織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

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今回はキリト達の日常を描いてみます。


日常

 

 

ね「あにさまー!あにさまぁー!」

 

 

庭で犬千代と剣術の稽古をしていると、義妹のねねがキリトを呼びながら駆け寄ってきた。

ねねはキリトと出会って以来本当によく懐き、キリトもねねをかわいがっていた。

 

 

ね「今日こそ是清さんの「おちこち」がたべたいのでござる!」

 

キ「おちこちかぁ・・・」

 

 

「おちこち」とは、粒入りの羊羹を村雨(餡に砂糖と粉類を合わせ、フルイなどでそぼろ状に出したものを蒸したお菓子)ではさんだ清州の名物菓子である。ういろうよりも遥かに高価で、庶民には食べられないようなスイーツだ。

キリトは出世の際にねねに美味しいものを一つごちそうするという約束をしていたのだが、銘菓の店・是清は「予約無しでは売れない」という理由で売らず、予約を申し入れてもそれを受けてくれないのだ。

 

 

キ「仕方ない・・・信奈に頼んでみるかぁ・・・」

 

犬「・・・・・それがいい。犬千代も食べたい。」

 

 

信奈を頼るのは気が引けていた。彼女に恩を着せるときっとその後が大変なことになると思っていたからであった。しかしかわいい妹との約束をはやく果たしてあげたいという想いも強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信奈「いいわよ?」

 

キ「まじで?」

 

信奈「そのかわり・・・・」

 

キ「・・・・・・ヤハリカ・・・・」

 

 

信奈はあっさりと承諾したが、予想通りの「そのかわり」条件があった。

 

 

信奈「今日一日ふたりっきりであたしに付き合いなさい!」

 

キ「え・・・」

 

信奈「何よ・・・文句あるの?」

 

キ「・・・・・ないです。」ションボリ

 

信奈「それじゃ、いくわよ!」

 

 

嫌な予感はしてたが、それで叶うのなら・・・と、キリトは一日信奈に付き合うことにした。

 

 

 

予想に反して信奈は普通に町を歩いていた。しかも普通の着物でしっかりと着こなしているのだ。キリトはもっと激しいものを予想していた。流鏑馬とか鷹狩とか部屋で延々としゃべるとか・・・しかし大人しくあるく信奈にすこし拍子抜けしていたのだ。

 

 

キ「なぁ信奈・・・?」

 

信奈「なぁに?」

 

キ「どこいくんだ?」

 

信奈「内緒!」

 

犬「・・・・・・」ジー

 

信奈「ちょ・・・犬千代はこなくていいわよ!」

 

犬「・・・・・あやしい」

 

信奈「あ・・怪しくなんかないわよ!ほら、あそこのお団子買ってきて!」

 

 

信奈は犬千代にお金を渡し、団子を10本買いにいかせ、キリトを引っ張って建物の陰に隠れて進んでいった。

 

 

信奈「もう・・・二人っきりっていったでしょ!?」

 

キ「知らないよ・・・。ついてきたんだから仕方ないだろ?」

 

 

頬を膨らませた信奈はキリトを引っ張りながらどんどんと進んでいった。

しかし犬千代の嗅覚は侮れない。そこで信奈は南蛮渡来の香水を自分とキリトに付けて、その嗅覚を欺く策にでた。

 

 

信奈「はぁ・・・はぁ・・・あとは・・・五右衛門かしら・・・」

 

キ「五右衛門なら川並衆のとこだよ。」

 

信奈「ほんと!?・・・ヨカッタ」ホッ

 

キ「で、どこいくんだよ?」

 

信奈「いいところよっ!」

 

 

信奈はキリトの手を引き、どんどんと町のはずれに向かっていった。そして町をでた先の丘を登っていく。

 

 

信奈「ほら!見て!!」

 

キ「おぉ~~~~」

 

 

たどり着いた丘の上は、清州の町が見渡せる場所だった。清州の城を中心に、清州の町が広がっている。

 

 

信奈「あたしはあの民達を守れるかしら・・・?」

 

 

ふと真面目な表情をしている信奈にキリトは戸惑った。ここは変なことを言えない。

 

 

キ「守るんじゃなくて導くんだろ?」

 

信奈「・・・・・・」

 

