響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次 作:水代
また余計な展開付け足して、話伸びてしまった(
ラスト一話は明日更新(予定)。
つか、今回でこのヌイヌイ二次のラスボス倒したから、四章は平和(笑)になる予定。
それを防げたのは奇跡と呼んでも差し支えないだろう。
否、完全に防げたわけではないのだが、即死級の砲撃を着弾直前に打ち落とし、小破に抑えたのだから奇跡と呼んでも差し支えないだろう。
それでもその一撃は、命中直前だった電とそれを撃ち落した自身に小さくは無いダメージを与えた。
「響! 電!」
暁が心配そうにこちらを見てくるが、問題無いと返す。
航行自体に問題は無い、それでもダメージを負ったことには代わりは無い。
そう言う意味では、暁だって心配するのも当然なのだが…………今の状況がそれを許さない。
「まだ動ける…………だから、立ち止まっていられない」
自身たちの向こうに敵がいる。こちらを倒そうとギラギラと視線を光らせた獰猛な敵がいる。
だからまだ止まれない、動かなければならない、戦わなければ生き残れない。
「あと少しで日が暮れる…………だから、それまでなんとか繋ぐんだ」
大破した艦は夜戦に参加できない。簡単に言えば、索敵能力などの低下により、相手を捉えることすらできないし、そもそも禄な攻撃もできないのに無闇に相手に近づいても死ににいくようなものだ。
現在自身が小破、暁が掠り傷、電が小破。まだ全員夜戦で十分な力を発揮できる状態だ。
逆に相手は、レ級エリートが中破、レ級一体は大破、もう一体は無傷、軽巡ヘ級フラグシップが掠り傷、駆逐イ級エリートの一体が大破、もう一体は小破。
現状、夜戦で戦える戦力は、こちらが三、相手が四…………まだ不利だ。
「…………近づいて、雷撃戦をする。そうしたら反転して日が暮れるまで逃げるよ」
暁と電が了解と言って頷く。
せめて相手の軽巡と駆逐をここで落としておきたい。
相手の散発的な砲撃を回避しつつ、距離を詰めていく。
敵軽巡や駆逐もそれが好都合とばかりにこちらと距離を詰め、逆に戦艦レ級たちは動かない。
実に好都合。後は…………。
「雷撃、発射!」
互いの魚雷が、どこまで相手にダメージを与えられるか、だ。
白い軌跡が交叉する。自身へと向かってくる雷跡を見、予測し、射線上から逃れる。
着弾までの僅か数秒、それができるだけの練度は積んでいると自負している。
だがそれができない艦も確かにいることを、失念していた。
「キャアァ」
悲鳴、同時に轟音。魚雷の爆発に飲み込まれた仲間…………電の姿に、目を見開く。
「電!」
駆け寄り、すぐ様抱きとめると、電が大丈夫と返してくる。
「まだ中破程度なのです…………まだ動けるのですよ」
「…………鎮守府に戻ったほうが良い。そんな怪我で夜戦なんてしたら…………」
苦言を呈する自身、けれど電が苦笑して。
「響…………私情に走っちゃダメなのですよ、響は私たちの旗艦なのです」
確かに、中破ならばまだ夜戦で動ける。戦力的なことを考えればまだ戦える電を下げるべきではないことも分かっている。
「…………けど」
それでも、そう呟く自身に、電が首を横に振る。暁がどうする、と視線で聞いてくる。
数秒悩み…………けれど、どうやっても電は首を縦には振らないだろうことが分かってしまうから。
「…………続行する、ただし電は私の傍にいて、なるべく離れないように」
そうすれば、いざと言う時守れるから。
そんな自身の思いを見透かしてか電が数秒黙りこみ…………了解、と頷いた。
* * *
夜間戦闘においてもっとも重要なのが、相手の位置だろう。
基本的に夜戦は先手必勝。必殺の距離からの一撃の繰り出しあい故に、先に手を出せば勝てると言う状況が多い。
