東方軌跡録   作:1103

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書き直ししました。前があまりにも酷かったので。


地底に行こう 前編

昼下がりの人里。

ジンは霊夢に頼まれて、買い物に来ていた。

そこで、八百屋のおばちゃんに声を掛けられる。

 

「ジンちゃん、新聞見たよ。

何だか、色々大変だね」

 

「まあ大変だが、それなりに楽しんでいる」

 

「そうかい、それなら良いんだけどね。

そうだ! 良かったら、これを使っておくれ」

 

「これは・・・・・福引券?」

 

「今里で行われているんだよ。

金賞は何と、温泉旅館一泊二日宿泊券なんだよ」

 

「温泉か・・・・・ふむ」

 

「どうせなら、あの巫女さんと行きなよ」

 

「気が早いな、まだ当たるとは限らない」

 

「当たるって、私の勘がそういっているんだから間違いないよ」

 

「ありがとうおばさん。

早速使わせて貰う」

 

八百屋のおばちゃんにお礼を言ったジンは、早速福引きをしに行くのであった。

 

―――――――――――

 

「それで、見事に当てたってわけ?」

 

「ああ、自分でも驚きだ」

 

ジンの手には、金賞の宿泊券があった。

 

「ところで、場所は何処なの?」

 

「えっと・・・・・地底の旧都?」

 

「ああ・・・・・あそこね、そう言えば温泉街が出来たって話があったわね」

 

「知っているのか霊夢?」

 

「ちょっとね、それでどうするの?」

 

「せっかく手に入ったんだ。行かなきゃ損だろ」

 

「う~ん・・・・・あんまり乗り気じゃないんだけど・・・・・。

かと言って、ジン一人だけ行かせる訳には・・・・・」

 

「そんなに危ないところなのか?」

 

「地底はね、地上を捨てた妖怪や行き場の無い妖怪が集まったところなの。

だから、荒くれ者が多いし、地上のルールを守らない奴だっているわ」

 

「そんなに危険なところなのか・・・・・」

 

「今はそれほどでも無いと思うわ。

以前起きた異変以降、交流が盛んになったらしいし、地底と地上を行き来している妖怪や人間もいるって聞くわ」

 

「そうか、それなら行ってみたいのだが・・・・・」

 

「はいはい、ついて行くわよ。

あんただけだと心配だから」

 

「ありがとう霊夢。

それじゃ、出発は明日しよう」

 

「良いわよそれで」

 

こうして、地底旧都の温泉旅行に行くことになった。

 

―――――――――――

 

ここは地底の旧都。

そこはまるで、夜の繁華街であった。

 

「うわぁ・・・・・これは想像以上だな・・・・・」

 

「ちょっとジン、あんまりキョロキョロしないでよ」

 

「悪い。それより、何だその格好は?」

 

霊夢は今、普段の巫女服ではなく、町娘のような着物を着ていた。

 

「ちょっと昔に地底で大暴れしたのよ。

だから、変な因縁をつけられないようにしているのよ」

 

「大暴れって・・・・・一体何をしたんだ?」

 

「いつも通りに、異変を解決しただけよ」

 

「いつも通りで大暴れするから、余計に恐がられるんじゃないのか?」

 

「うるさいわね。

私はあんたと違って、妖怪に好かれたい訳じゃないのよ」

 

「俺だって、別に好かれたい何て思ってない」

 

「そのわりには、ところ構わず世話しているじゃない」

 

「そんな事はしていない。

俺は困っている友人や知人を見捨てたくないだけだ」

 

「はあ・・・・・無自覚だけに、厄介だわ」

 

「? 何か言ったか?」

 

「何でも無いわよ。

それよりも、さっさと行くわよ」

 

こうして二人は、目的の旅館に向かうのであった。

 

―――――――――――

 

それからしばらくして、ジンは霊夢とはぐれてしまった事に気づいた。

 

「まいったな・・・地理なんてわからないぞ」

 

どうするか考えながら歩いていると、誰かの肩とぶつかってしまった。

 

「あ、悪い―――」

 

「何処を見て歩いてやがる!」

 

ガラの悪い妖怪は、ジンの胸ぐらを掴み、殴り掛かった。

 

「いて! 何をする!」

 

「てめぇがぶつかって来たからだろうが!」

 

「それは誤っ――――」

 

「それに、ムシャクシャしていたんだ。憂さ晴らしをさせて貰うぜ!」

 

「それはお前の都合だろうが!」

 

「うるせぇ!」

 

そう言って殴り掛かる妖怪。ジンは妖怪の動きを読み、それをかわす。

何度も放たれる拳は空を切り、妖怪の方は焦りを見せ始めた。

 

「こなくそ!」

 

