作者は当然、原曲では『優雅に咲かせ 墨染の桜』、ボーカルでは『死奏憐音、玲瓏ノ終』ですね!ちなみにこの2曲を聞いてゆゆ様がより一層好きになりました!
では、ごゆっくり
「はぁ、はぁ、はぁ.......!」
ドタドタと足音を立て、俺は息を切らしながら白玉楼の廊下を走る。
「は、早く.........急がないと.......!」
頭の中はそんな言葉でいっぱいで何も考えられなかった。
くそ!なんで、なんで早く気が付かなかったんだ俺は!機会は、機会はいくらでもあったはずだ!あったはずなのに、なんで俺は!
「あっ!」
俺は慌てすぎて足がもつれてしまい、コケてしまった。
「う、うぅ.......このままじゃ、このままじゃいけない......じゃないと......ゆ、幽々子が.......!」
幽々子が.......手遅れになる前に!
俺は汗を拭き、身体に力を込め、再び立ち上がる。
そしてもう一度走り出す。全力で。
「はぁ、はぁ、.......ゆ、幽々子ーーー!!!」
俺は扉を力強く開け、幽々子の名を叫ぶ。
部屋を見渡すが、この部屋には幽々子は居なかった。
「くそ!どこなんだ、どこにいるんだ!」
俺は扉を閉め、もう一度走り出す。
早く、早くしないと........幽々子が、幽々子が!
俺はもう、これ以上、失うのは嫌なんだ!
「幽々子ーーー!!!」
俺は再び扉を力強く開ける。
そこには..........
「ん?」
いつもの可憐な姿で、口をモゴモゴさせて呑気にお菓子を食べている幽々子の姿。
「幽々子.......また俺のお菓子勝手に食べただろ!」
「えぇ、さっき食べ終わったわ。美味しかったわよ」
「ちくしょーーー!!!」
くそ、もう手遅れだったか........。また、お菓子を失ってしまった......。
「そんなに落ち込むとは思わなかったわ」
もう何度目だろうか、幽々子にお菓子を食べられるなんて......。
前回も朝ご飯を食べ終わって食べようとしたら既に幽々子が俺のお菓子を完食していた。その前も稽古の後に食べようと思ったら無くなってたから幽々子に聞いたら『あれ、幽々子、俺のお菓子知ら』『知らないわ』と言って口をモゴモゴさせていた。
「でも、そんなに食べたかったら早く食べればよかったじゃない」
「幽々子、今までそのセリフを何回言ってきたか覚えてるか?」
少なくとも50回は言っている。
確かに、食べる機会はいつでもあったはずだ。だが俺は楽しみを最後に取っておくタイプな為、お菓子をとっていたが、それを幽々子に食べられてしまったのだ。
「なぁ幽々子、食べるならせめて声を掛けてくれないか?」
「えぇ、わかったわ」
ちなみにこれも幽々子に結構言ってきた言葉の1つである。
「まぁそれはいいとして、ねぇ陽斗」
「俺にとっては良くないんだが.........まぁいい、なんだ?」
俺は幽々子にお菓子を食べられた事を無理やり心の奥にしまい、幽々子の話を聞く。
すると幽々子はちょっと間を空けて.......
「陽斗ってさ.........」
何故か俺は幽々子の言葉に対して緊張感を感じてしまった。
どうしてだ、何故かこの話を聞いてはいけない気がする。この話を聞いたら今日1日中大変な気がする。
俺は唾を飲み込み、幽々子の声だけに全神経を集中させる。
「な、なんだ.......」
「いつになったら私にキス、してくれるの?」
「............え?」
俺は幽々子の言葉に唖然とした。
吹雪、俺の頭の中はまさに吹雪の様に真っ白になった。
「ねぇ、陽斗」
いろんな事を考えてる時に幽々子が俺の名前を呼び、身体がビクッとなる。
「いつになったらキスしてくれるの?」
「いや、その、そんな急に言われても.......!」
ホントに急すぎる。どうしたらお菓子の話からキスの話になるのだろうか、俺には分からない。
「だって私達は両想い、恋人同士なのよ?キスをしても別に変じゃないでしょ?」
「う、うぅ........だが.....」
「だからね、キスをしてくれてもいいでしょ?」
た、確かに........俺と幽々子が恋人同士になって結構月日が経っている。普通ならもう既にしていてもおかしくないだろう。それに、俺が生きていた時はカップルとかは普通にしていた者も中には居た。
一緒に手をつなぐ、料理を作る、ご飯を食べる、一緒に寝る、などの事は何度もある。
だが、俺は幽々子の事が好きになって未だにキスだけはしていないのだ。
「その、言葉を聞く限り、俺からしないと.......」
「そうね、陽斗からしてほしいわね」
あぁ、ホントにどうしよ。やっぱり聞くんじゃなかったよ。死んでるけど人生で1番の難関だよ。
「陽斗は私の事........嫌い?」
「そ、そんな訳ない!好きだ!」
「えぇ、私も陽斗が好きよ。だから、ね?」
幽々子はうつむいてる俺の顔を覗く様に見てくる。
どうする、どうする俺!?考えろ、考えたら何かあるはず!
