トリステイン上空に奇妙な一団が飛んでいた。もし見つかれば騒ぎになるような団体が。だが今は夜な上、人通りもほとんどないので見つかる事はないだろう。
一行は、道なりにその上空を飛んでいた。トリステイン軍が拠点としている城へ向かって。直線で行けばずっと早く着くのだが、そこまで正確に場所が分かっている訳でもないので、こうするしかなかった。なるべく急ぐというので、ハルケギニアでは結構速め。地球で言う時速400km/h程度。大人の風竜とまではいかないが、火竜の最高速度の倍以上。しかもそれが巡航速度なのだ。まだ子供のシルフィードではこの速度にはついてこられないのでどうしたかというと、衣玖が抱えていた。竜繋がりと言う訳ではないのだが。パチュリーは、こあがぶら下げているブランコのようなものに乗っている。こっちは健康上の問題があって。
一方、ルイズ達はどうしているかというと、3メイルほどの要石の上に乗っていた。自分の分も含め、全部飛ばしているのが天子。契約してから調子がいいので、この程度は大したことないそうだ。
この時速400km/hという速度。訓練された竜騎士でもなければ、まともに風を受けきれない。普通の人間では吹き飛ばされる。だが全員平然としていた。みなが結界や防御魔法、空気の制御や障壁を築いたりと、各々の能力で風を防いでいた。そんな訳で、この高速でありながら要石の上にいるルイズ達は、無風状態にあった。キュルケとタバサはこの状態にただただ感心。シルフィードで飛び回って、この風の問題にはいつも悩まされるのもあって。
キュルケはこの状態に慣れてくると、いくつもの聞きたいことが頭に浮かんできた。さっそくルイズに声をかける。
「ねえ。あの人たち紹介してくれない?」
「えっ!?今、呼んでくるの?」
「そうじゃなくって、素性とか教えてって話」
「ああ、そういう事」
ルイズは納得すると、話しはじめようとする。キュルケの顔に好奇心が浮かんでいるのが分かる。それだけじゃない。こういう時は、大抵本を読んで時間を潰しているタバサが、本を閉じたままルイズの方を向いていた。
ルイズは口を開いた。
「えっとね。驚かないでよ。ほとんど人間じゃないわ」
「えっ!?妖魔って、あの翼人だけじゃないの?」
「妖魔とも違うんだけど……。人間は、彼女だけ。あの黒い大きな帽子かぶった、おとぎ話みたいなの。名前は霧雨魔理沙」
そう言って魔理沙を指さす。
「メイジよ」
「マントも杖もないわよ」
「だって異世界だもの。魔法を使うって言ってもいろいろ違うわ」
「そうなの。魔法を使えるって貴族なの彼女?」
「えーっとね、とりあえずそれは置いといて。長くなるから。それと彼女、お調子者でガサツな性格だから。言ってる事を、あまり真に受けないでね」
「そう」
ちょっと難しい顔のキュルケ。人を振り回すのは好きだが、振り回されるのはあまり好きではない。お調子者でガサツという事は、人を振り回すタイプという事だ。要注意と彼女は思った。
次にルイズはパチュリーを指す。
「一番世話になったのが彼女。パチュリー・ノーレッジ。メイジよ。ただし人間じゃないわ。あー見えても100歳以上なの」
「え!100歳!?」
「そうよ。だいたい幻想郷には100歳超えなんてゴロゴロしてたわ。それどころか1000歳、万歳までいるって聞いたわ」
「…………」
キュルケ達には言葉がない。万歳とか言ったら、始祖ブリミル以前の存在ではないかと。オールド・オスマンが100歳以上とか言われ、妖魔か何かのような影口を叩かれる事もあったが、異世界から見るとただの凡人レベルなのかとちょっと驚愕。
ルイズは話を続ける。
「タバサには、厳しい事言ってたけど、根はいい人よ。無愛想な所があるけどね。あ、それと読書マニア」
「そうなの、意外にタバサと気が合うかもしれないわね」
タバサはパチュリーの方をおもむろに向く。そのパチュリー。まるでいつものタバサと同じように、本を読んでいた。わずかに口元が緩むタバサだった。
