織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

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14話の続き再開です。


そしてお気に入りが200を越えたのでクラインさん参戦です。


強き者、弱き者

~北近江~街道

 

 

成政と馬に乗ってきた直葉はキリトに長吉が襲われた旨を伝えた。幸い急所は外れていたものの危篤状態だという。

 

 

キリトは完全に油断していた。領内ならば安全・・・そう考え込んでいた。しかし実際そうではない。闇に生きる者「忍」の存在の危険性だ。

有名な武将、大名、それらは乱世においていついかなるときでも命を狙われる。暗殺という行為・・・名声の上がったキリトは、それだけ狙われることになるということだ。

 

 

自身の油断が招いた結果だ。この先、自分の家に家族を住まわせればねねも狙われることになる。

彼らは狡猾で残忍だ・・・どんな手段も厭わない。

 

 

 

キリトは即座に美濃に帰還した。同盟交渉は信奈、犬千代、半兵衛の三人で行うこととなった。里香は用事があるとのことでそのままの足で堺に向かった。彼女はマスターメイサーだけあって強い。護衛の必要はない。

 

 

「私達は必ず同盟を締結させます!キリトさんはお義父上様の元へ急いでください!」

 

「・・・・姫様と半兵衛は護る。」

 

 

別れ間際の半兵衛と犬千代の言葉は頼もしかった。

美濃に帰還したキリトは長吉の元に行った。不幸中の幸い・・・急所は外れている。元は一介武士、攻撃を無意識に逸らせたのだろう。

しかし意識がこのまま戻らないとなると話は別だ。この時代の医療機器では栄養の補給ができない。よって衰弱死という危険性が高いのだ。

3日以内に意識が戻らなければ・・・という医師の診断であった。

 

 

泣き続けるねねを抱えながら、己の油断を悔いていた。

そして襲撃した者は忍び。甲賀者であることが判明した。

甲賀は六角の手の者。六角家は織田家最強の武将、キリトを暗殺しようとしたのだ。

織田家には五右衛門と数名の忍びがいるが、忍びの里を持つ国が相手となると少し分がわるくなる。

この出来事より織田家は忍びの育成を手掛けていくこととなる。

 

 

 

2日後、長吉は奇跡的に意識を取り戻した。しかし高齢ということが災いしたのか・・・、間もなく息を引き取った。織田家と浅井家の同盟が成った日、しとしとと雨の降る夜のことであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~一週間後~~~~~

 

 

~岐阜城~広間

 

 

「武田より使者が参ったとのことです。」

 

「武田?何故に?」

 

「さぁ?」

 

 

信奈より緊急招集がかかり、家臣団は広間に集まっていた。家臣団には武田の意図が分からない様子だった。やれ威力偵察だの同盟の使者だの親善だの・・・確かに不明瞭なところである。

 

 

 

 

 

~2時間前~

 

 

キリトは里香の工房で剣の手入れをしていた。

昨夜帰還した里香は剣の手入れを口実にキリトを呼び付けていたのだ。

 

 

「そうそう、エギルさんからお土産もたされてるんだよー」

 

「お、エギルの奴、元気なのか?」

 

「もっちろん。そこの袋に入ってるから持って行ってね!」

 

「あいよ。」

 

 

この光景、懐かしい感じだ。バトルの後、いつもこうやって里香に頼んでたっけ・・・。

 

 

「しっかしずいぶん傷んでたねぇ・・・よし!完璧」

 

「サンキュー。」

 

 

今までこの剣をまともに手入れできる職人がいなかったため、手入れができていなかった。里香がこの町に来てくれたのは非常に助かる。

 

 

「それで、今日は暇なの?」

 

「まぁね。引っ越しも終わって久しぶりにのんびりできるよ。」

 

「あ、昼寝でもしようって思ってたでしょー!」ジトー

 

「なっ・・・なんでわかった・・・!」

 

「えええ!?ホントに昼寝するつもりだったんだ!?あ、あのさ・・・ご飯食べにつきあってよ!」

 

「飯かぁ・・・まぁ積もる話もあるし、いくか。」

 

「やたーーー!」

 

 

誘ってみたらOKだった。里香ちゃん大勝利である。

 

 

キリトと里香は、岐阜の町に繰り出した。岐阜の町も楽市楽座が敷かれ、清州同様に賑わいを見せている。浅井との同盟もあり人も流れて来ていて、物資も豊富にある。まさに信奈の理想である豊かな国が出来つつあった。

 

適当な飯屋を探していると、なにやら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「お!?キリト!?キリトじゃねえか!?」

 

 

赤い鎧に身を包み、バンダナをした無精ひげの男・・・

 

 

「ク・・・クライン!?」

 

「誰?誰?」

 

 

そう、SAOのゲーム開始直後、初めて話しかけてきた男「クライン」である。

感動の再会といったところだが・・・

 

 

「やっぱりキリトだったか!・・・噂は本当だったんだな」クイッ

 

 

クラインは少し苦笑い浮かべたかと思うと右手で合図のような仕草をした。

するとクラインの横に黒ずくめの女性が姿を現した。

 

 

「あまり近付かないでください。妊娠します。」

 

「お、おい!俺は動いてねぇだろ!!」

 

「貴方がキリトさんですね。」

 

「無視かよ!!!・・・まぁいいか。なぁキリトよぉ、ここでおめぇと会えたんなら話は早えぇ。今から俺と戦え。それかコイツと戦え。」

 

 

突然何言ってるんだ?

