織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~ 作:piroyuki
と思ったらこんなに長くなっていたーーー!
おまたせしました。武田軍の出陣前の出来事です。
織田家に天才軍師、竹中半兵衛がいれば、武田家には古典派の山本勘助、そして戦国きっての智将、真田昌幸がいる。
孫子の兵法に則った半兵衛の策、若輩ながらも、この時代の一歩二歩先を見据えた策を弄する昌幸の謀略戦がはじまる。
双方のこの戦いにおける最重要課題を「輜重」と考える半兵衛。彼女は倉井が帰ったその夜、地図を眺めながら一人考えていた。
恐らく大軍を率いて攻めてくるであろう武田軍、輜重隊もその道のりを進軍するとなれば難航することは火を見るよりも明らか。腹が減っては戦はできぬ・・・武田軍がどこに輜重を置くのか…それを考えていた。
そしてまた重要なのは「この戦いの最大目標」にある。
織田軍は武田軍を撃退・・・いや、撤退させれば勝利ということにある。
「半兵衛、考えはまとまったかい?」
「いえ・・・」
部屋に入ってきたのはキリトだった。なかなか策がまとまらない。
まず、家臣達の意見をまとめると・・・武田軍に倉井がいるということは「鉄砲対策」は間違いなく練られているということ。武田軍の初期の目標は恐らく「平野部に陣を構え、後詰めとして来る騎馬隊を生かしてくる」であろうということ。浅井と松平の援軍について。六角対策・・・・・その他問題は山積みとなっている。
「松平家は曳馬を攻略して浜松と改名したんだっけか・・・」
「はい。駿河へは北条家と武田家の援護もあって攻めあぐねていると聞きます。」
「・・・それなら松平には援軍よりも信濃を攻めてもらったほうが兵力を分断できるんじゃないか?」
「そうなんです・・・けど、恐らくそれは読まれています。」
「真田昌幸かぁ・・・」
武田もそれを読んでの宣戦布告ということだ。分断作戦は通用しない。しかし、恐らくは先鋒隊として来襲するであろう歩兵の真田を相手にできそうなのは松平の三河兵であろう。
美濃と信濃の国境付近は山岳であり森林地帯。平野部でなければ鉄砲は命中率が下がる。当然ながら足軽での対処となるのだ。伏兵策も読まれているであろう。火計も火が収まれば敵の騎馬隊の進軍速度を速めるだけだ。
「要は武田軍を「撤退」させればいいんだよな?」
「はい。」
「よし…じゃあ俺、スグと二人で旅に出る。」
「え?……キリトさん…まさか…でも、それだと倉井さんはどなたが対処するんですか?」
「うーん・・・・・あ!そうか・・・よし!」
キリトは何かを思いついたようにそのまま部屋を飛び出していってしまった。
~甲斐の国・躑躅ヶ崎館~広間
「遼太郎はまだ帰ってこないのか!?」
「まだまだかかりますよ、姉上」
倉井が帰らないためか苛々している信玄を、その妹である逍遥軒がなだめていた。逍遥軒は信玄の影武者であるが、その性格は正反対で穏やか。
「しかしなぁ・・・才蔵とふたりっきりというのは納得いかん!」
「しかたがありませんわ。姉上が命令なさったのですから・・・」
「うっ・・・・」
本人を目の前にしてしまうとどうしても素直になれない信玄様である。
そんな話をしていると、広間に一人の少女がやってきた。
「御館様、戦の準備には今しばらくかかりまする・・・」
容姿端麗、頭脳明晰・・・この少女こそが真田昌幸である。
「まぁあの準備は時間がかかるな!」
武田軍・・・昌幸が考案した輜重隊の対処法・・・これは日本がかの大戦中に山岳部隊が行った行軍方法と似たものであり、この時代のものではなかった。
輜重隊は別個にあるが、足軽一人につき2週間分の食糧(約20キロ)を背負わせ、各々で運ぶという方法である。
これによってもし輜重隊が狙われ仮に焼かれたとしても、1週間・・・節約すればもっと長く食糧には困らないという。
鎧兜などに身を包みながらということもあり、その分の疲労度が懸念されたが、その準備として1か月間足軽達の体力を鍛えたという。
