東方軌跡録   作:1103

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紅魔郷EXクリアしました!
かなり鬼畜仕様だったので、最後はギリギリでした。もう一度クリアしろと言われても、出来るかどうか・・・・・・。
とりあえず、クリア記念の番外編をやろうと思っています。出来次第投稿する予定です。


赤ん坊は何処から来るの?

人里には、大きな市場が存在する。人間用から妖怪用の道具まで幅広い品数が揃っており、妖怪達もここに買い物しに、人里に訪れる者が多い。そして、妖精もまた例外ではなかった。

 

「えっと・・・これで全部かな?」

 

「ちょっと待って・・・・・・うん、メモに書いてある物は全部あるよ」

 

「それじゃミッション完了ね♪ それじゃ、お釣りで好きな物を買いましょ♪」

 

光の三妖精こと、サニー、ルナ、スターの三人は、ジンから頼まれた買い物を無事に済ませたところであった。

御釣りは好きにしていいと言われていたので、早速買いに行こうとする二人に対して、ルナだけがあまり乗り気ではなかった。

 

「待ってよスター。こういうのは貯めた方が良いわよ。いつもすぐ使っちゃうから、いざっていうときにお金が無くて困るんでしょ?」

 

以前の失敗を踏まえ、そう進言するルナであったが、サニーとスターの考えは違っていた。

 

「でも、お金って使う物でしょ? 貯めて何が意味あるの?」

 

「すぐに使うか、後に使うかの違いしか無いわよね?」

 

「それは・・・そうだけど・・・・・・」

 

「あまり難しく考える必要は無いわよ。それよりも、早く行きましょ♪」

 

「あ、ちょ、ちょっと!?」

 

悩んでいるルナを強引に連れ、三人は再び市場を歩き出すのであった。

 

 

三人が来たのは雑貨屋であった。サニーとスターは直ぐに買うものを決めたが、ルナは未だに悩んでいた。

 

「うーん、うーん・・・・・・」

 

「ルナまだ決まんないの?」

 

「もうちょっと待って・・・・・・」

 

「早く決めないと日が暮れるわよ」

 

「わかっているけど・・・・・・」

 

サニーとスターに急かされるもの、ルナは決めれずにいた。そんな三人に、声を掛ける一人の人物がいた。

 

「あら、貴女達は・・・・・・」

「え?」

 

声を掛けて来たのは、つむじという烏天狗であった。

以前サニー達が、偶然彼女の卵を拾ったのが切っ掛けで知り合った妖怪である。

 

「こんなところで会うなんて、奇遇ね。お使いかしら?」

 

「ええまあそうです。つむじさんも買い物ですか?」

 

「ええ、この子の玩具を買いにね」

 

そう言ってつむじは、自分の背中で寝ている赤ん坊を三人に見せた。

 

「わー♪ かわいいー♪」

 

「いつ孵ったんですか?」

 

「一ヶ月くらい前よ。

この子ったら、人間が作った玩具が好きなのよ。だから今日はそれを買いにね」

 

「ふーん、そうなんですか。なんか変わってますね」

 

「そうなのよ。まあでも、健やかに育ってくれれば、文句は無いわ」

 

つむじは穏やかな表情で、我が子を見てそう言った。

それからしばらくサニー達は、つむじと世間話をしていたが、彼女の赤ん坊が起きてしまった。

 

「あら? 起こしちゃったかしら?」

 

「・・・・・・」

 

起きた赤ん坊は、サニー達に興味があるのか、三人の方をじっと見つめていた。

 

「な、なんか見られているんだけど・・・・・・」

 

「どうやらこの子、貴女達に興味があるらしいわ」

 

「え? 私達に?」

 

「ふふん、私達に目をつけるなんて流石ね。この子はいつか、大物になるわ」

 

「ふふっ、ありがとう。それじゃ私はもう行くから」

 

