気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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やっと更新!遅くなって申し訳ないです!

今回は少し短めなのでご了承ください。

ではごゆっくり。


61話:気付けば

 身体が暖かい。

 何かに包まれているような、優しい暖かさを感じている。

 確かめようとしても瞼が重く感じる。

 それでも目を見開き確認すると案の定、俺は布団で眠っていた。

 

「ぁ、あれ......? おれは」

 

 確か、アリスから人形を貰って、それを使って幽々子を助けようとして。

 

「ゆ、幽々子!」

 

 思い出したかのように体を起こし、辺りを見渡した。

 そうだ。俺は幽々子を助けようとして、人形を使ったんだ。でも、それからの記憶がない。だが状況を見る限り俺は倒れて布団で寝かされていたんだろう。

 

 辺りを見渡しても部屋には俺一人だけ。

 妖夢の姿も無く、枕の近くには1杯の水。

 

 とりあえず立ち上がろう。

 立ち上がる時に多少の頭痛がするがそんなことはどうだっていい。このくらいは我慢出来る。

 身体が重たい。ダルい。まるで風邪を引いた時みたいな感じだ。

 

 襖に手を掛け、ゆっくりと開けた。

 そこには妖夢の姿と、もう1人の女性の姿があった。

 その女性は静かにこちらを振り向き、口を開いた。

 

「...妖斗」

「......あぁ」

「......」

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

 草木も眠る丑三つ時。

 

 桜の花びらは月に照らされている。

 

 その景色を見るとは、縁側に座る俺と幽々子だった。

 

「......ありがとう」

 

 ふと、幽々子がそう呟いた。

 少し嬉しそうに、少し悲しそうに、切なそうに。その声からは感情が聞き取れなかった。

 どう答えればいいのか少し戸惑ってしまう。

 

「でも、怖かったわ」

「ん?」

「だって、妖斗が助けてくれたのはいいの。ただ、そのまま妖斗の身になにかあったらって……私を助ける為だけに」

「……幽々子が自分のことをどう思っているのかはわからないが、少なくとも俺と妖夢は、幽々子を必要としている」

 

 無意識に出た言葉は、そのまま続いた。

 

「俺らだけじゃない。紫も藍、橙、霊夢、魔理沙……紅魔館のみんなだってそう思ってるはずだ。言葉じゃあまり上手く言えないけど、もう少し自分を大切にしてくれよ」

 

 上手くは言えない。

 でもこれだけは伝えたかった。

 幽々子はいつも、俺や妖夢の心配ばかりしていて、自分自身を後回しのような考え方だ。

 そんな考え方じゃ、俺達が心配になってしまう。

 

「……」

「ご、ごめん! 何か気に触った!?」

「いいえ。違うの」

「じゃあどうして泣いて……わっ!」

 

 少し俯いていた幽々子の様子を伺うと、綺麗な瞳からは雫が流れていた。

 その事にも驚いたが、その直後に幽々子は俺の方を押さえつけ、床に押し倒すような形になってしまう。

 言葉が出ず驚くだけの空間の中、俺の方に落ちてきたのは涙だった。

 

「どうして、貴方は……そこまで優しくできるの?」

「幽々子……」

 

 震えた声は弱々しく感じる。

 肩を掴んでいる手も震えていた。

 

「記憶が無い私を受け入れて、それでも、妖斗は生前の私を知っている。妖斗は、辛くなかったの? 私だったら耐えられないわ。それなのに、それなのに………」

 

 瞳の雫はポタポタと落ち、止まる気配は無い。

 

「妖斗……私、もう、ダメなの。貴方がいなきゃ、貴方の優しさに触れてしまった私は………」

 

 聞くことしか出来ていない俺でも、幽々子の気持ちが伝わってくることはわかっていた。

 

「妖斗。貴方が欲しい。貴方が好きよ」

 

 幽々子からの、生前合わせて2度目の告白だった。

 

 頬を赤らめ、聞き入ってしまう声からは思いも伝わった。

 桜の花びらは散りながらも、まるで祝福してくれているかのように美しく舞い上がる。

 

 これが、幸せという感情なのだろう。

 

「あぁ。俺もだよ、幽々子……好きだ」

 

 互いに見つめあっても、照れくさいなんて思わず、ただただ、お互いを必要としているという気持ちが強く伝わった。

 

 一番最初は、一目惚れだった。

 もちろん白玉楼に住み始めてから、幽々子の色んなことを知った上でもだ。

 死んですぐに、どこかもわからない冥界に佇んでいた俺を受け入れてくれた。

 あの時は、とても嬉しかったのを覚えている。

 

 幽々子が亡霊として現れた時は、再開を喜びたかったと同時に、記憶が無い、というショックもあってどうしようもない気持ちだった。

 

 愛し、愛された人から忘れられる、ということは、どんなことよりも辛かった。

 あの時はまだ幼い妖夢が白玉楼来て、慰めてくれたんだっけ。

 幽々子の事も会ったこと無くて、何も知らないのに、頑張って俺を慰めてくれた。今でも妖夢には感謝している。

 

 紅魔館の皆も、ここまで来るのにお世話になった。

 フランは天真爛漫だけど、もう少し加減を覚えてくれたらいいんだが。

 パチュリーには、魔法を体験させてもらったし、色んな勉強ができた。

 小悪魔も、おっちょこちょいながら本を薦めてくれた。

 美鈴は、相変わらず眠っているけど、とても優しくて気配りができる。

 咲夜には、能力に驚かせれたな。今は亡霊の俺だけど、同じ人間とは思えないスペックの高さだ。まさにメイドの鏡だよ。

 そしてレミリア。何やかんやで優しいし、とても仲間思いの主。色々とお世話になったし、色んなきっかけも作ってれた。

 

 何度も思うが、俺はいろんな人に支えられてきたんだ。

 

 俺はかなりの幸せ者らしい。

 

 





えー。皆さん、薄々気づいてるかと思いますが、最終話がもう近いです。
唐突過ぎてホントにすみません。ですが、作者の考えていた流れ的には、こうなってしまいました。

残りも短いですがどうぞ、どうぞよろしくお願いします!

意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!

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