「あとは上杉だが・・・」
「そちらはお任せを・・・」
「うむ!」
かつて武田家は今川義元が討たれた後、甲駿相三国同盟を破棄し、南征した。現在はそれを回避し同盟は健在。憂いがあるとすれば北の上杉のみとなる。
度重なる敗戦により上杉軍とは停戦で合意。上洛と聞けばその隙をもって上杉が攻めてくる可能性もあった。
「うぅ~~~遼太郎~~~はよぅ帰ってこ~~~い!!!」
~岐阜城~広間
倉井が去って5日後、浅井長政、松平元康を含む織田家の家臣団が軍議を開いていた。
「半兵衛、頼むわよ」
「はい・・・・・」
――
「まず、姫様と勝家さんと犬千代さん及び黄母衣衆は、1万の兵で浅井の援軍と共に六角家を攻めてください。」
「六角を!?何故!?」
「皆さんも御存じの通り、六角家の脅威は甲賀です。武田の対処の合間に甲賀の襲撃は厄介です。そこで姫様が自らその脅威を取り除くこと、そして上洛の準備を整える意味でも六角には御退場願います。」
「ほう・・・・」
「武田軍先鋒隊は長秀さん、十兵衛さん、そして私が1万5千の兵で食いとめます。」
「食い止める?」
「はい。平野部に敵を踏みこませないことが重要です。こちらにはいくつかの策を講じます。」
「なるほど。」
「松平軍は援軍ではなく、長篠方面から信濃に攻めてもらいます。こちらは陽動策なので深入りは無用です。敵が大したことなければ切り取ってもかまわないでしょう。」
「わかりましたぁー」
「ちょっとまって!」
半兵衛の説明の途中で信奈が急に口を開いた。
「相手にはキリトを負かせた「倉井」とかいうのがいるわよね?あとくの一の霧隠れなんとかっていう奴も。そいつらの対処は?それよりキリトはどこにいったの!?」
「はい、倉井さん達が出てくるのは恐らく攻めあぐねてきた頃です。そこで私の方で対抗できる人材を用意しました。・・・・・・キリトさん、お待たせしました。入ってください。」
通路のほうに向かって半兵衛はキリトを呼び付けた。
その人物はキリトと共に現れた。
栗色の髪を棚引かせ、純白に赤いラインの入った奇抜な服装、整った顔立ち・・・日本一の美女とうたわれた信奈でさえもその容姿に心を奪われてしまった。
「結城明日奈と申します。この度は義によって助太刀に参りました。」
「結城・・・・」
「明日奈・・・!?」
「「「アスナ!?!?」」」
「へっ?」
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~~3日前~~里香の工房
「キリト君・・・やっと会えた・・・やっと会えたよ・・・」
「アスナ・・・久しぶり。」
「もう・・・あのときは消えちゃって・・・死んじゃったのかと思ったんだよ・・・」
出会った瞬間にキリトに抱きついた明日奈はボロボロと涙を流していた。
「あのーーー・・・そろそろいいかな御二人さん?」
「ご、ごめん!里香!」
「・・・・・・・」
「あ・・・アスナ?」
「おーい、そこの乙女ー」ピキッ
「・・・・・・・」
「えぇい!さっさと離れんかーーい!ほら!手入れするよ!手入れ!」ガバッ
「ちぃっ・・・ジャマシヨッテ」
「舌打ちすんなーーー!」
「いやー、やっぱり剣の手入れは制作者じゃないとねぇ」
「さすが明日奈!一途な乙女はいいよぉ~」
「こら!からかわないの!!」
この日、明日奈は梵天丸と片倉小十郎を奥州に送りがてらに美濃に来ていた。
そのことを里香から聞いていたキリトも、工房で明日奈と再会していたのだ。
「でも驚いたなぁ・・・あのキリト君がホントに織田家に仕えてるなんて・・・」
「まぁ、いろいろあったからな・・。」
「いろんな話、いっぱい聞かせてね?」
「そうだな。」
再会を果たした二人は、直葉も呼んで4人で一年分の出来事を夜遅くまで里香の工房で語り明かした。
直葉も現実世界での出来事を話し、明日奈達はこの肉体が現実のものであると把握した。
「クラインさんと戦うのかぁ・・・」
