前回の投稿から『あれ?もうすぐ七夕じゃん!』と思い大急ぎで書きました!いやぁ、間に合ってよかったです。
急いで書いたので、話がゴッチャかもしれませんが、そこのところはすみません!
っということで特別編。
それではごゆっくり
誰にだって願い事はあるだろう。
小さい頃だとアイドルになりたい。ヒーローになりたい。お金持ちになりたい。色々あるだろう。
そんな夢を見る子供はいずれ、大人になるつれにヒーローなんかに慣れないと分かってくる。現実を見始めるのだ。
だけど、ヒーローになれなくとも誰かのために動ける自分になろうとする。そんな人こそ、本当に夢のある人なんだと思う。
結局は何が言いたいのかと言うと......。
「妖夢、落ち着いたか?」
「す、少し...ぐすん......」
絶賛、妖夢を慰め中である。どうして妖夢が泣いているいや、泣きそうなのか。その理由は当然幽々子にあった。
「ごめんなさい妖夢、そんなに傷つくとは思わなくて」
「傷つくというより恥ずかし過ぎてどうにかなりそうですよ!」
幽々子の手にあるのは一冊の日記。
それも妖夢が幼少期に書いていた日記である。きっと幼い時に妖忌に書かされていたのだろう。幽々子がその日記を偶然にも見つけしまったのだ。
「まぁ確かに恥ずかしいよな。自分の日記を目の前で音読とはな」
ある意味公開処刑みたいなものである。
「でも安心したわ、妖夢」
「...なぜでしょうか?」
「妖夢は、今は生真面目で遊びも知らないような感じだけど、ちゃんとした『願い事』があるって事よ」
「ゆ、幽々子様......」
妖夢は分かっている通り、真面目だ。本当に娯楽とか遊びを知らないのではないかと、それほど真面目なのだ。礼儀正しく振る舞い、時間通りに動く。そんな妖夢に幽々子は安心していた。
「良いこと言ってるっぽいですが笑い、我慢してますよね!?」
「うふふ、あら、よくわかったわね」
「もぉー!怒りますよぉ!?」
「あらあら、そんなに大声出さないの。じゃないとなれないわよ、日記に書かれてある...」
「もう忘れてくださーい!っというか日記を返してください!」
バッと幽々子から強引に日記を取り返す妖夢。年頃の女の子は自分の日記を見られるとかなり恥ずかしがったりする、らしい。実際のところ妖夢の年齢は知らないのだが聞かないでおこう。
「もぉ、日記は私が持ってま...あれ、日記?」
「へぇ〜妖夢、貴女面白いわね〜」
「紫様っ!」
妖夢が驚くのも無理はない。先程まで持っていた日記が一番見られたくないNo.1の紫に取られたのだから。きっと紫は俺たちの話を聞いていてスキマで自分の手まで転送させたのだろう。
「返して下さい!」
「はいどうぞ」
「え、あ、ありがとうございます」
意外とあっさりと返した紫に妖夢は少し慌てた。
「妖夢。夢を持つ事はとても素敵だわ。そして、その『夢』を『願う』ことだって、誰にだって必要なの。夢もなく願うことも無い者に生き甲斐なんて存在しないもの」
「紫様......」
紫の言葉にあたりが沈黙に浸る。
「扇子で口元隠さないで下さい、ニヤついてるのくらいわかっますっ!!!」
やはり紫は紫だった。
「ごめんなさい。でも、貴女に伝えたい事はあるわ」
「なんですかもぉ」
「まぁまぁ。『願い』に関係しているわ。陽斗、今日が何の日か知ってるかしら?」
今日?今日が何の日かって......あっ。
「7月7日......」
ふと日にちを呟くと、すぐに頭の中に出てきた。
「外の世界では七夕って日らしいわね?」
「そういやそうだったな」
「たなばた、ですか?」
「美味しそうな名前ね」
「食べ物じゃないからな?」
すでに食べ物と勘違いしている幽々子。
「七夕ってのは、おり姫とひこ星という二人の物語から始まった事なんだ。簡単に説明をすると、二人はとても仲の良かった恋人同士なんだ。でもあまりにもラブラブで仕事をしなかった二人は天罰を受けて離ればなれになってしまう。だが、あまりにも悲しんだ二人は神様が年に一度だけ会わせてあげようとしたんだ。その場所が夜空にある星、天の川だ」
