織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

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桶狭間勝利、突如現れた直葉、これからどうなっていくのか・・・


美濃侵攻、半兵衛調略作戦

~清州城~キリトの家

 

 

直葉「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん!!!うわぁぁぁぁ!!」ガバッ

 

キリト「スグ・・・お前・・・なんで・・・?」

 

 

 

突然の出来事だった。絶対に起こるはずのない出来事に混乱していた。

直葉はキリトに抱きついてただただ泣いていた。それを眺める五右衛門もねねも言葉を失っていた。

しばらく時間が経ったあと、直葉は落ち着きを取り戻した。

 

 

 

キリト「スグ・・・お前はどうしてここに?」

 

直葉「うん、私ね、ALOっていうVRMMOをやってたの。」

 

 

 

キリトは現実世界で起きたこと、直葉に起きたことを聞いた。そして直葉にもこの世界のことを説明した。しかし何故か帰れないことにはすこし驚いただけであまり不安を感じていない様子だった。

 

直葉はALOを起動したらこの世界にきてしまった。それよりも気になるのが、自分の他に消えた人間が何人かいるということだ。

思い出してみる・・・あのとき第74層にいたのは軍の人間、クラインとギルド風林火山のメンバー、そしてアスナだった。

 

 

もしかしたら自分の他にもこの世界にきてるSAOの人がいる・・・

 

 

 

キリト「これは探しにいくべきか・・・」

 

 

 

このときキリトはいくつか考えがあった。

このまま旅にでること、このまま織田家に残って自分が有名になればここにきてしまったSAOの面々が会いにくるかもしれないということ。

 

旅に出るとなれば路銀も必要だし、直葉も連れていかなければならない。

この乱世、いろいろ物騒だし、たとえ直葉が剣道の腕が達ていても危険なことには変わりはない。

 

かといって有名になるにはきっとまた戦場で人を殺めることになる。しかしここにいれば直葉は安全だ。

 

 

キリト「そういえばスグ、スキルアシストは使えるのか?」

 

直葉「ちょっと木刀貸して・・・」

 

 

キュイィィィン

 

 

直葉「あ・・・使える!もしかしたら魔法も・・・」

 

直葉「セアーン・スリータ・テム・プローン・ビンド!」

 

 

 

シーン

 

 

直葉「無理だった・・・」テヘ

 

キリト「ははは。」

 

 

どうやら直葉も魔法を除いたゲームのステータスを持ってきている。やはりここはゲームなんだろうか?でも、情報からするとVRの仮想世界ではなく、自分も直葉も生身であろう。

 

 

ねね「スグ殿が兄さまの妹君なら、スグ殿はねねの姉さまにござる!!」

 

直葉「そ・・・そうなるんだよねぇ・・・やっぱり。」

 

五右衛門「直葉氏、よろしくにごじゃる」

 

直葉「うん!」

 

キリト「さて・・・あとは問題児にどう説明するか・・・だ」

 

 

 

 

 

 

その夜はキリト家にて宴会となった。

義父の長吉は年頃の娘ができたと大騒ぎ、しかし直葉は浅野姓ではなく桐ケ谷を名乗ると聞かなかった。犬千代もねねも直葉とはすぐに仲良くなった。

桶狭間の合戦も勝利し、明日には帰ってくると思っていたそのとき・・・

 

 

ガラガラバーン

 

 

信奈「キリト!帰ったわよ!!」

 

キリト「!!お・・・おかえり、信奈」

 

ねね「姫様!おかえりにござる!」

 

犬千代「・・・・あ、おかえり」

 

直葉「!!・・・ど、ども」

 

 

信奈「・・・・・・誰?」

 

キリト「えーっと・・・妹だ。」

 

 

なんか新しい女子が増えてる・・・キリト、どこで籠絡してきたの?妹?嘘付言いなさい!似てないじゃない!といわんばかりに信奈はキリトを睨みつけていた。

 

 

直葉「一応妹です。信奈さん、よろしく!」

 

信奈「ふぅーん・・・妹ねぇ・・・」

 

キリト「あぁ・・・・・妹の直葉だ。」

 

信奈「直葉ねぇ・・・・ふぅーん・・・人が戦で大変だったときにねぇ・・・ふぅーん・・・・キリト、ちょっといい?」

 

キリト「あ・・・・はい・・・・・」

 

 

 

 

この後信奈によるキリト祭りが庭で開催されたのは言うまでもない。

ひとまずは「行方知れずになっていたキリトを探していた妹が偶然ここにやってきて再会した」ということで説明が終わり、一件落着したかに思われた。しかし・・・

 

