投稿がかなり遅くなって申し訳ございませんでした!
実は作者、4月からついち社会人になったのです。なるまでは良かった。休みの日に書いて頑張ろうと、そう思ってました。
ですが、そうはいきません。疲れていては書く気力を出すのが大変でした。
以上の言い訳により、こんなにも遅くなりました!
待ってくれていた方々、本当にすみませんでした。
それでは、ごゆっくりと。
人里。
そこは多くの人間と、その人間達と交流を深めたい妖怪が住む場所。人間は妖怪から文化の違いや術によって多少は学ぶこともある。妖怪は人間から知識を貰い、人里での生活の知恵も学ぶことも出来る。
妖怪は主に外で暮らしており、中には家や館を持つ者もいるが大半は野宿みたいな生活をしている。
その人里の中に、一匹の猫と、半分の人間と、二人の亡霊がいた。
「さーて、橙ちゃんは真っ直ぐ進んでくれるかしら......んにしても、この服動きづらいわ〜」
意気揚々とスキップをする橙をひっそりと身を隠して見るのは白玉楼の主、西行寺幽々子である。普段は水色に桜模様の着物をしている幽々子だが、今回は隠密作戦、橙にバレてはいけないということで人里の人間が来ているような、あまり目立たない格好だった。もちろんいつもの着物で出歩けば一瞬でバレてしまうし、何よりも幽々子は冥界の者とは言えお嬢様であり、前に起こした異変の主犯。今の人間からすれば解決した異変なんてどうということはないが、幽々子は有名人いわば、有名亡霊なのだ。幽々子の存在が人里にバレればすぐに周りの囲まれてインタビューが始まってしまう。それを避けるための格好である。
トテトテと小さな一歩を繰り返す橙は目的のお店『美酒』という名を掲げた店の前へとたどり着いた。
ここからが幽々子の出番である。
もちろんこのタイミングで幽々子が選ばれたのももちろん理由があるのだ。
「こんにちはー!」
「おっ、可愛いお嬢ちゃんだね。何か用かい?」
元気のいい挨拶とともに、店の奥からは割と筋肉質でイカツイ格好をした男性が現れた。第一印象は悪そうだが、実はここの大将であり、いつも妖夢がお酒を買う時にお世話になっている店である。そしてその大将もかなり性格は温厚なのだ。
ここまで聞けばお酒を買うことなんて簡単に思えるが、実はここが一番の難所でもある。
橙はメモ用紙を見て買いたいお酒の名『桜華月』という結構高めのお酒である。
「えっと......さくら、はな、つき?って言うのをください!」
「さくらはなつき?......あぁ、桜華月ね。おうかげつ。この店の代表みたいなもんだ」
―――これを頼もうとした時、壁が立ちはだかった。
「せっかく来てくれたんだが、子供に酒は売れねぇんだ、悪いな、お嬢ちゃん」
「えぇっ!?」
そう......橙の前に経つ壁とは、お酒を売ってくれないということなのだ。幻想郷には『未成年は飲んではいけない』というルールはないのだが、子供のうちから飲ませるのは危ないという知識は誰しも知っていた。
見た目は小学生と言っても過言ではない橙には、到底お酒を売れるはずがなかったのだ。
だが中には幼いうちから飲ませて強くさせようとする者のいるし、何より見た目に反してかなり強い鬼が、この幻想郷にはいるらしい。
「そ、そこをなんとかできませんか!?お使いなんです」
「うーん。お使いってのは信じたいんだけど、いかんせん俺は心配でなぁ......」
「お願いします!」
「どうしたものかねぇ」
ペコペコと必死にお願いをする橙に悩まさせられる店主。本当は売ってあげたいのだろうが、やはり『心配』『不安』という言葉がそれを止めている。
その時だった。
「お兄さん、こんにちは〜」
「え、あ、あぁ...いらっしゃい!」
悩みを抱える店主に声をかけたのは、いつもと服装を変えている幽々子であった。
「また綺麗な姉ちゃんが来たもんだ。今日は可愛い子供に美しい女性が客とは嬉しいもんだねぇ」
嬉しそうに笑う店主に、幽々子もつられてクスッと微笑む。
「あらあら、ご冗談がお上手なのねぇ、嬉しいわ。それで、先ほどから悩んでそうだったけど、何かありましたか?」
「あぁ、それがなぁ......このお嬢ちゃんが酒を売ってくれってな。売ってあげたいし、何よりお使いらしくてな、協力してあげないのは山々なんだが......」
右手で頭を抱えるように仕草を見せる店主。幽々子はそっと腰を低くして橙と目線を合わせて口を動かした。
「こんにちは、お嬢ちゃん」
「こ、こんにちは」
「お名前はなんて言うのかしら?」
「橙って言います」
「橙ちゃんね、いい名前だわ。きっとその名前を付けた方も、きっと立派なお方なのでしょうね」
「...は、はい!藍様はとても綺麗で!かっこよくて!頭もいいんです!私の尊敬するお方です!」
「ふふ...いい人に育てられたのねぇ」
「えへへ」
普段の幽々子からはあまり聞かない会話により、橙は完全に心から安心していた。お使いが成功しないだろうと不安だった橙も、幽々子との会話で笑顔を取り戻していた。もちろん、橙の事を知っているからこその会話なのだろう。
「今日はお使いらしいわね、偉いわ」
「で、でも、お酒を売ってもらえなくて......」
本題に入ると、橙は再びシュンとなってしまった。そんな橙を見て幽々子は優しく頭を撫でてあげた。
「大丈夫。お姉さんに任せなさい」
「い、いいのですか?」
「えぇ、もちろんよ。ただ、その代わりになんだけど......人里の出口の方で、私が来るのを待っててもらえないかしら?」
「お、お姉さんは?」
「私は、貴女のお使いを成功させるのを手伝いたいの。だから、ね?」
肩に手を添え、橙を不安から開放させるように言葉をかける。安心できるこの声、どこかで聞いたことがあると橙は考えたが、今はこの人を信じるしかないと思うしか出来なかった。
(この安心感、まるで......)
