それはさておき。
今回は少し、いつもと趣向を変えて甘々な話ではありません!ごめんなさい!
それでは、ごゆっくり。
これは、ある1人の少女を守るお話。
「行け、妖夢!」
「で、ですが......」
「いいか妖夢!俺のことは気にするな!今起きている事を、幽々子に伝えるんだ!」
「よ、よう、とさ」
「振り向くなぁ!走れぇー!」
「ぅっ......ぜったい、あとで来て下さいよー!」
なぜ、こうなったんだろうか。
この出来事まで至るまでは、今日の朝から。
白玉楼、朝。
「......暇ねぇー」
「そうだなぁー」
「こんな時間も、たまにはいいですね」
食後の幽々子。家事終わりの俺。掃除終わりの妖夢。
珍しく今日は何もやることが無い。永遠亭から帰ってきても特に何もなく、やるとしたら冥界の管理だがこうして異常がなければ退屈なのだ。ここまで暇だと、紅魔館の美鈴の気持ちが分からなくもない。
幽々子はうとうとと今にも寝そうな感じを出している。妖夢も珍しく眠そうだ。こんな二人を見るのが、意外と俺は好きである。
幽々子と妖夢は、まるで母と娘のような関係。幽々子が叱る、なんてことは基本的は無いが、妖夢を甘やかしてそれに対して妖夢が「もう子供じゃありません!」と見栄を張るところがまた可愛らしいのだ。
「よーうむ、おやつをくださいなっ」
「先ほど朝ごはんを食べましたよね?」
「さっき食べたのはご飯よ。今から食べるのはおやつ。違うわよ?」
「お腹の中に入れるのならどれも同じです!」
「あら。じゃあお茶も、ご飯と言うのね?」
「幽々子の場合はお茶漬けにするじゃないですか!
「あ。朝ごはんの締めにお茶漬けを食べたいわ」
「作りませんし食べさせませんっ!」
主が幽々子だからこそ、ここまで言える庭師がいるのだろう。確かにお茶漬け、美味しいもんなー。おかわりしたいけど少しでいいって時に助かるし、小腹が空いたときはサラサラっといけるのがまたお茶漬けの良いところだ。妖夢も、いくら亡霊である幽々子でも食べ過ぎだと心配しているのだろう。
だが妖夢の思いある怒りも幽々子には届かず......。
「うふふ。怒ってる妖夢可愛いわ」
「ふぇ!?や、その、からかわないでください!」
「あら、本音なのにねぇ」
「い、いやその、なんというかぁ...」
「私から言われても、嬉しくないのね......」
明らかに演技だと思われるその暗めの表情は、妖夢の忠実な心をすぐに動かした。
「う、嬉しいです!とっても嬉しいですよ!ですからそんなお顔をしないで下さいよ!」
「あーもぉ〜可愛いわねぇ〜」
ガバッと妖夢に抱きつく幽々子に、妖夢はかなり驚いていた。
「ゆ、幽々子様っ!?」
「ずっとこうしていたいわね」
「あの、幽々子様?結構恥ずかしいのですが......」
「いいじゃない。私は平気よ?」
「ですからその、陽斗さんも見てますから」
「じゃあ陽斗もこっちに来るかしら?」
「えっ!?」
本日今日の第一声が驚いた時の声である。
「俺はー、その、見てるよ、うん......」
もちろんこのじゃれ合いに入れる訳がない。ただでさえ見てるだけでおぉ、みたいな感じもしたし、何より男としての理性が壊れると思うんだ。
「あらそう?妖夢の胸とか触らなくていい?」
「っ!ちょっ幽々子様、服をめくらないでください!」
「大丈夫だ妖夢!見てない、見てないからぁ!」
「見たら斬りますよ!」
「だから見てないって!」
見ていない事を必死に言葉に表し、両手で目を隠した。ちょっと指の間から見ようかなぁと思ったけどあとが怖くて俺はそのままじっと待つ。躊躇なく胸を見せられそう妖夢は必死に幽々子の手を掴み幽々子から距離をとった。
「な...なんてことするんですかー!!!」
「妖夢の小さくてかわいい胸を陽斗に見せたかっただけよ?」
「だけ、じゃないですよっ!あと小さいって言わないでください!」
半分泣き目で訴える妖夢。
女性の魅力の一つとも言える胸の大きさ。幽々子が大きいからなのか、妖夢はかなり気にしているらしい。実際、女性の価値観は胸よりも内面だと思うんだけど、人によるのかな。俺は小さくても好きだけど。
「妖夢。これは悪意があって言うわけじゃないぞ?」
「なんですか」
「...胸が小さい方が待て。まだ何も言ってないけどとりあえず楼観剣から手を離してくれ!」
「......斬りますね」
「決定!?」
「待ってくださいよ陽斗さーん。動いたら上手く斬れませんよ?」
「ごめんって!ホントに悪意は無いんだって!」
地獄のような鬼ごっこ。リアル鬼ごっことは、まさにこの事を言うんじゃないかな。いやマジで後ろから追ってくる妖夢の目が恐いんだけど!
