かなり鬼畜仕様だったので、最後はギリギリでした。もう一度クリアしろと言われても、出来るかどうか・・・・・・。
とりあえず、クリア記念の番外編をやろうと思っています。出来次第投稿する予定です。
人里には、大きな市場が存在する。人間用から妖怪用の道具まで幅広い品数が揃っており、妖怪達もここに買い物しに、人里に訪れる者が多い。そして、妖精もまた例外ではなかった。
「えっと・・・これで全部かな?」
「ちょっと待って・・・・・・うん、メモに書いてある物は全部あるよ」
「それじゃミッション完了ね♪ それじゃ、お釣りで好きな物を買いましょ♪」
光の三妖精こと、サニー、ルナ、スターの三人は、ジンから頼まれた買い物を無事に済ませたところであった。
御釣りは好きにしていいと言われていたので、早速買いに行こうとする二人に対して、ルナだけがあまり乗り気ではなかった。
「待ってよスター。こういうのは貯めた方が良いわよ。いつもすぐ使っちゃうから、いざっていうときにお金が無くて困るんでしょ?」
以前の失敗を踏まえ、そう進言するルナであったが、サニーとスターの考えは違っていた。
「でも、お金って使う物でしょ? 貯めて何が意味あるの?」
「すぐに使うか、後に使うかの違いしか無いわよね?」
「それは・・・そうだけど・・・・・・」
「あまり難しく考える必要は無いわよ。それよりも、早く行きましょ♪」
「あ、ちょ、ちょっと!?」
悩んでいるルナを強引に連れ、三人は再び市場を歩き出すのであった。
三人が来たのは雑貨屋であった。サニーとスターは直ぐに買うものを決めたが、ルナは未だに悩んでいた。
「うーん、うーん・・・・・・」
「ルナまだ決まんないの?」
「もうちょっと待って・・・・・・」
「早く決めないと日が暮れるわよ」
「わかっているけど・・・・・・」
サニーとスターに急かされるもの、ルナは決めれずにいた。そんな三人に、声を掛ける一人の人物がいた。
「あら、貴女達は・・・・・・」
「え?」
声を掛けて来たのは、つむじという烏天狗であった。
以前サニー達が、偶然彼女の卵を拾ったのが切っ掛けで知り合った妖怪である。
「こんなところで会うなんて、奇遇ね。お使いかしら?」
「ええまあそうです。つむじさんも買い物ですか?」
「ええ、この子の玩具を買いにね」
そう言ってつむじは、自分の背中で寝ている赤ん坊を三人に見せた。
「わー♪ かわいいー♪」
「いつ孵ったんですか?」
「一ヶ月くらい前よ。
この子ったら、人間が作った玩具が好きなのよ。だから今日はそれを買いにね」
「ふーん、そうなんですか。なんか変わってますね」
「そうなのよ。まあでも、健やかに育ってくれれば、文句は無いわ」
つむじは穏やかな表情で、我が子を見てそう言った。
それからしばらくサニー達は、つむじと世間話をしていたが、彼女の赤ん坊が起きてしまった。
「あら? 起こしちゃったかしら?」
「・・・・・・」
起きた赤ん坊は、サニー達に興味があるのか、三人の方をじっと見つめていた。
「な、なんか見られているんだけど・・・・・・」
「どうやらこの子、貴女達に興味があるらしいわ」
「え? 私達に?」
「ふふん、私達に目をつけるなんて流石ね。この子はいつか、大物になるわ」
「ふふっ、ありがとう。それじゃ私はもう行くから」
そう言って、つむじは手を振り帰って行った。
それを見送ったサニー達は、先程のつむじの赤ん坊の事で未だに盛り上がっていた。
「赤ちゃんか・・・可愛かったな」
「そうね。天狗のとはいえ、あんな身近で見たの初めてかも」
「うーん・・・・・・」
「あれ? どうしたのサニー?」
「思ったんだけどさ、どうやって赤ん坊が出来るんだろう?」
サニーのその言葉に、ルナとスターは顔を見合わせた。
「どうしてってそれは・・・・・・」
「卵からじゃないの?」
「それはそうだけど、私達が卵を温めても孵らなかったじゃない」
それは以前、サニー達が興味本意で市販の卵を温めた事があった。本人達は至って真面目であったが、当然卵は孵る筈もなかったのは言うまでもない。
「そうね。あれが孵れば、格安で鶏が手に入ったのに」
「その前に雛から育てないと」
「そもそも孵らなかったじゃない。あの後腐ったじゃない」
「あの時の臭いは酷かった・・・・・・」
「でもそうなると、何がいけなかったのかしら?」
「「「うーん・・・・・・」」」
三人は頭を捻って考えるが、やはりいつも通り答えは出なかった。
「やっぱり―――」
「こういう時は――――」
「ジンに聞いて見よー!」
結局いつもの結論に辿り着き、三人は足早に博麗神社へと帰って行った。
―――――――――――
神社に戻って来たサニー達は、早速先程の疑問をジンに聞いてみた。
「―――――という訳なんだけど、どうして卵は孵らなかったの?」
それを聞いたジンは、いつも通り丁寧にサニー達の疑問に答えた。
「それは簡単な話だ。サニー達が温めた卵は、無精卵だからだ」
「無精卵?」
「温めて孵らない卵の事だ。鶏は卵を生むけど、あるものが欠けていると、その卵はどんなに頑張っても孵る事は無い」
「あるものってなに?」
「えっ!?」
ルナの言葉に、ジンは思わず固まってしまった。
(えっと・・・これは言ってもいいだろうか・・・・・・?)
