気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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最近は夜が少しだけ、少しだけ!涼しくなってきました。みなさんはどうでしょうか?

前回の投稿から頑張りました!
まぁ早く書いてしまった分クオリティが下がりました!たぶん!
前は特別編が二連続でしたからね、本編をお忘れの方もいるでしょう。そう、妖夢VS鈴仙 ですね!だけどその弾幕ごっこもこれでお終い!

それでは、ごゆっくり。



44話:守るための力

嫌だった。毎日戦うことが。

 

怖かった。仲間が死んでいく事が。

 

逃げたかった。戦争の毎日から。

 

私は月の軍では、兵士の中じゃ優秀な存在だった。戦いに勝ち、生き残り、敵を倒した。それだけ、たったそれだけで。

戦争は全てを変えるだけの事はあるが、それと共に仲間を犠牲にしてしまう。例えれば...確実に勝てる戦いでも全く犠牲が無い、とはとても言い難いもの。

 

これが、まだ名が『鈴仙』だったころの私の生き方。

 

最初はただ「また仲間が」くらいだった。だけど途中で友達が出来て、大切な戦友にもなった。その友達が減っていくことがなにより怖かった。

 

だから私は、月から逃げてきた。

 

出口もわからない竹林の中、私はさまよい続けた。体は月から逃げてくるときに怪我がところどころにありお腹も空いていた。

そもそもここがどこ何か、どんな所なのか。何が生きていてどんな建物があるのか。あまりにも情報が少なすぎた。周りを見たくても竹で見えない。もはや暗闇の中と言っても過言ではなかった。

 

そんな時、師匠と出会った。

 

師匠は私を救ってくれた。どん底まで堕ちきった心を癒してくれた。月の使者から避けるために名前までくれた。それが『優曇華院』と言う名だった。

 

姫様は私を見守ってくれた。師匠から助けられ、永遠亭に住んでいいと言ってくれたのは姫様だった。そんな姫様も、私に『イナバ』と名づけてくれた。

 

永遠亭に住み始めた、私は色々な事を学んだ。師匠からは医学を教えてもらい、姫様からは色んな知識や常識を。もちろん、てゐも私の相手をしてくれた。いつもはイタズラばかりで嫌な奴だけど、そんなてゐがなぜか好きだった。

 

そして、私はこの三人を...師匠と、姫様と、てゐを守るためにこの世界のルール、弾幕ごっこで恩返しのつもりで守ろうと決意した。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)」

 

 

 

鈴仙さんはそう口を開いた。

その途端、鈴仙さんの後ろに何かが見えた。人ではない、影ではない、物でもない何か。ただわかるのは紅い点が二つ。まるで兎の目のようなものが見えた。さっきとはまるで違う雰囲気。さっきまで感じていた殺気、闘争心が倍増されているように感じる。剣をあつかう私でも、あそこまでは出来ないかも知れない。

 

「鈴仙さん......」

「ホントは使いたくなかったの、これだけは」

 

脅すように語り始める鈴仙さんに私は耳を傾けた。その一つ一つの言葉に重みを感じた。

 

「月の...狂気の紅い月の力。貴女はもう、私を斬る事は出来ないわ!」

 

楼観剣を強く握り締める。何かが来る!心の中でそう思って攻撃を待ち構えた。心を落ち着かせ鈴仙さん一点に全てを集中させる。

 

「どこを見ているの」

「......えっ」

 

その言葉に少し反応が遅れた。どこを見ている?それは当然鈴仙さんを見て......

 

「い、いない!」

 

どうして...私はさっきまで、ずっと鈴仙さんを見ていたはずなのに。目を離す瞬間なんてどこにもなかった。隙なんてどこにも......。

 

「確かに貴女は、私から『目』は離さなかったわ。私の能力、忘れたかしら?」

「目を離さなかった......そう言う事......っ」

 

やっと理解した。どうして鈴仙さんが消えたのか。私はどうしてこうも同じ手をくらっているんだ!目を離さなかったから消えたんじゃない。

 

目を合わせたから消えたんだ!