キ「今信奈についていける奴って数えるくらいしかいないだろ?でも、信奈が天下に近づけば近づくほど、その道に導かれていく。」

 

信奈「守るだけじゃ・・・ないのよね。」

 

キ「そうだな。」

 

信奈「・・・ここはね、あたしの爺とよく来てたの。」

 

キ「平手さんだっけ?」

 

信奈「うん。その人に「大人になったらこの町をもっと豊かにする」って言ってたんだ。」

 

キ「あぁ。」

 

信奈「でもあたしの【うつけ】を諌める為に死んだの・・・。」

 

 

 

平手政秀・・・史実ならば信長は政秀の死後、自分の行動に後悔してそれを改めた後、その霊を鎮めるために寺を建てたというエピソードがあったが、この信奈は改めている様子はない。

 

 

信奈「あたしが好きになった人は、みんなすぐ死んじゃうのよ・・・。」

 

キ「・・・・・そうなのか」

 

信奈「・・・・・・・・・」モゴモゴ

 

キ「何かいったか?」

 

信奈「な・・・なんでもないわよ!!」

 

 

顔を真っ赤にしてるのがバレないように信奈は顔を背け、両手で頬を抑えていた。信奈は自分でもよくわからないくらいキリトを気にかけていた。それこそ周りの人間がわかるくらいに。

それは理屈では語れないような想いであり、本人もそれに気付かない初めて感じている感情だったのだ。

 

 

キリトは別のことを考えていた。

 

好きになった人はすぐ死ぬ・・・また信奈と自分を重ねていた。

「離れていくのなら近付かない」そんなことを考えていた時期もあった。しかし今は違う。

たくさんの仲間と触れあっている中、その温もりを感じ、それが心地よいのだ。戦でもその人達を守りぬきたいと考えていた。

 

「キリト様ーーー!」

 

 

遠くからキリトを呼ぶ声が聞こえた。

黒母衣衆の成政が犬千代とともにキリト達を探していて駆けつけたのだ。犬千代の元には黄母衣衆の池田恒興もいた。

 

 

成政「よかったーここにいましたか。」

 

犬「・・・・・・もう逃がさない」

 

 

犬千代はキリトの袖を掴んで信奈を睨んでいた。

 

 

信奈「ちょ・・・ちょっと犬千代!今はあたしがキリトと一緒にいる時間なの!」

 

犬「・・・・・そんなの知らない」

 

 

こんなにツンツンな犬千代は初めてだ。

 

 

信奈「ふぅん・・・犬千代・・・あたしに刃向うの?」

 

犬「・・・・・・ふん」

 

 

犬千代にとってはキリトは自分の兄のような存在だった。それをねねに取られるのは許せても、信奈に取られるのはいつもモヤモヤしていた。

しょっちゅう主君に従わされているキリトをどうにかしたいというのもあった。むしろ犬千代の出番を増やしたい(ry

 

 

キ「よし・・・成政・・・今のうちにいくぞ!」ビューーーン

 

成政「え!?・・・あ、はい!!」ビューーーン

 

信奈「ちょ・・ちょっとーーーー!!!!キーリトーーーー!!!!!」アウアウ

 

犬「・・・・・・・姫様、追う!」ビューン

 

信奈「わかってるわよ!!!」ビューン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

難を逃れたキリトは町で新たな刺客に立ちはだかれていた。万千代こと丹羽長秀採点お姉さまの登場である。

彼女は信奈がキリトに入れ込むのを良しとしないうちの一人である。

反信奈派に信奈がやたらとキリトに入れ込む様を付けこまれるのを恐れていたのだ。今そこに付けこまれるのは万千代様にとっては0点以下である。

 

 

長秀「キリトさん、姫様とどこに行ってらしたのですか?」

 

キ「あぁ、あの丘だよ。」

 

長秀「・・・・そう・・・ですか。」

 

キ「もうすぐ信奈も帰ってくるよ。」

 

長秀「置いてきたのですか!?0点です!!!貴方は黒母衣衆の頭領なのですよ!?自覚が足りません!!」

 

成政「犬千代様と恒興がお供してますから大丈夫ですよ。」

 

 

成政の言葉にホッと胸を撫で下ろしたが、さすがに飽きれてしまう。

以前から先の理由をキリトに話し、信奈との接触を諌めていたが、信奈がどうにも聞かない為もう半ばあきらめていた。そしてキリトの天然ジゴロで唐変木な性格にも懸念を抱いていた。