「さぁさぁ、私のお願い、聞いてくれるかしら」
「は、はい!」
心の中で人物名までは出そうになったが、ここはお姉さんの言う事を聞こうと体の方が早く動いてしまった。その小さな体は、元気よく人里の出口の方へと向かって行った。
「......行ったわね」
「よかったのかい?売らないままだったが」
「ねぇお兄さん。その桜華月、売ってくれないかしら?」
「売ってもいいが、後であの子に渡す、とかだったら売れないぞ?」
「あら。それなら、こうすればいいのかしら?」
渡すつもりだったのかよ、と小さく呟く店主に、幽々子はある行動を取った。
それは.........
「私の顔、見覚えはないかしら?」
顔を隠すためにしていた傘を取ったのだ。正確には、店主にだけ見えるように傾けた。急に何をしたかと思った店主たまが、その顔を見て驚いていた。
「あ、あんた......さ、西行寺の...」
「しっ。あんまり大声を出しちゃダメよ?」
人差し指を立てて口止めをすると、店主は静かに首を縦に振った。
「で、でも、どうして貴女のようなお方がここまで......」
店主からすれば、見知らぬ子にそこまでしてあげるのかが分からなかった。高貴な西行寺幽々子が、人里で出会った娘にそこまで動くことなのか、理解しきれていなかった。
そんな質問にも、幽々子は当たり前のように答えを出した。
「私はね、あぁやって頑張ってる子を見ると、ついつい応援したくなっちゃうの。それだけよ」
もちろん、人里で出会ったわけでもない。初めから橙の事を知っているためここまで動けている。それでも、頑張ってる子を応援するのは、幽々子が本心から思っていることだ。人としての心も、亡霊になっても受け継がれるのだ。
「貴女のような方がそこまで......そこまでするのなら、俺はこの酒を売らないってことにはいかないね。どうぞ、持っていってくださいよ」
子供を強く思う気持ちに負けたのか、店主は諦めるように商品を差し出した。
「ありがとう。はいこれ、お金はこれで足りるかしら?」
「っ!?なんだいこれは、酒の金額の何倍も......!」
幽々子はそっとお金を渡すと、店主は慌てていた。あまりにも商品の金額を超えていて、何よりも平然とそれを渡す幽々子にも驚いていた。
「お釣りは要らないわ。あなたにも優しさがあるのは分かってたし、私を見ても大声を出さなかったのと、協力してくれた事と何より......」
傘を深く被り、周囲から顔を見られないようにすると幽々子はその場からゆっくりと背中を向けながら言葉を置いていった。
「あなたのお酒には、それなりの価値があるわ。これからも美味しいお酒をよろしくね」
「橙ちゃん、お待たせ」
「あ、お姉さん!」
幽々子の姿を見つけては、嬉しそうにしている橙に、ゆっくりと幽々子との距離が縮まっていく。幽々子の手には、先ほど買ったお酒が持たれていた。
「はいこれ、どうぞ」
幽々子の手からは、橙のお目当てだった品『桜華月』がゆっくりと渡された。大事そうに、落とさないように抱き抱える橙。背中には他の食材が入ったカバンを背負っているため、とても重そうだ。橙のように、式神とは言え、体が小さければ苦労もするものだ。
「あ、ありがとうご、ござま...おとと」
「貸してみて。持ってあげるわ」
手を差しのべる幽々子だが、橙は「いえ!」と言って体制の整えると
「これくらい、へっちゃらですよ!」
「あらそう?腕がぷるぷるしてるわよ?」
「そそ、そんなことないですっ!」
見栄を張っていても、やはり幽々子にはバレバレだったうだ。
「あとは真っ直ぐ帰るだけかしらね。それじゃあ、私はここで...」
「あ、待ってください!せめてお名前を聞かせてください!」
笑顔を見せて手をヒラヒラと仕草を見せて、幽々子は背中を向けて歩き始めようとした時、橙の言葉に歩みを止められた。
やはり、橙からすれば助けられた恩人。ここは名前を聞いておきたかったそうだ。確かに、ここまで来るのには橙一人では難しかったのかもしれない。困っていた自分を助けてくれた。それだけでも名前を知りたいという理由にはなるだろう。
「.........」
「ふふ......」
歩みを止めた幽々子だが、まだ橙に背中を向けたまま。少しの間が空き、風に揺れる草木の音が大きく聞こえるようだった。そして風が止むと、幽々子は再び足を動かして、一言置いていった。
「...名乗る程の者ではないわ......」
その台詞を聞いた橙は、ただ立っているだけで、橙からの視界からは幽々子が少しずつ遠のいていくだけであった。
そして体を震わせて、呟いた。
「か、かっこいい!!!」
――その頃幽々子は
「あの台詞、1回言ってみたかったのよねぇ〜決まったかしら」
とても満足していた。そして続けて口を動かした。
「カッコつけてか去ってきたけど......道、わかんないわね」
橙の視界に入らないように、結局は空を飛ぶ幽々子であった。
さぁさぁ、全く書いてなかったので文章力の低下とかそんなレベルじゃないですね。
本当にすみませんでした。これからもまだ遅くなるかもしれませんが、投稿は続けますので......こんな作者で良ければ、これからもよろしくお願いします。
意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!