気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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えー。どんどけ放置したと言われるともう頭が上がりません。
とりあえず、書いてはいたのですが中々指が進まず......ホントに申し訳ないです。

では、ごゆっくりと。


52話:魔理沙は亡霊に頼みたい

 

 

「来てやったぜ!」

「幽々子様からのお呼ばれですか?」

「呼んでないから帰っていいわよ」

 

ガララッと勢いよく襖を開けては大きな第一声、も華麗な塩対応をされてしまった魔理沙。

 

「なんだよお前ら、寂しい奴らだなぁ。陽斗もそう思わないか?」

「ほとんど勝手な上がり込みだからさ、仕方ない」

「ここは厳しいなぁ」

 

流石に俺までこう言ってくるとは思わなかったのか、割と悲しそうにする魔理沙は少しいじけていた。いつもはとても大胆な行動、発言をするが、内心は乙女である。

魔理沙が冥界、白玉楼に来るのはとても珍しい事だった。いつも来たとしても霊夢と一緒が多いのだが、その霊夢も見当たらないあたり一人で来たのだろう。

 

「それで、なんの御用でしょうか?」

「おっとそうだった。という訳でお邪魔するぜ」

「誰も上がっていいなんて言ってないのだけど」

「まーまー、小さいことは気にしなくていいんだぜ」

 

我が家の如く靴を脱ぎ、堂々と室内へと入る魔理沙には、流石の幽々子も少々呆れいた。とりあえず目の前にある湯呑みにお茶を注いでは美味しそうに飲み干す。ぷはーっと息を吐き、乾いた喉を潤すと、魔理沙は口を動かした。

 

「実は、頼み事があるんだ」

「お饅頭、10箱ね」

「内容も聞かずにいきなりかよ......まぁ、そこは考えるだけにしとくぜ」

「考えるだけなら却下ね」

「い、いいから!話を聞いてほしいんだぜ」

「わかったわよ。それで、何のようかしら?」

 

やっと本題が話せるようになると、さっきまでの勢いはどこにいったのやら、魔理沙は真剣な表情で幽々子と話そうとする。

 

「私の家に春度を集めて桜を咲かせてほしいんだ」

「......どういうことかしら?」

 

春度。それは以前、俺と幽々子、妖夢で集めていた春にとっては欠かせないものである。異変を起こすために集めた春度は、西行妖を満開にするために...だったのが、その春度を奪ったことから幻想郷では春に関わらず雪が降り始めた。これが俺達の起こした異変、『春雪異変』と呼ばれるようになった。

そして今、魔理沙がその春度を家に集めてほしいとお願いしてきている。1度は手を出した春度。だが前のようにまたどこかに迷惑をかける可能性も0では無いという訳では無いのだ。

もちろん、この魔理沙の急な要望に反応したのは幽々子であった。

 

「...何を考えるのか知らないけど、断らせてもらうわ」

「言っておくが、私が異変を起こそうなんて考えていない!ただ、少しでいいんだ!」

「言ったはずよ。断らせてもらうって」

「春にしかできないキノコが食べたいんだ!」

「......報酬として採れた本数の半分」

「おいこら」

 

もちろん俺は躊躇なくこの話し合いを潰しにかかる。

 

「待て待て待て幽々子。さっきまでのシリアスはどこにいった」

「陽斗......私は、食べたいの」

「おうそうか、じゃあ来年まで待たないとな」

「なんでよぉー!私だって予想してなかったわよ!まさかキノコの為に春度を、なんて!」

「確かに俺も考えてなかったよ!それでも我慢しようよ!また霊夢に目をつけられるぞ!見ろ!妖夢のあの呆れ顔を!」

「妖夢のあの顔はお腹が空いてる時の顔よ」

「いくら幽々子様でも、その答えは断じて違います!」

「なんだ妖夢、お前!キノコを食べたくないのか!?美味しいはずなんだぜ!?」

「なんでそこで魔理沙さんは噛み付いてくるんですか!?そもそも、はず!ってなんですか!」

「陽斗!陽斗!早く行きましょう!」

「陽斗頼むよぉ。私も気になって仕方が無いんだ」

 

「わ、分かった!わかったから一旦落ち着いて!?」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「...それで、ホントに大丈夫なのか?」

「ん?なにが?」

「なにが、じゃねぇよ!春度だよ、春度」

 

何も考えてなさそうな幽々子に聞いても、本人は何とも思っていなさそうだ。

最終的には魔理沙が押し切り、ほぼ無理やりだが俺たちを幻想郷に連れてこられた。そして今、その幻想郷にある魔法の森に今は居る。この森の中に魔理沙の家があるのだ。辺りには怪しげなキノコ。魔力を放つ植物など、魔法使い立ちにとっては何かと都合が良い場所らしい。

 

「それじゃあ、この辺りでお願いしたいんだぜ」

 

魔理沙の指を指す方を俺達は視線を向ける。場所的には魔理沙の家の隣だ。周りには何やら色んなものが積み上げられており、中には書物も交じっている。

 

一言で言って......

