織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

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今回は戦闘シーンです。そして五右衛門と藤吉郎の登場です。


初陣

信奈軍は村木砦を攻める為、軍を発した。総勢3000。

 

 

まず勝家に500騎与え砦の東に。長秀に500騎与え西に、信奈は海路を取って南に布陣した。今川軍は信奈の予想通り、砦での籠城は持ちこたえられないと踏み、岡崎城に退却できる東へと出陣してきた。総勢1000。

 

 

勝家「皆のもの!突撃ぃぃ!!!」

 

 

勝家軍は今川軍に攻撃を開始した。その中には二本の剣を携えたキリトの姿もあった。

またたく間にキリトは走っていき、先頭を駆けていた勝家の度肝を抜いた。

 

 

勝家(なんて足の速い奴!忍びの類か!?)

 

 

キ「これも生き抜く為だが・・・できるか・・・?・・・やるしかないっ!!!」

 

 

勝家は驚愕した。キリトはシステムアシストを駆使して鬼神のごとく敵をなぎ倒していった。それも殺さず気絶させているのだ。その圧倒的な強さに今川軍の先陣は一気に怯んだ。相手はたった一人の華奢な少年だ。

斬りかかる相手の動きを読んでいるかのように攻撃を避けたり、その武器を破壊したり、剣の柄で頭を叩いたり・・・まるで次元が違うのだ。強い武将でもここまでの動きはできない。さらにその剣術はどこの流派にも無いような動きなのだ。

 

 

勝家「あ・・・浅野殿に続けーーー!!一気に打ち倒すのだ!!」

 

 

【かかれ柴田】と評される勝家は、その突破力を武器に一気に敵兵団に突っ込んでいった。キリトに負けじとその自慢の槍術を見せつけるのだった。

 

 

 

元々村木砦は建設終了と同時に義元は駿河に帰還。総大将と呼べるような人物がおらず、身分の低い指揮官のみがいるだけでそこまで統率が取れていなかった。故に今川軍は一気に総崩れとなり一目散に砦に戻り、守備を固めてしまった。

 

 

 

 

 

その夜、織田軍は砦を包囲、勝家、長秀、キリト等は南の陣に集結していた。

 

 

信奈「キリト・・・アンタ強すぎじゃない?」

 

キ「そ・・・そうか?勝家さんのほうがすさまじかったような・・・」

 

勝家「いえ・・・キリト殿の鬼神の如き活躍・・・恐れ入りました。しかし・・・一人も殺さずにあそこまで・・・」

 

キ「あぁ・・・まぁそれは・・・」

 

 

 

 

長秀「でも、敵を砦に押し込めてしまいました。50点です。」

 

 

キリトは我ながらやり過ぎたと反省していた。なんでもかんでも点数を付ける長秀姉さんの言うとおり、敵は籠城策を取ってきたのだ。

家中がいまだ分裂している中、あまり戦に時間を割けないのも現状である。

 

 

信奈「まぁいいわ。キリトの実力、とくと見せてもらったわ。次はあたしの番ねっ!」

 

 

どうやら信奈にはなにか考えがあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~村木砦~

 

 

 

雑兵A「どどどどうするんだよ!?織田があんなに強いなんて聞いてねぇぞ!?」

 

雑兵B「最弱じゃなかったのかよ・・・」

 

 

動揺している兵達の中で、落ち着いている二人がいた。その内の一人の男の名は「木下藤吉郎」後の豊臣秀吉である。そしてその傍らにいる幼女は「蜂須賀五右衛門」だ。

 

五「木下氏、このままでは絶体絶命にごじゃる」

 

木下「五右衛門、おみゃあさんだけは逃げろ。」

 

五「そうはいかぬでござる!」

 

 

藤吉郎はこの戦いは確実に負けると知っていた。尾張の実家を飛び出して今川家に仕えた。しかし思うように成果が出ずこの村木砦に駐留させられていた。五右衛門は自らの修行の為、この砦の傭兵のようなことをしていた。

自らの無念、そして昼刻に見た無双の少年のことで頭がいっぱいになっていた。

 

 

木下「五右衛門、おみゃあさんの夢はなんじゃ?」

 

五「今はまだわからないでごじゃる・・・」

 

木下「それならよ・・・さっきの少年、黒服の少年についてくみゃ」

 

五「・・・・・」

 

木下「見ておったのじゃろう?彼奴の強さは天下無双・・・生涯仕えるのにふさわしかろう?元々川並衆の国人ちゅうことは知っちょる。彼奴らの為にも、あの力のある少年に今のうちについてくちゅうのが賢明だみゃ!そして、彼奴ならばその見えない夢をみつけられるやもしれん!」