 

 

直葉「あのね、お兄ちゃん。あたし知っちゃったから。・・・お兄ちゃんが私と本当の兄妹じゃないって。」

 

 

 

この発言によって状況は混沌の一途を辿っていくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

信奈「それで・・・キリトはこれからどうするの?」

 

キリト「うーん・・・」

 

信奈「言っとくけど、出奔は許可した覚えはないから黒母衣衆筆頭の座はそのままよ!道三救出の報酬は、命令違反と相殺。」

 

犬千代「・・・・一ついい?」

 

信奈「いいわよ。」

 

犬千代「・・・直葉を黒母衣衆に入れるのは?」

 

信奈「はぁ!?なにいってんのよ!?黒母衣衆に入りたい人は山ほどいるの!何のために試験させたと思ってるのよ!?」

 

キリト「そうだよ!直葉に戦わせる気か!?」

 

犬千代「・・・・でも強い。何度も負けた」

 

 

信奈が来る少し前、直葉の剣道の腕の話になったときに犬千代が試しにと直葉と手合わせをした。その結果、直葉は犬千代に何度も寸止めで勝っているのだ。

 

 

信奈「本当なの?」

 

犬千代「・・・本当」

 

キリト「でもなぁ!」

 

直葉「いいよ。私、お兄ちゃんの力になる!」

 

キリト「おい!」

 

直葉「お願い!これ以上お兄ちゃんと離れるのは嫌だよ・・・」

 

信奈「!!・・・・・・・・却下」

 

キリト「だよなぁ!」

 

信奈「黄母衣衆ならいいわよ。」

 

キリト「えぇぇぇ!?!?」

 

 

 

信奈レーダーは直葉の危険性を察知していた。こいつは傍においておけない。

 

 

キリト「いや、それなら黒母衣衆に入れる。」

 

信奈「却下よ!」

 

キリト「だめだ。直葉が危険に晒されたとき俺が傍にいないと・・・俺はもう、後悔したくないんだよ・・・」

 

直葉「お兄ちゃん・・・」///

 

信奈「うっ・・・・・・・し、しかたないわね・・・許可する。でも・・・」

 

キリト「でも?」

 

信奈「宿舎は別!そこが落とし所よ!!」

 

直葉「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして直葉は黒母衣衆に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州城~広間

 

 

信奈「美濃を獲るわよ!」

 

 

とうとう美濃への侵攻である。三河の松平元康との同盟も決まり、後顧の憂いもなくなった今、道三に反旗を翻した斎藤義龍への宣戦布告である。

史実では、もうしばらく待てば義龍は急死。その後龍興が継ぎ、あまりの暗愚を諌めるために竹中半兵衛による謀反で稲葉山は陥落。そしてそのまま返還し、織田は藤吉郎により半兵衛を調略、美濃三人衆も調略し、墨俣に城を築いて美濃を攻略することになる。

しかし信奈も家臣団ももう攻め取る気満々である。

 

 

キリト「スグ、ここの歴史覚えてるよな?」

 

直葉「うん。まだ早いよね。」

 

信奈「あーもーー!いいから出陣の準備よ!!」

 

 

 

 

 

案の定、織田軍は美濃を攻めあぐねることになる。斎藤軍にまったく勝てずにいたのだ。

その敗因は、道三によって糸口が見つかる。

 

 

信奈「天才軍師?そんなの知らないわよ!!」

 

道三「竹中半兵衛じゃ。」

 

十兵衛「ふふん。半兵衛殿がいるかぎり、美濃は安泰です!」

 

信奈「十兵衛・・・アンタはもう織田家の家臣なのよ!」

 

道三「さて・・・どうするか?」

 

 

半兵衛は義に厚く、調略には応じない。しかし、慈悲深い性格・・・斎藤家との合戦において、ありとあらゆる策で兵を殺さずに追い返していた。ゆえ、信奈とは相性はいい。天下統一を目指す織田軍にとって軍師は必要であった。

 

 

信奈「十兵衛、あんたが行きなさいよ。」

 

十兵衛「はいぃ!?私ですかぁぁ!?」

 

信奈「だってアンタ、元々斎藤家なんだから説得できるでしょ?住んでるところも知ってるんだし・・・」

 

十兵衛「うぅ・・・・・(ピコーン)・・・・・・あ、キリト先輩を連れていっていいならいくです!!」

 

信奈「え?なんでキリトを・・・?うーん・・・好きにしなさい!そのかわり!絶対調略しなさいよ!!」

 

