響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次 作:水代
5000字なんてなかったんや。
一つ言っておく。
水代は王道展開って割りと嫌いじゃない。
そして水代はまだほのぼのを諦めてはいない。
誰もいない鎮守府。
真っ暗で、空っぽで…………そして冷たい。
「…………………………」
単純な寒さの話ではない、いつもどこか感じていた温かみ、人のぬくもりとでも言うものが、最早無かった。
がらんどうの工廠、寂しげな廊下、空白の食堂、そして…………空っぽの執務室。
否。
空っぽではなかった。
暗くて一瞬気づかなかったが、確かにそこに…………一人の男がいた。
「…………司令官」
この鎮守府の提督で
男は執務室の椅子に腰かけたままこちらに気を払うこともせず黙して窓の外を見つめていた。
びゅうびゅうと、風の音が煩い。
雲の流れは早く、雲と雲の切れ間から一瞬だけ月がその姿を覗かせる。
差し込む月光、瞬間、ヴェールヌイは息を飲む。
「…………司令……官……?」
一瞬の光、そこに見えた男の横顔…………。
笑っていた。どこか、人を馬鹿にしたような笑み。
そして、男が口を開く。
「バカみたいだよな」
クソみたいな人生だった。
左遷同然に飛ばされた敵も味方もほとんどいない孤島。
けれど、ここに着てからのことを思えば、それ以前なんて本当にクソのような人生だった。
守っていこうと思っていた。
これからも守っていけると思っていた。
けれど…………現実なんてこんなものだ。
「…………高望みだったのか? ずっとこのままで、そう思っていたのは」
不満があるとすれば、ヴェルを独りのままにしていることくらい。それ以外は…………自身には何の不満も無かった。
元々前の職場に愛着など欠片も無かったので突然の左遷にも対して動揺は無かった。
そうして飛ばされたこの地で、響と出会い、そうして平々凡々な、誰もでも味わえるような人並みの幸せと言うものを知って…………。
「………………やっぱ俺は何も望むべきじゃなかったのか? 望めば壊れる、そんなこと分かってたはずなのにな」
昔からそうだった。希望を抱けば砕かれる。まるで宿命のように付きまとう、俺の業。
「今度こそ、守り抜きたかったのになあ…………」
愚痴っぽく呟く。
ヴェールヌイが聞いているが、別に構わない。
どうせこれで最後なのだから。
そう、内心で吐露し。
ふと、背後から手が回される。
この部屋にいるのは、俺と後一人だけ。
「………………………………諦めないで」
ふと呟かれた言葉。
ぎゅっ、と強まる力、押し付けられた体が震えていることに今更気づく。
「私は…………まだここにいたい」
告げられた言葉。首に伸びたヴェールヌイの腕に自身の手を重ねる。
「司令官が望まなくても、私が望む。だから、お願いだから……………………諦めないで」
口を開き、言葉を紡ごうとし、けれど声は出なかった。
なんて言えば良いのか分からなかった。
そうして、どっぷりと保たれた沈黙、それを破るのは自身の言葉だった。
「分かってるのか? すでに命令が下されているんだぞ?」
「分かってるさ…………けど、けど…………うまく言葉にできないけど…………私は、ここが良い」
さらに沈黙。今度の沈黙は一分以上に渡って続き…………。
「……………………………………………………はあ」
ため息。
「…………………………死ぬ気で戦え、けど死ぬな…………それが条件だ」
「……………………ああ、了解だよ!」
折れたのは、自身だった。
回された腕の力が強まる。
ぎゅっ、ぎゅっ、とヴェールヌイのか細い腕が自身を強く締め付ける。
「ありがとう、司令官」
耳元から聞こえるヴェールヌイの呟きに苦笑する。
「バカヤロウ…………」
こっちの台詞だよ。
電話が鳴る。
その音に、途中だった作戦立案書を書く手を止めて受話器を取る。
「私だが?」
『どうも、中将殿。先ほどぶりですね』
聞こえてきた彼の声に、僅かに眉をひそめる。
一体何の用事だろうか?
避難に何か不備が出たのか?
