特に咲夜さんの初期ボム四つは大変心強いです。情けない話ですが、殆どボムに頼り切りでした。こんなんで、EXをクリアできるかどうか・・・・・。
取りあえず記念話を出来次第、投稿します。気長にお待ちください。
時間を少し遡り、冬が到来する前、妖怪山で大規模な土砂崩れが起きていた。
「うわぁ・・・・・・これは酷いな」
ジンが見た光景は、山の森林が下に流されたような感じであった。幸いにも被害は出てはいなかったが、これを撤去するのは至難だと、ジンは思った。
「ええ、一応河童や他の妖怪達にも協力は要請してはあるけど、それでも人手が足りていないのよ」
ジンの隣で、天狗装束を身に纏った文がそう説明をしていた。
「確かにこれは大変だよな。でも、俺なんかより萃香に頼んだ方が良いんじゃないか?」
「頼めると思う?」
「・・・・・・無理だよな。立場的に」
「ええそうよ。もし呼んだりなんかしたら、私が上司に怒られるもの」
「俺は大丈夫なのか?」
「もちろん、貴方は私の友人だから、それなりに融通利かせてもらっているの。だから安心して頂戴」
「それなら良いけど、まあ何はともあれ、呼ばれた以上はそれなりの働きはしないとな」
「頼りにしているわジン。それじゃ、何かあったら呼んで頂戴」
そう言って、文は飛び去って行った。ジンは持って来た酒を飲み、鬼人になって作業を始めた。
それからジンは、鬼人の力と五行獸をフルに使って、倒れた木を片付け、崩れた土を直していた。その作業中、ふとある事を思いついた。
(そうだ、この崩れた斜面を利用すれば―――――)
「おーい文ー!」
ジンが大声で文を呼ぶと、彼女はジンの元に降り立った。
「どうかしたジン?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、片付けたあと、この場所はどうするんだ?」
「どうするって・・・しばらくは通行止めにするしかないわよ」
「それじゃもし、ここを有効活用出来たなら、この場所を使っても問題ないか?」
「え、えっと・・・私の一存じゃ決められないし、そもそもジンは山に属していないから、権利は無いと思うけど・・・・・・」
「そうか・・・それなら、守矢にこの話を持ち込んだ方が良いか」
「一体何の話をしているの?」
「ん? そうだな・・・文が好きな特ダネになるかも知れない話だ」
「と、特ダネ!? く、詳しく教えて!」
「ああ、作業が一段落したら、ちゃんと話すよ」
「絶対に約束よ!」
そう言って文は、釘刺すように言って飛び去った。
ジンもまた作業を再開した。
―――――――――――
撤去作業が一段落した後、ジンは守矢神社に文と共に訪れていた。
「それで? 話とは何だいジン?」
神奈子がそう訪ねると、ジンはある企画を話始めた。
「先日、妖怪山で土砂崩れが起きたのは知っているだろ?」
「ああ、結構酷いみたいね。幸い被害はなかったらしいみたいだけど」
「俺も撤去作業を手伝ったから、その酷さは知っている。それと同時に、ある事を思いついた」
「ある事?」
「あそこにスキー場を作れないかって」
その言葉に、神奈子は目を見開いて驚いた。文も驚いていたが、メモを書くては止めなかった。
「これを見てくれ」
ジンは妖怪山の地図を神奈子に見せた。それには土砂崩れが起きた部分が書き記されていた。
「ここからここにかけて、森林が土砂で流れている。そこの土砂を撤去し、整地すれば、場所は十分取れると思う」
「確かに、スキー場としては十分の広さね。でも、それだけの物を作るとしたら、それなりの資金は必要だよ」
「それについてはスポンサーを集めるさ、いくつか心当たりがある。その辺りの事は任せて欲しい」
「うーん・・・・・・」
神奈子は少し考えた。最近目玉となる物が無く、若干参拝客が減っているのは事実。ここいらで何かしようとは思っていたのではある。