かといって信奈を理解できる唯一の人物、そしてかつて織田家最強といわれた勝家を越える武将として評価しているのも確かだ。

 

 

長秀「とにかく、今日はもうお帰りなさい。姫様には私からお話しておきます。」

 

キ「あぁ、そうさせてもらうよ。帰ってねねと昼寝でもするかぁ~・・・」

 

成政「ご自宅までお供します!」

 

長政「はぁ・・・・」

 

 

先が思いやられるといった表情をキリトに見せつつ、そのキリトの細い後ろ姿に「頼りにしている」といった表情を見せていたのを成政は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に帰ったキリトは「おちこち」を食べ終えて満足し、そのまま寝てしまったねねを膝に乗せて縁側でくつろいでいる・・・そんな状況を成政は見守っていた。

成政は元々信奈の馬廻であったが、キリトの強さと人柄に心酔し、黒母衣衆へ志願。その実力を買われて黒母衣衆の五指に入っている。

こういったのんびりした空間にいるキリトを見ていると心が安らぐ。非番であっても成政は自然とキリトの家にその光景を見に行ってしまうことが最近の日課になっていた。

 

そして最近はそんなのんびりとしたキリトの家をぶち壊すかのような来客がくる。

 

 

 

十兵衛「たのもーーーーーうです!!!!!」

 

 

とらぶるめいかー明智十兵衛光秀(命名:成政)である。

 

正徳寺の会見以来、十兵衛は週に3回はこの家を訪問し、キリトに手合わせを申し込む。そして3回負けてお茶を飲んで帰っていく嵐のような存在である。

 

 

十兵衛「キリト殿!お手合わせするです!!」

 

キ「じゅ・・・十兵衛か。ねねが起きちまう・・・もう少し静かにしてくれ」

 

十兵衛「あ・・・・すみません・・・です・・・」

 

 

元気抜群少女だけに来る時はいつも五月蝿い。だが今回はねねが昼寝している。ましてや今はキリトの膝の上である。

仮にねねを起こしてしまい、それが元でキリトが機嫌を損ねると手合わせしてもらえなくなることを十兵衛は知っている。

一度キリトの昼寝を起こして無理やり手合わせを申し込んだら1刻以上口を聞いてもらえなかった。そして手合わせも無し。十兵衛はショックで3日間枕を涙で濡らした。

そして次にきたらキリトは全然気にしていなくて、その日手合わせも忘れて大喜びで帰ったかわいい十兵衛なのであった。

十兵衛にとっては手合わせはただの口実、キリトの和やかな空間とその人が醸し出す雰囲気が好きで通っているのだ。

 

 

成政「十兵衛殿、お茶をどうぞ。」

 

十兵衛「あ、おかまいなく」

 

 

十兵衛はキリトとねねの隣にちょこんと座り、そのキリト空間に入り込む。今日は邪魔ものの犬千代がいない。ちらちらとキリトを見ると、彼は目を閉じていた。

「むぅぅ」といわんばかりの不満げな表情を浮かべる十兵衛・・・。

その十兵衛の様子を見てニヤニヤしてしまう成政であった。

成政はキリトの唐変木ぶりが好きなのだ。あの天下一の美少女と名高い信奈にさえそういった対象で見ていないキリトが成政にとっては崇高。成政は現代でいう古典的思想なのだ。

 

そんな心地よい沈黙からキリトは口を割った。

 

 

キ「今日は風が心地いいな。十兵衛も一緒に昼寝するか?」

 

 

そんな大胆発言に十兵衛は動揺した。

 

 

十兵衛「ひひひひひなななななななにをぬかしやがるですか!!!!!」

 

 

その声に眠れる獅子「ねね」が目覚めてしまった。

 

 

ね「うぅ・・・・あ・・・あにさまぁおはようでござる~」

 

 

どうやら今日はキリトの膝の上で寝ていた為、ねね姫はいい目覚め方である。

いつもならば突然起こされてしまうとご機嫌ななめ(びっくりして泣きだす)になってしまうのだが、今回はセーフのようだ。成政はホッとする。泣きやませるにはお団子かういろうでもなければキリトでも収められないのだ。

 

 

十兵衛「はぅ・・・すみませんですぅ」

 

