織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

8 / 20
感想にあったようにアインクラッドについてですが、この先の展望でもっと出てきます。他のSAOキャラがでるかもしれないし、キリトのトラウマ等も出るかもしれません。あまりネタバレしたくないのです・・・ご期待は感謝なのですが、まだ物語は序盤ですよ~生ぬるい目で見てくださると嬉しいです。


美濃内乱~蝮の危機

尾張の統一からまもなく、五右衛門が情報収集から戻ってきた。

 

 

 

「美濃の義龍殿、謀反!」

 

 

 

この言葉に清州城は揺れた。同盟を支持していた道三に義龍他美濃三人衆を含む家臣らは反旗を翻したのだ。

世に言う「長良川の戦い」である。

道三に与する兵力と義龍の兵力の差は歴然・・・織田家では援軍を送るか否かで家臣達は論議していた。

もちろん信奈は反対。今動けば国境付近に集結している今川が尾張を蹂躙するのは明らかであったからだ。

しかし信奈を含む家臣団の本心は援軍を出したいのだ。

このどうにもならない状況に時間だけは過ぎていく・・・。

信奈はそのまま部屋に閉じこもってしまった。

 

 

長秀「このままでは時を浪費するだけです・・・20点」

 

勝家「しかし・・・」

 

 

誰にもどうすることもできないのだ。キリトも力になれないもどかしさに苛立ちを覚えていた。

 

自分の関わった人は絶対に死なせたくない!これはキリトの心情だった。過去に失って後悔した。もしかしたら道三が持ちこたえ、助かるかもしれない。史実であるならばまだしも、ここはまたちがう世界。いうなればパラレルワールドだ。ただし史実通りならば道三は討ち死にする。もし討ち死にしたら信奈はまた父親を失うことになる。

家臣達は祈ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

~美濃の奥地~斎藤道三陣営

 

道三「どれだけ生き延びた?」

 

十兵衛「わかりません・・・ここには300程かと・・・」

 

道三「そうか・・・十兵衛、信奈ちゃんにこれを届けてくれまいか?」

 

 

道三は書状をしたため、十兵衛に自分の娘を預けた。このとき十兵衛は、道三の覚悟を悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州城~広間

 

 

十兵衛「道三様より書状を預かってまいりました。」

 

 

その書状には、道三の娘「帰蝶」を信奈に託すということ、今後の信奈の行く末を冥府から見守るというような内容が認められていた。

 

 

信奈「それで!状況は!?」

 

十兵衛「道三様はどうにか逃げ延びておりますが・・・時間の問題かと・・・」

 

信奈「美濃に!美濃に援軍を・・・うぅ・・・・」

 

 

信奈が命令を下そうとすると、勝家はそれを当て身で抑え、そのまま信奈は気を失った。

もう猶予はない。今援軍を出しても徒労に終わるかもしれない。

 

 

この時キリトは覚悟を決めた。・・・そう、あのときと同じだ。

 

 

 

 

 

 

キリト「フフフ・・・はははははははは!!!!!」

 

勝家「キ・・・キリト殿!?」

 

キリト「あんたら・・・薄情だな。ずっと見てきたけどさ、誰も動こうとしない。俺はもう降りるよ。織田家には愛想が尽きた。こうして信奈の意思も尾張の国ひとつの為に揉み消すんだからな!」

 

長秀「な・・何言って・・・」

 

キリト「うんざりなんだよ。こんな国、俺はもう出る。そうだ十兵衛、黒母衣衆はあんたに任せるよ。実力も折り紙つきだ・・・・じゃあ、世話になったな。あとはせいぜい今川からあんたらの大事な国を守るんだな!」

 

犬千代「・・・・キリト、待つ」

 

十兵衛「待つですよ!!」

 

キリト「どけよ・・・」

 

 

止めようとする犬千代と十兵衛の腕を振り飛ばし、キリトは一人城を出ていった。突然の出来事に家臣達は呆然としていた。

黒母衣衆の面々も後を追えずにいた。

 

 

 

これでいい。悪を演じるのはもう慣れている。自分の出奔によって黒母衣衆の皆も、家臣も、命令無視で咎められることはない。

キリトは道三を見捨てることに耐えられなかった。絶対に死なせない。その気持ちだけで美濃に向かっていた。

 

しかしただ一人、五右衛門だけはキリトについてきた。一蓮托生、どこまででもついていくというのだ。何度断っても五右衛門はついてきた。

 

 

キリト「ったく・・・お前、変わってるよな。」

 

五右衛門「キリト氏にいわれたくないでごじゃる」

 

キリト「よし!イカダを用意してくれ!出来るだけ多くだ!囮につかう」

 

五右衛門「承知!」

 

 

正直キリト一人では道三を一人逃がすのに精いっぱいだった。しかし川並衆の面々は無茶な指示もなんなく快諾し、動いてくれた。これも五右衛門のおかげといえる。もはや道三の兵もほとんど残っていないであろう。でも一人でも多く救えると思うと、五右衛門達の存在は大きかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

道三はもはや追いつめられていた。数十人の兵とともにそのまま討ち死にする覚悟はできていた。

死のうと思っても、付き従ってきた兵が自分の身で庇ってくれていた。自分はなんて幸せ者なんだろうか・・・しかし、その厚意を無にしなければならないのは無念だった。

 

道三「皆の者!これが最後の突撃ぞ!!」

 

 

 

その時だった。道三の目の前に黒い服の少年が現れたのだ。

 

 

キリト「はぁっはぁっ!間に合った!!間一髪だ!!!」

 

道三「なんと!!!!」

 

キリト「助けにきた!」

 

道三「馬鹿もんがぁ!!!小僧!何しに参った!!」

 

