最近ゴッドイーターレイジバーストを買ってテンション高い作者です!楽しいね!
はい、今回はちょっとほのぼのとしたお話でして。
ではごゆっくり......
白玉楼は冥界にある。これは今更言うこともない。冥界に行くには死ぬか、あるいはその結界門を潜らなくてはならない。仮にそれを潜っても、妖夢がすぐに退治するであろう。
そして俺は今、冥界に入ってすぐの長い階段の前に立っていた。それは何故かというと......
「......久しぶりお使い頼まれたなぁ」
お使いの帰りであった。
妖夢は剣の修行をしており、修行終わりに行かせるのもなんだから、と言うことで俺がその帰りだった。買ってきたのは主に今日の晩御飯のメニューであろう。野菜や肉、魚や果物。今夜は豪華な気がする。
「...うぅ、ここってどこ......?」
急にどこからか声が聞こえた。幼い女の子の声だ。
だがおかしい。ここは冥界。ここでまともに喋られるのは幻想郷の妖怪や人間か俺達だけだろう。死んだ人間の魂が喋るなど今まで一度もない。
俺はとりあえず、声の聞こえる方角に急いで行った。もしここに迷ってしまったなら、一刻も早く助けなければならない。そもそもどうやって来たのか、どうしてここに来たのか。声を聞く限り子供。そんな子供がどうして冥界にいるのだろうか。
声がしたのは長い階段がある方角だった。俺は買物袋を揺らしながら、階段を登っていった。
階段を登り終えて周りを見回す。周りには相変わらずの桜の道。そしてその道の真ん中に、その声の持ち主がいたのだった。
「...どこに行っちゃったの.....?」
「大丈夫か?」
「ひぃっ!」
「そ、そんな驚かなくても」
俺が声をかけると、その子はかなり、まるで幽霊でも見たのではないかと......あ、俺幽霊じゃん。まぁそこは置いといて。
「迷子か?」
俺は再び声をかけるが、その子は返事をせずただ俺を見ていてビクビク震えていた。......結構ダメージくるんだぞ?心に。
緑色の髪に、黄色いリボンでサイドテールにしている。透き通るような綺麗な羽が生えており、服は白いシャツに水色のブラウスのような服。そして胸元にも黄色いリボンが付けられていた。身長は見る限り妖夢より小さく、レミリアよりちょっと小さいくらいだろうか。
「お腹、空いてるのか?」
「.........」
ぐぅぅぅ~
「あっ......」
「空いてるんだな」
よし、と。俺は買物袋を地面に置き、その中から果物が沢山あったのでリンゴを取り出してその子に差し出した。その子の顔は急に明るくなり、いいんですか?と言わんばかりの表情でこちらを見てくれた。俺はその表情に首を縦に振って答えた。貰っていいとわかったその子はリンゴを手に取り、嬉しそうに食べてくれた。
俺はこの子がリンゴを食べている間、友達がいるのかわからないが、辺りを探していた。何か手掛かりでもあればいいのだが。
「あ、あの......」
「ん?」
後ろからさっきの女の子の声が聞こえた。俺は後ろを振り向いて返事を待った。
「...さ、先程はありがとうございました。リンゴ、とても美味しかったです」
「そうか。それはよかった」
「それでは、私は友達を探さないといけませんので、ここで失礼します」
ペコリと頭を下げて、その子はまた冥界の奥へと進んでいった。礼儀正しいなぁ......じゃなくってちょっと待って!
「あ、ちょっと待って!」
「は、はい」
「良かったら、君の友達を探すの手伝うよ」
「いえいえそんな、助けてもらうばかりでは」
「俺はここに住んでるんだ。せめて道くらいは教えるよ」
「あ、ありがとうございます」
「それで良かったら、ここに来た理由、君の名前、友達の事を教えてくれないかな?」
「あ、はい。いいですよ」
「とりあえずここじゃなんだし、白玉楼に行こうか」
こうして、俺と女の子はその友達を探すため、とりあえず白玉楼へと向かって行った。
「私は名前はありませんが、種族としては大妖精っとなっています。皆は大ちゃんって呼んでいます」
「大ちゃん......ね」
白玉楼の縁側で事情聴取をしていた。白玉楼には妖夢は汗をかいているため風呂に入っており、幽々子はなぜかいなかった。
「友達の名前はチルノちゃんです」
「チルノ......。ここに来た理由は?」
「チルノちゃんと遊んでて『空の上の方に行きたい!』って言ってついて行ったら、大きな門がありまして、門を通ったらここに迷子になってました」
「なるほど」
つまり、遊んでいる最中に冥界の結界門を見つけて中に入った。ってことか。
「あ、ちょっと待った。どうやって結界門に入ったの?あれは結界が張ってるから入れないはず」
「えっと......門は開いてました」
「えっ!?」
それはそれでマズイな。また四季映姫さんに怒られるんじゃないのか?嫌だなぁ。あの人の説教長いんだよ。まぁ小町に比べたら短いかもしれないけどさ。
「とにかく、そのチルノちゃんって子を探そうか」
「はいっ!」
「あら陽斗。その子は?誘拐したの?」
「あ、幽々子いたのかって、誘拐ってなんだよ誘拐って!」
