織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~ 作:piroyuki
感謝感謝です!
今回はご意見を取り入れ、会話の前の名前を省いていきます。以前までのは修正しません・・・メンドイカンベンシテクダサイ
そして信奈主観で進めていきます
――ずっと気になっていた
――彼は何者なのか・・・
「あーーーーもーーーーーー!サチってだれよーーーー!!!」
あの日以来、あたしはそのことばかりが気になってた。
美濃での戦が思うようにいかなかったのもそれが原因だったのかもしれない。半兵衛の調略でかなり有利になったのかもしれないけど、きっとこのままじゃ戦えない・・・。
それよりどうしてこんなに気になるのよ!?意味わかんない!
気が付けばキリトを呼び出してたり、キリトの家の前にいたり・・・
でもどうやって聞けばいいのよ!?キリトの目を見ると、聞こうっていう気持ちが吹っ飛んで・・・・ああーーーーもう!!!
―――――――――――
その日もあたしは部屋で一人苛々してた。いつもの合図を出してるのに、今日はキリトが来ない。どうせまた犬千代とか直葉に連れだされているんだろうな・・・って思うと余計に苛々する。
いてもたってもいられなくなって城を飛び出した。
ガラガラバーーン!!!
「キリトいる!?」
「あ、信奈さん」
この日、評定にも顔を出さなかったキリトは体調を崩し、家で寝込んでいた。風邪らしい。ねねの看病を手伝っていたキリトの妹の直葉は、あたしに「うつるといけないから」って縁側に連れていった。
「お兄ちゃんにこれまでのこと・・・聞いたんです」
あたしは直葉が苦手。苦手というかなんていったらいいんだろう・・あたしの知らないキリトを知っているんだろうなって思うと複雑だった。そんな直葉は「お兄ちゃんは変わった」という。
直葉の知っているキリトは7~8年前から自分を避けるようになったらしい。それはキリトは両親が本当の親ではないことを10歳のときに知ったから、そこからだという。直葉もキリトが本当の兄妹じゃないって知ったのは3年前だという。
でもここで再会してからはすごく優しくなって、たくさんお話をしてくれるようになったという。これはきっとあたしや織田家のみんなのおかげだっていう。
あたしにはわからない。キリトは元々こんなかんじだったし、人と少し壁を作っているように感じていたから。今でもキリトはあたしに壁を作っているように感じるし・・・。
それを聞いていた、ねねと犬千代が・・・
「それでも兄さまはいつかいなくなっちゃうような気がするでござる・・・」
「・・・・目が離せない」
ねねの感じる「不安」、犬千代の「気持ち」・・・それを聞いた時、みんながなぜキリトにくっついて歩いてるのかわかった気がした。あたしもそれを感じていたから・・・。
「ねぇキリト・・・」
「ん?」
みんなが買い出しに行っているとき、あたしはキリトに勇気を出して聞いてみた。
「長良川の一件の後、あたしの部屋で寝てたじゃない。」
「あぁ、あのときはごめん・・」
「いいのよ・・・そのときに寝言を言ってたんだけど・・・」
「寝言?」
「うん・・・・・・「サチ」って・・・・・その人は・・・」
「サチって言ってたのか・・・・ってことは、またあの夢を見てたのかな・・・」
そのときのキリトはすごく悲しそうな、いつもの遠くを見ているような表情をしてた。
「サチは昔・・・2年くらい前に「ある国」っていったらいいのかな・・・?そこにいたとき偶然危ないところを助けた5人組の一人さ。彼らは・・・うーん、なんていったらいいのかな・・・【月夜の黒猫団】、傭兵団のようなものだと思ってくれ。」
「・・・・・?」
「彼らはとても仲がよくて、団長のケイタ、テツオ、ササマル、ダッカー、サチ・・・みんな家族のように暖かい集団だった。そんな彼らは俺を仲間に誘ってくれたんだ。」
「うん・・・」
「でも当時の俺はその国でも名高い悪者でさ・・・常に一人で行動してたから寂しかったんだろうな・・・自分のことを隠して仲間に入り込んだんだ。」
「悪者??」
「あぁ。【黒の剣士】ビーターのキリトっていってさ。「自分の利益ことしか考えないで行動する最低な奴」って、まぁ他にもいろいろ言われてた。」
「そんな・・・信じらんない!!」
「まぁ自分で撒いた種だからね。・・・それでそいつらと仲良くなっていった。そんなとき、そのサチが失踪したんだ。」
「なんで??」
「サチは死ぬのが怖かったんだ。その国では戦わなければいけない。戦い抜いて生き残らないと抜け出せない。そんな国だった。彼女は「どうしてここにいるんだろう、どうして戦わないといけないんだろう」って、行ってた。「逃げたい」って。」
「ひどい国ね・・・」
「あぁ。きっとまだみんな戦い続けてるのかもしれない・・・。」
「・・・・・・」
「サチを説得して連れ戻してから、サチは毎晩俺の部屋に来た。」
「それって・・・・・」ピキ
「あぁ、信奈が考えるようなことはしてない。ただ不安を解消するために「一緒に寝る」ということだけだ。俺は毎晩彼女に「月夜の黒猫団にいればサチは絶対に死なない」って声をかけた。一種の暗示みたいなものだ。」
「むうぅ・・・・・」ピキピキ
「月夜の黒猫団は自分よりも強い相手とは戦わない、危険の伴う行動は避ける様な奴らだったから、俺は安心してた。だが、そうもいかなかった・・・。団長が不在の時、俺の判断ミスで罠にかかった。無数の敵のいる部屋に閉じ込められたんだ。しかも自分たちよりも数段実力の高い敵だった。当然俺以外全員死亡。サチも何かを言い残して死んでいった。」
「・・・・・っ」
「その日は団長がみんなで頑張って貯めた金で俺たちの家を買いに行っててさ・・・生き延びた俺は団長にそのことを・・・俺がビーターのキリトであることも全部打ち明けた・・。それを聞いた団長は「ビーターのお前が俺たちに関わるべきじゃなかった!」・・・・そういって自害した。」
「・・・・・・」
「サチは俺が殺したようなものだ。あの光景がしょっちゅう夢に出るんだ。」
「そうだったの・・・ごめんなさい・・・」
「いや、きにするな。過ぎたことだから・・・。」
「・・・・・ねぇ、サチが最後に言い残した言葉って?」
「俺はずっと知りたかった。もしかしたら俺を蔑んだ言葉だったのかもしれない。でもそれを知る術はない。死者は生き返らないんだから・・・。その頃から俺は自分の危険を顧みない戦い方をしていった。いつ死んでもそれを受け入れるつもりだった。・・・そんなときに彼女の残した手紙のようなものが見つかった。俺はどんな言葉が入っていてもそれを受け入れる覚悟を決めていた。・・・そこでわかったんだ。サチの死ぬ間際に残した言葉は「ありがとう、さようなら」だった・・・。」
キリトはこんなことがあってから、人と親密になることを避けていたのだろう。あたしは思った。キリトとあたしはすごく似ている。前から感じていたそんな感覚はきっとそういうことだったのかもしれない。
あたしは人を好きにならないようにした。でもそれは自分の意思とは無関係に襲いかかってくる。
あたしはキリトをどこにも行かせない。あたしも・・・みんなも!
キリトがその国からどうやって抜け出したのか・・・どんな戦いをしてきたのか・・・あたしがその国のことを知りたくなったのは、それからまもなくのことだった。
今回はキリトがサチについて信奈に打ち明けました。
作者は実はサチ大好きっす。