「な、なるほど」
「ここからは詳しくないが、その二人の願いが完全に叶ったわけじゃないが、俺たちも竹に短冊という紙にお願い事を書いて吊るすんだ。それが七夕」
「なんか、恋心を感じますね」
「じゃあ雨が降ったらどうなるの?」
「雨が降ったら、二つの説があるんだ」
俺は人差し指を空にさして話した。
「一つは、ひこ星は雨が降っている中、おり姫の所まで会いに行くんだ。雨の中自分に会いに来てくれて嬉しかったおり姫は嬉しくて泣いたんだ。その嬉し涙が雨だと言われている」
「ひこ星さん、カッコイイですね」
「そしてもう一つは、それと逆なんだ。お互いに会えなくて悲しくて泣いた。その涙が雨とも言われている」
簡単にとは言ったが結局は長々と話してしまった。だけど三人ともちゃんと聞いてくれたことに少し嬉しかった。
「ロマンチックねぇ。なら今夜しましょ、七夕」
「へぇ、なら私も参加していいかしら?」
「当然よ。なんなら式の二人も呼んだら?」
「ん〜それもそうね。橙にはいい機会だし」
「そうとわかれば妖夢。おつかい頼んでいい?」
「わかりました。直ちに行ってまいります」
「なら、その間に俺は何かご飯を作ってるよ」
「流石ね陽斗〜。今夜が楽しみね」
こうして、冥界、白玉楼での七夕の準備が始まった。
◇ ◇ ◇
あたりは夜。灯りの少ない冥界では空に輝く月と星だけであった。桜の花弁もそれに照らされ綺麗に見える。
晩御飯を食べ終わった俺たちは七夕をしようとしていた。短冊は紫が持って来たのだが紫の事だ、作るのが面倒だから外の世界から盗んで来たんだろう。
「盗んでないわよ」
「心を読むなよ」
きっと今頃、短冊を取られてしまった本人たちはびっくりしているだろう。
「ゆかりさまゆかりさま、これからなにするんですか?」
「確かに、何も聞かされていませんよ」
「七夕よ」
「たなばた?」
「ってなんですか?」
「ふふっ。まぁ待ってなさい」
橙はともかく、意外にも藍が知らなかった事には少し驚いた。藍は実力は紫に劣るものの、知識はなかなかのものだと聞いていた。何より式の主よりも真面目だし思わず名前くらいは聞いたことはあるかと。
「幽々子様、お酒とお団子、準備しました」
「ありがとう妖夢。なら始めましょ、七夕を」
ゆったりとした声で始まった白玉楼の七夕。まぁ実際、楽しむ行事なのかもしれないしな。
「それで陽斗。何するの?」
「あーっと、そうだな。皆はさっき、紫から短冊っていう小さな紙を貰ったよな?それに願い事を書くんだ」
「何でもいいの?食べ物とか」
「ま、まぁなんでもいいよ」
いっせいに書き始める皆。
紫と幽々子はなにやら悩んでいるそうだが、妖夢と藍と橙はスラスラと書き始める。妖夢には悪いがだいたい想像はつく。藍は、なんだろうか。よく思えば藍と橙の二人とは会う機会が少なかったからあまり想像が出来ないな。
「よーとさん、書き終わりましたっ」
「書き終えたぞ」
「私もです」
「三人とも早いな」
「こんなんでいいかしら」
「陽斗、書き終わったわ」
なんやかんやで幽々子と紫も書き終えたそうだ。ここからが七夕、竹に短冊を吊るすだけだ。
「じゃあ皆外に出て短冊を吊るしてくれ」
「吊るすって、何に?」
「竹にだy......竹.........」
『あっ......』
全員の声が重なった。考えている事は同じようだ。
「妖夢、竹は?」
「人里に向かわせたのは幽々子様です」
「藍と橙......」
「何も聞かされてうえ無理矢理連れてこられました」
「そーですよ?」
まさかの全滅であった。失敗した、まさか一番必要な物を全員が忘れていたとは。いや、忘れていたというか知らなかった人もいるんだ、説明不足だったな。
そう思った時、突然言い出した幽々子に耳を傾けた。
「ねぇ皆。竹が無いなら冥界らしく」
ひとつ間を置いて幽々子はあるものに指をさした。
「桜にしましょうよ」
「さ、桜にかぁ」
「いいでしょ、陽斗」
桜に短冊とは聞いたことが無い。むしろ初めてやるのではないか?