十兵衛「はいですー!(ふっふっふ・・・キリト先輩と逢引の好機!!)」

 

 

キリト「なんで俺まで・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州の町~

 

 

 

十兵衛「それで・・・・・なんでこんなにお供がいるですか!?」

 

 

十兵衛はキリトを引っ張って美濃へと旅立とうとしたが、それに際して犬千代、、五右衛門、成政、直葉がついてきてしまったのだ。

 

 

五右衛門「キリト氏とは一蓮托生・・」

 

犬千代「・・・おもしろそう」

 

成政「私はキリト様の懐刀ゆえ。」

 

直葉「お兄ちゃん危なっかしいもん」

 

キリト「あのなぁ・・・まぁいいか。さっさといくぞ!十兵衛」

 

 

十兵衛「よくなーーーーーーい!!!」

 

 

 

 

 

十兵衛(どうしてこうなったですか!?せっかくのひとときをどうしてぶち壊すですか!?まぁ・・・直葉殿は妹ですから・・・ここで好感度を上げておくのはいいとしても・・・犬千代はいつもくっついてるし、成政もやたらくっついてるし、キリト先輩はどうしてこうやって・・・まぁいいです・・・半兵衛の庵の近くは森です!その森でどうにか撒くです!!)

 

 

 

 

その森はとても薄暗く、もののけの類でも出そうな道だった。

キリトの両腕は犬千代と直葉が塞ぎ、その背中には成政がへばりついていた。

 

十兵衛(なんてことですか・・・私のくっつくばしょが・・・・いやいやいやいやいやいやいやいやそうじゃないです!!!!!)

 

キリト「この家か?」

 

十兵衛(ついてしまったです!!!!)

 

キリト「十兵衛~?ってかなんで門にお札が付いてるんだよ・・・?」

 

十兵衛「そ・・・それは半兵衛殿が陰陽師だからです・・・」

 

 

その札の貼られた門が勝手に開き、中から人が現れた。

 

?「なんだ?お客さんか?」

 

 

その人物は安藤守就、史実では半兵衛は娘婿であるが、この世界では違うようだ。

 

 

安藤「お前たちも半兵衛を調略にきたのか。」

 

十兵衛「え?他にもきたですか?」

 

安藤「ほう、十兵衛か。ワシも道三様に付いて行けばよかったかのう・・・まぁ上がれ。」

 

 

 

庵にいくと、どうやら先客がいたようだ。

見た目は青年、みたことのない顔だ。

 

 

?「ほう、あなたたちも半兵衛殿を?」

 

十兵衛「そうです!なにものですか?貴方は?」

 

長政「申し遅れました。私は浅井家当主、浅井長政にございます。」

 

十兵衛「ほ~う・・・その浅井殿がなにゆえ半兵衛殿を調略?」

 

長政「それはもう、美濃にいい人材がいるとききましたから・・・。それでは先に私のほうから説得に入らせていただきますよ。」

 

 

そう言うと、長政は庵に入っていった。

しかし少しの時間が経ち、長政は真っ青な面持ちで戻ってきた。

 

十兵衛「どうだったですか!?」

 

長政「・・・・・・・帰ります・・・・・」

 

 

どんな話をしたのか、物凄く顔色が悪かった。

 

 

キリト「さて、俺たちもいくか。」

 

十兵衛「はいです!」

 

 

中に入ると、一人の陰陽師が立っていた。顔立ちのよい青年である。

 

 

半兵衛?「ようこそ我が庵へ。竹中半兵衛でございます。」

 

十兵衛「半兵衛殿!私は明智十兵衛光秀と申しますです!今日は貴方に話があって来たですよ!」

 

半兵衛?「ほほう?」

 

 

半兵衛はそれを聞くと得意満面の笑みで何かをとりだした。

まるで十兵衛のことを品定めするかのように本人を覗き込み、一つの皿にまんじゅうを4つ置いた。

 

 

半兵衛?「この4つの中に一つ当たりがある。見事当てたのならば調略に応じよう。しかし・・・」

 

十兵衛「しかし?」

 

半兵衛?「一つ毒入りが混じっている。即死の毒だ。そなたに食べる覚悟がおありかな?」

 

 

無理難題を押し付けてくるものである。しかし半兵衛は知恵者・・・一筋縄ではいかない相手。それに少しおかしな点がある。半兵衛は忠義の士、当たりを引けばそく応じるような簡単な輩ではないはずだ。そして慈悲深いと聞けば、即死の毒の入ったまんじゅうというのは合点がいかない。

 

 

