気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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皆さん、お久しぶりです!......前の投稿から何日経ったでしょうか。
作者は一昨日まで卒業試験があり、それが終わったと思いきや、自動車学校まで行くことになりました。
お察しの通り、なぜか忙しくなりました。

でもご安心を。投稿は続けますので!

それでは、ごゆっくり。


49話:マヨヒガミッション

ミッション名

──藍ちゃんドキドキ♡橙のお使い作戦

 

 

ミッション内容

──式の式、橙の保護および見張り

 

 

ミッション達成条件

──橙のマヨヒガへの帰還

 

 

達成報酬

──???

 

 

依頼人から

──私の、私の大切な橙が心配で......。心配のし過ぎ、過保護と言われても構わない。こんな事を頼めるのはあなた達だけなんです。どうか助けてください!

 

 

このミッションを開始しますか?

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「今から言うことを守るんだぞ」

 

1人木陰に身を潜める孤独な自分。視線の先には九尾と猫耳少女。

 

「いいか、橙」

「はいっ」

「ぜーったい、知らない人、妖怪には付いて行かないこと!」

「わかりました!」

「寄り道をしないこと。挨拶を忘れないこと」

 

まさに親子。いや、実際には本当に親子と言うべきなのだろうか。目の前には母親の約束を守ろうとする娘の姿。

 

「最後に」

「な、なんですか?」

「元気よく、帰ってきなさい」

 

頭を撫でて笑顔を見せる藍。その笑顔には不安な気持ちも混ざっているようにも見えた。橙は藍の言葉を素直に聞き入れ、ニコッと笑顔で返した。

 

小さなカバンを持ち、テクテクと藍の元から離れていく橙。その小さな背中には、大きな信頼を背負って人里へと向かって行った。

橙の姿が見えなくなると、藍は完全に過保護モードに入っおりかなりそわそわしていた。

チラっと俺の方を見て藍は口を開いた。

 

「陽斗さん。あとは、お願いします」

「あぁ、任せてくれ!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

この作戦にはもちろん俺だけでなく、妖夢と幽々子も協力してくれている。三人いるため、予め役割を振っている。

 

人里までの監視を俺と妖夢。この時幽々子は人里で準備をしているらしい。

 

そして人里の中では三人で見守る。

 

最後の帰り道も三人で協力をする。

 

最初の俺と妖夢の時に何も無ければ、人里で幽々子がなんとかしてくれるらしい。幽々子が言うには「私、凄いのよ?」っと言ってはいたが何が凄いのかは教えてくれなかった。

俺はマヨヒガからずっと見守り、妖夢は途中地点で合流する予定だ。流石に最初から二人だといくら橙とはいえど気づかれてしまう。そのため妖夢は途中合流となっている。

 

おっと、橙から目を離すところだった。

 

「くるくる、まわるめいろで~♪」

 

天気が良くて気持ちよくなり、初めて頼まれたお使いで機嫌が良くついつい歌い出す。

 

「わたしに、ついておーいーで♪」

 

ちょこっとジャンプ、たまにはスキップと、お使いの道を楽しむ姿。

今のところなにも問題はなく、このまま行けば無事に人里へ到着だ。これならずっと歌を聴いて人里まで静かに付いていくだけで最初の段階はクリアだ。

可愛らしい歌を歌いながら少し進み、俺は念のため当たりを見回した。右を確認、左を確認。前方には......なんだあれ?なんか白いふよふよした、半霊?あ、ここで妖夢と合流か!

俺は橙を追い越して静かに妖夢の元へと近づいた。

だが、妖夢はなにやら少し様子がおかしかった。

 

「ど、どうした妖夢。気分でも悪いのか?」

「...で、か......」

「え?」

「なんですかあれ、可愛すぎまっ ...むぐっ!?」

「ちょ、妖夢、声が大きいぞっ」

「...ぷはっ。す、すみません、私としたことが」

 

橙に萌える妖夢を落ち着かせ、一つ深呼吸をする。

 

「いいか妖夢。これは今後の幽々子への信頼も掛かっているんだ。藍のため、幽々子のためにも頑張るぞ」

「そうですね。今日だけはなんとしても橙ちゃんを無事に帰らせ......あれ?」

「ん?どうした妖夢、やっぱり体調でも......あれ?」

 

ポカーンとする妖夢に気を遣うが、妖夢はどこかをずっと見ていた。俺も妖夢と同じ方向に視線を配ると、薄々嫌な予感はしていたが的中していた。

 

橙がいない。

 

「「み、見失ったーーー!?」」

 

バレるバレない関係なく、俺と妖夢は声を上げた。

 

「ど、どうしましょう陽斗さん!」

「お、落ち着け!あの橙だ、そんな遠くには行ってないはずだ!」

「なら急ぎましょう!」

 

空を飛び、上から橙を必死に探した。あたりは木々。とてもそう簡単に見つかるものじゃない。大きな妖力などを発しているならまだしも、まだ幼い式神。そんなに大きな力があるとも思えない。

そんな時、妖夢が反応した。

 

「いました!あそこです!」

 

妖夢の指を指す方。そこはさっきの場所と少しだけ距離があったところに、橙は歩いていた。よかった、これで少し一安心が出来る。そう思った時、妖夢が言った。

 

「でもマズイです」

「な、なんでだ?」

「あの道、いろんな妖怪が出るんです」

「た、例えば......?」

「......人喰いです。っといっても何でも食べます」

 

.........。

 

「急ぐんだ!少しでも近くで監視をしなければ!」

「ちょ、待ってください!危ないですよ!」

 

うぉぉぉぉ!!!

