「あ~もう、さすがに限界だわ。帰ってまで、こうトラブル続きじゃ」
「ま、結局なんとかなったんだからいいじゃねぇか。それに、寝てもいいって言われたろ?悪い事ばかりじゃないぜ」
「あ~……まぁそうだけど……。んじゃぁ、もう寝るわ」
ルイズは今にも閉じそうな目で話を終えると、部屋へと入って行った。魔理沙はその姿を、手を腰に当てやれやれという具合に見送った。やがて彼女の方も、自分達の休憩室、アジトへの転送陣がある部屋へと足を進める。上がったばかりの朝日に目を細めながら。
ルイズ達一行が学院に帰って来たのは、キュルケ達がメンヌヴィルと遭遇したまさにその日の早朝。こんな時間帯に帰るハメになったのも、ダルシニ達の村の復旧に予想以上に時間がかかったからだった。人妖達が昼夜働いたにも拘わらず、帰路についたのは日付が変わったばかりの深夜。日程もギリギリで、余裕のないルイズは人目も憚らず、学院へと文字通り飛んで帰った。実際飛んだのは幻想郷メンバーで、ルイズは天子の要石に括り付けられていたのだが。放っておくと、寝入って落ちてしまいそうだったので。
しかし、その途中。想定外のイベントに出会う。学院とトリスタニアを結ぶ街道の途中で、燃える竜巻を発見したのだ。もちろんこれはメンヌヴィルが起こした魔法。ただし、その時点ではもう彼らの姿はなかった。
空で足を止めた彼女達に、すぐ寄って来たのはシルフィード。主が消えてパニックになっていた。ルイズがいるというのに、ベラベラと話しまくる。もっともルイズは、要石の上で爆睡状態。耳に入らず。シルフィードの言う事は支離滅裂だったが、タバサ達が居なくなったというのは分かった。結局、天子が『緋想の剣』を使い、タバサの居場所の見当をつける。シルフィードはその方角へと、スッ飛んで行った。一方、幻想郷メンバーは火炎旋風と森へ広がった延焼を消す。術者のいない火炎旋風を消すなど、造作もない。
一段落した一同は学院へ直行。だがさらに騒動が待っていた。見覚えのない兵達が、学院をぐるりと囲んでいたのだ。彼女達は、学院を騎士団が護衛しているなど知る訳もない。もちろん、そこでまた騒ぎに。一時は一触即発という状態になりかけたが、騒ぎを聞きつけたオスマンが出てきてなんとか収まる。
だがそれでも騒ぎは終わらない。今度はキュルケとギーシュ、そしてコルベールがオスマンの学院長室へ駆け込んだ。その口から出て来たのはメンヌヴィルと幻想郷の事。寝ぼけ頭のルイズは、帰った直後だというのにすぐ呼び出される。だが朦朧としているルイズを見て、オスマンは話を放課後にすると決めた。そしてしっかり寝ておくようルイズに言い渡したのだった。ちなみ今日の午前中の授業だが、課題提出で出席とする事に。それでもこのまま授業に出るよりは、はるかにマシだったろう。
さて、ルイズが久しぶりの自分のベッドで爆睡中。幻想郷メンバーも、久しぶりのアジトに戻って来る。そしてリビングで一服。各人は溜まった疲れを癒しに、部屋へと戻っていく。
だが、彼女達にはまだイベントが残っていた。
「よっ!ただいま、デルフリンガー。留守番ご苦労さん」
魔理沙は、自分の部屋の隅に置いてあるインテリジェンスソードに軽く挨拶。旅行の荷物を整理しながら、話かける。
「バタバタしてたが、なかなか面白かったぜ。トラブルも結構あったけど、ま、それはそれで悪くなかったぜ」
「そりゃ良かったな」
「悪いが、土産はないぞ」
「別に構わねぇよ。俺に合う土産なんてないだろ?」
「鞘とか欲しくないのか?」
「ずっとこのままだったからな、余計なもんなんてなくていいさ」
置かれた剣は、長旅を労うように答えていた。やがて口調がいつもの調子に戻る。
「話は変わるけどな。魔理沙お嬢ちゃんに伝言があるんだ」
「伝言?誰からだ?」
「うさぎ耳のねーちゃんだよ」
「鈴仙?そいやぁ、先に戻ったんだっけか。あいつどこ居るんだ?まだ見てねぇけど」
考えてみればおかしい。鈴仙に何の用があったのか知らないが、先にアジトに戻ったのである。自分達を出迎えるくらいしてもいいだろう。だが姿が見えなかった。魔法陣の中心に置かれた錆刀は、話を続ける。
「じゃ、伝言いうぜ。『この度は本当に申し訳ありません!ちょっとお借りします!でも、必ずお返しします!』だとさ」
「なんだ?そりゃぁ?」
「だから借りてったんだよ」
「何を」
「テーブルの上のヤツ」
「え?」
魔理沙は釣られるようにテーブルの上を見る。するとあるハズのものがなかった。『始祖のオルゴール』と『風のルビー』が。