 

「もう遅いわよ!」

「くぅ!」

 

鈴仙さんは当然、私の背後にいた。これは完全に私のミスだ。鈴仙さんの目を見てはいけないこと。なぜなら狂気の目、鈴仙さんの能力だからだ。これでまた、私は能力に掛かってしまった。

 

後ろを振り向いて反撃しようとも、反応が遅れたためかなりの隙を生み出してしまった。鈴仙さんの弾幕は私に向かって飛んでくる。

 

「...かっぁ!」

 

何発かはしのいだ。だけど半分以上が体のあちこちに当たっていた。腕や足、横腹にはかすり傷。久しぶりに見る自分の血。

 

「今のでよく生きてるわね」

「はぁ、はぁ、はぁ......」

「でも重傷ね」

 

膝を地につき上を向く。そこには既に勝ち誇っている鈴仙さんの姿があった。

 

「まだ......負けていませんっ!」

 

力いっぱい、振り絞って声を上げた。まだ、こんなんじゃダメだ!こんなんじゃ、誰一人と守る事なんてできない!魂魄家の名を...幽々子様を守る為にこんなんで負けてちゃいけない!

 

「私は、心から諦めない限り、負けじゃない!」

「......いいわ。なら、もっと深い狂気に堕ちなさい!」

 

私は立ち上がって再び剣を構える。鈴仙さんは私との距離をとって構えた。

もうここからは本気の殺し合いといっても可笑しくないと思った。お互いに主のために身に着けた力。大切な人を守る為にある技術。あの人の笑顔が見たい。あの人を安心させてあげたい。そう願う私と鈴仙さんの力を、全力でぶつけ合う!

 

それに勝つために、魂魄家の技だって使う!

 

「私は西行寺付き、魂魄家の名を次ぐ者...魂魄 妖夢!......今からは本当に、全身全霊で技を使わせてもらいます!」

 

私はそう言い、魂魄家に伝わるもう一つの刀、白楼剣を鞘から抜いた。長刀である楼観剣とは違い白楼剣は短刀。この二刀流こそ、魂魄家代々からの技。

 

「二刀流...なるほどね」

 

やっと本気を出した、と思われるように鈴仙さんは堂々としていた。

 

「八意付き。鈴仙・優曇華院・イナバ!名をくれた二人のために全力を尽くすわ!」

 

全力を尽くす......じゃあ今までのは本気じゃなかったのかな。結構いい腕をしていて、あの実力。やっぱり鍛錬の差なのでしょうか。でも、私だって負けるわけにはいきません。鈴仙さんだけじゃない。私だって名を次ぐために、幽々子様を恥じさせぬように、その決意の元全力でいきます!

 

「いきますよ!」

「えぇ、きなさい!」

 

お互いに構え、また静かになる。この静寂の間に、鈴仙さんは何を考えているのか。真正面から攻撃か、それともまた幻影を使って背後に回るのか。多種多様であるその能力。どんな攻撃が来ても変じゃない。

 

「......」

「......ほっ」

 

突如、鈴仙さんは上空に何かを投げた。何かの作戦?だがその程度では私はどうってこともない。私の視線を上にあげてその隙にまた消えるつもりなんでしょうか。もう引っかかりません!

私は真っ直ぐ、上を見ずに鈴仙さんに斬りかかった。鈴仙さんも作戦を見抜かれたのか、私が近づいた一瞬で表情が変わった。

 

「小細工なんて、私には効きません!」

「やっぱそう来なきゃ」

 

楼観剣を斜めに振り降ろした。刀の描く軌道、立ち筋。全てに全力を込めて振り降ろした。反応が遅れたものの、鈴仙さんは必死に後ろに下がり直撃を逃れたが服の表面をかすって少し赤く滲んでいた。

 

「ふ、うぅ......」

 

自分の体を見て血が出ている事に気が付いた鈴仙さん。血の滲んでいる所からすると右肩辺りだろうか。そこを押さえて怯んでいる。追撃するなら今しかない!再び、楼観剣の白楼剣を握り締める走り始める。楼観剣はもう一度斜めに振り降ろし、左手の白楼剣も同じく斜めに振り降ろした。その体制ではこの攻撃を避ける事など出来ないはずです!