そしてルイズはパチュリーの上を指さす。彼女が乗っているブランコをぶら下げているこうもり翼の翼人を。
「あの子はこあ。悪魔よ」
「悪魔って……。そんなに性格が悪いの?彼女」
「そうじゃないわよ、本物の悪魔って事。聖典に載ってる天使と悪魔の悪魔」
「えーー!?」
思わず声を上げてしまうキュルケ。タバサもその目が見開いていた。
「悪魔って……悪魔?」
「そう。悪魔。それでパチュリーの使い魔よ」
もう一度キュルケ達はパチュリーを見る。悪魔を使い魔にするなんて、何者だと。メイジどころではない。
そんな二人に構わず、ルイズは続ける。
「とは言っても基本的にはいい人よ」
「悪魔がいい人?何言ってんの?」
「そう思っちゃうわよね。私も最初はそうだったし。とにかくそうなの。それに、そんなに強い悪魔じゃないから、警戒しなくてもいいわ」
「そうかもしれないけど……」
不安にならずにはいられないキュルケ達だった。
次は人形と共に飛んでいるアリスだった。
「彼女はアリス・マーガトロイド。メイジよ。彼女も人間じゃないわ。人形操作を得意としててね。こっちに来たのは、その人形の研究のためなの」
「人形ってガーゴイルとか、使うの?」
「逆、ガーゴイルを研究したいんですって」
「へー。なんか今まで聞いた人より、一番メイジらしいわね」
「そうね。この中では一番、ハルケギニアのメイジに近いと思うわ」
もっとも魔法自体は、パチュリーの方が近いのだが。
そして残った内の難物その1。烏天狗。
「えっとね、彼女は射命丸文。見ての通り人間じゃないわ。烏天狗って種族なの」
「翼人じゃないの?」
「翼人は幻想郷にはいないわ。羽があっても、いろいろ種族が違うのよ。こあにも羽があるけど悪魔なようにね」
「ふ~ん」
「で、職業は新聞の作成配布」
「妖魔に職業?新聞作り?何よそれ。どういう意味?」
キュルケ達には妖魔と職業という言葉がまるでしっくりこない。笑顔で翼人が印刷業を営んで、店頭で本を売っているような、シュールなイメージが頭を巡る。そして、それはないと、自分でツッコミを入れていた。
一方、細かい事言いだしたら終わらないので、ルイズは流す。
「いいから、そこは置いといて」
「後で聞くわよ」
「分かったわよ。それで人柄にいろいろ問題があるわ。好奇心旺盛、表裏がある、自分本位、打算的。そんな性格だけど、能力もかなり高いの」
「うわー……。厄介そうね」
「だから、何を話すにしても、彼女の考えを読むくらいのつもりでいた方がいいわよ」
「疲れるから、相手にしない方がよさそう」
キュルケは最初に話し掛けられた時の、ふてぶてしさを感じる笑顔を思い出していた。
さらに難物の二人目。天人。
「比那名居天子。で、私の使い魔なのよ」
「あ、言ってたわね。使い魔持てたのね」
「苦労したわ。いろいろと……」
ルイズはしみじみと天子の無理難題を思い出す。そんなルイズを他所にキュルケの質問は続く。
「でもあの時の会話聞いてると、結構癖がありそうに思えるんだけど」
「その通りよ!自分勝手で気分屋!その癖変な所で気位が高くって……」
「ふふ、なんか前のあなたみたい」
「私はそんなんじゃ、なかったわよ!」
「でもそれで、やってけるの?主として」
「それが不安なのよね。言う事聞きそうにないし。勝手な事やりそうだし。どうしよう……」
突然に悩んで落ち込むルイズ。キュルケにとってはいじるネタにしかならないが。それはともかくここは疑問が前に出る。
「それで、彼女も人間じゃないんでしょ?」
「そうよ……。天人なの」
「天人って?」
「えっと……天使」
「天使?」
「天使と悪魔の天使よ」
「え!?えーー!」
二度目の叫び。タバサの方も目を見開いて固まっていた。今度は天使の登場とは。
もちろん天人と天使は違うのだが、ルイズはもう面倒くさくなって、説明しやすいのを選んでしまった。