「なら、私からするわよ?」
「えっ!?」
幽々子は俺にそう言い、俺に近づいて来た。俺はどうすればいいのかわからず、動こうと思っても身体が言う事を聞かない。そして気づけば幽々子は俺の肩を掴み、押し倒す様に床に寝かせた。
「陽斗、目を閉じて........」
「ゆ、幽々子!落ち着け、落ち着いて!」
だが幽々子は俺の言葉を聞いてなく、どんどん顔が近づいてくる。
もう、するしかない。そう、決意するしかない。
「陽斗ー、風呂が湧いたぞ」
「っ!」
キターーー、妖忌キターーー!!!
よし、このチャンスを使って!
「幽々子、先に風呂に入ってくるよ!」
俺は幽々子の肩に手を乗せて起き上がり、廊下をダッシュする。
ありがとう妖忌、妖忌のおかげで幽々子には申し訳ないけど助かったよ!
「むぅ~、陽斗ったらぁ」
◇ ◇ ◇
はぁ~、風呂にも入ったしご飯も食べた。後は.....何も無いかな。後は寝るだけだな。
それにしても、
「幽々子、怒ってないかなぁ」
流石に失礼だったな。いくら恋人同士でもちょっと拒否しすぎたかなぁ。俺がキス出来ないから幽々子からしてもらう事にはなったが、俺はそれから逃げたもんなぁ.........。
「会ったら、謝ろう」
幽々子は女の子だ、傷つきやすいかはわからないがそんなのはどうでもいい。俺が悪いんだから俺が謝らないとな。
俺はそう思いながらも自分の部屋に行き、布団に潜ろうとする。
「今日はもう、寝よ「ヨウト......」う!?」
眠りにつこうと思ったら何故か、俺の布団の中からモゾモゾと幽々子が出てきた。
「もしかしてずっと居たのか!?」
「えぇ、待ってたわよ」
「おいおい」
マジかよ、幽々子、行動力は結構ある方なんだな。ホントにビックリしたよ今のは。
「その幽々子、そんなにしたいのか?その、......キス、を......」
「私じゃダメ、なの.....?」
すると幽々子は少し目をウルウルさせてこっちを見る。やめろ!そんな目で見られると俺の精神が持たないじゃないか!
「何か、理由があるの.......?」
そして目をウルウルさせたまま、俺の服をギュッと掴む。
........はぁ。
「わかった、わかったよ」
もう、言うしかないか。
「練習.......」
「え?」
「練習、というか、イメージトレーニングしてたんだよ。頭の中で。その、キスを.......。それに、俺は俺のタイミングがあってな、その時にしようと思って......ってなんで泣くんだよ!」
俺は隠していた事を幽々子に教えると、何故か幽々子の目から涙が流れていた。
「その......嬉しかった、から......」
「幽々子......」
嬉しかったから。俺はその一言を聞いてどうしてなのか.....俺自身も嬉しかった。
やっぱり、俺は幽々子が好きだ。
「幽々子.......!」
「きゃっ」
俺は幽々子の肩を掴み、幽々子を布団の上に押し倒す。そして俺の手は勝手に幽々子の手を抑え、お互いに見つめ合っていた。
「幽々子、改めて言う。.......好きだ......」
「私もよ、陽斗........」
お互いに改めて告白をする。
そして幽々子はゆっくりと目を閉じる。
きっと俺のタイミングは今かも知れない。これを逃すとずっとこんなタイミングは無いかもしれない。
俺はそう思い、目を閉じて、幽々子の顔に近づいていく。顔には微かに幽々子の息が掛かり、目を閉じていても大体の距離がわかる。
そして...........
「幽々子~、陽斗~。こんばん............は」
「「っ!?」」
もう少しで唇が重なるだろう、という距離で紫がスキマを開いて出てきた。当然この状況は紫には見られた。
「........じゃあねぇ~」
紫は何かミスった、という顔をしてスキマを閉じて帰っていった。
「...........」
「...........」
紫.......この空間をどうしてくれる。
寝る前の夜。
俺と幽々子は顔を見つめながら、キスもせずに静かすぎる夜を過ごした。
あぁ、ゆゆ様としてみたい........。←(もうヤバイ人)
.......はっ!いけない、少しボーッとしてたな。
とりあえず、主人公と入れ替わりたい。←(本音)
冗談はさておき、どうでしたか?今回はなかなかの話だと、作者は思いますが。陽斗と幽々子はいつキスをするんでしょうねぇ。
意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!