気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

69 / 76
どうもお久しぶりです。
寒くなってきましたね、皆さん、風邪をひかないようにお気をつけ下さい!

ではごゆっくり


56話:運命と桜と

「あら妖斗。久しぶりね」

「パチュリー。久しぶりだな」

 

 久しぶりの図書館。

 そして久しぶりのパチュリー。

 

「小悪魔はいないのか?」

「あの子は今寝てるわよ。疲れてるのね」

「なんだ? 重労働でもさせたのか?」

「ちょっと触手の相手をしてもらっただけよ」

「そうか......ん?」

 

 今、とんでもないこと言ったよな?

 

「なにやらせたんだよ」

「なに? 気になるの? ヘンタイね」

「なんでだよ! まだ何も聞いてないだろ!?」

「そうね。聞いてないわ。それでもよ」

「俺なにかパチュリーに嫌われることした!?」

 

 なんかもう、理不尽過ぎて意味わからない。

 とりあえず小悪魔のことは聞かないようにしよう。

 

「そういえば妖斗。あなたに聞きたいことがあるの」

「珍しいな、パチュリーが俺に聞きたいことって」

 

 普段は知らないことが無さそうなパチュリーだが、やはり新しい知識、知らないこともあるのだろう。

 

「あなた達に関係あるか知らないけど、桜の花びらを手に入れたの」

「桜の、花びら?」

「えぇ。そうなの......これよ」

 

 パチュリーが取りだしたのは小瓶だ。

 だが、その小瓶の中にはさっき言っていた桜の花びらが一つ入っていた。 

 俺はその小瓶を手に取り、まじまじと見つめる。

 確かに、少なくとも普通の桜のものとは思えない。

 

「たぶん、だけど。冥界の桜から......いや、でもそんなこと普通はありえないな」

 

 いくら何でも無理だ。

 冥界の花びらが幻想郷まで届くなんて聞いたこともない。

 

「ねぇ妖斗。もし、もしもよ?」

 

 ここでパチュリーは一つの仮説を立てようとした。

 

「幻想郷にその桜が咲いている可能性は、あるかしら?」

「幻想郷に、桜が......でも、今はまだ秋だ」

「それがもし異変なら、おかしくないわ」

 

 そう。異変なら関係ない。

 パチュリーの言葉に納得してしまった。

 だがそうだとしても、桜に関わっているのは俺たちだけだ。

 俺は異変なんて起こそうなんて考えないし、そもそもこの花びらのことも知らなかった。

 妖夢は起こすとは考えずらい。日頃から幽々子には面倒をかけないようにしてるし、妖夢に限って起こしそうにない。

 幽々子は、春雪異変に関係していたとはいえ、この花びらを知ってることは無さそうだ。そもそも、幻想郷には来ていない...いや。来たぞ、ちょっと前に。

 

「なにか、心当たりがあるの?」

「魔理沙だ。魔理沙の家に三人で行ったんだ」

「魔理沙の家に? どうして」

「...キノコを食べたかったらしい。魔理沙が春のキノコを食べたいからって呼ばれたんだ」

「あ、あらそう......魔理沙もなかなかね」

 

 そういえば、魔理沙の家に行ったんだった。

 あの時、確か小さいながら冥界の花びらを置いておいたんだよな。それで、キノコを栽培したんだ。

 

「見に行った方が、いいだろうか」

「そうね。でも、何かあれば魔理沙から来そうなんだけど、来ないってことは問題ないのかしら」

「どうだろうな」

「まぁいいわ、ありがと。ちょっと調べてみるわ」

「おう。俺はそろそろ行くよ。長居しても悪いしな」

「えぇ。アナタならいつでも歓迎よ」

 

 そう言い、俺はパチュリーの図書館を後にした。

 思ってた以上に図書館で過ごしていたのか、外を見ると暗くなってきていた。

 そろそろ帰ろうか。

 レミリアに挨拶しとかないとな。

 この時間だと、レミリアの寝室か?行きづらいなぁ。

 

「あ! よーとお兄さんだ! えーい!」

「うおっ!? びっくりした、フランちゃんかぁ。久しぶりだね」

「久しぶり! 久しぶりだから、遊びたいな!」

 

 まぁ、帰りが遅くなるのは咲夜に頼んであるし、弾幕ごっこじゃなければ大丈夫かなぁ。

 