キュルケとタバサが唖然としている所で、最後の相手。シルフィードを抱えている、竜宮の使い。
「さっき初めて会ったばかりだからよく知らないのよね。えっと……永江衣玖?だったかしら」
「初めて会ったってどういう事?」
「天子を追っかけて来たらしくって、運悪くこっちに来ちゃった?みたいなの」
「ふ~ん……。彼女も人間じゃないのよね」
「なんか天使らしいわよ。神の伝令をやってるとか言ってたし」
「えっ!?か、神の伝令!?」
またも天使の出現に、三度目の叫びを上げそうになった。ちなみに、衣玖は出発する時に翻訳魔法をかけてもらった。ようやく言葉が通じるようになっている。
キュルケは、月光の晒されたこの情景を見て、いったいどういう集団だと思ってしまう。人間のメイジに、人外のメイジが二人、悪魔に天使二人、そして職業持っている妙な翼人みたいなの。キュルケもタバサも、常識という言葉が崩れそうになっていた。ルイズはこんな混沌とした世界にいたのかと、驚くしかない。これなら人が変わっても不思議はないと思ってしまった。
しばらく会話を弾ませていると、眼下に城塞都市が見えだした。目的地にたどり着いた。空にはまだまだ月が上っている。さすがに早い。もし馬なら一日半以上。シルフィードでも、着いた頃には夜が明けていただろう。幻想郷の連中の飛行能力は、半端じゃなかった。
一同はやや城から離れた場所に降りる。このメンバーで城に突入すれば、混乱間違いなしなのもあって。
トリステイン軍が集結している街の前。そこに一人の少女の姿があった。
「ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがまかり越しました。アンリエッタ・ド・トリステイン殿下への謁見をお許しいただきたい!」
月夜の中、ルイズは街を囲む城壁の門の前で大きな声を張り上げる。すると城壁上の出窓から見張りの兵が顔を出した。その顔は明らかに疑っている。
「ヴァリエール公爵の三女ともあろう方が、このような夜更けにたった一人で何用ですか!?」
「祖国存亡の危機と知り、参戦のお許しをいただきに参りました!」
「お一人で、ですか!」
「助力してくれる者たちを連れております!ただ今は別の場所で待たせております!」
と言っても、見張りの兵は表情を緩めない。それも当然。確かに貴族の子女のように見えるが、それだけに真夜中にたった一人で、最前線にやってくるなんてどう考えてもおかしい。しかも辺りを見ると幻獣はもちろん馬すらない。ここは隣町からかなりの距離のある街。乗り物なしに来られなくはないが、貴族が付き人もなしに、そんな距離を徒歩で来たという事になる。見張りは益々疑いの目を濃くすると、話しかける。
「ヴァリエール公爵が三女様との証がなくば、門を開く訳にはまいりません!」
ルイズは、まあこうなるだろうとは思った。今ので開けたら、逆にトリステイン軍に幻滅してしまう。だが取って置きの秘策があった。
「ならば姫殿下にお伝えください!アミアン包囲戦はルイズの勝ちで、クリーム菓子争奪戦も私の勝ちでしたと!」
「な、なんですと……?」
「ですから、アミアン包囲戦はルイズの勝ちで、クリーム菓子争奪戦も私の勝ちでしたと!」
「?」
意味が分からないという顔をすると、見張りは引っ込んだ。すると今度出てきたのは隊長らしき人物。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様と申されましたか。ただ今の口上、もう一度お願いいたします」
ルイズは三度、同じ事を言う。隊長はそれを書き留めた。
「しばしお待ちを」
そう言って、引っ込んだ。ルイズはようやく一息つく。隊長は今の口上を、密偵の合言葉か何かと思ったのだろう。確かにそうとも言える。アミアン包囲戦はルイズが幼いとき、王女アンリエッタとの遊びだったものだ。これを知っているのは幼馴染の二人だけなのだから。