「まあ悪い話では無さそうだね。話に乗るよジン」
「よし! そうと決まれば話は早い、神奈子はこの事を天魔と話し合ってくれ。文はスポンサーの募集を新聞で広告して欲しい。俺も心当たりがある所に頼みに行くから」
「わかった」
「わかりました!」
「よーしそれじゃ、スキー場建設プロジェクト始動だ!」
そう言ってジンは、飛び出すように行動を開始した。
それからというもの、文々。新聞の広告を知った一部の勢力が興味を持ち、スポンサーを名乗り出たり、ジンのツテであるマミゾウ組や紅魔館はジンの企画書を見て、スポンサーになってくれた。
一方神奈子の方は、交渉がやや難航はしたが、どうにか土砂崩れが起きた場所を使える許可が下りた。
スポンサーと場所が揃い、工事が本格的に始まった。先ずは土砂を撤去をし、次に神奈子と諏訪子の能力で整地を行い、河童達によって簡易リフトの設置、スキー道具の制作が行われた。
そして月日が流れ、冬が到来する―――――。
―――――――――――
冬の妖怪山は雪景色に染まっていた。
その一角で、多数の人と妖怪がスキーを楽しんでいた。
「イヤッホー♪」
楽しげにスノーボードで斜面を滑る魔理沙、その後を霊夢が華麗に滑っていた。
「いやーなかなか楽しいな、そう思うだろう霊夢?」
「そうね、山を滑る事なんてまず無いから。これはこれでおもしろいわ」
「ジンも、なかなかおもしろい事を考えるな。ところで、そのジンはどうしたんだ?」
魔理沙がそう訪ねると、霊夢はつまらなそうに答えた。
「慧音と一緒よ。寺子屋の生徒に、スキーを教えているわ」
「ふーん、それで若干不機嫌な訳か」
「別に不機嫌って訳じゃ―――――」
「いっちばーん!」
霊夢の声を遮るように、正邪が豪快に滑り降りた。その後をサニー、スター、妖狐、針妙丸の順に来た。
「お前ら遅いな、そんなんじゃ私からトップをとれないぞ」
「むっぎー! もう一回勝負よ!」
「ちょっと落ち着きなさいよサニー」
「そうだよ。ここには他にも人がいるんだし、もう少しマナーを守らないと」
「へん、そんな事知ったこっちゃないね」
「・・・・・・正邪さん、それは後ろの方を見てもそう言えますか?」
「後ろ?」
妖狐に言われ、正邪は恐る恐る後ろを振り向く、そこには雪が見事に掛かった霊夢の姿があった。
「え、えっと・・・・・・どうしたの雪なんか掛かって?」
「・・・・・・あんたが」
「へ?」
「あんたが滑り降りた時に掛かったのよー!」
「ギャー!!!」
霊夢は怒りと同時に、正邪に容赦無い折檻を行い、その様子は見ていた者に恐怖を与えるものであった。
そんな時、ルナがノロノロと滑り降りて来た。
「よ、ようやく追いついた・・・・・・って、何をしているの皆?」
「み、見ちゃ駄目よルナ!」
「え?」
「そうよ! この世には見てはいけない物があるのよ!」
「取り合えず行こ! 私達はここに居てはいけないんだよ!」
「何だか良く分からないけど・・・・・・」
「ともかく、皆でもう一滑りしましょう。魔理沙さんも一緒にどうです?」
「構わないぜ。私の滑りを見せてやるよ」
こうして一同は、霊夢と正邪をその場に置いて、また滑りに行くのであった。
―――――――――――
その頃、ある所で一人の雪男がゴーグルの女性をナンパしていた。
「ねぇ君達、僕と一緒に滑らないかい? 君達みたいな麗しいレディとなら、それはもう最高の一時になると思うんだけど」
「えー、どうしょっかなー?」
ゴーグルの女性は悩みながらも、どこか満更でも無い様子であった。
「不安かい? それなら僕の華麗なるテクニックを見れば、きっと一緒に滑りたがるよ」
「そう? それじゃ一緒に滑りましょ♪」
「OK、それじゃ中級(ノーマル)コースで――――」
「もちろん最上級(ルナティック)コースでね♪」
「へ?」
「中級コースなんて許されるのは、人間までよ。さあ行きましょうか♪」