でも、ここは冥界。冥界には桜が年中無休で咲き乱れている。それならオリジナルの七夕があってもいいんじゃないか。
「そうだな、桜にしよう!」
こうして急遽、桜に変酷し全員が短冊を吊るし始めた。
吊るし終えた俺たちは、白玉楼の縁側でくつろいでいた。
「紫様は悩んでおられましたが、何にしたんですか?」
「それより、まず自分が言うべきじゃないの、藍?」
「ぅ......私は、その、平和でありたい...ってスキマで覗かないでくださいよ!」
「ふ〜ん。『いつまでも紫様の式でいられますように』かぁ。良いこと書くわね」
「私も、らんさまとずっと一緒がいいって書きました!」
「ちぇ、橙......ほら紫様も、二人とも言いましたよ」
「そうね。...『変わらぬ幻想郷と式でありますように』って......なんか照れくさいわね」
「「紫様らしくない!」」
「覚悟、出来てるわよね、藍?」
「私だけですか!?いや、ちょっ!...ああぁぁあぁ!!!」
隣で悲鳴声をあげて撃沈する藍を、俺と幽々子と妖夢は見ることしか出来なかった。
「妖夢、貴女はなんて書いたの?」
先ほどの藍を見ても笑顔でこの質問をする幽々子。
「私はですね、『二人が元気でいられますように』と願いを込めました」
「あら、優しいのね」
「それと最後に『幽々子様の食欲が減りますように』とも書きました」
「うん。やっぱりいつもの妖夢ね、悲しいわ」
妖夢の願いに幽々子は頬を膨らませた。実際、幽々子の食欲が減ることによって俺と妖夢は少なからず料理や食器洗いが楽になるのだが。
「幽々子様はなんと書かれたのですか?」
「私はね、ご飯いっぱい」
「やめて下さい」
「むぅ、冗談よぉ。陽斗は?」
「え、俺か?」
急に話を振られてつい戸惑った。幽々子は答えずに終わったが、後で聞こうとしよう。
「...『妖夢が一人前になりますように。幽々子の笑顔が増えますように』って......」
自分で言っといて恥ずかしかった。だって、願い事なんてこれしかないんだよ!自分がどうこうよりもまだこっちの方がいい気がしたんだよ!
「陽斗さん、ありがとうございます」
「あらあら。嬉しいわね」
「って事で幽々子はなんて書いたんだ?」
「うっ、引きずるわね陽斗」
「自分だけはずるいからな」
当然妖夢の同じ考えだったらしく、ジリジリと歩み寄っていた。
「私は......こうやって」
「え、ちょ、幽々子様っ!?」
突然、幽々子は妖夢を抱きしめ始めた。それもぎゅーっとだ。いきなり抱きつかれた妖夢は完璧に混乱しており、何も喋ってないが口がぱくぱくしていた。幽々子もそんな妖夢も関係なく抱きつきながら話を続けた。
「『妖夢が一人前にまだなりませんように』ってね。陽斗とは逆ね」
「ど、どうしてですか幽々子様?あと離してください」
「嫌よぉ。だって、一人前になったらこうやって抱きしめる事ができないじゃないの」
「いやでも、一人前なっても私はっ!」
「抱きしめてほしいの?」
「えっとぉその、なんというか......」
「照れちゃって可愛いわね、よしよし」
「こ、子供じゃないんですからぁ!」
完全に子供扱いされる妖夢。幽々子からすれば、妖夢はまだ半人前であり、子供と思われているのだろう。幽々子も幽々子なりに、あぁやって妖夢を可愛がりたいようだ。
「『陽斗とずっと傍に居られますように』って」
幽々子はそう言って俺に抱きついた。妖夢とは違って包み込むような、優しい力加減だった。一瞬で自分の顔が真っ赤になったのがわかる。顔が熱くなり恥ずかしくて頭がぽーとする。
「あの、幽々子?そろそろ、というか当たってるからその......」
「ずっとこのままでも」
「えっ?」
「ふふ、なーんでもないわよ。」
そう言って幽々子は俺から離れた。
「いや幽々子、さっきなんて」
「ほら妖夢、お酒とお団子、早く出しなさい」
「あ、はい!ここに」
「ほら陽斗、一緒に食べましょ。妖夢もよ」
幽々子は笑顔で俺と妖夢を誘った。それに答えるように俺と妖夢は幽々子の元へと近づき、三人でお酒と団子を楽しんだ。
「みんな、帰っちゃったわね」
「だな。妖夢も寝てるしな」
紫たちは先ほど帰ったばかり。妖夢は幽々子にお酒をすすめられて急に寝てしまった。今では幽々子の膝枕で妖夢が寝て、その隣で俺が座っていた。
「なぁ幽々子。やっぱりさっき言ったのが気になるんだが」
「もぉ。しつこい男は嫌われるわよぉ?いーの、忘れちゃいなさい。それに......」
「それに?」
幽々子は頭を俺の肩に乗せて顔を近づけてこう言った。
「短冊の想いは、きっと届くわ。今みたいに、陽斗とずっと一緒がいいもの」
「...俺もだよ幽々子......ありがとな」
結局、最後に言った幽々子の言葉は俺には聞き取れないまま、二人で月を見ながらお酒と団子で終わった。
桜の七夕。
願いは叶わなくても、想いは伝わるかもな。
どうでしたでしょうか。
急いで書いたのであまり自信はありません!(断言)
みなさんは何かお願い事、しましたか?
作者は勿論、今年こそ彼じy......『残りの人生を謳歌』したいですね!あと一つ願えるのなら、この作品がもっといろんな方に読んでいただく事です!
皆さんの地域では、天の川が見えており姫とひこ星は会えましたかな?
意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!