だからこそ、相手の位置と言うのは何よりも重要だ。そして同時に、敵に味方の位置を知れられると言うのは何よりも恐ろしいことだ。
「…………本当にやるのですか?」
「ああ、思いきりやって欲しい」
鎮守府から出てすぐに港で、目を覚ましたらしい中将殿がそう言う。
三日も眠りっぱなしで、相当に空腹だったらしく、先ほどから自身が渡した携帯食を次から次へと空にしていく。
そんな様子を見て、よく食べる、とその健啖ぶりに少し呆れながらも手元のコードを繋いでいく。
「断線時の配線なんて良く覚えているものだね」
「まあ誰かさんのお陰で、こんな孤島に来ましたから、いざと言う時の備えは必要でしょ?」
暗にあんたのせいだよ、と言いながらジト目で見つめるが、カラカラと笑って流される。
本当に肝の据わった人だ、と思いながら最後のコードを繋ぎ…………。
「最後に聞きますが、本当に良いんですね?」
そう尋ねる。中将殿もあっけからんとした様子から一転、真剣な表情で頷き。
「ああ、やれ」
そう答える。それが最後の答え。そうして自身は。
「
スイッチを押した。
* * *
呆気に取られていた。
自分だけではない、暁も電も、目を見開き、硬直していた。
どころか、深海棲艦たちさえもその動きを止めていた。
海が光っていた。
一体何を言っているのかと言われても仕方ないが、海の底が青白く光を放ち、深海棲艦たちの足元を照らしていた。
後方に下がっていた自分たちからもはっきりとその位置が見える。
それに気づいた時、それが誰の仕業なのか、理解した気がする。
「
光は一分ほど続き、やがて消える。深海棲艦は突如の事態に警戒し、動きは無い。
逆にこちらは誰がやったのか、察することができたので、さほどの混乱も無く動くことができる。
動かない敵へ、一気に距離を詰めて行く。
正直先ほどの光のせいで、余計に視界が悪くなった感じはある。だが敵の位置が分かっているのだ、さほど問題でもない。
「距離二百、攻撃用意」
敵接近のためここからは口を閉ざす必要がある、故にこれが最後の号令だ。
接敵まで残り五秒。
「私の砲撃と同時に、全艦
四秒、三秒と時間が過ぎ。
接敵、もはや白兵戦の距離と言っても良いほどの近さ。
故に最初は………………。
一番近くにいた小破止まりだった駆逐イ級を
声すら上げることなく、音も立てず、駆逐イ級が吹き飛び、道が出来る…………敵旗艦へと続く道が。
砲撃を使わなかったため、こちらに気づくのが一瞬遅れた敵たちが自身たちを発見するが、もう遅い。
最早目の前まで接近していた敵旗艦に向けて砲を構え――――
「
――――右手に持った砲を敵旗艦、戦艦レ級エリートに押し付け引き金を引く。さらに右の砲が弾を撃ちつくすと同時に、左に持った砲をさらに押し付け、引き金を引く。
ダダダダダダダダダダダ、と絶え間ない連続音が響く。
そんな自身の砲撃を合図に、暁と電も砲撃も開始される。
最初の駆逐イ級の排除から僅か数秒の遅れで、敵が動き始める。だがその数秒で敵旗艦、戦艦レ級エリートは完全に戦闘不能になっていた。もう放って置けば勝手に撃沈してくれるだろう。
「鎮守府まで下がるよ!」
敵旗艦を撃ち落したなら、一旦下がる。敵の密集したこの距離は正直危険極まりない。
幸いと言うべきか、敵は先ほどの光を警戒して、動こうとしない。ならばこのチャンスを生かすべきだ。
そうして自身の号令と共に、暁も電も撤退を開始しようとして…………。
気づいてしまう、戦艦レ級が砲撃をしようとしていることに。
その対象は…………電。
だが電は撤退に気を取られ、気づいていない。
電はすでに中破している。戦艦の一撃を、しかもこんな近距離で食らえば撃沈は免れない。
ダメコンを積んでいたとしても大破状態、そんな電を敵が目の前でみすみす逃すはずも無い。
死ぬ…………電が…………死んでしまう。
また…………自分の…………目の前で。
『守ってください、今度こそ』
ダメだ!!!