そう言って、つむじは手を振り帰って行った。

それを見送ったサニー達は、先程のつむじの赤ん坊の事で未だに盛り上がっていた。

 

「赤ちゃんか・・・可愛かったな」

 

「そうね。天狗のとはいえ、あんな身近で見たの初めてかも」

 

「うーん・・・・・・」

 

「あれ? どうしたのサニー?」

 

「思ったんだけどさ、どうやって赤ん坊が出来るんだろう?」

 

サニーのその言葉に、ルナとスターは顔を見合わせた。

 

「どうしてってそれは・・・・・・」

 

「卵からじゃないの?」

 

「それはそうだけど、私達が卵を温めても孵らなかったじゃない」

 

それは以前、サニー達が興味本意で市販の卵を温めた事があった。本人達は至って真面目であったが、当然卵は孵る筈もなかったのは言うまでもない。

 

「そうね。あれが孵れば、格安で鶏が手に入ったのに」

 

「その前に雛から育てないと」

 

「そもそも孵らなかったじゃない。あの後腐ったじゃない」

 

「あの時の臭いは酷かった・・・・・・」

 

「でもそうなると、何がいけなかったのかしら?」

 

「「「うーん・・・・・・」」」

 

三人は頭を捻って考えるが、やはりいつも通り答えは出なかった。

 

「やっぱり―――」

 

「こういう時は――――」

「ジンに聞いて見よー!」

 

結局いつもの結論に辿り着き、三人は足早に博麗神社へと帰って行った。

 

―――――――――――

 

神社に戻って来たサニー達は、早速先程の疑問をジンに聞いてみた。

 

「―――――という訳なんだけど、どうして卵は孵らなかったの?」

 

それを聞いたジンは、いつも通り丁寧にサニー達の疑問に答えた。

 

「それは簡単な話だ。サニー達が温めた卵は、無精卵だからだ」

 

「無精卵?」

 

「温めて孵らない卵の事だ。鶏は卵を生むけど、あるものが欠けていると、その卵はどんなに頑張っても孵る事は無い」

 

「あるものってなに?」

 

「えっ!?」

 

ルナの言葉に、ジンは思わず固まってしまった。

 

(えっと・・・これは言ってもいいだろうか・・・・・・?)

 

ジンは少し悩んだが、やはり知っている以上、答えなければならない強い義務感を持っていたので、サニー達に教えて上げる事にした。その義務感が後に、後悔に変わる事も知らずに。

 

「――――ってな訳だ。これがある卵は有精卵と呼ばれる卵となる」

 

「なるほど・・・って事はジンも持っているの?」

 

「え? まあ・・・どんな動物でも、雄の方は基本的に備わっているが――――」

 

「じゃあ、見せてちょうだい」

 

「えっ!?」

 

「どんな物か見てみたい!」

 

サニーは満面の笑顔でそう言った。対するジンは、冷や汗をビッシリとかいていた。

 

「い、いや、そういうのはおいそれと見せる物じゃないんだ」

 

「じゃあ、どういう時に見れるの?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

ジンは困り果てていた。どうにかごまかさないと、R指定の流れになってしまう。しかし、どうごまかせば良いか、まったく思いつかなかったのである。

そんな窮地に立たされたジンの元に、救いの巫女が現れた。

 

「ちょっとー、いつまで待たせてんのよ」

 

「れ、霊夢か」

 

「どうしたのジン? そんな冷や汗かいて?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「? サニー達が何かしたの?」

 

「何もしてませんよ霊夢さん。私達はジンに聞いているだけですよ」

 

「何を?」

 

「それはですね――――」

 

サニー達は何の躊躇なく、これまでの話を霊夢に話した。それを聞いた霊夢は、顔がみるみる赤くなり―――――。

 

「こっの! バカ妖精どもー!!! 神聖な神社でそんな話をするんじゃなーい!!!」

 

「「「うひゃー!!??」」」

 