キリト「だから助けにきたんだって・・・」

 

 

 

道三はキリトに喝を入れた。信奈をわかってやれる唯一の人間が死地に飛び込み、死にかけの老人とともに戦おうとしている。それは許せなかった。

 

 

道三「其方が死んだら誰が信奈ちゃんをわかってやれる!?」

 

キリト「死ぬ為に来たんじゃない!あんたと生き延びる為にきたんだよ!!二度も父親を亡くす信奈の気持ちを考えたら、あんたには死んで欲しくないんだよ!」

 

道三「くっ・・・・・」

 

キリト「五右衛門!道三達をそっちに!俺はこいつらの相手をする!」

 

五右衛門「承知!キリト氏・・・ご武運を!」

 

 

 

この数を相手にキリトはどこまで持ちこたえられるのか・・・しかし迷っている暇はなかった。

 

 

キリト「くっ・・・・・・覚悟を決めろよ・・・俺!!!!」

 

 

敵はどんどんと迫ってきていた。キリトは未だ躊躇していた。中途半端な戦い方ではきっと無理だとわかっていた。しかし躊躇してしまう。このまま終わるのか?いや、終われない!

 

 

キリト「・・・・・・ジ・イクリプス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五右衛門と川並衆は暗い夜の闇を利用し、筏を徐々に少しずつ流し始めた。

この筏が見つかったらアウトだ。

川並衆も覚悟を決めていた。敵兵にはまだ気付かれていない。

 

 

道三「おい・・・キリト殿は?」

 

五右衛門「・・・・・」

 

道三「おい・・・・」

 

五右衛門「きっと・・・大丈夫にごじゃる・・・」

 

 

五右衛門のその言葉の意味は理解できなかった。しかし道三はキリトの無事は確信できた。別れ際の目は死んでいなかった。生きようとしている目だったのだ。

筏はどんどん進んでいた。このまま見つからずに辿りつけば脱出できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州城~信奈の部屋

 

 

「うぅ・・・ん」

 

信奈は目を覚ますと、自分の部屋で寝ていたことに気付いた。

そこには家臣の面々が神妙な面持ちで信奈を見つめていたのだ。

 

信奈「美濃は?マムシは無事なの!?」

 

「「「・・・・・」」」

 

 

信奈は一番信頼している人の顔を探した。

 

 

信奈「キリト・・・ねえ!キリトは?」

 

長秀「・・・・・出奔しました。」

 

信奈「!?」

 

犬千代「・・・・とめられなかった」

 

信奈「あんた達何言って・・・」

 

勝家「面目次第もございません・・・」

 

信奈「・・・・・・・・・嘘よ。」

 

長秀「・・・嘘じゃありません。」

 

信奈「そうじゃない!出奔を口実に美濃にいったのよ!!アイツは!」

 

 

「「「えぇ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~長良川~尾張国境付近

 

 

五右衛門「・・・もう少しでごじゃる!」

 

道三「いや・・・あれを見よ!」

 

川並A「あの影と明かりは・・・」

 

五右衛門「向こう岸の兵にみつかったでごじゃる!!」

 

川並B「いそげ!!もうすぐだ!!」

 

 

 

そんな時だった。五右衛門の筏にキリトがしがみついていた。

 

 

五右衛門「キリト氏!!」

 

キリト「はぁっ!はぁっ!あいつらは俺がやる!五右衛門!寄せてくれ!!」

 

五右衛門「しかし・・・!」

 

キリト「はぁっはぁっ・・ふぅっふぅっ・・・構わない!早く!」

 

五右衛門「・・・承知!」

 

 

筏を向こう岸に寄せていくと、キリトはジャンプして岸に飛び乗り、休む間もなく敵兵に向かって駆けていった。

 

 

五右衛門「すぐに援護にいくでござる!まってりゅでごじゃじゃりゅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして尾張に到着。道三とのこった兵、川並衆はなんとか生き延びることができた。

そして唐着地点には信奈の率いる兵が待っていた。

 

信奈「マムシ!!無事だったのね!!!!キリトは!?」

 

道三「キリト殿は・・」

 

五右衛門「未だ戦闘中にござる・・・」

 

信奈「キリトを援護するわよ!!」

 

 

キリト「その必要はないよ・・・」

 

 

信奈「キリト!!!!!」

 

 

信奈はキリトの姿を確認すると、即座に駆け寄った。

立ちすくむキリトに信奈は抱きつき

 

信奈「出奔なんて認めないんだから!!!勝手なことして!!!」

 

キリト「・・・・・・・・」

 

 

そのとき、信奈は気付いた。キリトの目が普通ではなかったことに・・・そして身体に付いた沢山の血に・・・

キリトはその場に何も言わず座り込んだ。

 

信奈はすぐにその血がなんなのかわかった。キリトの怪我によるものではない。それは返り血だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでキリトのことを「殺さずの浅野」と呼んでいた人達がいた。

その強さは無双を誇り、おそらく天下一の剣豪であろうと称賛しながら、それと同時に人を殺せない意気地の無い武将と蔑んでいたのだ。

戦場で慈悲を配る、乱世には相応しくない武人もどき。そう言われていた。

しかしその慈悲深さに敵兵は敬意を表していた。それがキリトの良さであり、つよさであると織田家の家臣たちは尊敬してきた。

 

今回キリトは織田家を捨て、自らを悪とした上で人を斬った。自分の心情を捨て、自分の心情を貫いた。

それが何を意味するのか・・・・信奈は言葉を失っていた。自分の我儘のために大切な人は大切なものを捨てて、自分なんかの為に汚れてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして無慈悲にも賽は投げられる・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「今川軍!尾張に侵入!!!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。