「あーーーっ!!」
アジト中に、魔理沙の叫び声が響いた。
それからアジト中を探す。しかし二つの秘宝は影も形もない。それどころか、鈴仙の私物もなくなっていた。つまり幻想郷へ、秘宝を持って帰ってしまったのだ。
リビングでは三魔女が、難しい顔でテーブルを囲む。特に魔理沙は、怒り気味。
「アイツ!ただじゃ済まさねぇ!」
「皮肉ね。泥棒が宝を盗まれるなんてね」
紅茶を味わいつつ、茶々を入れるパチュリー。だが、冗談でごまかせる様な事態でないのは分かっている。アリスが面白くなさそうに言う。
「笑いごとじゃないわよ。ハルケギニアの秘宝だもの。ルイズから散々扱いにあれこれ言われた代物よ。それ、取られちゃったんだから。どうすんのよ」
「決まってるだろ。幻想郷に戻って、鈴仙の野郎から取り戻す。ついでに落とし前もつけてな!」
間髪入れずに答える魔理沙。半ばキレてる。だがそこにパチュリーの冷静な声が、差し込まれた。
「彼女の意思で、秘宝を盗んだとは考えづらいわ。むしろ、指示に従っただけじゃないかしら?」
「確かに、鈴仙らしくないな。だとすると真犯人は、永琳か」
「ええ。あの宇宙人が主犯の可能性が一番高いでしょ?」
パチュリーが紅茶のお代わりを、こあに要求しながら答える。同じくアリスも紅茶のお代わり。さらに会話を続ける。
「けど何で、永琳がハルケギニアのもの欲しがるのかしら?」
「カトレアの治療のため必要とか……」
「秘宝が?無関係すぎるでしょ。だいたい、それならそれでルイズに断ればいんだし。カトレアのためなら、貸してくれたかもしれないわ」
わずかに視線を向ける人形遣い。すると七曜の魔女は、次の考えを提示。
「実は幻想郷で、結構なトラブルになって、ハルケギニアの事を調べる必要が出て来たとかはどう?」
「神奈子が私達に、ハルケギニアの事調べるように頼んでるのに?」
「それもそうね」
パチュリーは少しうつむく。
カトレアの治療を永琳に頼むとき、神奈子との関わりは話してある。だからハルケギニアの事が知りたければ、まず神奈子の所に行けばいい。仮にハルケギニアの秘宝を調べる必要があるなら、神奈子を経由してパチュリー達に頼めばいい。どうにも理由が掴めなかい。もっとも永琳も幻想郷の住人だ。個人的に調べたくなり、自ら動いたという可能性はあるが。
すると魔理沙が口を開いた。
「どっちにしても永遠亭に行ってみりゃ、分かる話だぜ」
「それもそうね。それに、そろそろ幻想郷に一度戻ろうと思ってたから、丁度いいわ」
魔法使い達はうなずくと、さっそく帰り支度のため自室へ向かった。
実は、全員が今回の旅行が終わり次第、一度幻想郷に帰るつもりだった。パチュリー達は研究成果の持ち帰りと備品の補充のため、レミリア達はさすがに長期に館を空ける訳にはいかないため、文はもちろん新聞の次号発行のため、さらに今回は衣玖も戻るつもりでいた。天子が大分大人しくなったので、目を多少離しても大丈夫だろうという事で。それに『緋想の剣』について、総領への執り成しを頼まれていたのもあったからだ。
ただ、それは今すぐではない。今日はもう一つ要件が残っていた。オスマンから頼まれた事が。
授業も終わり日が傾きかけた時間帯。いつもとは違う光景が学院長室にあった。この部屋は結構広めだが、今に限ってはそうとも言えない。大人数がこの部屋に集まっているのだから。
まずはいつもの席に学院長ことオールド・オスマン。対面には、キュルケ、タバサ、ギーシュにコルベール。さらに左右に幻想郷の面々、魔理沙、アリス、パチュリー、レミリア、フランドール、咲夜、こあ、天子、衣玖、文。それとルイズがいた。計16名。ちなみにタバサは、昼頃、シルフィードに乗って学院へ帰って来ていた。無事戻った彼女の最初の歓迎は、涙目のキュルケの飛びかかるような抱擁アタックだったが。
ここに集まった面々のテーマは二つ。まずは、学院を騒がしている襲撃犯、メンヌヴィル。そしてもう一つは幻想郷である。
内容が内容だけに話は結構な時間を要した。途中、レミリアが話を脱線させたり、長い話に飽き飽きした天子を落ち着かせたりと、余計なイベントが挟まったせいもあるが。
結局、長々と時間を使った話合いだったが、ほとんど分からずじまいで話は終わる。どうしてキュルケ達が幻想郷へ行けたのか、帰ってこられたのか。襲撃犯のメンヌヴィルはどこへ行ったのか。幻想郷の面々も、確実な事は何一つ言えなかった。ただ得る物もあった。幻想郷についてより詳しい事が分かったのだから。さらに、コルベールとメンヌヴィルの関係も明らかになった。