 

五「しかし・・・」

 

木下「生涯仕える主人が欲しかったのじゃろう?」

 

 

五右衛門はこの砦で藤吉郎に出会って彼の真っ直ぐな瞳に惹かれていた。しかしそれ以上に黒服の少年の強さ、戦場でも敵を殺さない優しさに惹かれていた。

藤吉郎に出会ってその配下になりたいと言ったことがあった。しかし一介の足軽である藤吉郎はそれを断った。まだ子分を持てる身分ではないという理由だった。

 

 

五「うぅ・・・・」

 

木下「今彼奴は南の砦におる。五右衛門よ、その少年に会ってきぃや」

 

五「・・・・え?」

 

木下「忍びならできるじゃろ?会って確かめるみゃ!このままここで何もしないより、見極めるみゃ。やらずに後悔するよりも、やって後悔したほうがええ!」

 

五「木下氏・・・・木下氏が言うなら・・・」ドロン

 

 

木下「それでええ・・・。」

 

 

 

五右衛門は迷っていた。少年の実力は本物だ。しかしその彼の目は何を見ているのかわからないというような不思議な感じだった。寂しげな、儚げな、そしてどこか強い・・・藤吉郎には無かったようなものだった。もういちど会えば・・・話してみればわかるのかもしれない。藤吉郎はそんな五右衛門の想いを読んでいたかのように背中を押してくれたのだ。

 

五「木下氏・・・どうかご無事で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~織田軍・南の本陣~

 

 

キリトは一人、陣の外で頭の中を整理していた。

恐らくこの戦は勝利するだろう。そしてきっと次は正徳寺会見。美濃の斎藤道三との会見だ。この戦での戦果でその会見の内容が変わってくるのだろうと踏んでいた。キリトの知る史実ならばこの戦いは美濃との同盟の後に起こるはずだった。美濃との同盟は信長と道三の娘「帰蝶」との婚姻だ。しかし信奈は女・・・きっとこの先はキリトの知らないような出来事が起こっていくに違いないと考えていたのだ。

 

 

そんな考えを廻らしていると、何かの気配を感じた。味方か?いや・・・ちがう・・・キリトは剣を持ち、警戒した。

 

 

キ「・・・・・どこからくる・・・」

 

 

SAOでは索敵スキルをマスターコンプしていた。しかしそのスキルは発動しない。

 

 

五「さすがにござる・・・」

 

キ「お・・・女の子・・・?」

 

五「我が名は蜂須賀五右衛門。尋常に勝負!!」

 

キ「くっ・・・・」

 

 

蜂須賀五右衛門・・・どこかで聞いた名前だが、ちょっと違う。その五右衛門が突如短刀で斬りかかってきたのだ。

その攻撃は素早い。しかしキリトにとっては捌けない攻撃ではなかった。その攻撃をエリュシデータで受けながら考えを巡らせる。

 

キ(蜂須賀・・・たしか小六とかいう名前を知っている。確か秀吉の配下だったはずだ!そいつの娘か?)

 

五「何故攻撃に転じないでごじゃるか!?」

 

キ「何故・・・!って・・・!!」

 

五「我は其方をころしにかかっていりゅでごじゃるじょ!!ぁぅ・・・」

 

キ「くっ・・・噛み噛みでいわれても・・・!」

 

 

そのスピードに慣れてきたキリトはそのまま五右衛門の背後を取り、武器を弾いた。そしてそのまま腕を掴む。

 

 

五「あう・・・」

 

キ「もうやめよう。君から殺気を感じない・・・。」

 

五「さ・・・さすがにござる。」

 

 

 

 

 

キリトと五右衛門は二人並んで座っていた。キリトは何も言わず、遠くを眺めていた。いきなり襲われたのはよくわからなかった。しかし殺気がこもっていなかったことを踏まえ、味方なのか敵なのかもわからない。これが剣で語るということなのか?などと考え、何も言えないでいたのだ。

その五右衛門はそのキリトの瞳に目を奪われていた。その為何かを話しにきたのだがその何かが浮かばずただただその瞳を見つめていた。

 

その沈黙に耐えきれなくなったキリトから口を割った。

 

 

キ「えっと・・・俺はキリト。浅野キリトだ。」

 

五「・・・・・・・・」

 

キ「何か用があったんじゃないのか?」

 

五「浅野氏、その瞳の先にはなにがみえりゅでごじゃr・・・ぅぅ」

 

キ「噛むのはクセか?・・・瞳の先か・・・俺にはわからない。かな。」

 