静まり返った門の前で、空を見上げる。戻ってくる直前は、学院でどう言い訳するかを考えていたのに、まさかこんな事になっているとは。幻想郷に召喚された時もそうだが、世の中とはままならないものだなんて思ってしまう。
やがて、鈍い音が門からした。だんだんと跳ね橋が降りてくる。そしてズンと重い音を立てて、完全に開いた。橋の先の門がゆっくりと開くと、近衛兵が数人出てきた。その隊長らしき人物が近づいてくる。ショートの金髪をパッツンと切りそろえた女性。やけにキツイ目が印象的だった。
彼女の名は、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン。元平民の騎士で、近衛である銃士隊の隊長だ。元々は宰相、マザリーニ枢機卿が、レコン・キスタの活動を懸念し実験部隊として設立。平民部隊の戦闘力を底上げするのが目的だった。坊主の暇つぶしと陰口を叩かれながらも、なかなかの成果を見せていた。だが、ラ・ロシェール攻防戦で、グリフォン隊が壊滅。その不足を補うため、急遽アンリエッタの命で近衛に昇格したのだった。
アニエスは厳しい顔つきのまま、語り掛ける。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール殿。陛下が謁見をお許しになられました。お越しください」
「はい。え!?陛下?」
「ご存じありませんでしたか。アンリエッタ・ド・トリステイン陛下はほんの数日前、即位されました。何分、厳しい国情のため慌ただしく儀式をなされ、十分告知できませんでしたので、ご存じないのもやむを得ないかと」
「そうですか……」
いきなりの即位に、アンリエッタの、トリステインの状況の想像以上の厳しさを噛みしめる。
そのままアニエスと共に、街の中に入る。城への道を進む中。所々に立つ兵には緊張感に溢れた物々しさがあった。ここが戦地だと思い知る。
やがて城の中へ案内され、ある部屋にたどり着く。そこは執務室ではなく、アンリエッタの寝室だった。突然の来訪に、準備する暇がなかったか、それほど自分に会いたかったか。とにかくルイズは久しぶりの面会に緊張する。しかも、ただの幼馴染との再会ではない。自分がここに来たのはアンリエッタを、ひいては国を救うために来た。
そして扉が開くと、中へ案内された。すぐ目に入ったのは、栗色の髪と白い肌。幼い頃からは見違えた女性らしいフォルム。だが今でもあの懐かしい姫その人である事には違いない。
「姫様……」
「ル、ルイズ!本当にルイズなのですね!」
「はい!姫……じゃなくって陛下!」
アンリエッタはルイズの声が耳に届くと、駆け寄ってくる。吸い寄せられると言わんばかりに。そしてその小さな体を抱きしめた。
「ルイズ、本当にルイズだわ。信じられない」
「陛下……」
震える声を漏らすアンリエッタを、ルイズも抱きしめる。
「ホント、どこに行ってたの?」
「ご心配をおかけ、申し訳ありません。わざわざ学院にお越しになり、探されたとか」
「そうですよ。公爵といっしょに。見つからない時には、どうしようかと思ったわ。ああ、でも良かった。ルイズは戻ってきてくれて。今ほど始祖ブリミルに感謝してる時はないわ」
「陛下……」
ルイズはその腕に力を込める。
やがてアンリエッタはルイズを放すと、すっと背筋を伸ばした。その目頭には光るものがあったが、それを拭う。そして人払いをすると、ルイズを椅子へと案内し、自分も正面に座る。
「あなたが今になって現れるなんて、何かの天啓かもしれません。しかし、あなたはここにはいてはなりません。すぐにヴァリエール公爵の元へ向かいなさい」
「カトレア姉さまの事でしょうか?」
「知っていたの?」
「こちらに戻って来た時、伺いました」
「でしたら、何故ここに?」
「陛下のため、そして祖国のためです!」