大振りしたその瞬間を狙って、ジンは足払いを掛ける。

足払いは見事に決まり、妖怪は地面に転んでしまった。

 

「もう良いだろ。勝負はあった」

 

「このやろう・・・・・・」

 

「おいどうした?」

 

すると向こうの方から数人の妖怪がやって来た。どうやら、目の前の妖怪の仲間らしい。ジンは冷や汗をかき始めた。

 

(不味い・・・一人ならともかく、あんな人数とはやりあえないぞ)

 

逃げようと思ったジンであったが、既に囲まれていた。

 

「この人間が、俺様に因縁をつけやがったんだ」

 

「ほう、少し話を聞かせて貰おうか?」

 

こうしてジンは、数の力の前になすすべ無く。リンチを受けてしまうのであった。

 

 

それからしばらくして、ジンはボロボロになって地に伏せていた。

激しい抵抗したのか、妖怪達も息を切らしていた。

 

「はあ、はあ、ようやくくたばったか」

 

「うっ・・・ぐ・・・・・・」

 

「こいつ、まだ生きてやがる!」

 

「首を跳ねてやろうぜ。それを剥製にして飾ろう」

 

「いいなそれ。それじゃ――――」

 

妖怪の一人が、刀を抜く。そしてそのままジンの首を目掛けて降り下ろそうとしたその時――――刃が折れてしまった。

 

「へ?」

 

「おい何やって――――」

 

その瞬間、ジンは起き上がり、近くにいた妖怪二人を殴り飛ばした。その額には、力強い鬼の角が生えていた。

 

「お、おい! こいつ鬼じゃ――――」

 

「ウオオオオ!!」

 

ジンの叫びが、旧都に響き渡った。

 

―――――――――――

 

一方霊夢は、叫び声が聞こえた場所へと向かっていた。

 

「確かここ辺りで、ジンの声が聞こえたような気がしたんだけど・・・・・・」

 

そう呟きながら、路地裏の方へと足を運ぶ。するとそこにはガラの悪そうな妖怪数人と、ボロボロになって倒れているジンの姿があった。

 

「ジン!」

 

霊夢はジンの元に急いで駆け寄った

 

「大丈夫ジン!?」

 

霊夢は呼び掛けるが、返事は無い。どうやら意識を失っているようだった。

 

「ジン! 直ぐに医者に診せなきゃ!」

 

「その必要はないよ」

 

「誰!?」

 

「誰とは酷い挨拶だね博麗の巫女」

 

「あんたは・・・・・確か勇儀だっけ?」

 

突然現れた鬼の女性。彼女は星熊勇儀。

かつて山の四天王と呼ばれた大鬼である。

 

「覚えてくれたかい。そいつは嬉しいねぇ」

 

「悪いけど、あんたに構っている暇は無いのよ。

早くジンを医者に―――」

 

「その人妖は心配要らないよ」

 

そう言って、勇儀は持っていた酒を口に含み、そのままジンに口移しをした。

 

「ちょっと! 一体何を―――え?」

 

すると、傷口はみるみると塞がって行き、先ほど小さかった角は大きく尖っていった。

 

「萃香から話は聞いているよ。こいつは鬼の人妖で、酒を飲むと鬼になるんだって?

だったら鬼にしちまえば良い。

鬼だったら、こんな傷なんか直ぐに治るもんさ」

 

「そう、良かった・・・・・」

 

「ところで、二人はどうしてこんな所にいるんだい?」

 

「えっと、それは――――」

 

霊夢はこれまでの経緯を勇儀に話した。

 

「あっはっはっは! まさか迷子とはね!」

 

「笑い事じゃないわよ!」

 

「いや失礼。お詫びとして、案内してやるよ」

 

「え? あんた場所知ってるの?」

 

「勿論さ。だって、私が経営している旅館だよ」

 

「・・・・・・・・・・え?」

 

「だから、私が経営している旅館だよ。

最も、経営は任せっきりだけどね」

 

「・・・・・意外ね、あんたがそんな事をするなんて」

 

「なに、ただの暇潰しみたいなもんだよ。それよりも、案内してやるよ。ついてきな」

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ!」

 

勇儀はジンを担ぎ、旅館の方に歩いて行った。

霊夢もその後を急いで追うことにした。




ジンが鬼化する条件は二つあります。
一つ目は、酒(アルコール)を摂取することです。
これにより、体内に眠る鬼の因子を活性化させて、鬼になります。
二つ目は、瀕死の傷を負う事です。
瀕死になることにより、鬼の因子が生存本能によって目覚め、強制的に鬼化します。
ただし、これは正規ではなく、あくまで緊急時なので、あまり覚醒はしない設定です。

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