「誰か助け」
「助けてください!」
「え?」
「はい?」
「あら」
俺の言葉とは別に助けを求める声がした。それも女性の声だ。俺たちは声のする方向に視線をやると、そこには普段は見せないような、心配を隠せない顔をした......。
「藍さん!?」
「ど、どうした?」
「久しぶりね〜」
八雲 紫の式、九尾の藍の姿があった。
「珍しいわね、貴女が慌ててるなんて」
「ど、どうかしましたか?」
さすがの幽々子と妖夢も驚きを隠せなかった。
◇ ◇ ◇
マヨヒガは謎である。
第一マヨヒガとは、特定不明の場所にある幻の存在とも言われている。そこに住んでいるのは八雲の名を持つ者。
そう、変なところで嫌がらせをしてくる紫の家である。そのマヨヒガに紫と藍、橙が住んでいるんだ。
そして今、そのマヨヒガに俺達はいるのだ。藍が慌てて少し落ち着かせようとしたらまさかの足元からのスキマ転送。叫び声だけを白玉楼に残してマヨヒガに来た。
「よーとさんっおひさしぶりです!」
「おう、久しぶりだな、橙」
「えへへっ」
元気よく挨拶をしてくれたのは藍の式、橙である。
橙は二本の尻尾と小さな体に頭から生えた猫耳。こんな子から挨拶をされると無意識に頭を撫でてしまうのは俺だけじゃないはず。
「それで藍ちゃん。紫はどこ?」
「ここにいるわよ」
「......せめて普通に出てきてほしかったわ」
「別に私なんだから、天井からでもいいでしょ?」
なんだろう。紫だからいいと許している自分がいる。
「どうして、私たちが呼ばれたのでしょうか?」
「そうね。これは藍に聞いてちょうだい」
あとは頼んだわよ、とそのままスキマを閉じてどこかに消えた。っと思ったら普通に戻ってきた紫。藍は紫の言葉のあとから、やたらとまた慌てるような仕草を見せる。
「その、なんというか、」
「早く言いなさいよ。九本の尻尾モフり倒すわよ?」
「いくら紫様でもやめて下さい!言いますから!」
手をワキワキさせる紫に対して藍はもう言うと決心をしたそうだ。
「橙が今からお使いに行くのですが、その見張りというか、護衛というか......」
少し恥ずかしさを隠すように口を開いた。
詳しく聞くとこうだった。橙をお使いに行かせるとき、藍はあまりにも心配で目が離せない。ついて行くとお使いにもならないので意味が無いと紫が藍に「ここで待ってなさい」と言われたらしい。
そこで本題。どうしても橙が心配な藍は、橙の見張り役として俺達にこうして頼んできたんだ。
「ですが藍さん。私たちが見張っては、それこそ意味が無いのでは」
「いいのよ妖夢。藍は見張るだけじゃなくてきっと手伝うわ。だから意味はあるの」
「そ、そうですか」
「もちろん、報酬は紫から出るのよね」
「何言ってるのよ。藍に決まってるでしょ」
「あ、はい。準備はもうできてます」
「やるわよ、よむと」
「わかりづら!」
「混ぜないでください!」
よくわからないまま、そして俺と妖夢の意見も聞かずに進められた話。
飽きれてても少しノリ気の紫。
少し一安心している藍。
自分がターゲットだとよくわかっていない橙。
報酬があると聞いてすぐに依頼を受けた幽々子。
俺と目を合わせてため息をつく妖夢。
そして同じくため息をつく俺。
そして最終的に決められたこの作戦名は───
「『藍ちゃんドキドキ♡橙のお使い作戦』ね」
「紫様がそれを言うと流石にキツ...あっ、すみません!だからそれだけはぁ!...あっ.........」
───作戦・開始
さぁ始まりました、初めてのおつかゲフンゲフン。
前編、後編と分けて書こうかなーっと今のところ思っています!
橙をどうやって可愛く表現しようか、悩みますね。
それと!
もうそろそろ、リア充の日ですね。え?何の日かわからない?確か、クリスマスって名前だったような......。作者は一人寂しくゲームセンターです。
当然ながら、特別編を投稿しますので、クリスマスの日にも読んでいただけると幸いです。
意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!