のところに世話になるかも知れないな」

 

「そうなりますね。・・・・・・むっ!」

 

すると妖夢が突然立ち止まり、ジンを守るように前に出た。

 

「妖夢?」

 

「ジンさん、そこを動かないでください」

 

「一体どうし―――――!?」

 

そこでジンも気づく、いつの間にか妖や悪霊、更には妖怪達が悪意を持って二人の目の前に立ち塞がっていることを。しかもそれらの狙いは、自分であることに。

 

「今すぐ立ち去れ、さもないと切り捨てる」

 

凛とした声で、警告する妖夢であったが、目の前にいる妖や悪霊はそれらを聞かず、妖怪に至っては正気を失っているようであった。

 

「なるほど、警告は無視か。ならば仕方ない」

 

そう言って妖夢は身の丈の刀を―――いや、その大きさから最早太刀と言っても過言ではなかった。

 

「この楼観剣に、切れぬ物などあんまりない!」

 

何とも絞まらない口上をしながら、妖夢は集団に斬りかかった。

 

 

戦いは――――いや、それは戦いとはいえない物であった。妖夢が斬りかかってわずか数分で、ジンを狙った妖や悪霊は倒され、妖怪達も我にかえり、脱兎の如く逃げ出したのだ。

 

「ふう、何とか追い返せました。お怪我はありませんかジンさん?」

 

「ああ、大丈夫だ。妖夢は強いな」

 

「伊達に剣術指南役ではありませんから」

 

「でもあの口上は微妙だな。“切れぬ物はあんまり無い”って言うのは、少し情けないんじゃないか?」

 

「え? そ、そうでしょうか・・・・・・?」

 

「ああ、せめて“切れぬ物など無い”って、はっきり言った方が良い」

 

「うーん・・・まだ斬れないものもあるんですけど・・・・・・それよりもジンさん」

 

「ん?」

 

「貴方に何か良くない物が憑いているようです。それが払うまで、夜は出歩かない方が良いと思います」

 

「・・・・・・分かった。夜は出歩かないようにする」

 

「そうした方が良いです。今夜は私が貴方を絶対に守りますから」

 

「いや、そこまでしなくても良いんだが・・・・・・」

 

「いえ、ジンさんは恩人ですから、これぐらいしないと恩を返せません」

 

「恩人って、財布を拾ったぐらいで大袈裟な・・・・・・」

 

「大袈裟ではありませんよ。誰かにネコババでもされたら、もう探しようが無いんですから、ジンさんが拾って届けてくれて、感謝しています」

 

「俺は人として当たり前の事をしただけだ」

 

ジンがそう言うと、妖夢は何故か驚いた表情をしていた。

 

「あれ? そんな驚く事か?」

 

「あ、いえ、そういう訳では無く、幻想郷では珍しい方だと思いまして」

 

「そんなに珍しいのか?」

 

「ええ。私が知る限り、不法侵入、盗撮、泥棒、恐喝、詐欺、虐待、殺し合い等をする人や妖怪が多いので」

 

「それだけ聞くと、何だか世紀末的な場所に聞こえるな・・・・・・」

 

「まあやっている人達も、じゃれ合いの範疇ですから。でも、ジンさんみたいに温厚な人は、ここでは稀なんですよ」

 

「まあ確かに、争いは好きでは無いかも知れないな」

 

「・・・・・・やっぱり、ジンさんは珍しい人ですね」

 

そんな話をしながら二人は夜の道を歩いていった。

神社に帰ったジンは、霊夢に盛大に怒られたのは言うまでもない。

 

―――――――――――

 

後日。妖夢の財布を拾った件で御礼がしたいと言われ、ジンと付き添いの霊夢は冥界にある白玉楼に訪れていた。

 

「いらっしゃいジンさん。おや? 霊夢さんも来ていたのですか?」

 

「来ちゃ悪いの?」

 

「そ、そういう訳では・・・・・・」

 

「家主の私を差し置いて、美味しいものを食べようなんて言語道断だわ」

 

「そんな訳で、一緒に来たんだが・・・大丈夫だったか?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。一人くらいなら平気です。ささ、こちらへどうぞ」

 

そう言って妖夢は、二人を白玉楼へと案内する。

 

―――――――――――

 

客室に案内された二人。しばらくすると、妖夢が幽々子を連れてやって来た。

 

「お待たせしました。白玉楼の主、西行寺幽々子様です」

 

「西行寺幽々子よ。貴方がジンね、妖夢が世話になったわ」

 

「いや、逆に夜道を送って貰ったから、世話になったのはこっちだ」

 

「あらあら、随分謙虚なのね。幻想郷では珍しいタイプだわ。そう思うわよね霊夢?」

 

「そんな事より、御馳走まだ?」

 

相変わらずの霊夢の言葉に、幽々子は苦笑いをし、ジンは頭を抱えた。

 

「霊夢、もう少し言い方は無いのか? せっかく招待して貰ったのに」

 