けれどそんな心配は杞憂だと言わんばかりに、彼が続ける。
『現時点を持って本官と駆逐艦ヴェールヌイ以外の避難を完了したことを報告します』
「そうか…………なら、貴官と駆逐艦ヴェールヌイも早く帰還するように」
用件は終わり、と電話を切ろうとして…………。
『一つ尋ねたいことがあるのですが』
そんな言葉に手が止まる。
「何かな?」
『中将殿は一体どうやって三十八と言う敵を打倒するつもりでしょうか?』
「ふむ…………まあ良い、答えよう。東の総司令殿に救援を要請した。現在十九隻の艦娘を率いてこちらにやってきている。こちらも現在南の提督たち全員を招集している。まだ十三隻しかないが、最終的に三十隻を超える予定となっている。そして然る後、東方と南方から敵を挟み撃ちにし、これを殲滅する予定だ」
現状のモアベターを探すならこれしかなかった。
と言うか、他の方法では損耗が大きすぎる。一撃限りの大激戦となるが、それでも小規模に当てて各個撃破されるよりは犠牲は少ないと思っている。
『では、もし…………もし、敵をこの鎮守府海域で足止めできたなら、その時は鎮守府の存続を認めていただけますか?』
「……………………何?」
『中将殿としても、折角拡大した戦線を引き下げるのは本意ではないと思いますが?』
「貴官は寝ぼけているのか? 三十八隻もの大艦隊を? 貴官のところで足止めする? 駆逐艦一隻しかない鎮守府が?」
『…………勝算はあります。それに上手く事を運べば、敵が分断、各個撃破できるかもしれません』
「却下だ、話にならん。そんな博打染みた話に付き合う道理が無い」
『だが、中将殿のやり方では犠牲が出る…………それは中将殿と言えど厭うことでは?』
もし、もしも本当に敵を各個撃破できるなら、たった一人の轟沈すら出すことなくこの状況を乗り切れるかもしれない…………だが、本当に信じていいのか?
勝手に期待して、勝手に裏切られた気分になって、そして実際に彼は遅くなりはしたが期待通りの言葉をくれた。なのにそれを信じていいのか分からなくなっている。
「………………………………………………………………勝算は?」
『五割…………いえ、六割でしょうか』
「島風を送る、八割まで引き上げろ」
『……………………それなら、うちの鎮守府のものを戻してくれるとありがたいのですが』
「本人たちの希望を聞いておく」
『了解です』
「ただし、基本的に私は失敗を前提に動く。十分な戦力が召集されるまでは動かない」
『十分です。ああ、それと逃げてきた艦はどうしましょうか?』
「私の権限で許す、使え」
『感謝します』
「………………………………期待させてもらおう」
電話を切る。しばし目を瞑り、再度開く。
作戦立案書を見る。
某鎮守府の破棄
訂正線を引き、書き直す。
某鎮守府海域にて敵の足止め
全艦隊速やかに目標海域を目指すべし
「………………頼んだよ、島風」
こちらに戻ってきてすぐに再度向こうへと向かってもらった秘書艦のことを思い。
「………………母さん、雷ちゃん、頑張るから」
そう呟いた。
「ヴェル、海域地図。それと潮流データも…………ああ、それに天候データもいる。くそっ、急げ急げ!」
鎮守府の一室。執務室は大忙しだった。
「司令官、敵の情報に海域情報持ってきたよ」
そこにいたのは一組の男女。
「残り時間は…………くそ、マジで時間がねえ!!」
「焦らず行こう、絶対に失敗できない」
忙しそうに机に広げた地図に何かを書きこむ男、と言うか自身。
慌しく机と本棚を行ったりきたりしている少女、ヴェールヌイ。
「…………よし、夜だったのが幸いした、ヴェルでもなんとかできそうだ」
「けど、夜間の潜水艦は厄介極まりないよ? さすがの私でも倒すのは…………」
「大丈夫だ、そっちはすでに考えてある…………それよりも問題は重巡洋艦だ」
夜戦の重巡洋艦は下手すれば戦艦以上に厄介だ。
「…………ったく、考えれば考えるほど問題が山積みだな」
「でも………………不思議と楽しそうだね、司令官」
そんなヴェルの言葉に、自覚する。
今、自分が笑っていることに。
「……………………こういうのは血、なのかねえ」
厄介ごとに巻き込まれるところも含めて。
ふと腕時計で時間を確かめる、もう時間は少ない。
「時間が無い…………ヴェル、そろそろ行動するぞ」
「
そうして互いに席を立ち上がったその時。
「とーちゃーく! 駆逐艦島風最速で参上しましたよぉ!」
扉が開かれると同時に一人の少女が入ってくる。
見知った顔だ、と言うかさっきも会った。
「島風…………? どうしてここに」
「俺が要請した…………協力感謝する、駆逐艦島風」
協力、と言う言葉にヴェールヌイが少しだけ驚いた様子を見せる。
「………………良いのかい? 私たちの我が侭につき合わせて」
「構いませんよぉ、私は今でも響のことを仲間だと思ってますから」
そんな島風の言葉に、ヴェールヌイがしばし黙り…………。
「
いい加減…………ロシア語のタイトル考えるのが難しくなってきた。
と言うか、ロシア語と意味は簡単なんだけど、発音を探すのが難しい。
カタカナで発音書いてくれてるサイト探すの大変なんだ…………。
でも今のタイトル形式けっこう気に入ってるから、あんまり変えたくないんだよなあ。