「明日奈、力を貸してくれないか?クラインはかなり腕を上げてる。明日奈くらいじゃないと太刀打ちできないと思うんだ・・。」
「私なんかでよければいいよ?結構夜盗とか海賊なんかも相手したことあるし、戦にも出たことあるから少しは力になれるかも。そのかわり・・・」
「な、なんだよ・・・」
「明日一日私の言う事聞いて!」
「はぁ!?」
「あ、言い方まちがった!一日二人きりで町で遊ぶのに付き合ってくれればいいから!」
「うーん・・・遊ぶくらいならいいか・・・。」
「えぇぇぇずっるーーーい!!」
「里香は私が見てないとこでキリト君と遊びまくってたでしょ!?」
「遊びまくってなーーい!!!」プンプン
「・・・・・お兄ちゃんの馬鹿・・・」ボソッ
翌日
~尾張の国~那古山城下
キリトと明日奈は那古山城の城下町に来ていた。
那古山城の城主は織田家家老の一人、佐久間何某が勤めている。この町は通常の商業メインの楽市楽座の町とは違い、道楽をメインにした遊べる町なのだ。佐久間自体が暢気な男であるため、こういった趣向の町にしているのだ。
「変わった町だねぇ・・・」
「まぁ佐久間らしいけどね」
この町は縁日のような店が毎日稼働していて、毎日がお祭りのような雰囲気なので信奈もたまにお忍びで来るようなところだ。金魚すくいという名のどじょうすくいに射的という名の流鏑馬、その他もろもろの現代でいうところのアミューズメントパークである。
それに付き合わされているキリトはこの町に詳しかったりする。
「ここのイカ焼きはお勧めなんだよ。なんでも若狭から直送のイカを使っててさ・・・」
得意げに話すキリトに明日奈は少し複雑な気分だった。
明日奈はこの日、ある事を聞くという目的があった。
「イカ焼きはいいけど・・・話があるんだ・・・」
「え?あ・・・そうか。じゃああっちに行こう。」
キリトは町の中でもゆっくり話ができるとっておきの店に明日奈を連れていった。
そこはよく内密な話をするときに使っている場所で、現代でいうところの個室喫茶のような場所である。
「変わったところもあるものねぇ・・・」
「まぁな。内密な会合とかに使ってるんだ。」
「内密な・・・ねぇ・・・」
実際に忍びの手が少ない織田家は、こういった小さな町で極秘作戦を練ったりすることが多く、大名も家臣も商人に擬態していることが多い。
「キリト君ってさ、SAOの頃はギルドに入ってなかったじゃない?」
「あぁ、そうだな」
「それなのにどうしてこの世界では織田家に仕えているの?」
「うーん・・・」
「私にとってキリト君のイメージって、「孤高の存在」だったり「一匹オオカミ」だったりするのよ。だからなんか複雑なのよね・・・」
「・・・・俺はここで命を救われたんだよ」
「?」
「74層のボスを倒したとき、俺は紙一重の差で死ななかった。そして気付いたら長吉の義父さんの家で寝ててさ、その日の夜に出ていこうとしたんだ。」
「うん・・・」
「SAOではベーターの俺が関わる人は不幸になる・・・そう思って人との関わりを避けてたところがあった。というより逃げていたのかもしれないな・・・。現実世界の俺もいろいろあって結構塞ぎこんでいたところもあったし・・・この世界にきたときも俺はそれを引きずっててさ・・・」
「そんなこと・・・」
「それで出て行こうとしたときにねねに見つかってさ・・・あ、ねねっていうのは今の俺の義妹なんだけど、寝ぼけながら小さな手で俺の服を掴んでさ、「ちゃんと寝てなきゃだめでござる」なんて言ってその日は朝まで俺の指を離さないで寝ててな・・・」
「・・・・」
「次の日はその長屋の隣に住んでいた犬千代って奴を連れてきてさ、毎日監視だよ。目を盗んで逃げようとしても引き止められてさ・・・こんな見ず知らずで得体の知れない俺をだぞ?」
「・・・・・うん」
「家計も大変なのに毎日御馳走を用意して「なんならずっとここに住め」っていってくれるんだ。でも元の世界に帰らなきゃって思いもあって手掛かりを探すために出ようとするんだけど、ねねは泣きだすし犬千代は泊まりがけになって見張るとか言いだすし・・・」