 

「もらったぁ!!!」

 

力を込めた攻撃。鈴仙さんはただ私を見ているだけで防御姿勢までは間に合わなかった。だが鈴仙さんもそのままやられる訳にもいかなかった。私が斬りかかる直前、何かを口で唱えていた。そしてその直後、鈴仙さんの姿がボヤけ、次第に消えていった。

 

「今のは危なかったわね......」

「やはり、簡単ではありませんね」

「当然よ。このくらいで負けられないわ」

 

少し震える足で立ち上がろうとする鈴仙さん。見た限りダメージはあるも、自分の能力で疲労が溜まってきているのだろうか。

 

「今度はこっちからいくわよ!」

 

それでも尚、私と戦おうとする鈴仙さんが、私から見たらとても美しく、カッコ良く見えた。

 

 

赤い銃弾の形をした弾幕が放たれた。扇形のように広がっている弾幕。見た感じ、大したことはなさそうだけど鈴仙さんの弾幕だ。きっと何かがあるだろう。そう思って私は見切るまでじっとしていた。

 

でもその行動が、またミスに繋がった。

 

「き、消えた......いや違う!」

 

目の前にあった弾幕が消えた。と思いきやまた出現した。消えたり出たりを繰り返していた。これでは弾幕の軌道が読めない。それどころか、その弾幕は徐々にに増えていった。消える度に数が増え、気づけば私を覆うようになっていた。

 

 

「こんなもの、相殺すれば!」

 

刀を握り締め力を込める。

 

「断命剣『冥想斬』!」

 

スペルカードを宣言と同時に、楼観剣に光が集まった。光は束となり、やがては刃と化した。同じく白楼剣も、光が集まり刃と化した。この楼観剣には『幽霊10匹分の殺傷能力』があると言われている。白楼剣は『迷いを断ち切る』事が出来る。どちらも魂魄家代々から受け継がれている。扱っている私もイマイチどのくらいなのかは正直詳しくないのですが......師匠が一度見せてくれた技は......とても綺麗で鮮やかだった。私のような半人前には到底出来るような技ではなかった。

そしてこの『冥想斬』も、師匠が教えてくれた技の一つであり、やっと使いこなせる様になった。

 

心を落ち着かせ、剣に集中させる。

 

全身を力ませず、邪念を払う。

 

目標を一点に絞込み、刀を構える。

 

あとは......

 

「はぁーっ! 」

 

全力で断ち切るのみ!!!

 

襲ってくる弾幕に対して、楼観剣と白楼剣を斜めに斬りおろした。刀に纏っていた光はやがて、細長い刃、真空刃として変化した。かなりのスピードで動く二つの真空刃は弾幕とぶつかり相殺した。弾幕が消滅した事により、私の次の行動は既に決まっていた。鈴仙さんに向かって斜め上に飛び、一気に上空から楼観剣を振り降ろした。刀が風を切る音が大きく響きわたり、時間差で風が通り抜ける。鈴仙さんは横に逃げ防御姿勢をした。状態を確認し、私は白楼剣を横から振る。縦からきた楼観剣を避けたのなら、横に対しての防御は薄いはず。

 

白楼剣での攻撃は当てることができた。後ろに仰け反りながら、必死に立とうとする鈴仙さん。

 

「い、今のは効いたわ...ね......」

 

肩を震わせてそう言った。もうお互いに体力も少ないだろう。自分自身でもわかる。今までのダメージが溜まってきている。

 

もう、目の前にいる相手を倒すだけ。その単純な事が難しい。ただただ、相手の攻撃を避けては反撃をする。当たれば苦しいし、当ててしまえば向こうも苦しむ。だがそれは戦いの中において当たり前であり常識でもある。