霊夢の怒鳴り声に、サニー達は蜘蛛の子散らすように逃げて行った。

サニー達が去った後、霊夢はジンをギロリと睨む。

 

「あんたもあんたで! 余計な事を教えない!」

 

「いやでもなあ・・・疑問に答える事は悪い事じゃないだろ?」

 

「それは時と場合によるものよ! 何でもかんでも教えるから、さっきみたいな事になるんじゃない!」

 

「面目ない・・・・・・」

 

「まったく、そのうち酷い目にあっても知らないんだから」

 

そう霊夢はジンに忠告するのだが、その忠告が思いの他当たるとは、この時のジンは思いもよらなかった。

 

―――――――――――

 

一方、霊夢の怒鳴り声で逃げ出したサニー達は、自分達の家であるミズナラの御神木の前まで逃げていた。

 

「はあ~・・・・・・ビックリした」

 

「本当ね、まさか霊夢さんがあんなに怒るなんて」

 

「でも、なんで怒ったんだろ? 私達はジンに聞いていただけなのに・・・・・・」

 

「「さあ?」」

 

三人はいろいろと考えたが、結局なにが原因なのかはわからなかった。

 

「結局のところ、ジンの見れなかったわね。どんな物か興味があったんだけど」

 

「もう一度頼んでみたらどう?」

 

「いやでも、本人乗り気じゃなかったし。頼んでも見せてくれないんじゃない?」

 

「じゃあ、諦める?」

 

「それだと気になって夜も眠れないわよ。どうにかして見る方法は無いかしら?」

 

「方法はあるぞ」

 

「だ、誰!?」

 

サニー達は慌てて、辺りを見回すが、周囲には自分達しかいなかった。しかし、再び声が聞こえて来る。

 

「上だよ上」

 

「上・・・・・・? あっ!」

 

三人が上を見上げると、そこには木の枝に座っている正邪の姿があった。

正邪はそのまま飛び降り、三人の前に着地する。

 

「正邪さんじゃない。確か華仙さんに連れてかれたんじゃ・・・・・・?」

 

「デコイを使って逃げて来た。今頃あいつ、人形に向かって説教している頃だぜ」

 

「あはは・・・そうなんだ」

 

(この人、怖いものしらずだなあ・・・・・・)

 

「そんな事より、話は聞かせて貰った。私に良い案がある」

 

そう言って正邪は、ニヤリと笑うのであった。

 

―――――――――――

 

その日の夜。ジンはその日の疲れを癒しに、神社の温泉に入っていた。

 

「はあ~、温泉は良いな~。心と体が暖まる~」

 

のんびりゆったりと浸かったジンは湯船から出て、脱衣所に入る。脱衣所のロッカーを開けると、そこにある筈の着替えがなかった。

 

「あれ? 着替えが――――」

 

「今だ! 抑え込め!」

 

その声ともに、物影から正邪、サニー、スターの三人が現れ、襲い掛かって来た。

 

「食らえ!」

 

「うお!?」

 

虚をつかれたジンであったが、巧みな体裁きで掴み掛かろうとした正邪かわし、逆に投げ飛ばした。

 

「ぐえ!?」

 

「正邪さん!?」

 

「貴女がいきなりやられてどうするの!?」

 

まさか、いきなり正邪が沈むとは思わなかった為、サニーとスターは激しく動揺していた。

そんな二人に対して、ジンは怪訝な顔をした。

 

「これは一体どういう事か、説明して貰おうか?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「ルナも近くにいるんだろ? 出てこい」

 

「ううっ・・・だからやめようって言ったのに・・・・・・」

 

そう呟きながら、隠れていたルナも出て来たのであった。

 

 

取り合えず着替えを済ませたジンは、正邪を縛り上げてから、サニー達に改めて事情を聞く事にした。

 

「それで? 一体どうしてこんな事をしたんだ?」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「黙っていたんじゃ、何も分からないぞ」

 

「「「・・・・・・」」」

 