「何を言ってんのよ、こっちはお客さまよ。もてなされて当然じゃない」

 

「そういう訳じゃなくて―――――」

 

「良いのよ、お客さまには違いないのだから。妖夢、食事の用意を」

 

「かしこまりました。少々御待ちください」

 

そう言って、妖夢は部屋から出て行った。そしてしばらくして、彼女と幽々子に支えている幽霊達が、多数の料理を運んで戻って来た。

 

「「おおー!」」

 

「どうぞ、召し上がって下さい」

 

「それじゃ―――」

 

「「いただきます」」

 

ジンと霊夢が同時にそう言い、料理を食べ始めた。

 

「どうでしょう? お口に合いますか?」

 

「ああ、美味い。これ全部妖夢が作ったのか?」

 

「全部ではありません。白玉楼で働いている幽霊も料理をしていますので」

 

「・・・・・・幽霊がどうやって料理をするんだ?」

 

「普通にですよ?」

 

「そうか・・・・・・」

 

ジンは幽霊が包丁を持って料理をする想像するが、いまいちイメージ出来なかった。

そんな時、幽々子がこちらをじっと見ている事に気づく。

 

「えっと・・・俺の顔に何かついてる?」

 

「いいえ、少し気になったのよ。気にさわったのならごめんなさい」

 

「いや、そんな事は無い。それよりも、幽々子は食べないのか?」

 

その言葉に妖夢と霊夢が凍りつき、幽々子はにこやかに笑う。

 

「あら、私も御一緒しても良いのかしら?」

 

「食事は皆でした方が楽しいだろ?」

 

「ちょっとあんた何を――――」

 

「それじゃ、お言葉に甘えて―――――」

 

次の瞬間、あれだけあった料理が一瞬にして消えた――――いや、食べられたのである。

 

「・・・・・・え?」

 

「もう余計な事を言って! 幽々子は大食いなのよ! 一緒に食事なんかしたら、私達の食べる分まで無くなるじゃない!」

 

「酷いわ霊夢、節度くらい私にもあるのよ。それよりも妖夢」

 

「は、はい!」

 

「何ボサッとしているの? 早く次の料理を出しなさい」

 

「た、直ちに!」

 

幽々子の言葉を聞いた妖夢は、幽霊達と共にあわただしく厨房へと走って行った。

それからも、幽々子は勢いよく食べ続け、全体の八割を食べ尽くすのであった。

―――――――――――

 

食事会が終わり、ジンと霊夢はそれなりに満足し、幽々子は大層満足していた。唯一妖夢だけが、少しげんなりしていた。

 

「あー美味しかった♪」

 

「美味かったぞ妖夢。あと大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です・・・・・・」

 

「そうね、妖夢はこれでも鍛えているから、これぐらいの事で根を上げないわ。それよりも――――」

 

すると幽々子の表情は真剣な物となり、ジンの方に視線が向けられる。

 

「霊夢がいるから大丈夫だと思うけど、気をつけてねジン。貴方がついている厄は普通じゃないの。それが取れるまでは、夜は絶対に神社から出ないこと。良いわね」

 

「あ、ああ・・・・・・わかった」

 

幽々子の気迫に圧され、ジンは素直に頷くのであった。

 

 

ジンと霊夢が去った後、幽々子は妖夢に御使いを頼んでいた。

 

「妖夢、悪いけど御使いを頼みたいのだけど」

 

「はい、一体何でしょう?」

 

「映姫様宛に書状を書くから、それを三途の川にいる小町に渡して欲しいの」

 

「小町にですか?」

 

「彼女に渡した方が早いから。お願いできる?」

 

「はい、わかりました」

 

こうして幽々子は、映姫宛の手紙を出した。その内容は、ジンに関する事なのだが、どんな内容かは、また別の話で明かされるであろう。

 

―――――――――――

 

今現在。今日は白玉楼で宴会が行われていた。

他の参加者が楽しんでいる一方、妖夢と白玉楼の幽霊達は料理などを作ったり運んでいて大変そうであった。

そんな中、妖夢の手伝いをしているジンの姿があった。

 

「すみませんジンさん、お客様なのに手伝わせてしまい」

 

「気にするな、俺が好きでやっているんだから。それよりも、幽々子はどうしたんだ?」

 

「幽々子様は、映姫様と御会いになられています」

 

「映姫と? 宴会をやっているのに?」

 

「何でも、大事な話があるそうです」

 

「大事な話か・・・まあ、終われば参加するだろうし、二人の分は取っておいた方が良いな」

 

「大丈夫ですよ。まだまだたくさんありますし、今のうちに食べておかないと、後で幽々子様に全部食べられてしまいますよ」

 

「ははは、違いないな。これを運び終わったら、俺達も食べるか」

 

「はい!」

 

そんな談笑をしながら、二人は皆が待つ宴会場へと向かうのであった。

 


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