「そうだな、遊ぼうか」

「やった! じゃあフランのお部屋に来て!」

「わかった。わかったから引っ張らないで」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「こんばんは。夜分に申し訳ありません」

「ひゃぁぁぁぁ!!!」

「......」

「...あれ? 咲夜、さん?」

 

 急に出てきた咲夜に、妖夢はかなり驚いていた。

 もちろん咲夜は時間を止めて行動をしているため、妖夢からすれば足音もせずに目の前に現れた。

 

「どうしたのですか?」

「ちょっと伝言をね。あなたのとこの妖斗をちょっと借りてるわ」

「妖斗さんをですか? わかりました。幽々子様に伝えておきます。ちょっと待っててくださいね。今お菓子とお茶をお持ちしますね」

「いいわよ、そこまでしなくても」 

「せっかく来ていただいたので。それに、咲夜さんが来るなんて珍しいので」

「んー。確かにそうだけど、じゃあお詞に甘えて」

「はい! では、少しお待ちください」

 

 元気よく返事をする妖夢は、そのままお茶を入れにその場を離れた。

 咲夜はその妖夢を見て少し微笑んでいた。

 

「それにしても、綺麗な桜ね」

「自慢の桜ですもの。メイドさん」

「あら。これはこれは、桜のお嬢様」

「私が桜なら、あなたのは夜のお嬢様、かしら?」

 

 桜の感想と共に、幽々子は咲夜に声をかけた。

 何気ない感じの会話から始まり、幽々子は咲夜の隣に座った。 

 

「妖夢にも伝えたけど、妖斗を少し借りてるわ。お嬢様がね」

「そうでしょうね、妖斗は呼ばれるとすぐ行っちゃうの」

「寂しそうね」

「まぁ、ね。そりゃ寂しいわよ。妖夢が居てくれてるからいいけど、妖夢も居なくなったら泣いちゃうわ」

 

 よよよ、と涙を流す仕草を見せるがすぐに笑顔を見せる幽々子。咲夜からすれば呑気な亡霊だ、と思われるが実際に呑気な亡霊だ。

 レミリアは逆に、プライドが高いところは幽々子も同じだろうが幽々子のようにお気楽な吸血鬼という訳では無い。少なくとも今みたいなジョークなどは言わないだろう。

 

「貴女は、なにもないの?」

「何がかしら?」

「紅魔館は、人間は貴女だけなのよね。何ともないのかしらってね」

「私にはお嬢様や妹様がいるわ。それだけ充分なのにどこぞの居眠り門番とパチュリー様に小悪魔。人間は私だけでも何ともないわ」

「賑やかでいいわね。楽しそうだわ」

「そっちは楽しくないのかしら?」

「楽しいに決まってるわ。私のボケで妖夢を可愛がって妖斗がツッコミをくれるの。笑顔溢れる白玉楼よ」

 

 やはり妖夢への弄りはもはや白玉楼の定番と言わんばかりのセリフ。

 咲夜も少しながら妖夢に同情しているのか軽く笑う。

 

「咲夜さん、お菓子とお茶をお持ちしました」

「ありがと」

「あら妖夢は。私の分は?」

「先ほど食べましたよね? 私の分まで!」

「怒らないで妖夢。折角な可愛い顔が台無しよ?」

「誰のせいだと思ってるのですか! 楽しみだったんですよ!?」

「まぁまぁ、いつものことじゃない」

「いつものことだから怒ってるんですっ!」

 

 余程楽しみにしていたのか、持って来ると同時にお説教が始まる。

 これがいつもの事なのか、と咲夜は唖然としているがどこか楽しそうにしていた。

 

「妖夢。私のを少しあげるわよ」

「い、いえいえ! そんな訳にはいきません! お客に出した者を貰うなど!」

「じゃあわたしが貰うわ〜」

「いい加減にしてくださいっ!」

 

 流石の妖夢でも大きな声を挙げる。

 

「白玉楼も苦労してるわね」

 

 そんな二人を見ながら、咲夜はお茶とお菓子と桜を満喫していた。

 

 





部屋から出たくない! 寒いから!
でもコンビニの肉まんは美味しいんですよね〜。

意見や感想気軽にどうぞ!
ではまた次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。