キ「よかったな十兵衛。ねねはまだ夢心地だ。」

 

ね「あ、十兵衛殿いらっしゃいでごじゃるぅ・・・zzz」

 

 

どうやら姫はまた眠りについたようだ。

 

 

十兵衛「きょ・・・今日はもう帰るです・・・・お邪魔しましたです。」

 

キ「あぁ、またな。」

 

 

こうして浅野家はまた平和を取り戻しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州城~信奈の部屋

 

 

信奈「もう!キリトのやつ!!」

 

 

せっかくの二人の時間を邪魔され、信奈はご機嫌ななめである。

 

 

長秀「私が帰らせたのです。いいですか?姫さま・・・何度も申し上げた通り今は織田家にとって大事な時期。行動を改めていただかないと・・・」

 

信奈「うるさいわねぇ・・・わかってるわよ。」

 

 

地球儀をくるくると回しながらふてくされている。わかってはいるのだ。しかしどうにも落ち着かないのだ。

信奈は今まで常に孤独を感じていた。その孤独を突き破って入り込んできたキリトに対して常に話していたい衝動にかられてしまうのだ。

そばにいて当たり前・・・だからこそいない時間は落ち着かない。しかし現実はそうもいかなくて、もどかしい。

 

 

長秀「姫様・・・信勝様の周囲に不穏な動きがあるのをご存じですね?」

 

信奈「えぇ。知ってるわ。」

 

長秀「恐らく近日中には謀反が起きます・・・。その対処は考えておられるのですか?」

 

信奈「・・・次に信勝が謀反を起こしたら・・・・容赦しないわ。」

 

長秀「・・・・・・・。」

 

 

今までは謀反を起こしても母親による説得等で不問にしてきたが、さすがにもう許してしまうと家臣団にも示しがつかないのだ。

今川への対策も未だ練れておらず、兵力も整わない状況で、さらに謀反・・・信奈は常に頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

そしてその頃清州の町では~~~~

 

 

 

 

犬「・・・・・恒興」

 

恒興「はい?犬千代様」

 

犬「・・・お団子食べ過ぎて動けない。」アウアウ

 

恒興「・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕刻~清州城~宿舎

 

 

勝家はキリトの家を訪ねようとしていた。村木戦以来、勝家はキリトと親睦を深めていた。時には共に稽古をし、家老と侍大将では身分が離れているが互いに切磋琢磨しあえる仲間として常日ごろ会話を交わしたりしていた。

表では「キリト殿」「勝家」の間柄であるが、二人のときは「キリト」「六」と呼び合う約束まで交わしていた。

 

 

勝家「キリト、いるか?」

 

ね「勝家殿~いらっしゃいでござる!」

 

キ「こんな時間にどうした?」

 

 

勝家はなにやら思いつめたような表情をしている。キリトには大体予想できていた。

 

 

勝家「ちょっと話があってな・・・」

 

キ「少し外を歩くか・・・。」

 

勝家「すまん・・・」

 

 

 

 

内容はとうとうその時がきたというものである。勝家は現在信勝の家老。その信勝の周りの家臣が謀反を促しているということである。勝家は謀反を起こしても絶対に鎮圧されると考えていた。周りの家臣は信奈を見くびり過ぎているのだ。

信勝の家臣達の目的は信勝を傀儡にすること。そして元々織田家の家臣の知行(給料)は低く、税率も低い。その割に高価な鉄砲を揃え出しており、家臣の不満は溜まる一方だったのだ。その不安を持った武将を集め、決行するというのだ。

 

 

勝家「キリト・・・私はどうにかして信勝様を止めたいのだ・・・。きっと今度ばかりは・・・。」

 

キ「・・・だな。まず止められず、謀反が起きた場合、いたずらに兵を失うのは避けたいな。」

 

勝家「・・・・・・」

 

キ「六・・・アンタならどうする?」

 

勝家「私は・・・・・義を通すしかない・・・・恐らく私も・・・・」

 

キ「そうか・・。なぁ六、俺に考えがある。」

 

勝家「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトと勝家は、この騒動を収めるべく策を練るのであった。




うーん・・・ほんと文章作るのが下手だって感じますね。



たくさんのお気に入り登録、感想ありがとうございます!!

次回はお家騒動を描いていきますよ!

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