「でもタダ飯喰らいなんてなんか悪くて狩りにでかけたときに信奈に出会ったんだよ。」
「・・・・・」
「その時かな、あの破天荒大王みたいな信奈に仕えてみるのも悪くないって思えたんだ。」
「・・・・わかんない」
「え?」
「それでどうして大名に仕える必要があったの?」
「あぁ・・・この世界ってさ、どう思う?」
「どう思うって?」
「俺はこの世界もゲームの一部だと思うんだよ。実際この世界は俺たちは生身である可能性は高い。でももし茅場が作りだしたゲームの世界の一部だったとしたら、クリアー条件があるかもしれない。・・・・その条件が「天下統一」だったとしたら・・・」
「そんなことって・・・」
「全国でこの時期に天下統一を狙っている大名はどのくらいいると思う?」
「うーん・・・ここの織田と甲斐の武田・・・あといるのかなぁ?」
「ぶっちゃけこの時代の大名って守護っていう肩書が多いんだよ。自分の国を「将軍」に任されているって言えばいいかな。だから将軍に任されている国を守る大名が多い。あとは将軍家に逆らう大名を制圧するとか・・・今の将軍家には全国の大名の統率が取れていないのが現状だ。各地で戦という内乱が絶えない世の中なんだ。そういった大名が多い中で、信奈だけはこういった乱れた世を統一することを掲げている。だったらこのシステムアシストやスキル、ステータスがある俺がその天下取りの手助けをしてクリアーできたらこの世界から出られるんじゃないかって考えたんだ。」
「・・・・・」
「まぁこれは後から思ったんだけどな。最初はただの傭兵みたいな感覚で信奈の戦に参加したんだ。そのときに豊臣秀吉の最期を看取った。」
「え???」
「本来なら豊臣秀吉は天下を統一するだろ?でもその秀吉が死んだ。だったら誰が天下を統一する?」
「・・・・・」
「俺は信奈だと思った。だから仕えることにしたんだ。」
「そう・・・・なんだ・・・」
人間というのは日々成長していくものである。キリトもこの世界に来て少し変わったのかもしれない。
明日奈はそれでもキリトはキリトでいてほしかった・・・そんな気持ちがあった。
「あのね・・・キリトくん」
「ん?」
「この世界に来てからよく同じような夢を見るの・・・」
「同じような・・・ゆめ・・・・」
「真っ暗な闇の中で・・・」
「明日奈・・・それってもしかして・・・」
明日奈の見ていた夢・・・闇の中で一点の光があり、それが実はいくつもの光が輝いているというもの。その光の正体が最近少しずつ判明してきているということだ。
実はキリトもこの世界に来た当初、同じような夢をみたことがあった。最近は見ないが・・・
「そのね・・・いくつもの光の中心に誰かがいるの・・・」
「誰か?」
「うん・・・誰なんだかはわからない・・・でもその光の一つを私は何度か間近で見たことがあったのよ・・・」
「それは・・・どんな・・・」
キリトが真剣に聞いていると、外で足音が近づいて来ていた・・・。
「直葉キィィーーーーーーーック!!!」ドンガラガシャーン
壁ごとぶち破るのは直葉のキックである。
「はぁ!!はぁ!!!お兄ちゃん!!!!!なぁにやってるのよこんなとこでぇぇ!!!!!!」
「キリト様!!!御助けに上がりました!!!」
「・・・キリト、悪魔にさらわれたと聞いた」
「キリト氏を発見し、黒母衣衆らにほうこくをしちゃじぇごじゃる」
「えぇぇぇ・・・ちょっとなんなのよぉぉ・・・」
キリトと明日奈の密室でぇとと聞いて、直葉、成政、犬千代、五右衛門が乱入してきたのでござる。
これによって店の防音壁は破壊され、弁償させられたのは言うまでもなかった。
そして修羅場終了後、明日奈に散々付き合わされたあげく、帰ったら信奈に昨日からどこいってたんだ攻撃を喰らったのはいうまでもなかった。