直葉「お兄ちゃん・・・あのさ・・・」

 

キリト「あぁ、わかってる」

 

半兵衛?「なにかな?早く食べてみたまえ。できぬか?」

 

キリト「なぁ、半兵衛だっけ?もうやめないか?」

 

半兵衛?「何を申すか?」

 

キリト「出てこいよ、半兵衛」

 

 

直葉とキリトはこの半兵衛に人の気配はない、そしてその奥に人の気配があるということに気付いていた。

 

 

半兵衛?「そうか・・・お主は・・・」

 

??「もういいですよ・・・前鬼さん」

 

前鬼「ふっ・・・・・」ドロン

 

半兵衛「き・・・気付かれるなんて・・・初めてです・・・・わ・・・私が半兵衛です・・・クスン」

 

 

出てきたのはまだ年端もいかない銀色の髪に色白の肌で、か弱そうな女の子だった。

 

 

直葉「ほんと。。。武将なのに女の子多すぎない?」

 

十兵衛「こ・・・こんな小娘が半兵衛殿なんて・・・」

 

半兵衛「すみません・・・すみません・・・いじめないでください・・・クスン」

 

キリト「いじめないよ・・・」

 

半兵衛「ほ・・・ほんとに・・・?」

 

キリト「あぁ・・約束だ。」

 

 

半兵衛は元々道三に忠誠を誓っていたが道三は亡命、現当主の義龍に従った安藤の命で動いていた。

幾度も登城を求められていたが、極度の人見知りなため、謁見できずにいた。

 

 

キリト「なぁ、半兵衛はどうしても義龍に従うのか?」

 

半兵衛「はい、安藤のおじさまが従っている以上、私もそうします・・・。」

 

キリト「信奈は天下を統一する。天下を統一して商人たちが自由に行き来できる豊かで戦のない国を創る。そのために俺たちはそれを補佐してる。みんなとても強い人達だ。でもな・・・やっぱり半兵衛みたいな知恵者が必要だ。俺はさ、戦で人を殺せなかった・・・でも道三をどうしても見捨てられなくて、救出のときにたくさん殺してしまった。俺はこんなことを無くしたいんだ。先の戦で半兵衛のやりかたがすごく印象にのこった。俺はそのやり方を見習いたい・・・。どうだろう?一緒に来てくれないか?もちろん、安藤さんも一緒に。」

 

 

キリトの本心だった。できれば殺したくない。半兵衛も戦略にキリトは我が意を得ていた。

 

 

半兵衛「・・・・・キリトさんの想い、よくわかりました。」

 

十兵衛「じゃあ!!」

 

半兵衛「調略には応じられません。でも、キリトさんは私と同じものを持っています。私は織田家ではなく、キリトさんに従います。」

 

十兵衛「なんですと!?!?」

 

キリト「え・・・?俺・・・?」

 

犬千代「・・・・・・むぅ」ナニカヲカンジタ

 

直葉「まじで?」

 

半兵衛「はい・・・。だめ・・・ですか・・・?」クスン

 

キリト「だめ・・・じゃない。わかった!よし!半兵衛は俺の黒母衣衆に入ってもらおう!」

 

成政「えぇぇぇ!?」

 

半兵衛「はい!よろしくおねがいします!」

 

 

 

 

そんなこんなで美濃三人衆の一人、安藤守就は織田家に、竹中半兵衛はキリトに従う事になった。

もちろん十兵衛は調略失敗ということでお咎め・・・とおもいきや、安藤の調略に成功ということで恩賞として金50貫が与えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~清州城~キリト家

 

 

直葉「それでさーお兄ちゃんにういろう買ってもらったってわけ!」

 

成政「へぇぇ・・・いいなぁぁ!」

 

犬千代「・・・・スグ、ずるい」

 

 

キリトはねねと半兵衛と縁側に座り、女子トークを眺めていた。

この平和な日常がキリトにとってはとても心地よかった。半兵衛はあのあと何度か信奈に勧誘されたが、断固として断っていた。しかし「そう、まぁキリトは私の配下だし、その配下なら私の配下も同じよね!」と納得したのであった。

 

そんな平穏をぶち壊すのはきまって十兵衛である。最近は直葉の稽古の相手としてやってくるのだが・・・

 

 

十兵衛「どうしてこの家はいつも女の溜まり場になってるですか!?」

 

直葉「だって兄妹だし。」

 

成政「懐刀ですから」

 

犬千代「・・・・ふん」

 

 

 

そんな十兵衛の来訪もキリトにとっては日常のひとつだった。


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