ルイズは張りつめた表情を、アンリエッタに向ける。祖国を守るという決意を。しかしアンリエッタは、どこか悲しいものを浮かべる。
「ルイズ。あなたにあやまらなくてはなりません」
「え?それはいったい……」
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。あなたの許嫁でしたよね」
「姫……でなくて陛下!な、なんで今、そ、そんな話を……」
「行方不明となりました」
「え……」
ルイズ、言葉に詰まる。ワルドは親同士が決めた婚約者だが、幼い頃に見た時からずっと憧れていた存在だ。愛しているかと言われるとハッキリ言えないものの、彼との結婚はそう悪い気はしなかった。だがそんな彼が行方不明。いったいどういう事なのか。その答えをアンリエッタが告げる。
「実は彼は密命を帯びて、アルビオンに潜入してました。その密命はわたくしの軽率な行動のためです」
「恋文回収……でしょうか?」
「それも知っていたのね」
「はい」
「そうです。その恋文を回収するため、アルビオンに入りました。ですがその後連絡が途絶えたのです」
「そ、それでは……」
「おそらく討ち取られたかと」
「…………」
返す言葉がない。キュルケに聞いたものが不幸の全てと思っていたルイズには、まさに追い討ちだった。床を見つめたまま、動かない。
「ルイズ。今、街道をヴァリエール公爵がここへ合流するため進軍中です。街道を逆に進めば、公爵と会えるでしょう。ご両親に無事をしらせて安心させてあげるのです。そして故郷へお帰りなさい」
「し、しかし……」
「王であるわたくしが口にしてはならないでしょうが、このトリステインはもはや風前の灯。しかし、わたくしは王としての務めを果たしたいと思います。でも、あなたは違うわ。ですから……」
そこまで聞いてルイズは、キッと顔を上げる。
「陛下!一国の主ともあろうお方が、軽々にあきらめてはなりません。知恵をしぼり、あるいは助力を求め、力を尽くせば、閉じるようとしている道も開けます!」
「もはや絞る知恵もありません。肝心の助力も絶たれました」
「あります!助力はあります!」
「どこにですか?ガリアやロマリアが、この哀れな国に手を貸すと?」
「いえ、私です!」
「ルイズ……」
アンリエッタからすれば、嬉しくも無邪気な申し出。彼女は、歓喜と悲哀が混ざり合ったような表情を浮かべていた。だが、ルイズは気休めのためにそんな事を言っている訳ではない。実のあるものとして進言していた。
「実は陛下。私は……」
そこまで言いかけて言葉が止まる。窓の外から騒がしさが耳に入る。ルイズは察する。まさかもうアルビオン軍が動き出したかと。慌てて窓の方へ向かった。
一方、ルイズがアンリエッタと面会している最中。留守番を言いつけられた面々は空へ浮いていた。と言ってもここにいるのは二人と二匹だけ。キュルケとタバサ、シルフィードにフレイム。残りの連中はどうしたかというと、勝手に城に向かって飛んで行ってしまった。
「何やってんの?彼女達」
キュルケはシルフィードの上でタバサに尋ねる。一方タバサは遠見の魔法で様子を伺っていた。
「ねぇ。どうなってんのよ」
「戦ってる」
「えっ!?もしかして、もうアルビオン軍が来たの!?」
「違う」
あっさりタバサはそう行った。キュルケに嫌な予感が走る。
「それじゃ、何と戦ってるの?」
「トリステイン軍と」
「な……」
さすがのキュルケも言葉がなかった。
ルイズは窓の外を見て唖然としていた。その見慣れた光景に。弾が飛び交っていた。途切れる様子のまるでない『弾幕』が。トリステイン軍はまさに大混乱と化していた。
幻想郷の面々の飛行速度は、儚月抄の月一周からなんとなく。レミリアを音速超え程度として、それを基準に。儚月抄を額面通りに取ると、音速どころではないのですが。
銃士隊はその前身がある事にしました。わずかな期間で達人クラスの銃の使い手が集まるというのも妙と思ったので。