実は、オスマンとコルベール。少し前に、彼女達がロバ・アル・カリイエ出身ではないと知っていた。それどころか人間ではないとも。あまりに不自然な行動が多い彼女達に、疑問と不安を持った彼らは、とある人物に訪ねたのだ。そのとある人物とは、ギーシュとモンモランシー。幻想郷メンバーと共に行動したらしい二人に。キュルケとタバサの方が、より詳しいとは思っていたが、一筋縄ではいかない二人。結局、言い方は悪いが一番落としやすい所に向かったのである。
ギーシュは、約束した手前なんとかはぐらかそうとする。これ以上借りを作るのが、嫌なのもあったのだが。しかし、モンモランシーが真相を漏らしてしまう。オスマン達の言う生徒を守るためという理由に納得していたのもあるが、ギーシュを危険に巻き込んだ連中に、不安感を持っていたのもあったからだ。
話が終わったので、キュルケ達も幻想郷組も部屋へと戻っていく。オスマンとコルベールを残し。もうすでに日が落ちていた。
オスマンは、心痛な面持ちでうつむいているコルベールに声をかけた。
「ま、見つからぬものはしようがない。何も君の失態で、見失ったという訳でもなし」
「ですが……。メンヌヴィル君については、もっと早く話しておくべきでした。一番、彼を知っていた私が、私的な理由から口を噤んでしまったのです。教師を目指したと言いながら、こんなあり様では……」
「よい、よい。皆無事だったのじゃ」
「ですが、あの瞬間、幻想郷とやらに飛ばされなかったら、さらにたまたまあの場所にミス・ヤクモユカリがいなければどうなっていたか……。助かったのは、ただの偶然にすぎません!」
「偶然……。まあ、それはそうじゃが……」
ふとオスマンに違和感が浮かぶ。コルベールの偶然という言葉を耳にして。幻想郷という異世界に行ったり来たりしたという現象に心を囚われていたが、よく考えれば奇跡的な偶然がいくつも重なっている点も、奇妙と言えば奇妙だった。
ただ、考えた所で何かが出る訳でもない。オスマンは髭をいじりつつ、口を開く。
「そこはそれ、始祖ブリミルのお慈悲とでも思っておくとしよう。今の状況では、下手の考え休むに似たりじゃ」
「それは確かに……そうですが……」
「ともかく幻想郷の方々とは、とりあえず今まで通り良いようじゃ。幻想郷とやらに入ってしまう件も、ミス・ノーレッジの報告を待つしかないしの」
「はあ……」
コルベールの気分は未だ晴れないようで、言葉に力がない。オスマンはどことなし柔らかい態度を取る。
「君も今日は疲れたじゃろう。明日は休暇としよう」
「しかし……」
「生徒を指導する立場として、平静の気持ちを保つのも教師の務めじゃ」
「……はい。お心遣い感謝します」
やがてコルベールは礼をすると部屋を出て行く。
廊下に出たコルベール。すると一人の女生徒が目に入った。キュルケである。ずっと待っていたようだ。他の者の姿は見えない。ただ様子がおかしい。快活な彼女らしからぬ曇った色合いが、表情に浮かんでいた。
「あの……。ミスタ・コルベール……」
「何でしょうか?」
「も、申し訳ありません!」
始祖に祈るかのように俯くキュルケ。コルベールの知っている彼女とあまりに違う態度に、少々面食らう。
「その……。いったいなんの事でしょうか?」
「学院を抜け出す話を持ち出したのは……あたしです」
「そうですか。それはいけませんね」
「あたしのせいで……、ミスタ・コルベールを危険に巻き込んでしましました。それに……大やけどまでして……」
「気に病む事ではありませんよ。生徒を守るは教師の務めですし。それにこうして私は、ピンピンしています」
「で、ですが、あのヨーカイがいなかったら、どうなっていたか!」
キュルケの瞳に、潤んだもの見える。半身でも失いかけたかのような震えた声が届く。戸惑うコルベール。キュルケは懺悔でもしているかのように、言葉を綴る。
「そ、それだけではありません!あたしはあなたの事を、臆病者と陰で罵ってました!本当は、勇気のある人だなんて全く気付かずに……」
「そう言うのも、無理はありません。実際、兵役を拒否したのですから。ただ、あの時も言いましたが、炎の魔法で人を傷付けたくなかっただけです。攻撃向きと言われる火の系統ですが、人を助ける道もあると伝えたいのです」
「はい。今ならあたしも、あなたの言われる事が分かります」
やけに素直なキュルケ。いつもの妖艶さとしたたかさが微塵もない。コルベールは教師然とした態度は崩さないが、頭の中は益々混乱。