 

「これで、終わりにします......!」

 

その常識を今実感している。

目の前にいる鈴仙さんに向かって刃を向けて叫ぶ。鈴仙さんもそれに応えるように立ち上がり、構えた。

 

「来なさい!返り討ちにしてあげるわ!」

 

お互いに叫び合い 、目付きが変わる。そして同時に宣言をした。

 

「「スペルカード!」」

 

全身全霊を込めた、私と鈴仙さんのスペルカード。

鈴仙さんは両手を広げると、また後ろに二つの紅い目が見えた。きっと最初に使った『幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)』をラストスペルにしたバージョン。

 

私だって負けてられない。心の底から込み上げてくるこの気持ちだけではないが、負けたくない一心で刀を握る。

 

守りたい人の為。

 

大切な人を守りたい。

 

誰も、悲しむ姿、泣いている姿は見たくない。

 

 

 

 

「ラストワード.........」

 

 

 

あの人の為。

 

 

 

私の出来ることを。

 

 

「ルナティック!」

 

 

 

自分を信じて。

 

 

 

 

刀を信じて。

 

 

 

「レッドアイズ!!!」

 

 

 

今までの鍛錬を思い出して!

 

 

丸い弾幕は次々と各所に配置され、その間を通るように、弾丸の形をした弾幕が私に向かって放たれた。向かってくると同時に一度消えて、また別のところから出現した。これが鈴仙さんのラストワード、『幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)』だ。

 

その弾幕を前に、目を閉じて、集中する。

 

「さぁ、斬れるなら斬ってみなさいっ!」

 

これが二人の最後の攻撃であり、最後のスペルカード。威力は高いし密度もある。ここは、気持ちで負けちゃいけない!

 

これが、私のラストワード!

 

 

「『待宵反射衛星斬』!」

 

 

右に刀を差し向け、弾幕を展開させる。展開された弾幕は綺麗で真っ直ぐな列になって、鈴仙さんへの一直線の道を導いた。

 

「な、なにこれ......動きが、鈍...い......!?」

 

何が起こったのか、理解ができていない状態で鈴仙さんがそう言った。

 

 

 

『雨を斬れる様になるには三十年は掛かると言う』

 

『空気を斬れる様になるには五十年は掛かると言う』

 

『時を斬れる様になるには二百年は掛かると言う』

 

 

 

昔、師匠から教わった言葉。まだ私にはどれも大変なのかもしれない。仮に出来ても、スペルカードを利用すれば雨や空気を斬ることが可能かもしれない。

でも、『時』だけはどうしても、どう鍛錬しても斬れる様にはならなかった。こんな私が、誰かを守れるのだろうか?誰かを救えるのか?できやしない。

 

このラストワードは、そんな私の出来ること全てを合わせたスペルカード。

 

 

 

その結果、この時間帯だけ......

 

「『時』を遅くさせてもらいますよ!」

 

 

「なっ!?」

 

 

 

私の全力を注いだこのラストワードで、今度こそ決めてみせる!

恐怖を感じた鈴仙さんは逃げようもするが、既に私のテリトリーに入っており、すべての動きがスローになっている。

 

「いや......いやだ!」

「この楼観剣に......」

 

 

 

 

師匠。まだ私は未熟者です。

 

 

 

「斬れぬ物など......!」

 

 

 

 

それでも私は、幽々子様を守ってみせます。

 

 

 

「......あんまりなーーーい!!!」

 

 

 

 

私の、全身全霊を込めた一撃を鈴仙さんに放った。

 

 

 






もう少し、鈴仙の知識を取り入れればよかったと後悔している作者です。なんだろ、全く、クオリティが下がったとかそんなレベルじゃないですね。もともと戦闘シーンが苦手という訳ですが、これはなんとも言えないです。
うどみょんファンの皆様、すみません。

残りの夏休み、皆さんは元気よく過ごして下さいね!

意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!

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