ジンが再度訪ねても、サニー達は何も喋らなかった。そんなサニー達を見てジンは、諭すように言う。

 

「霊夢には言わないから、どうしてこんな事をやったか教えてくれないか?」

 

そう言うと、サニー達は安堵した。どうやら霊夢に怒られるのを怖れていたようである。

サニー達はジンに全てを話した。

 

「なるほどな、それで正邪の悪巧みに乗った訳か」

 

「どうしても気になって・・・・・・」

 

「それにしたって限度がある。俺以外の奴だったら、間違いなくお仕置きされていたぞ」

 

「ごめんなさい・・・・・・」

 

「まあでも、説明が中途半端に終わらせた俺も悪いからな・・・・・・そうだな、ちゃんと教えるべきだな」

 

「それじゃ――――」

 

「だからって見せるつもりは無い! 説明するだけだ!」

 

「ええー・・・・・・」

 

「何でそこで残念がるかな・・・・・・ともかく、説明するぞ」

 

そう言ってジンは羞恥心を捨てて、サニー達に改めて説明を始めた。

 

 

一通りの説明をしたジンは、再度サニー達に言う。

 

「――――ってな訳だ。わかったか?」

 

「うわあ・・・・・・」

 

「そ、そんな物だったんだ・・・・・・」

 

「え、えっと・・・・・・だ、大体わかったわ」

 

サニー達は顔を若干赤くしながら、ジンの説明に納得したようである。

ジンは一安心した一方、二度とこんな解説はしたくないと心から思うのであった。

そんな時サニー、こんな事を言い出した。

 

「ね、ねえジン。私達妖精も、赤ちゃん産めるのかな?」

 

サニーのこの質問に面を食らうジンであったが、何処と無く真剣そうな彼女の質問に、ジンも真面目に答えた。

 

「・・・・・・どうだろうな。妖精は自然の化身だから、難しいだろうな」

 

「そっか・・・・・・」

 

「サニーは、子供が欲しいのか?」

 

そう訪ねると、サニーは照れくさそうに答えた。

 

「今日、つむじさんの赤ちゃんを見て、可愛いなって思って」

 

「そっか・・・サニーなら、いい母親になるさ」

 

「そりゃそうよ! なんたって私は、光の三妖精のリーダーなんだから!」

 

「それは関係無いんじゃない?」

 

「むしろ逆に心配よ。サニーは料理が全然出来ないんだから」

 

「う、うるさいわね! 目玉焼きくらい出来るわよ!」

 

「それ以外作れないでしょ?」

 

「ぐぎぎ・・・・・・」

 

「まあまあ、これから上達していくさ。それよりも三人とも、赤ん坊に興味があるのなら、良い仕事がある。やってみないか?」

 

「どんなの?」

 

「ベビーシッターだ」

 

―――――――――――

 

「ふーん、そんな事があったのか」

 

人里の団子屋で、魔理沙は団子を食べながらジンの話を聞いていた。

 

「一時はどうなるかと思ったが、何とかなったよ」

 

「それは良いが、あいつらにベビーシッターなんか出きるのか?」

 

「その辺は大丈夫だ。小傘もついているしな」

 

「小傘って、唐傘お化けの? 余計に心配だな。だってあいつ、子供持ちの大人に評判悪くて、手配書まで作られていたんだぜ?」

 

「その辺りの誤解は、既に解かれている。

今では、育児で苦労している親達に頼りにされているぞ」

 

「いつのまに・・・っていうか、どうやって解いたんだ?」

 

「元々、子供達に人気があったんだ。少し後押ししてやれば、自ずと小傘の良さも理解出来る。要は頑張り次第って事だ何事も」

 

ジンはそう呟いて、窓の外を眺めた。すると、赤ん坊を一生懸命あやしているサニー達の姿が見えた。

 

(どうやら、頑張っているみたいだな)

 

そんなサニー達の姿を見て、ジンは優しく微笑むのであった。


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