キリトの横では里香が混乱しているのか、あたふたしている。

 

 

「遼太郎、私では無理でしょう。貴方が戦ってください。」

 

「そうか?さすがにお前でも無理かぁ・・・じゃあ俺でいっか。」

 

「おいクライン?お前何いって・・・」

 

「戦え!この町をでた先に丁度いい丘があったろ。そこ行くぞ。」

 

「おい!待てって!」

 

「なぁキリト・・・。つべこべ言ってねぇで来いよ。久々の再会だ。剣で語るのも悪くねぇだろ?俺も修行したんだ。試してみねぇか?」

 

「はぁ・・・・・しかたねぇな・・・」

 

 

クラインの強さを見るという意味ではちょっと興味があった。説得・・・そういった意味ではキリトの人間性をしっかりと見ていたクラインの勝ちである。すぐ乗ってしまう。

 

 

 

 

 

クラインと黒ずくめの女性は前を歩いていた。

里香は歩きながら横にいるキリトに質問を投げかける

 

 

「あの人・・・もしかしてSAOのプレイヤー?」

 

「あ、里香は知らないんだっけか・・・あいつはクライン。攻略組でギルド「風林火山」のリーダーだったやつだ。」

 

「へぇぇ・・じゃあ結構強いんだね。風林火山にいたっていうことは武田に士官したのかな?」

 

「さぁな。でも確かにあの鎧は武田の家紋が付いてたから武田家の家臣になったのかもな。」

 

「じゃあ横の人は?」

 

「知らないな・・・」

 

 

「あぁ、こいつは俺の影。才蔵ってんだ」

 

「私の名を呼ばないでください。妊娠します。・・・申し遅れました、私は霧隠才蔵と申します。以後お見知りおきを・・・。」

 

「そんなんで妊娠するかよ!?」

 

 

「クラインは相変わらずだなぁ・・・」

 

「しゃべっただけでセクハラ扱いとか・・・残念な人なんだねぇ」ププ

 

「うるせぇい!・・・・チクショウ」

 

 

せっかく女の人と絡めているのに何故か浮かばれないクラインさんです。

ようやく丘に付き、クラインは早速刀を抜いた。

 

 

「よし!やるぞ!言っとくが真剣でこい。」

 

「寸止めでいいか?」

 

「何言ってんだ?俺はお前を殺すつもりだぞ?」

 

「なっ!?うそだろ!?」

 

「嘘か本当か・・・やってみろ!!!!」シュンッ

 

 

ガキィィィィン!!!

 

 

クラインの殺気は物凄いものだった。

本当にギリギリのところで受けられた。SAO時代には無い動きである。

 

 

「お前・・・数段LVアップしてないか!?」

 

「あったりめぇだ!!!俺はなぁ・・・上泉信綱・・・あの人に学んで半年で免許皆伝を頂戴したんだ!!!」

 

「んなっ!?」

 

 

キィィィン!!!

 

 

ものすごい剣の動きと力、以前のクラインとは比較にならないほど腕があがっていた。

 

 

「未だにシステムアシストに頼ってんのか?そして打ってこないとこを見るとお前ぇは何にも解ってねぇんだな!!殺さずの浅野さんよぉ?」

 

「・・・・なに?」

 

「甘ぇって言ってんだよ!!戦国の世をまるで解ってねぇ!!情けばっかりかけてよぉ・・・きっとおめぇは死ぬ。そこらの名もない奴に殺されるんだよ!!だから俺がこの手で殺してやる。異論は認めねぇ!!」

 

「クライン何言ってんだよ!?」

 

「だから殺すって言ってんだよ。俺は武田家筆頭家老、倉井遼太郎だ。お前と俺は違う主君に仕えてんだ。敵同士なんだよ!!いずれこうなるんだ。おめぇも覚悟しろや。」

 

「っ・・・・!!!」

 

 

クラインは倉井遼太郎を名乗って武田家に仕えていた。その実力で武田家を支え、筆頭家老になるまでの人物になったようだ。

上泉信綱といえば新陰流の始祖、柳生宗厳や丸目長恵の師、塚原卜伝にならぶ剣聖・・・戦国最強と呼ばれた人。この世界に来てどれだけの努力をしたのだろうか・・・彼はこの乱世を生き抜く為にもがいてきたのかもしれない。

 

 

「見せてやるよ・・・。新陰流最終奥義!!!【(まろばし)】!!!」

 

 

一瞬の出来事であった。クラインは掛け声の後、既に目の前にはいなかった。気配、殺気、そして空気も動くことなく消えたのだ。

気付いたとき、キリトは地を這っていた。

その傍にクラインは立っている。足が見えた。自分の手には剣が無く、もう抵抗はできない。

里香の声が聞こえた。助けに向かおうとしてくれたのだろうか?それを才蔵に遮られていた。

 