「い、いずれにしても、この件は学院長預かりとなりました。原因も幻想郷の方々が、調べると言われていましたし。ともかく、皆無事だったのです。素直に喜びましょう」
「はい……」
「ですが、学院を勝手に抜け出した件だけは、見過す事はできません。罰はキッチリ受けてもらいますよ」
「はい!」
罰を受けるというのに、何故かキュルケの返事は喜んでいるように聞こえる。コルベール、頬がわずかに引きつっている。いったい彼女に何が起こったのか理解不能。苦笑いを浮かべつつも、その場はなんとか収めるのだった。胸の内がざわめくような予感を感じながら。
その後キュルケはどういう訳か、何か用事を見つけてはコルベールを手伝ってくれるようになる。というか、付きまとうと言った方が近い。最初コルベールは、自らの行いを深く反省しているのだろうと思っていたが、そうではないと分かるのは結構後だったりする。
オスマンとの話も終わり、幻想郷組の地下アジトに全員戻っていた。今は転送陣の前に、荷物と土産が山盛りにとなっている。いよいよ幻想郷へ帰ろうと言うのだ。今回はレミリア達が来た上、旅行に行ったせいもあり、荷物も人数も盛りだくさん。魔理沙がこの光景を見て、一言。
「一度で行けるか?」
「なんとかなるでしょ。何人かには空、浮いてもらわないといけないけど」
アリスが人形達に荷物を運ばせながら、そんな事をつぶやく。
この転送陣は天井にも魔法陣が描かれており、上下の魔法陣に挟まれた空間にあるものを全て転送する。飛んでいても問題はない。
誰もが慌ただしく、転送陣と自分達の部屋を行ったり来たりしている中、それを椅子に座ってぼーっと眺めている人物がいた。天人、比那名居天子である。彼女だけは留守番だ。ルイズの使い魔なので、一応約束を律儀に守っている訳だ。もっとも一旦帰れば、天界に連れ戻される事、間違いないのもあるが。
その時、何かを思い出したのか、ふと瞼が大きく開く。立ち上がると、パチュリーに近づいてきた。
「ねぇ、パチュリー」
「何よ」
「学院長室で、気づいたんだけどさ。これ」
そう言って、天子はパチュリーに左手の甲を見せた。
「えっ!?ええーっ!?」
魔女の叫びが地下に響く。一斉に視線が紫寝間着に向いた。魔理沙がこの忙しい時になんのトラブルだという具合に、近づいてきた。
「なんなんだよ」
しかしパチュリーの背中は固まったまま。天子の左手を掴んで動かない。魔理沙がパチュリーの視線の先を覗き込む。
「あ?ああっ!?」
「何よ。どうしたのよ」
すると今度はアリス。そして彼女達の目に入ったのは……。
虫食いだらけのようになってしまった、ガンダールヴのルーンだった。もはや元姿の半分も残っていない。
魔理沙が天子に尋ねる。
「いつから、こんなんなってたんだよ」
「知らないわよ。さっき気づいたんだもん」
「よく今までバレなかったな」
ルーンに視線を戻してつぶやく。ようやく、パチュリーが天子の手を離すと一言。
「何か心当たりとかある?前、欠けた時は、デルフリンガー持った時だったけど」
「う~ん……。特にないわね。あの時みたいなのは、あれっきりだし」
天子は宙を仰ぎながら記憶を掘り返すが、取り立てて引っかかる出来事は頭に浮かんでこなかった。脇ではアリスが腕を組みながら、眉をひそめている。
「にしてもペースが早いわね。これじゃ、ルイズが卒業する前に完全に消えちゃうわよ。っていうか、だいたい今でも契約成立してるの?」
「さあ」
肩を竦める天人。
普通の使い魔なら共感覚ができる、知能が上がるなどの効果があるので、仮に契約が切るとすぐに分かる。ところが、天子は共感覚ができない上、知能自体は元々人間以上。さらにガンダールヴにはあらゆる武器を使いこなせる特性があるのだが、天子はそんな能力必要としないので能力が発揮されたためしがない。しかも、ハルケギニアは地球で言えば中世から近世の科学力。現代の知識もそれなりにある天子。少なくとも彼女が目にした武器で、知らないものなどなかった。
こんな訳で、契約が切れたかどうか気づかないのも無理はない。ただ実のところ、確かめる方法がなくはないのだが。
魔女たちは、この状況をどう捉えるか考えている中、パチュリーが根本的な話を一つ。いつもの澄まし顔で。
「天子はどう考えてるの?」
「どうって?」
「確かルイズとの約束では、契約が切れるまででしょ。つまり、契約が切れたと分かったら、帰るのかって話よ」
「そうか。そんな話だったっけ。どうしよっかな……。うん、卒業くらいまでは付き合ってあげてもいいわよ。卒業してからなら使い魔がいなくっても、別に困らないでしょ。使い魔のいないメイジも結構いるし」