「ちょ、ちょっと待っ――――」
雪男は女性に引き摺られるように、最上級コースに連れて行かれてしまった。
―――――――――――
このスキー場には四つのコースが存在する。
先ずは初級(イージー)コース。スキー初心者が最初にやるコースで、そんなには難しくはないコースである。
次に中級(ノーマル)コース、初級で慣れた者が次にやるコースである。初級に比べれば少し難しいが、落ち着いて滑れば大丈夫なコースである。
三つ目は上級(ハード)コース。中級コースに飽きた者がやるコースである。初級、中級に比べるとかなり難しく、かなりのテクニックを持たないと滑るのは危険である。
最後は最上級(ルナティック)コース。ぶっちゃけプロが滑るようなコースで、このコースを滑る猛者は僅かにしかいない。因みに、興味本意で滑った蓬莱人の二人はこんなコメントをしていた。
『あれは興味本意でやる物じゃない。本気で死ぬかと思った』
『そうね、走馬灯が見えたのは良い体験だったけど、二度とやりたくは無いわ』
そう言って二人は、二度と最上級コースを滑らないと誓ったらしい。
そんな場所に、雪男は連れて行かれたのである。
「どうしたの? そんなに震えちゃって?」
「い、いや、こ、これは武者震いだよ」
そう言って虚勢を張る雪男であったが、目の前にある急な斜面が、地獄に通じる坂に見えた。
(うわ・・・・・・想像以上に急だな・・・・・・やっぱりやめ――――)
「それ♪」
「へ? うわわわわぁーーーー!!??」
女性は怖じ気ついた雪男の背中をそっと押した。雪男は覚悟を出来ないまま、物凄いスピードで最上コースを滑り落ちて行った。
―――――――――――
ところ変わって初級コース。ジンと慧音が生徒達に丁寧にスキーを教えていた。
「よーし、これで大体滑れるようになったな。後は自由時間にして良いぞ。初級コースで滑っても良いし、自信がある奴は、中級コースに挑んでみるのも良いぞ」
「周囲に気をつけて、怪我をしないように」
「「「「はーい」」」」
生徒達が元気良く返事をし、それぞれ好きなコースで滑り始めた。
生徒がいなくなった後、慧音はジンに礼を言い始めた。
「ありがとうジン。私だけでは、どうにもならなかったよ」
「皆が楽しんでくれたのなら、これぐらいどうって事無い」
「君はいつもそう言うな。ところで、この後はどうするんだ?」
「霊夢達も来ているから、そっちの方に行こうと思っているが・・・・・・」
「なら行って構わんよ。後の引率は私がやるから」
「大丈夫か?」
「これ以上世話になりっぱなしという訳にはいかないさ。こっちの事は気にせず、楽しんで来なさい」
「わかった。それじゃ行って来る」
そう言ってジンは慧音と別れ、霊夢がいる場所へと向かった。
ジンは能力を使って霊夢の軌跡を追っていた。
(こういう時にこの能力は便利だな)
自分の能力の利便さを実感しながら、霊夢の元に辿り着いたジン。そこには目当ての霊夢と、何故か雪だるまにされた正邪の姿があった。
「・・・・・・一体何をしているんだ霊夢?」
「ん? あらジンじゃない。寺子屋の生徒にスキーを教えていたんじゃないの?」
「一段落して、今自由時間なんだ。霊夢こそ、一体何をしているんだ?」
「ああ、少しお仕置きをしていたのよ」
「そうか・・・ところで、霊夢一人か?」
「ええ、皆は先に滑りに行ったわ」
「なら、俺と一緒に滑らないか? 一人で滑るより楽しいと思うが」
「え? ええ・・・別に構わないけど」
「なら決まりだ。コースはどうする?」
「そうね・・・上級にしない?」
「いいぞそれで、それじゃ行こうか」
「う、うん・・・・・・」
ジンは霊夢の手を引きながら、リフト乗り場へと歩き出した。
―――――――――――
「ほら、遅いわよジン!」
上級コースを華麗に滑る霊夢。その後を何とか追いかけていくジンの姿があった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ霊夢!」