 

「弱い奴はひれ伏す・・・そういうこった。じゃあな・・・殺さずの浅野。」

 

 

完全にやられた。本気で来ないと思っていた。昔のよしみでただ語らうだけと思っていた。そんなことはない。戦国の世、戦いと混乱が渦巻く世界・・・裏切りも、昨日の友ですら敵になる世界・・・故に乱世。

キリトはきっと何もわかっていなかったのだろう。この世界、戦場に足を踏み入れたその日から、今をも知れぬ命のやりとりをしなければならない。その覚悟がキリトには本当にあったのだろうか?結局は弱い者なのだ。いくらシステムアシストの恩恵があるとはいえ、気持ちではどんな足軽よりも弱い。戦う前から常に負けていたのだ。

 

 

この男は本気で殺すつもりだろう・・・キリトはもう、覚悟を決めた。クラインになら・・・・

 

 

「キリト!!!キリトぉぉぉ!!!!!いやぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ズガッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで【殺さずの浅野】は死んだ。次にまた甘っちょろいことしてたら本当にお前の命、もらうからな!!」

 

「クライン・・・お前・・・」

 

 

クラインは、キリトのことを思っての行動だったのだろう。

命のやりとりが本気でできなければ自分の命を落とすことになる。

殺すことを厭わない覚悟・・・キリトはそれを教わった。きっともうキリトは迷う事もないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~岐阜城~広間

 

 

 

「武田家筆頭家老の倉井遼太郎だ」

 

「で?武田家の家老が何しに来たのよ?」

 

「宣戦布告っすよ。美濃に攻め入る。」

 

 

広間に戦慄が走った。

 

 

「なっ!?クライン!本気か!?」

 

「武田が天下を獲るには上洛・・・その進行は東海道じゃねぇ、こっちから潰していく。織田家が目障りなんだよ。」

 

 

中山道・・・険しい道のりを越えることになるが、京へ向かうには一直線となる。未来を知るクライン・・・

かつて武田家は東海道を抜けて上洛を目指したが道半ばにして信玄は逝去。この過去を払拭する戦略を取るようだ。しかし・・・武田軍の強さは騎馬隊だ。御岳等の山岳を通ることになるであろうこのルート・・・騎馬隊を生かせないはずだ。

 

 

「あんた・・・そんなこと言うけどこのままただで帰れると思ってんの?」

 

「そりゃぁねぇ・・・なぁキリト!お前ならわかるよなぁ!?」

 

「ははは・・・信奈・・・こいつを捕らえるのは容易じゃない。さっき俺、こいつに負けたからな。ここでこいつは全員を殺せるだけの実力があるんだ・・・」

 

「「「え!?」」」

 

 

「まぁそういうことだからよ!姫さん、次は戦場で・・・うちの姫さんは器のでっかい人だからそんなこたぁ指示してねぇけどな!!よっし!才蔵、帰んぞ」

 

「話しかけないでください。にんs「あーーわかったわかった!」

 

 

一同唖然である。

倉井が帰ってからも騒然としていた。信奈もショックだったのだろうか・・・黙り込んでいる。

 

 

「まぁ、次は俺が勝つ・・・」

 

「キリト・・・あんた本当に・・・」

 

「あぁ、負けたよ。俺も本気じゃなかったからな・・・でも、殺さずの浅野は引退したよ。」

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

強い者だけが勝ち残る・・・そういう世界だ。

いくら綺麗事を並べても、この世界の理は待ってはくれない。その刃は常に向けられているのだ。

 

 

 

武田軍総勢3万・・・躑躅ヶ崎城を出たのはそれから10日後のことであった。




~恒例の人物紹介~


倉井遼太郎(クライン):本当は壷井らしいんだけどクラインだから倉井でよくね?ということで倉井さんになりました。SAO初日にキリトと絡んだ人。戦い方はキリト直伝?デスゲーム宣言後にキリトはクラインを置いて行ったことを74層当時でも未だに気にしている素振りを見せた。キリトとはよき理解者であり、よき友。
この世界に来て降り立った場所は上州、そこで上泉信綱に師事を受け、免許皆伝の印可状を受け取る。曲刀スキルマスターだけあってセンスは一流。未来を知り武田マニアであるということで武田家士官後は川中島で連戦連勝。山本勘助も救う。ハーレムになるかと思いきや女性経験の乏しさからうまくいかないらしい。現在筆頭家老として列席、霧隠才蔵のいる透破衆を任されている。


霧隠才蔵:史実では真田十勇士の一人。この世界では透破衆の上忍で女性設定。霧を操り、幻覚を用いた忍術が得意。「倉井に話しかけられると妊娠するぞ」と信玄に冗談で言われたことを真に受け、クラインに話しかけられると「妊娠します」というのが口癖。そう言いつつも倉井を支えるよきくの一。



武田軍・・・攻めてきます!!

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