あっけらかんと答えを出す天人。
「それに、私がいなくなったら、代わりの使い魔呼ばないといけないんでしょ?また何度も失敗するハメになったら、落第するかもしれないしね」
「意外ね。ルイズの事、一応気にかけてたの?」
「ふふふ、仁徳を身に着けたのよ」
天子が起伏の薄い胸を張っている。レベルが一つ上がったと言わんばかりに。だが魔理沙がそれを鼻で笑っていた。
「休みを、少し延ばしたいだけじゃねぇのか?」
「うるさいわね!」
面白くなさそうな天子。魔理沙は表情を戻すと、話を変える。
「ま、とにかくだ。こんなザマのルーン見られるのはマズイぜ」
アリスはうなずきながら提案。
「そうね。手袋でもしとく?」
「手袋じゃ、簡単に破れるんじゃないのか?天子が丁寧に扱うなんて、とても思えねぇぜ」
「それもそうね。けど天人に刺青なんて無理だろうから……、マジックアイテムでも用意する?」
「どんなヤツをだよ」
「手の甲に、ルーンを投影するようなの。どうせ一旦幻想郷に戻るんだし、あっちなら簡単に作れるでしょ」
「だな。それにしようぜ」
魔理沙の返事と共に、パチュリーも賛同の視線を送る。
ともかく、とりあえずの対策だけは思いついた。最後に魔理沙が天子に向かって一言。
「いいか。帰ってくるまで、適当に誤魔化してくれよ」
「うんうん。ま、なんとかなるでしょ」
「……」
天人の投げやりの返事に、一抹の不安を感じる魔女たち。
それからほどなくして帰郷の支度は全て終わる。転送陣の上には荷物の山。そして10人ほどの人妖。その前には天子やルイズやキュルケ達もいた。見送りである。すると魔理沙がルイズに向かって一言。
「んじゃぁな。一旦帰るぜ」
「ええ。それと、絶対忘れるんじゃないわよ!」
「任せとけ。キッチリ、落とし前つけてくるぜ」
白黒魔法使いの言葉を、ルイズは渋々うなずく。彼女が言った忘れてはならない事とは、始祖の秘宝について。オスマンとの話の後、魔理沙達から打ち明けられたのだ。『始祖のオルゴール』と『風のルビー』が鈴仙に盗まれたと。激高するルイズをなだめながら、魔法使い達は約束した。必ず、秘宝を持ち帰ると。一方、ルイズには別の気がかりがあった。秘宝を盗む命令を出したのは、鈴仙の上司、永琳だろうという事だ。その稀代の薬師に、カトレアの治療を頼んだルイズ。本当に、治してくれるのか不安になるのも無理はない。
全員が転送陣に入る。アリスが声をかける。
「おとなしく留守番してなさいよ。こっち来た途端に、トラブルとかごめんだから」
「任せなさい!」
腕組んで悠然と、答える天子。見た目はとても頼もしげ。やがて荷物の山と、10人近い人妖は霞むように消えていった。
白の国、アルビオン。かつては『アルビオン王国』と呼ばれていた。だが現在は『神聖アルビオン帝国』と呼ばれている。ただ首都は今でも変わらず『ロンディニウム』。そして王城も同じく『ハヴィランド宮殿』である。
誕生して間もないこの国は、今慌ただしい状況にある。戦争状態にあるのだから無理もない。その相手はトリステイン王国と帝政ゲルマニアの連合軍。空軍力ではなんとか五分以上だが、総戦力では劣勢だった。ラ・ロシェールでの大敗が、未だ響いていたのだ。しかしこの宮殿内で、暗い顔している兵は少ない。この国には他にはないものがあるからだ。聖なる存在、虚無の担い手が皇帝自身なのだから。
だが、そんな士気に溢れた宮殿の中。暗い表情を浮かべている女性が一人いた。皇帝クロムウェルの秘書、シェフィールドである。自分の執務室でテーブルの木目でも数えているかのように、視線を落としていた。
「どうする……?どうすればいい……?」
他に誰もいない部屋で、ポツリとつぶやく。彼女の頭には難問が溢れかえっていた。
シェフィールドが幻想郷から戻った後、彼女の真の主、ガリア王ジョゼフに謁見。『始祖のオルゴール』を献上しに来たという名目で。予定よりずっと早かったが、ジョゼフはあまり気にしていないようだった。謁見は何事もなく終わる。
やがて彼女は、二つほどの用をガリア本国で果たした。その二つの用とは、まずは八意永琳からもらった異質な薬の量産を進める事。ガリアの研究機関に依頼したのだ。ただハルケギニアでは、薬の製造はもっぱら水系統のメイジの仕事。薬も水薬や軟膏が多い。だが永琳の薬は丸薬。異世界の薬の上、薬の有り様まで違うので、量産できるかはかなり厳しいと考えている。そしてもう一つの用は、ガリアと協力関係あるエルフ。その知識豊富な彼に一つ質問をする事。『幻想郷』という名について。だが、聞いたこともないと返事。