一気に地上へと急降下をし、着地は静かに。足音をなるべく立てずに橙の後ろに構えることができた。

ただ問題なのは、ここにはどんな人喰い妖怪が出るのか、なんだ。橙を襲うのか、俺でも勝てるのか。まぁ妖夢がいるから大丈夫だとは思うが、ここが心配するところである。

 

そんな時、橙の歩く道の先から何かが飛んできた。

それは真っ黒い球体。明らかに妖怪だ。このままほって置けば橙と衝突してしまう。その前になんとかしないと!

 

「妖夢。ここは任せた!俺はあの黒いのを!」

「え、ちょっと!あれはただの球体じゃなくて...」

 

妖夢、すまないが今は聞くことよりも体の方が勝手に反応してしまうんだ。守らないと、という義務が俺にはあるんだ!

 

先回りをして俺は黒い球体の背後に立ち、俺は手を突っ込んで自分の方へと引っ張った。どん、と俺の上には人一人分の重みが伝わってくる。黒い球体はみるみるうちに小さくなっていき、その中から小さな女の子が出てきた。

 

「むぅ、いきなりなにするの」

「あ、あれ?」

 

綺麗な金髪に赤いリボン。黒い服の下には白いシャツ。初めて見る子だな。

 

「ちょっと陽斗さん、大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ、大丈夫だ」

「痛く、ないんですか?腕」

「えっ?」

 

腕、という言葉に反応し、俺は自分の右腕を見た。そこには先ほど俺の上に乗っていた金髪の少女が俺の腕に噛み付いていた。それも割と本気で。

 

「いったぁ!なにすんだ!」

「それはこっちのセリフ。いきなり連れ込んで、変態さん?」

「なんでそうなるんだよ!初対面で噛み付いてきて」

「だって、美味しそうだもん。それよりあなたは?」

「え、俺か?陽斗だ」

「ふぅん。知らないわね」

 

体の上から身を退き、スクっと立つ少女は両手を広げてこう言った。

 

「私は、ルーミア」

 

満面の笑みで自己紹介をしてくれたルーミア。この子が、人喰い妖怪なのか?そうには見えないんだがなぁ。

 

「あなた、食べられる人?」

「俺は、食べられない亡霊だ」

「そんなことより、あの子猫ちゃん、いいの?」

 

変な会話をしていると、ルーミアは歩いていく橙を指さした。

 

「そうだった!ごめんな!......ん?」

 

すぐさま橙の元へと行こうとする俺の腕を、ルーミアは掴んで離してくれなかった。

 

「な、なんだ?」

「陽斗さん、はやくー!」

「ちょっと待ってくれ!あの、ルーミア?」

「さっきはよくもお散歩の邪魔、してくれたね。その仕返しをちょっと」

「それはさっき謝って...うおっ!?」

 

目の前には小さな口。だが気になったのはするどく尖った牙。人間で言う八重歯が、かなり発達していて本当に獣の牙そのものが俺を襲った。

顔を両手で抑え、ルーミアは必死に口を俺の体に目掛けて進んでくる。

 

「よ、陽斗さん!?」

 

俺を襲うルーミアを見て、妖夢は刀を取り出そうとした。だが、それを俺は止めた。

 

「構うな妖夢!俺のことよりも、橙を優先させろ!」

 

そうだ。これは橙を無事に人里まで送り届ける作戦だ。橙が人里にたどり着けるなら、俺がどうなろうが関係ない!こんな少女に負けるほど、俺は貧弱じゃないしなりより、橙の方が今は大事なんだ、絶対に守ってみせる!

 

「よ、陽斗さんっ!」

 

足に抵抗がある妖夢に、俺は最後に一押しをした。

 

「行け、妖夢!」

「で、ですが......」

「いいか妖夢!俺のことは気にするな!今起きている事を、幽々子に伝えるんだ!」

「よ、よう、とさ」

「振り向くなぁ!走れぇー!」

「ぅっ......ぜったい、あとで来て下さいよー!」

 

まるでアニメさながらの演出だと、自分でも少し思った。妖怪は振り返らず、橙に追いつくように走って行った。

人里には幽々子がいる。あの幽々子の事だ、きっと俺や妖夢が思いつかないような作戦を考えているに違いない。それだったら、何も出来ない俺を犠牲にするなんて安いもんだ。

 

とりあえず

 

「俺は、美味しくないぞ?」

「いいからいいから。痛いのは最初だけかもだよ?」

「痛いからこうやって抵抗してるんだけど?」

「そーなのかー」

「.........」

「.........」

「......スキありっ!」

「あっ......ふっ、あはは、や、やめっ!」

 

正直スキなんて無かったが、とりあえずくすぐりをしてみた。体の形は同じ人間だから効くかは確信を持てなかったが、どうやら効いているらしい。

小さな体をした少女にこんな事をするのはかなりの罪悪感と抵抗があるが、あくまでこの子は妖怪。自己防衛という言葉とは違うが、その言葉を自分に言い聞かせる。

 

「やっ、も、もぉやめてっ!こ、こんなぁ......! 」

 

こんなれば人喰い妖怪もただの女の子。最後のトドメをするのにも自分の精神を殴り殺してトドメをさした。

 

「あ...あはっ......あっ.........」

 

心が痛む。だけど、これは自己防衛であり橙を無事に帰らせるための行動なんだ。許してくれ。

 

「待ってろ妖夢、今行くからな」

 

 

 

 






実際に運転してわかる、車の怖さ。恐怖しか感じないぜ!←(ガクブル)

今回は三人称でやってみたのですが、難しいですね。表現や、なにより文章力がいつもより問われてきます。ですがこの作者、頑張りますのでお優しい方は暖かい目で見守ってください。

あと、感想を見たらわかると思いますが、タイトルを少し変えました。
『気づけば桜の亡霊が傍に居てくれてる』

『気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる』

意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!

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