「待たないわよ♪」
霊夢はそう言うと、上機嫌に滑って行き、あっという間にしたまで滑走した。
「とうちゃーく♪」
「ふう、ようやく追いついた・・・・・・」
「もう遅いわよジン、もう少し早く滑れないの?」
「無茶いうな、俺はそこまで上手くは無いんだよ」
「スキーを教えているのに?」
「俺が教えるのはあくまで基本だけだ。というか、短時間でそこまで上手くなった霊夢の方がおかしいと思うんだが?」
「こんなの、コツさえ掴めば簡単じゃない」
「それは霊夢だけだ」
「ああもうわかったわよ、次はジンに合わせて滑るから、それならいいでしょ?」
「情けないが、そうして貰えると助かる」
「それじゃもう一滑り――――ん?」
「なんだ?」
霊夢とジンが、リフトに向かおうとしたその時、最上級コースから悲鳴が上がる。
「だ、誰か止めてぇぇぇぇ!!!」
それは雪男であった。しかし彼の顔は涙と鼻水まみれで、折角のイケメン面が台無しになるほど、情けない顔して滑り落ちていた。
「おい! やばいんじゃないのかあれ!」
「最上級なんて滑るなんて! 何処のバカよ!」
「うわわわわぁ! あっ!」
制御仕切れず、雪男はとうとう転倒してしまった。
転げ落ちてなおも勢いは止まらず、次第に雪男の体に雪がつき始め、やがて巨大な雪玉になっていた。
「おいおい! これは洒落にならないぞ!?」
「退いてジン! 私が粉々に粉砕してやるわ!」
「ちょっと待て! あれだけの大きさをここで壊せば、余波が周囲を巻き込むぞ!」
「だったらどうするのよ!? このままだとここにいる皆はぺしゃんこよ!」
ジン達がいる最下層は、迫り来る大雪玉にパニックを引き起こしていた。係りの妖怪が何とか避難を促すも、収拾つきそうになかった。
(避難する時間もない、やはりここは壊すしかないか・・・・・・いや、待てよ!)
ジンはある考えを閃き、土獸を召喚する。
「ジン!? 一体何を――――」
「一か八かだ! 行け土獸!」
ジンは土獸の力で、大地を操り、雪玉の進行方向に巨大なジャンプ台を作り出した。そして雪玉はそののままジャンプ台に乗って、空の彼方に飛んで行った。
「ふぅ、なんとかなったな・・・・・・」
「咄嗟に良く思いついたわね・・・・・・」
「スキーといえばジャンプ台って思ってな。強度に不安があったが、何とかなって良かった・・・・・・」
そう言って、安堵するジン。そんな時、ジンが作り出したジャンプ台から、ゴーグルの女性が飛んで来た。
「イッヤホゥー♪」
爽快な声と共に着地したその女性は、二人の目の前でゴーグルを外した。
「なかなかおもしろい物を作ったわねジン」
「「紫!?」」
そう、ゴーグルの女性は紫であった。予想外の人物に、霊夢とジンは驚きを隠せなかった。
「あら? どうしたの二人とも? そんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしちゃって」
「いやだって・・・・・・」
「あんたがスキーやれるなんて思っていなかったから・・・・・・」
「失礼ね、私だってスキーぐらいたしなむわよ」
「それってやっぱり、外の世界でか?」
「さあね、それは乙女のひ、み、つ♪」
「何が乙女の秘密よ。それより、最上級コースで何をしてたの?」
「別に、スキーを楽しんでいただけよ。さる殿方と一緒にね♪」
「男と? 何処にいるのよそいつ」
「先に滑って行ったんだけど・・・・・・どうしたのかしら?」
(まさか・・・・・・さっきの男の事か?)
そう思ったジンであったが、あえて口に出さない事にした。
「まあ良いわ。折角だし、一緒に最上級コースを滑らない?」
「「結構です」」
二人はキッパリと、紫の誘いを断った。
それからしばらく、幻想郷にスキーブームが訪れ、妖怪山は大変潤ったという。