銀河酔人伝説   作:悠久なる書記長

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難産の末やっと完成しました。酔っ払い要素があまりないな・・・


第4話 酔っ払い、啖呵を切る

俺は今目の前のおっさんと対峙している。おっさんの名前はホアン・ルイ。自由惑星同盟議会の有力政党、社会改革党の書記長を務めている男だ。なんでそんな大物政治家がこんなしがない組合幹部の俺と対峙しているのかというと・・・、

 

今から一時間ほど前、

 

「初めまして!グレゴリー・カーメネフです!ここの組合の青年部局長を務めさせてもらっています!」

 

「おお元気な声だねえ・・・私はホアン・ルイ。よろしく頼むよ。」

 

「ホアン・ルイ?失礼ですが、社会改革党書記長のホアン・ルイ先生でいらっしゃいますか?」

 

「そのホアン・ルイだが・・・どうしたのかね?」

 

「なんだって!?旦那!なんでこんなハイネセンの分からず屋がここにきてるんですか!」

 

「おいグレッグ!なんてこと言うんだ!」

 

「だってそうでしょ?社会改革党は労働者の味方を謳っておきながら軍備予算の削減を訴えてるんですよ!ハイネセンの奴らは軍備を削減して民間に回せばそれで全てうまくいくと思ってる!でも国境に住んでる我々は逆なんですよ!軍のおかげで食べてるんです!旦那だってそれはわかってるでしょう!」

 

「グレッグそれは・・・」

 

「中々興味深いこと言うねえ・・・組合長。ちょっと彼を借りていいかな?」

 

という感じで俺はホアンのおっさんの目の前で啖呵を切って不満をぶちまけたらそのまま社会改革党の事務所まで連れてこられたのだ。

 

そして現在へ至る・・・

 

「さて、カーメネフ君。ここなら大声を出しても大丈夫だ。話の続きが聞きたい。」

 

話の続きが聞きたい?このおっさんは何を言ってるんだ?まあいい・・・それなら言いたいことは言わせてもらおう。

 

「私はねホアンさん。以前は軍にいたんですよ。ハイスクール時代に両親が死んで、食べるために入ったんです。仕事は大変でしたが、私のような学のない人間でも暮らしていける給料は貰えました。おかげで路頭に迷わずに済みましたよ。でもあの第4次イゼルローン攻防戦で負傷しましてね・・・脇腹を思いっきりやられました。今でも傷跡が残ってるんですよ。それで怖くなりましてね・・・軍を辞めたんです。それで軍の紹介を受けてこの港で働きだしたんです。幸い私は負傷したといっても働くことに支障はないので必死に働きましたよ。おかげで周りにも認められて今では組合の部門を任せてもらえるまでになりました。今の生活があるのは軍のおかげなんですよ。

ホアンさん。私は戦争が大嫌いです。戦争の怖さ身近で感じたから断言できます。そしてここに住んでる皆同じことを思っています。でもね、戦争が嫌いだと言っても帝国の連中は容赦なく攻めてくるんですよ。そしてそれから私達を守ってくれるのは軍なんです。民力回復と財政再建が必要なのはわかっています。でも私達には艦隊が、そして兵隊さん達がいてくれないと普通に暮らすこともできないんですよ・・・!」

 

俺が声を振り絞りながらそう主張すると、ホアンは反論することもなく、しきりに頷いていた。

するとホアンが口を開いた。

 

「なあ、お前さん・・・うちから立候補して見ないか?」

 

「はい?」

 

このおっさんはいきなり何を言ってるんだ?

 

「正直な話今回の同盟民主党との政策の擦り合わせには党内からの反発が強くてね。これも必要なことだからと押し切るつもりでいたんだが・・・エル・ファシルの現状とお前さんの話を聞いて考えを改めようと思う。」

 

「いやいやいやそんな重要なこと簡単に決めちゃダメでしょ!それに立候補なんて・・・ハイスクール中退の人間が立候補しちゃダメだろ。」

 

「同盟憲章にはあらゆる出自・学歴問わず被選挙権が認められている。」

 

「お金もないし・・・」

 

「党から助成金が出るし、私も出してやる。」

 

「法律も政策も詳しくないし・・・」

 

「そんなものは後から学べば良い。」

 

「・・・なんで俺なんだ?」

 

俺がそう聞くと彼は俺の目をしっかりと見据えながら、

 

「私も今でこそハイネセンのお偉方の一人だが若い頃はそれなりに苦労しててね。君の話を聞いてたら思い出したんだよ。何で政治家になろうと思ったかをね。それにうちには老人が多い。是非とも若い人材が欲しんだよ。グレゴリー・カーメネフ、私と一緒に同盟の未来を作ってほしい。頼む!」

 

そういうと彼は俺に向かって頭を下げた。

やめてくれ。俺はそんな立派な人間じゃない。今まで生きるのに必死で気づいたらこの地位にいただけなんだ。

俺が困惑していると彼は頭を上げ、俺の顔をじっと見つめてきた。

俺は彼の目を見た。何という目だろう。とても老人とは思えない力のある漢の目だ。それでいてどこか優しさを感じる。何というか・・・親父を思い出す・・・そうだな。やるだけの価値はあるか。

 

「分かりました。立候補の話、受けさせていただきます。」

 

そう言って俺は彼に頭を下げた。

 

「おおっ!ありがとう!これで君も私たちの同志だ!」

 

「よろしくお願いします。ですが私は無知な人間なのでこれからどうすればよいか見当もつきません。なのでこれからホアンさんを父と思い、ついて行きます!」

 

「へ・・・?父・・・?」

 

「はい!親父!これから世話になります!」

 

そういうと俺は親父の手を掴み思いっきり握手した。親父は困惑しているようだが、優しい目をしていた。

 

 




次回は早めに投稿したいです。

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