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「助太刀は感謝するわ。でも結城明日奈、アンタの実力がわからないと納得できないって家臣がいっぱいいるんだけど。」
「俺が保障する・・・って言ってもか?明日奈は俺より強いぞ?」
「はぁ!?キリト君の方が強いじゃない!!」
「そんなことねぇよ!現に攻略組を指揮してたのはほぼ明日奈だったじゃないか!」
「でもいつもLA取るのはキリト君だったし!レベルだって・・・!」
「・・・・キリト語いっぱい」
「あらあら・・・・」
「~~~~~~~~~!!!」ピキピキ
「とにかく明日奈のスピードにはついていけないって!」
「キリト君の反応速度はアインクラッド1だったわよ!」
「あぁぁーーーーもう!!二人とも手合わせ!皆の前で手合わせしなさい!見れば納得してあげるわよ!」ピキピキ
「手合わせか・・・確かに見たほうが早いな」
「確かにそうね。」
~岐阜城~訓練場
「真剣で寸止めか?」
「手慣れた武器のほうがわかりやすいでしょ?」
「そうだな・・・あのときのこと思い出すな・・・」
「そうね。点数つかなかったけどね・・・」
「さっさと始めなさいよ!!!」ムキー
「へーい。んじゃ、やるか!」チャキッ
「はぁい」チャキッ
キリトは二本の剣【エリュシデータ】と【ダークリパルサー】を構え、明日奈は【ランベントライト】を構える。互いの闘志はギャラリーの家臣団達にも伝わっていた。勝家は一言漏らす・・・
「本気だ・・・」
そしてその騒ぎを聞きつけた里香がやってきて、信奈に耳打ちする。
「姫さん、もし姫さんが・・・・なら・・・見たら後悔するかも・・・」
「・・・・え?」
このときの手合わせは家臣団だけでなく、その騒ぎを聞きつけた城内の兵士達をも震撼させた。黒と白の剣舞である。
人の力を凌駕した速度で明日奈が攻撃を繰り出せば、そのすべてをかわしながら剣で受け流すキリト。
両の剣で息つく間もなく攻撃を繰り出すキリトをまるで踊るようなステップでかわしながら剣で捌く明日奈。
互いにスキルを使わずに戦っているにもかかわらず、その二人の剣撃はものすごい威圧が感じられる。
しばらくその剣舞が続くと、明日奈はスキルを発動する。そのスキルを見切り、キリトもスターバーストストリームを繰り出す。
これだけ見応えのある手合わせをする二人に、キリトとの手合わせをした経験のある誰もが嫉妬した。
「きぃぃぃ!キリト先輩!私との手合わせは本気出してなかったですか!!それに・・・・」
「くっ・・・私もまだまだ未熟だったということか・・・しかし・・・」
「・・・・・・明日奈は今日から敵」
「お兄ちゃん・・・今まで手抜きとか・・・・てかこれって・・・・」
明日奈もキリトも息つく間もなく攻撃を繰り広げているにもかかわらず、避けるタイミングがしっかりと合っている。息がピッタリ・・・そう、これは立ち合いではない。二人の「剣舞」なのだ。
「もう・・・・もうやめ・・・・て・・・・」
明日奈とキリトがどれだけの関係なのかを知るには充分すぎた。信奈が思っていた以上に明日奈の想いが伝わってきていたのだ。
「そこまでよ!!!!」
「いいのか?」
「もうわかったわ!アンタに倉井の対処を任せる。所属はそうね・・・長秀の部隊の副将。いいわね!」
「は!」
「あとは霧隠才蔵の対処だが、恐らく五右衛門が適任だな」
「そうね。それがいいわ。今日の会議はおしまい!もう解散でいいわよ!あとキリト、ちょっときなさい。」
「へいへい・・・」
それぞれの想いが交錯する中、武田襲来は刻一刻と迫ってきているのであった。
恒例の人物紹介
真田昌幸:可憐な女の子設定。17歳。冷静沈着で、クラインとは気が合わないため軍議ではいつも対立している。ツンデレではなくツンであり、生真面目。才蔵とは親友で、戦闘の鍛錬も欠かさない。普段は書庫で読書にふける毎日。それゆえ天才であるにもかかわらず努力家の為、武田家の中でも勘助に劣らぬ軍師。
次回はキリトと直葉の旅道中を描いていきます。