気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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...........。

さぁ、前書きで何か話そうとしようとしたけど話す内容が思いつかない作者です。うーん、何を話そうかなかぁ。

.........あっ。
今回は、初のシリアスですっ!なかなか書くのに苦戦したけど宜しくですっ!

では、ごゆっくり




7話:一本の桜

白玉楼の周りには大きく、綺麗で、とても立派な桜の木が生えている。外の世界の桜とは違って、1つ1つの花びらが大きく、綺麗なピンク色をしている。

見ていると桜の花びらの数も多く、より木自体が大きく見え、散る時は桜吹雪の様に、視界を桜色に染める。

 

そして、この白玉楼にはもう一本、別の桜がある。その桜は他の桜とは違いがある。

より大きく、唯一、他の桜とは離れた所に生えている。

 

そして唯一..........花をつけてない桜。

 

その名は─────

 

 

 

 

 

「.........西行妖」

 

俺はその桜の名前を呟く。

西行妖はさっきの通り、他の桜とは違う。白玉楼の周りに咲く桜は何故か年中無休で咲いているが、西行妖は春にならないと咲かないのだ。

ちなみに幽々子は西行妖の満開を見た事が無いらしく、とても見たがっていた。

だが妖忌は西行妖の満開を見た事があるらしい。聞く限りでは、それは美しく、見る者を魅了させる、と聞く。

 

そして満開になると...........人を死に誘う、と言われている。

 

もともとは普通の大きい桜だったらしいのだが、人の精気を吸って、この西行妖になったそうだ。

そしてその最初の人物は、他ならぬ、幽々子の父さんだったらしい。

西行妖は幽々子の父さんを初めとし、その後も次々と人の精気を吸い取っていった結果、西行妖となった。

 

そもそも幽々子の父さんはなんで西行妖に精気を吸い取られたのか、と言うと........幽々子の父さんは死ぬ前に、何かの詩を詠んだらしい。どんな詩かはわからないが、その詩の意味が関係してるらしい。ちなみに俺が白玉楼に来た時は既に幽々子の父さんは居なかった。

 

「願はくは 花の下にて 春死なん その如月の望月の頃」

「え?」

 

西行妖を見ていると、聞き覚えのある声が聞こえる。俺はその声の持ち主が誰かはわかっているが、後ろを振り向く。

 

「どうした、幽々子」

「陽斗がさっきから西行妖を見ていたからね」

 

そこにはおっとりとした笑顔で俺に話し掛ける幽々子が居た。

 

「それで幽々子。さっきの詩って........」

 

俺は気になって、幽々子に聞く。俺は今まで聞いたことがなかった詩だった。

 

「さっきのは私のお父さんが、最後に詠った詩よ」

 

そう言い、幽々子は俺の隣に座り始める。

 

「今のは『どうか桜の花の下で、春に死にたいものだ』と言う意味。私のお父さんはこれを最後に詠ったの」

「..........」

 

何も言えない。それもそうだ、気になっていた詩がたった今わかって、たった今その詩の意味がわかったからだ。

 

「そしてお父さんが死んだ時、その詩の意味の通りに桜、西行妖の下に埋めたの」

「そう、だったのか.......」

 

俺はこの時、幽々子は凄い過去を背負っていると、心からそう思った。そして幽々子に対して、何も言えない自分に悔しいと思った。

一緒に住み始めて、もうかなり年月が経つ。いつも笑っていて、悲しい顔を全くしない。たまにドジなところもあったりもする。でも、それでも悲しい過去を背負いながら生きている幽々子が........凄いと思った。

 

「幽々子..........」

 

決めた。

 

「約束する。俺はお前の傍から離れない」

 

だからこそ、

 

「だから、俺はお前を絶対、涙を流させない!」

「きゅ、急にどうしたの?」

 

これが俺の頑張って、幽々子に言える言葉、俺の決意だ。

俺は普通に事故で死んだ。そんな俺を白玉楼で、笑顔で迎えてくれたのは幽々子、お前だった。『一緒に住みましょう?』と言ってくれたのは幽々子、お前だった。

 

だから!

 

「そのかわり、ずっと、俺の傍に居てくれ」

「陽斗.............ありがとう」

 

幽々子は再び、笑顔で俺に返事をする。

 

「陽斗と出会えてよかったわ。あなたに会えなかったら私はこんなにも、人を愛す事が出来なかったかもしれないわ。こちらこそありがとう、陽斗」

 

そしてまた、さっきと変わらぬ笑顔でお礼を言う。

 

「ねぇ陽斗、そろそろご飯にしましょ。お腹が空いたわ」

「あぁ、そうだな」

 

幽々子がそう言い、俺と幽々子は台所に向かう。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

夕食を食べ終わり、俺、幽々子、妖忌は手を合わせる。

 

「陽斗、美味しかったわ」

 

幽々子は食器を重ね、俺に笑顔で料理を褒めてくれる。

 

「そうじゃな、じゃが剣ではまだまだじゃのう」

「いやいや、そこで剣で比べるなよ」

 

でも、こんな妖忌だがちゃんと褒めてくれる。

まぁ確かに剣じゃあ負けるかもな。

 

「んじゃ、先に風呂に入るよ」

 

幽々子と妖忌にそう告げて、俺は部屋を出て風呂場に向かう。

 

「うーん、今回は失敗したと思ったんだけどなぁ」

 

俺は長い廊下を歩きながら、さっき作った料理の事を考える。

野菜を切るときは寝不足なのか、急に視界がブレたり、煮込んだりするときは手に力が入らなかった。それで失敗したと思ったのだが、幽々子と妖忌は褒めてくれたよなぁ。

 

「ま、いっか」

 

俺的には失敗したと思っただけで周りからは美味しいって言われたんだ、失敗じゃなかったかもな。

そんな事も考えながら風呂場に向かう。

すると、

 

「っ!?」

 

急に身体全身の力が抜け、倒れそうになった。

 

な、なんだろう今の感じ..........。

魂が抜かれる感じだった。なんの前触れもなく、ただ普通に気が遠くなっていく感じだった。

俺はなんとなく、西行妖を見つめる。

西行妖は精気を吸い取る、と言われてたよな確か。

 

「ま、まさか......な............」

 

 

 

 

 




西行妖はいろんな精気を吸ってきたけど今までは動かなかった。でもついに動き始めましたね。
陽斗は今後、どうなってしまうのでしょうか。

.......う~ん。シリアス感を出すのって難しいですね。

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ではまた次回!

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