瞬間、体が動く。
同時にレ級の砲が火を噴く。
電の前に立つ、同時に自身の体が四散するかと錯覚するほどの衝撃に襲われる。
「響っ!!!」
電がこちらを見て、目を見開く。
「いな……づま…………下がるんだ!」
最後の力を振り絞り、叫ぶ。
全身に感じる虚脱感。力が入らない。大破したか、と内心で思う。恐らくダメコンで即死を免れたと言ったところか。自分でいつ発動したのかどうかうろ覚えだが、死んでないと言うことは多分そう言うこと。
けれどもうダメコンは無い。次食らえば確実に死ぬ。
逃げないと、そう思うのに体に力が入らない。思うように動かない。けれど敵へ迫ってきていて。
これは、無理かもしれない。
そんな諦観の念が過ぎった、その時。
見た、見てしまった。軽巡ヘ級がこちらへと砲を向けるのを。
軽巡洋艦とは言え、夜戦でこの距離、しかもこちらは駆逐艦。
終わった。
悟った。これは無理だ、いくらなんでもここから生き残れる芽などもう無い。
顔が引き攣るのを自覚する、けれど、まあいいか、とも思う。
少なくとも、姉妹二人は守れた。
今度こそは、守れた。
まだ自分が響だった頃、思っていたことがある。
もし次に仲間たちが沈むようなことがあるなら…………まず最初に沈むのは自分であって欲しい。
それはある意味諦観だ。戦う以上はいつか死ぬ。そんな当たり前のことを当たり前として受け入れていた頃の自分。
そんな自分だったのだ、仲間を守って死ねるなら、それはそれで良い終わり方なのだと思う。
二度目の衝撃。
全身がバラバラになっていくような感覚。
ああ、終わったのだ、と理解した。
自分はここで死ぬのだと、そう理解して…………何故だか恐怖した。
あれ? と自分で疑問に思う。自分はもう死んで良いと思っていたはずなのに。
仲間を守って死ぬ、名誉の死だ。何より姉妹たちの死を目の当たりにしながら最後まで生き残ってしまった自分には最上級の死に方ではないだろうか。
少なくとも、満足な死に方だと思った、はずなのに。
何でこんなにも嫌なのだろう。
どうしてこんなにも否定しているのだろう。
何がこんなにも怖いのだろう。
分からない、分からない、分からない。
考えて分からず、けれど与えられた時間はもう無い。
沈んでいく意識の中、けれど最後にふと視界の中に映るもの。
沈んでいく敵の姿、そしてそこにいるのは…………。
「…………しま……かぜ……?」
いるはずの無い、彼女の秘書艦で。
必死そうな表情で、自身に何かを叫んでいる。けれどもう何も聞こえない。
「ごめん…………しま、かぜ」
そんな顔をさせてしまったことに、少しだけ罪悪感を刺激されながら。
直後、猛烈な睡魔に襲われ…………ヴェールヌイの意識は、闇の飲まれていった。
* * *
走った。走って、走って、走って。
それでもそこは遠かった。
遠くから聞こえる砲撃の音。すでに戦闘が始まっているのだと気づき、仲間を置き去りに走った。
彼女の一番は彼女の司令官だ。それは変わらない不動の立ち居地。
けれどだからと言って、移動してしまった昔の仲間が大切じゃないわけでも無いのだ。
むしろ別れ方が別れ方だっただけに、ずっと心配していた。
そんな彼女が戦っている場所を少しでも早くたどりつきたい。
自分たちのせいで彼女たちに苦労を押し付けてしまっているのだ、その負い目がある部分も確かにある。
だから走った。誰よりも早く戦場へとたどり着ける彼女だからこそ、仲間すら置き去りにして走ったのだ。
そうしてたどり着いた場所で見たものは…………。
沈んでいく、昔の仲間の姿だった。
「響! 響ィ!!!」
叫ぶ、仲間の名前を、叫ぶ。
けれど、焦点の合わない目でこちらを見ながら、響は沈んでいく。
「っく、この!」
魚雷を発射し、再度響を狙おうとしてた敵の軽巡を即座に落とす。
「…………しま……かぜ……?」
そうしていると、こちらに気づいたのか、ぼんやりとした目でこちらを見ながら響が自身の名前を呼ぶ。
「響! しっかりしなさい! 響!」
何度と無く、名前を呼ぶ、けれど自身の声に何の反応も示すことも無く、ぼんやりとした表情のまま――――
「ごめん…………しま、かぜ」
――――何に対しての謝罪なのか、分からない、けれど響はそう呟き。
海へと消えていった。
* * *
「来た…………来た!!!」
突如、中将殿が立ち上がって叫ぶ。
その口元は吊り上っている、それだけに恐らく凶報ではない、吉報のほうだろうと認識する。
と、同時に、このタイミング、そしてあの様子からすると。
「五日間、ここを守れ…………その命令、完了しましたか?」
恐らくそれに関することだろうと察し尋ねると、中将殿が嗤い、答える。
「ああ、良くやった、本当に、良くやってくれた」
海の向こう側で砲撃の音が響く。
ヴェールヌイは、暁は、電は大丈夫なのだろうか。
そんな自身の心配を他所に、中将殿が呟く。
「チェックメイト…………だ、亡霊ども。言っただろ? この私を、舐めるなと!」
この世に明けぬ夜は無し。
The night is long that never finds the day