 

「女の子とは思えない汚さですね」

 

最初に反応したのは、綺麗好きの妖夢だった。

 

「なんだと妖夢!お前だって乙女とは思えないまな板のくせに!」

「今、バカにしましたね?バカにしましたね!?私と魔理沙さんなんてほとんど差はないじゃないですか!」

「まぁまぁ、2人とも仲良くしましょ?」

「幽々子様にはこの気持ちはわからないんです!」

「そうだぜ!このたゆんゴーストめ!」

「なんで私はここまで言われなきゃいけないの...」

 

突如と始まった乙女のプライドを掛けた口論。幽々子は完全に自業自得に近いが、魔理沙と妖夢に何しては俺は何も出来ないことは確かだ。

 

「と、とりあえず!2人とも落ち着こう!キノコを栽培するんだろ?」

「そ、それもそうだったぜ」

「そう、でしたね」

 

我に返ったのか、魔理沙と妖夢は一旦深呼吸して落ち着いた。

 

「それで、どうやって春度を集めるんだ?」

「確かに、どうするんだぜ?」

 

春度はもちろん、春にしか手に入らないもの。春雪異変の時は季節が春だったから簡単に手に入ったのだが、春を過ぎた今では手に入るどころか、春を感じさせるものすらないのだ。ならどうするのかと言われれば、幽々子の知識に頼るしかない。この依頼を受けたということは、きっと幽々子も何かしらの手があるのだろうか。

 

「どうやって集めましょうか」

 

わかってた、うん。

正直に、あえて正直に言われせもらうと...幽々子が考えるはずないと思ってた。目的が食べ物であれ、デザートだろうがなんだろうが、大体のことは他者への見事な頼りっぷり。そんな幽々子でも、頼りになることはもちろんある。だが、幽々子でも集め方が分からないとなると尚更この依頼の難易度は急上昇である。

 

「何をやっているんですか、まったく」

 

だがそんなマイナスな空気の中、声を出したのは妖夢だった。妖夢はなにやら袋のようなものを取り出すと、その中には桜の花びらが入っていた。

 

「私が異変の時にやっていた方法です。きっと、ここに桜の花びらを置いておくと集まるんじゃないかなぁと思いまして」

「でも、そんな花びらだけじゃ集まらないんじゃないか?」

「これは冥界に咲いていた桜のもの。少なくとも幻想郷にはない花びらですので、きっと大丈夫かと」

 

冥界、白玉楼に咲く桜は、現代はもちろん、幻想郷に咲いているものとは少し異なるらしい。幻想郷の桜はもとろん春にしか咲かない。だが、冥界の桜は年中無休で季節問わず満開である。俺にもイマイチ理由は分からないが、妖夢や幽々子が言うには、やはり西行妖が関係しているそうだ。

 

「流石ね〜妖夢」

「まず幽々子様も方法は考えていてくださいよ」

「考えているわよ?美味しい食べ方」

「報酬のことしか考えてないじゃないですか!」

 

もーっ!と声を荒らげる妖夢を見ても笑顔を絶やさない幽々子。魔理沙からすれば呆れるようなこの状況でも、俺からすれば微笑ましい光景だ。

 

「と、とにかく。すぐには集まらないと思うので、何日か待つことになりますが」

「構わないぜ!キノコが採れるなら私は待つ!」

「よっぽど好きなんだな」

 

魔理沙ならこう言うだろう、と大体は想像出来ていた。好きなことに関しては勉強をして、行動に移す。魔理沙はこれをモットーにしているのか、それとも単純に努力家なのか。

まぁ、何はともあれ。本格的な依頼はここから始まるだろう。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

魔理沙の家には3日後にまた行くことになった。正確には桜の花びらによる異変が何も無いのかという監視でもある。いくら花びらだけとはいえ冥界の桜。妖力を持っていないとも確信を持っては言えない。それに、また変なことが起きればもちろん責任は俺たちにある。流石にもう霊夢も黙ってはいないだろうな。

 

冥界では、俺達はいつものように縁側で妖夢の修行を見ながら幽々子はゆったりとお茶である。俺はある程度の事は済ませているから今は暇ではある。まぁ実際のところ、白玉楼では掃除など基本的なことが終わればあとはほぼ自由に近い。幻想郷にある紅魔館よりは比較的のんびりできるだろう。

 

「ねぇ陽斗〜」

「ん?」

「魔理沙は今頃どうしてるかしらね」

「そうだなぁ。キノコ観察でもやってるんじゃないか?」

 

正直なところ、魔理沙の行動はこれしか思いつかなかった。

 

「上手く栽培出来てるといいな!」

「そうね。せっかくだから美味しく頂かないとね♪」

「相変わらず、幽々子様はお変わりないですね......」

「まぁ、そこが幽々子にいい所なんだけどな。明後日くらいにもう1度、魔理沙の家に行こうか」

「そうですね」

「そうしましょう」

 

三人の考えは同じ。まぁ、幽々子は美味しい食べ方を気にしてはいるが、そこは仕方がない。だって幽々子だもの。

 

今日はもう寝ようとしよう。朝から幻想郷に行っては頭を使えし、空を飛べるとはいえ楽ではない。今日は珍しく疲れたなぁ。早く暖かい風呂にでも入って気持ちを落ち着かせよう。

二人とは一度部屋で別れ、俺は着替えの準備をして浴室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---まだ、焦ることはない......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、これが始まりとは気づかない。

 

 

 

 

 

 






前書きに続き、謝罪後半戦。

そのですね、感想にもありましたが、こんだけ放置したならもう作者じゃなくて一般人だろ、と言われまして中々心にぶっ刺さりました。

それでも、途中で投げたすのは自分には性に合わない、と言うことでまた書き始めました。
たぶん、読んでくれてる方はかなり減ってしまったでしょうが、せめて最後までは書こうと思いましたので投稿しました。

投稿ペースは相変わらずかも知れませんが、とりあえずここまで読んでくださった方々には本当に感謝しています。

意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!

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