結局、彼女は大して得るものもなく、アルビオンに戻る事となる。
戻ってからは、兵力の資料などを見ながら、思案を巡らせていた。現状、神聖アルビオン帝国の堅持が彼女の役目。少なくとも主であるジョゼフは、この国の扱いについてなんの指示もしていない。ならば当初の予定通りに進めるだけだ。
だが戦力差はいかんともし難い。水際で押しとどめるのが失敗すれば、確実に負ける。切り札となるべき『アンドバリの指輪』は、異界の賊どもに盗まれた上、行方知れず。下手をすればトリステインの手中にある。幻想郷の人外達は、ヴァリエール家と繋がりがあるのだから。逆に、指輪を使ってくるような策に出られたら、なおさら戦争は厳しくなる。
難問は増えるばかりで、解決策は見つからず仕舞い。抱えた頭は、なかなか上がらなかった。
「ふぅ……」
大きなため息を漏らす。気分を変えようとかと席を立ち、窓の外を眺めた。
その時、ノックの音が耳に届いた。同時に衛兵の声が耳に入る。
「クロムウェル陛下のお越しにございます」
「分かりました」
シェフィールドは穏やかな声で、そう言って扉を開けた。まさしく忠実なる秘書そのもののように、恭しく礼をしつつ。扉の開いた先には、威厳を整えた皇帝がいた。
「お前たちは下がれ。シェフィールドと重要な話がある」
「ハッ」
衛兵たちは、扉を閉じると部屋から出て行った。するとシェフィールドの態度は一変、杜撰なものになる。主君である皇帝を差し置いて、先に自分が椅子に座る。対する皇帝は逆。シェフィールドの机の前で立ちっぱなし。
彼女はクロムウェルを見上げ、疲れたように問いかけた。
「で?なんの用かしら?」
「その……。トリステイン魔法学院襲撃は失敗したとの報告を受けましたが……」
「……。嫌味でも言いに来たのか?」
「い、いいえ、そういう訳ではありません!」
弱腰のクロムウェル。とても皇帝と秘書の会話ではない。だがこの二人に限っては、当然とも言えた。何故なら彼は、彼女が担ぎ上げた元はただの平民司祭なのだから。さらに彼女の正体はガリアの間者。クロムウェルの命脈は、シェフィールドに握られていると言っても過言ではないのだ。
恐る々々口を開くお飾り皇帝。
「と、とにかく、トリステイン、ゲルマニア連合軍への対策をそろそろ提示していただかねば……。将軍達が不信に思いはじめております。未だに本格的な作戦会議がないのは何故かと」
「……」
「あの……以前……アンドバリの指輪が鍵となると伺ったのですが……」
「…………」
「ミス・シェフィールド?」
「見つからなかった」
「見つからなかった……と言いますと?」
「二度も言わせるな!アンドバリの指輪の奪還に、失敗したと言ってるのよ!」
シェフィールドは激高し、立ち上がる。椅子を跳ね飛ばす勢いで。その表情は、いらだちに溢れている。ただただ気圧される皇帝。だがそこには何故か、当惑の表情があった。
「そ、その……。何を言われているのか、分からないのですが……?」
「何だと?」
「ア、アンドバリの指輪の奪還とは、何の話でしょうか?」
「き……貴様……私を愚弄するつもりか?」
思わずテーブルを叩くシェフィールド。それに戸惑うだけのクロムウェル。
「その……アンドバリの指輪ならありますが……」
「な、何?」
「ですから……いつも通り、私の指に嵌っております……」
「な……!?」
シェフィールドの口は半ば開いたまま。クロムウェルの言葉が信じられない。一方のクロムウェル。シェフィールドを諭すかのように、ゆっくりと手の甲を見せる。
しかし……。
「どこにあると言うのよ!ないではないか!お前の目はどこに付いてる!」
「え!?あ?そ、そんな!?」
クロムウェルの指に、指輪はなかった。あったのは指輪が嵌っていた痕だけである。
「ど、どうも、嵌めてくるのを忘れていたようです。た、ただちに持ってまいります!」
そう皇帝は告げると、慌てて部屋を出て行く。苦々しげにシェフィールドは、その後ろ姿を見送った。
それからどれほど時間が経っただろうか。シェフィールドの苛立ちがいよいよ限界に達しようとしていた時、狼狽し皇帝の威厳も何もかも捨て去ったクロムウェルが戻ってくる。
「み、み、見つかりません!ア、アンドバリの指輪がどこにも!」
「当たり前よ!奪われたのだから!」
シェフィールドは、元平民司祭のあまりの無様さに思わず罵っていた。当のクロムウェルは、目が泳ぎここに非ずという表情。つぶやくように尋ねる。