五「30文字以上は噛むのでごじゃる・・・わからない・・・でごじゃるか」

 

キ「・・・・・・・。」

 

五「・・・・浅野氏はどこかあぶなっかしい。このはちしゅかごえもんがこのしゃきちゅいていくにごじゃりゅ!」

 

キ「ははは・・・・危なっかしいのかなぁ?俺・・・」

 

五「うむ」

 

キ「まぁよく言われるけど、好きにしなよ。」

 

五「これよりこの蜂須賀五右衛門、あしゃのうじにしゅじゅうをおちかいもうしゅ!」

 

キ「はいはい・・・それなら五右衛門、俺のことはキリトでいいよ。」

 

五「はは!キリト氏にごじゃるな!」

 

キ「うじってのは取れないんだ・・まぁ。よろしくな!」

 

 

こうして五右衛門はキリトと主従を結ぶこととなった。五右衛門はこの見えない「先」というものが何なのか、それを知りたいと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~織田本陣~朝方未明

 

 

信奈「全軍・・・出陣!!!!」

 

「「「おぉーーーーーー!!!!!」」」

 

 

信奈は掛け声とともに出陣した。砦の攻略を開始した。鉄砲隊や弓隊を駆使し、休む間もなく攻撃を仕掛けていった。

 

キリトと五右衛門は勝家率いる別働隊で砦の東にいた。

信奈の作戦は、南と西から休まず攻撃。砦が落ちそうになったときの退路を断つというもの。そしてその兵を保護、捕虜として連れ帰り織田の傘下に加えられれば兵力の増強にもなると考えていたのだ。兵力は増え、邪魔な砦も落とせる。一石二鳥の策である。

 

次第に砦は火に包まれ、陥落まであと一歩というところまできていた。

そろそろか・・・と勝家は近くにいたキリトに目を向けた。が、キリトの姿が見当たらなかった。

 

勝家「む?キリト殿!?」

 

キリトは五右衛門と共に炎が燃え盛る砦内部に潜入していた。五右衛門から藤吉郎がいると聞かされ、その藤吉郎を救出に向かっていたのだ。

 

 

キ「五右衛門!あっちを頼む!!」

 

五「承知!!」

 

 

キリトは藤吉郎の顔を知らないが、必死に藤吉郎の名を呼んでいた。そしてそこの兵に早く脱出するように促していたのだ。

 

砦の奥に辿りつくと、五右衛門が座り込んでいた。

彼女は瓦礫に埋もれた一人の男に話しかけているようだった。

 

 

キ「五右衛門!!」

 

 

五「キリト氏・・・もう手遅れにごじゃった・・・木下氏・・・」

 

 

五右衛門は目に涙を浮かべていた。埋もれている男はどうやら木下藤吉郎であろう。しかし虫の息、まだ生きている。

 

 

キ「まだ間に合う!!うおぉぉぉぉ!!!!!!」

 

五「キ、キリト氏!!!」

 

 

キリトは炎にまみれ、藤吉郎に乗っかっている瓦礫を投げ、そのまま引っ張り出した。

 

 

キ「おい!しっかりしろ!!脱出するんだ!!!」

 

木下「・・・・・ぐぅぅ・・・わしはもうだめじゃ・・・」

 

キ「あきらめるな!!絶対に・・絶対に死なせない!!!!」

 

五「キリト氏・・・・・木下氏!しっかりするでごじゃるよぉ!!!」

 

 

キリトのあきらめない姿勢に感化され、五右衛門も大きな声を張り上げて藤吉郎を支える。

 

 

木下「五右衛門・・・出会えたみたいだみゃ。・・・よかった・・・。」

 

キ「しゃべるな!!脱出するぞ!!」

 

木下「もうええ・・・。流れ弾が当たっててな・・・どの道助からん。・・・黒服の兄ちゃんよぉ、おみゃあさんにワシの夢を・・・」

 

キ「夢なんて・・・生きて自分で叶えろよ!!」

 

木下「・・・・・・」

 

キ「おい・・・・うそだろ・・・・?」

 

五「うぅっ・・・・・・」

 

キ「くそぉぉぉおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして村木砦の戦いは終わった。この戦いでの戦死者はあの激しい攻防の割に少なかったといえよう。しかし、敵味方問わずに死者がでたという事実には変わらない。キリトはSAOの中で何人も死んでいった人達を見てきた。この世界でも変わりはない。これはゲームなんかじゃない。現実なんだ・・・

 

 

一人では救いきれない生命、キリトはこのときある想いを胸に秘めていくこととなったのだ。

 




藤吉郎さんの死亡フラグは揺るがないようです。

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