ジンは少し悩んだが、やはり知っている以上、答えなければならない強い義務感を持っていたので、サニー達に教えて上げる事にした。その義務感が後に、後悔に変わる事も知らずに。
「――――ってな訳だ。これがある卵は有精卵と呼ばれる卵となる」
「なるほど・・・って事はジンも持っているの?」
「え? まあ・・・どんな動物でも、雄の方は基本的に備わっているが――――」
「じゃあ、見せてちょうだい」
「えっ!?」
「どんな物か見てみたい!」
サニーは満面の笑顔でそう言った。対するジンは、冷や汗をビッシリとかいていた。
「い、いや、そういうのはおいそれと見せる物じゃないんだ」
「じゃあ、どういう時に見れるの?」
「そ、それは・・・・・・」
ジンは困り果てていた。どうにかごまかさないと、R指定の流れになってしまう。しかし、どうごまかせば良いか、まったく思いつかなかったのである。
そんな窮地に立たされたジンの元に、救いの巫女が現れた。
「ちょっとー、いつまで待たせてんのよ」
「れ、霊夢か」
「どうしたのジン? そんな冷や汗かいて?」
「そ、それは・・・・・・」
「? サニー達が何かしたの?」
「何もしてませんよ霊夢さん。私達はジンに聞いているだけですよ」
「何を?」
「それはですね――――」
サニー達は何の躊躇なく、これまでの話を霊夢に話した。それを聞いた霊夢は、顔がみるみる赤くなり―――――。
「こっの! バカ妖精どもー!!! 神聖な神社でそんな話をするんじゃなーい!!!」
「「「うひゃー!!??」」」
霊夢の怒鳴り声に、サニー達は蜘蛛の子散らすように逃げて行った。
サニー達が去った後、霊夢はジンをギロリと睨む。
「あんたもあんたで! 余計な事を教えない!」
「いやでもなあ・・・疑問に答える事は悪い事じゃないだろ?」
「それは時と場合によるものよ! 何でもかんでも教えるから、さっきみたいな事になるんじゃない!」
「面目ない・・・・・・」
「まったく、そのうち酷い目にあっても知らないんだから」
そう霊夢はジンに忠告するのだが、その忠告が思いの他当たるとは、この時のジンは思いもよらなかった。
―――――――――――
一方、霊夢の怒鳴り声で逃げ出したサニー達は、自分達の家であるミズナラの御神木の前まで逃げていた。
「はあ~・・・・・・ビックリした」
「本当ね、まさか霊夢さんがあんなに怒るなんて」
「でも、なんで怒ったんだろ? 私達はジンに聞いていただけなのに・・・・・・」
「「さあ?」」
三人はいろいろと考えたが、結局なにが原因なのかはわからなかった。
「結局のところ、ジンの見れなかったわね。どんな物か興味があったんだけど」
「もう一度頼んでみたらどう?」
「いやでも、本人乗り気じゃなかったし。頼んでも見せてくれないんじゃない?」
「じゃあ、諦める?」
「それだと気になって夜も眠れないわよ。どうにかして見る方法は無いかしら?」
「方法はあるぞ」
「だ、誰!?」
サニー達は慌てて、辺りを見回すが、周囲には自分達しかいなかった。しかし、再び声が聞こえて来る。
「上だよ上」
「上・・・・・・? あっ!」
三人が上を見上げると、そこには木の枝に座っている正邪の姿があった。
正邪はそのまま飛び降り、三人の前に着地する。
「正邪さんじゃない。確か華仙さんに連れてかれたんじゃ・・・・・・?」
「デコイを使って逃げて来た。今頃あいつ、人形に向かって説教している頃だぜ」
「あはは・・・そうなんだ」
(この人、怖いものしらずだなあ・・・・・・)
「そんな事より、話は聞かせて貰った。私に良い案がある」
そう言って正邪は、ニヤリと笑うのであった。
―――――――――――
その日の夜。ジンはその日の疲れを癒しに、神社の温泉に入っていた。
「はあ~、温泉は良いな~。心と体が暖まる~」
のんびりゆったりと浸かったジンは湯船から出て、脱衣所に入る。脱衣所のロッカーを開けると、そこにある筈の着替えがなかった。
「あれ? 着替えが――――」
「今だ! 抑え込め!」
その声ともに、物影から正邪、サニー、スターの三人が現れ、襲い掛かって来た。
「食らえ!」
「うお!?」
虚をつかれたジンであったが、巧みな体裁きで掴み掛かろうとした正邪かわし、逆に投げ飛ばした。