「そ、そんな……いつの間に……」
「貴様……!浸水の日だ!あれほどの騒ぎになったと言うのに、忘れたというのか!?」
「こ、浸水?それはいつの事でしょうか……?」
「賊が来た、翌日だ!」
「賊?賊とは……?市街での話ですか?」
「お、お前は……!」
手すら上げそうになるシェフィールド。だが、はたと気づく。いくらこの男が無能だと言っても、さすがにこれはおかしいと。あの大捕り物となった賊騒動や、汚物まみれとなった宮殿の浸水を忘れるなどあり得ない。
すると奇妙な出来事が脳裏に浮かぶ。あの浸水の後、兵達が彼女の陰口が、度々耳に入る事があった。屈辱的なあだ名も。嘲笑するような視線を向けてくる時もあった。だが、再び宮殿に戻って以来、そんな事は一度もない。兵達は何事もなかったように、彼女の隣を通り過ぎていた。
シェフィールドの表情が、怪訝に曇る。態度は、いつもの落ち着いた秘書に戻る。すると、クロムウェルに告げた。
「お前の言うことは、分かったわ。もう、戻っていいわ。対連合軍については、後で伝える。今は下がりなさい」
「は、はぁ……。ですが指輪については……」
「それも後の話よ。それより、衛兵隊長を呼びなさい」
「は、はい……」
成り上がり皇帝は首を捻りながら、訳が分からないと言ったふうに、部屋を後にする。
後から来た衛兵隊長に、彼女は賊と浸水の件について尋ねた。だが彼も、何の話か分からないという具合に答える。
その後シェフィールドは、地下へと向かう。自らの作業部屋、ガリアで開発した数々のマジックアイテムが秘匿された工房へ。
ゆっくりと扉を開けるシェフィールド。だがすぐに違和感に襲われた。臭いがしないのだ。あの息を止めたくなるような臭いが。
地下であるこの部屋は、浸水の時、長らく汚水に使っていた部屋の一つ。彼女だけしかこの部屋に入れないのもあって、なかなか掃除が捗らず、臭いが上手くとれなかった。だが、今は部屋の中身をそっくり入れ替えたかのように、臭いが全くしない。
違和感を益々大きくするシェフィールド。やがて書類棚の側に立つ。そして引出しの一つを開けた。
「なっ!?これは……いったい?」
目に入ったのは、様々な資料の書類。ただの書類だ。だが明らかにおかしい点があった。何事もなく、無事にそこにあったのである。書類に使っている羊皮紙は、水に強いが、インクは簡単に流れてしまう。このため書類としては濡れる事は致命的なのだが、明らかに濡れた様子がないのだ。
「どういう事……?」
狼狽えるシェフィールド。
重い足取りで階段を上ると、視界にワルドが入った。
「これは、ミス・シェフィールド。戻っておられたか」
「え……ええ……」
「結局、あの傭兵共はしくじった訳か。大きいのは口と態度だけだったな」
「ええ……」
どこか上の空の返事に、ワルドは意外そうな表情を浮かべる。この不遜な秘書も、作戦失敗にショックを受けているのかと。するとそのシェフィールドが口を、開いた。どこか弱々しい声色で。
「その……ワルド子爵。以前、大けがを負われたのを憶えて……いますか?」
「ああ……まあな……」
いきなり話題が変わり、少々不自然なものを感じるワルド。だが人当りのいい美男の子爵は、笑って返す。
「はは、面目ない。竜騎士の隊長ともあろうものが、ドラゴンより落ちるとは」
「落ちた理由をご存じでしょうか?」
「あまり、いじめないでくれたまえ。怪我のショックか、よく覚えていないものでね。次の戦ではぜひ、面目躍如と行きたいものだ」
「憶えていない!?」
「醜態を、何度も指摘されるのは、あまりいい気がしないのだがね」
「これは……失礼いたしました……」
「……?」
やけにしおらしく詫びをする秘書。ますますシェフィールドらしくない。ワルド自身は彼女をあまり快くは思っていないが、さすがに気にかかる。
「体の調子でも悪いのか?いつものあなたらしからぬように、感じるのだが……」
「失策が少々応えているのでしょう。ですが、ご心配をおかけするほどではございません」
シェフィールドは軽く礼をすると、その場を去る。逃げるかのように。残されたワルドは、彼女の態度について思案を巡らすが全て憶測の域であった。
次にシェフィールドが向かったのはロンディニウム市街。わずか護衛を連れ、賑わう道を進む。厳しい顔つきのまま一言も漏らさず。だがその脳裏には、いくつもの言葉が出ては消えていた。
(どういう訳?賊の事も、浸水の事も誰も覚えていないとは?)
(連合軍の策謀かしら?私がいない間に。しかし、大規模過ぎる。宮殿内の全ての者の記憶を無くすなどと。数人ならいざ知らず……)
(いや、もしかして私の記憶の方が間違いなのかも……。違う。それはない。実際、アンドバリの指輪はないのだから)
(では、幻想郷の連中の仕業なのか?でも、どうにも小賢しすぎる気もするわ)
シェフィールド自身は、風見幽香や八雲紫と言った大妖と対峙した。その力を直に目にした。彼女達なら小手先のような手間をかけずとも、トリステイン有利に事を運ぶのは難しくないと感じている。
結論の出ないまま、シェフィールドの足が止まった。彼女の視線の先にあったのは一軒の宿。一連のロンディニウムでの騒動の出発点。アンドバリの指輪強奪作戦のため、ルイズ達が泊まった宿だった。
じっと宿を見つめていたシェフィールド。一つ気になる事が目に入る。それを胸に留めながら、宿の入口を潜った。宿屋の主人の迎えの声が届く。
「はい。いらっしゃ……」
シェフィールドの後に続く衛兵たちを見て、顔色を変える主。帝国関係者と分かって。急に腰が低くなる。
「こ、これは……その何のご用件でしょうか?」
「主人、一つ伺いたい事があります」
皇帝秘書は、あくまで丁寧な物腰で尋ねる。
「屋根が片方、新しいようですが、修理でもしたのでしょうか?」
「ええ……まあ。あの大捕り物のせいと言いますか……」
「大捕り物?」
「あれですよ。トリステインの賊がここに泊まって、軍隊がたくさんやって来たヤツですよ」
シェフィールドの目は大きく見開いていた。飛びかかるように、主に寄っていく。
「お、憶えているのか!?」
「は、はぁ!?な、何をです?」
「300名ほどの部隊で、ここを取り囲んだ事をよ!」
「いや……、私は……眠らされていたもんで。起きたら、宿がメチャクチャになってて、賊の話は後で聞いたんですよ。事情聞きに来た武官の方に。その時、知ってる事は全部話しましたよ」
「賊の、賊はどんなヤツだった!?」
「だから、全部、話しましたって。もう他に覚えてる事なんて、ありませんよ。学校通っているような女の子と大人が一人か二人、全員メイジっぽかったって」
「……!」
言葉がなかった。その話は、事情徴収の報告書にあった内容そのままだった。やはり、あの出来事はあったのだ。
用が済むとシェフィールドは、宿屋を後にする。最後の目的地に向かう。そこは下水道の入口だった。護衛達は、顔をしかめいかにも嫌そう。無理もない腐臭が辺りに漂っているのだから。だがこの虚無の使い魔だけは、厳しい視線を下水道の奥へと向けていた。彼女は護衛達に、命令する。
「あなた達。下水道の中に壁、もしくは壁が崩された跡があるか探しなさい」
「壁……ですか?」
「ええ」
「はい……。分かりました」
訳が分からないという具合に首を捻りながら、護衛達は下水道へと入っていく。
シェフィールドが探しているのはワルドの報告書にあったもの。あの浸水は人為的に起こされたらしい、と書かれていた。地図も添えられ、下水を堰き止めた壁の場所が記載されていた。だが今日、執務室を探したが、その書類はどこにも見当たらない。宮殿内の者たちの記憶と同じく。
シェフィールドは頭の中に残っているわずかな記憶を頼りに、その壁を探そうというのだ。
どれほど時間が経っただろうか。ようやく護衛達が戻ってくる。だがその表情は驚きを孕んでいた。
「ありました!壁です!いや、壁の痕跡です!壁自体はすでに壊されていましたが、確かにその跡は残されていました」
「やはり、そうですか……」
「しかし、一体なんのために、誰が……」
「それについては、もっか調査中です。あなた達が気にする必要はありません」
「は、はい」
「故に、この事は他言無用。国家の大事に関わります」
「はい」
護衛達は息をのみつつ、了解する。
そして一同は下水を後にした。宮殿へと足を進める。その間もシェフィールドは思案に暮れていた。
(訳が分からない……。あの一件を伏せる工作だとしても、証拠を残しすぎているわ。逆に混乱させるためなら、憶えている者が宮殿内にまだまだ多い方がいい。何もかもが中途半端。一体目的は何?だいたい、どうやればこんな事が……?)
起こった出来事は宮殿内のほとんどの者の記憶はもちろん、物的証拠すら消し去ったという異質で大規模なもの。一方、宮殿外では記憶も物的証拠も残っている。起こった事は奇異、だが手際は杜撰。それ故、逆に全容を掴みかねていた。意図がまるで読めない。
シェフィールドの背に、嫌な汗が流れていた。
キュルケがしおらし過ぎたかなとか思いながらも、そのままにしてしまいました。