「ぐえ!?」
「正邪さん!?」
「貴女がいきなりやられてどうするの!?」
まさか、いきなり正邪が沈むとは思わなかった為、サニーとスターは激しく動揺していた。
そんな二人に対して、ジンは怪訝な顔をした。
「これは一体どういう事か、説明して貰おうか?」
「そ、それは・・・・・・」
「ルナも近くにいるんだろ? 出てこい」
「ううっ・・・だからやめようって言ったのに・・・・・・」
そう呟きながら、隠れていたルナも出て来たのであった。
取り合えず着替えを済ませたジンは、正邪を縛り上げてから、サニー達に改めて事情を聞く事にした。
「それで? 一体どうしてこんな事をしたんだ?」
「「「・・・・・・」」」
「黙っていたんじゃ、何も分からないぞ」
「「「・・・・・・」」」
ジンが再度訪ねても、サニー達は何も喋らなかった。そんなサニー達を見てジンは、諭すように言う。
「霊夢には言わないから、どうしてこんな事をやったか教えてくれないか?」
そう言うと、サニー達は安堵した。どうやら霊夢に怒られるのを怖れていたようである。
サニー達はジンに全てを話した。
「なるほどな、それで正邪の悪巧みに乗った訳か」
「どうしても気になって・・・・・・」
「それにしたって限度がある。俺以外の奴だったら、間違いなくお仕置きされていたぞ」
「ごめんなさい・・・・・・」
「まあでも、説明が中途半端に終わらせた俺も悪いからな・・・・・・そうだな、ちゃんと教えるべきだな」
「それじゃ――――」
「だからって見せるつもりは無い! 説明するだけだ!」
「ええー・・・・・・」
「何でそこで残念がるかな・・・・・・ともかく、説明するぞ」
そう言ってジンは羞恥心を捨てて、サニー達に改めて説明を始めた。
一通りの説明をしたジンは、再度サニー達に言う。
「――――ってな訳だ。わかったか?」
「うわあ・・・・・・」
「そ、そんな物だったんだ・・・・・・」
「え、えっと・・・・・・だ、大体わかったわ」
サニー達は顔を若干赤くしながら、ジンの説明に納得したようである。
ジンは一安心した一方、二度とこんな解説はしたくないと心から思うのであった。
そんな時サニー、こんな事を言い出した。
「ね、ねえジン。私達妖精も、赤ちゃん産めるのかな?」
サニーのこの質問に面を食らうジンであったが、何処と無く真剣そうな彼女の質問に、ジンも真面目に答えた。
「・・・・・・どうだろうな。妖精は自然の化身だから、難しいだろうな」
「そっか・・・・・・」
「サニーは、子供が欲しいのか?」
そう訪ねると、サニーは照れくさそうに答えた。
「今日、つむじさんの赤ちゃんを見て、可愛いなって思って」
「そっか・・・サニーなら、いい母親になるさ」
「そりゃそうよ! なんたって私は、光の三妖精のリーダーなんだから!」
「それは関係無いんじゃない?」
「むしろ逆に心配よ。サニーは料理が全然出来ないんだから」
「う、うるさいわね! 目玉焼きくらい出来るわよ!」
「それ以外作れないでしょ?」
「ぐぎぎ・・・・・・」
「まあまあ、これから上達していくさ。それよりも三人とも、赤ん坊に興味があるのなら、良い仕事がある。やってみないか?」
「どんなの?」
「ベビーシッターだ」
―――――――――――
「ふーん、そんな事があったのか」
人里の団子屋で、魔理沙は団子を食べながらジンの話を聞いていた。
「一時はどうなるかと思ったが、何とかなったよ」
「それは良いが、あいつらにベビーシッターなんか出きるのか?」
「その辺は大丈夫だ。小傘もついているしな」
「小傘って、唐傘お化けの? 余計に心配だな。だってあいつ、子供持ちの大人に評判悪くて、手配書まで作られていたんだぜ?」
「その辺りの誤解は、既に解かれている。
今では、育児で苦労している親達に頼りにされているぞ」
「いつのまに・・・っていうか、どうやって解いたんだ?」
「元々、子供達に人気があったんだ。少し後押ししてやれば、自ずと小傘の良さも理解出来る。要は頑張り次第って事だ何事も」
ジンはそう呟いて、窓の外を眺めた。すると、赤ん坊を一生懸命あやしているサニー達の姿が見えた。
(どうやら、頑張っているみたいだな)
そんなサニー達の姿を見て、ジンは優しく微笑むのであった。