探そうとしたが、後ろから幽々子の声が聞こえ振り向く。そこには当然幽々子の姿があった。だが一つ、いつもと違うところがあったのだ。服装は同じだが首に何かを巻いていた。マフラー的なものだが、見た目が明らかに人の形をしていた。
「幽々子、それ首に何巻いてるんだ?」
「ち、チルノちゃん!」
「「え?」」
◇ ◇ ◇
「本当にお騒がせしました!」
「いいのいいの、気にしないで」
幽々子がマフラーの変わりにしていたのがまさかの大妖精の探していたチルノ本人とわかり、開放してもらった。
「ふふん!あたいがさいきょーだから許してもらえるんだよ」
「チルノちゃんもほら、謝って!」
「うごっ!」
大妖精はチルノの頭をガバッと手で下げて謝らせた。こう見ると大妖精がチルノの保護者にも見えてくる。
「それで、なんで幽々子はチルノを?」
「なんかね、落ちてきたのよ」
「落ちてきた?」
「私が西行妖の根元でお酒を楽しんでいたら、目の前に落ちてきちゃって、触ったら冷たくね」
「へ、へぇ......」
多分、富んでいる時に西行妖にでも頭をぶつけたのだろうか。
「それにしても、妖精はやっぱ小さいのね」
「そうだな」
「なんだとー!あたいは小さくてもさいきょーだからお前らと戦っても勝てるもんね!」
「うふふ、威勢のいいこと。でも子供ねぇ」
「子供扱いするなー!」
「可愛いこと」
チルノの反応に幽々子は完全に遊んでいた。普段妖夢をからかっているから楽しいのだろうか。それにしても幽々子は楽しそうにしてる。
「ついでだから、ご飯、食べていく?」
「え、いいの!」
「いえそんな、ご迷惑ですよ!」
相変わらず大妖精は大人だった。見た目は子供、中身は大人だな。これっぽい台詞が、俺が生きていたときによく聞いたことがある。
「さぁ、中に入りなさい」
「わーい!」
「.........」
「...素直なのは良いことよ」
「え...?」
「でも甘えたいときは、貴女も甘えなさい」
「あ、ありがとうございます。ご馳走になります」
「うふふ、小さいうちは楽しみなさい」
幽々子は相変わらず大人だな。まぁ幽々子が優しい性格だからあんな風に言えるのだろうか。
とにかく、この展開は確実に俺が料理を作らないといけないよな。
「ほら陽斗、美味しいの頼んだわ」
「わかってるよ」
予想通り、俺が作らなければいけない事になった。俺はやれやれと頭に手を掛け、笑顔で幽々子に返事を返した。妖怪が食べる物ってさ、人間や妖怪が食べているのと同じなのかな?レミリアはあまり野菜を食べなかったけど、フランは好き嫌いなかったよなぁ。
「...これは台所の材料によるな」
とにかく台所に行かなければわからない。俺は廊下を歩き台所へと向かう。ちなみに、俺がお使いで買ってきた食材は使わない。なぜなら急な来客のため、使ったら今夜の献立が変わってしまうからである。急な来客でもおもてなしをする!これが白玉楼のルール的な奴である!
台所に到着して、今現在ある食材を確認した。確認したところ、急なご飯のため食材が少なくお米と魚が三匹と言ったところだ。これはもう、魚が俺を使ってくれ!と言わんばかりの状況だ。いや別に魚と会話できるようになった訳じゃないからな?
手を洗い、まな板と包丁を準備する。
今回は魚をメインとした料理、焼き魚や刺身があるが、ここはあえて俺の好きな魚料理である煮魚にしようと思う。
「メニューは決まったかしら~」
「おう、決まったよ」
「でも言わなくていいわ、楽しみにしたいもの」
「そうか、幽々子らしいな。なら時間が掛かるから、二人の相手をしててくれないか?」
「えぇ、そのつもりよ」
「そういや、妖夢を見かけないけど」
「妖夢?妖夢はまだ気絶してるわ」
「気絶!?てかまだってなんだよ!」
「何かしらね。私が見た時には気を失っていたわ」
「お、おぅ......」
何だろう。なんで幽々子は妖夢が気絶していても静かに語れるのだろうか。
「と、とにかく頼んだぞ」
「待ってるわぁ~」
幽々子はそう言い、後ろを向きながら扉を......すり抜けて行った。いやいや、怖いから怖いから。いくら亡霊だからってすり抜けなくても......
「わぁぁぁああぁーーー!!!」
「きゃぁぁああぁーーー!!!」
扉の向こうから当然のこと、大妖精とチルノが悲鳴をあげていた。まぁあげるだろうな、幽々子だし。幽々子ってあんな綺麗な顔やスタイルもいいくせに驚かすのがかなり得意なんだよな。妖夢も一回やられてるらしいけど、妖夢曰く『えっ?あれって幽々子様なんですか!?』らしい。
「とりあえず作ろうか」
気持ちを入れ替えて調理に専念する。
まず最初に魚を切るので、魚を軽く洗ってまな板にのせる。包丁を魚の首に入れて頭を落とす。そして腹に包丁を入れ不要な部分を取り除き血を洗い流す。
次にだしを作る。ここが多分一番重要な部分であろう。煮物や鍋を作る際に肝心なのは出し汁である。これにより具材の美味しさのレベルがかなり上がっていくのだ。醤油を小さい鍋に入れ、火をつける。少し煮立ってから火を弱めて砂糖とお酒を少し入れる。火を弱めることによって風味が逃げないのだ。
「......うん、いい感じ」
味が薄くないか、味が濃くないかの味見をする。自分でも中々いい出来に仕上がっていた。後はその鍋の中に先ほど切った魚を入れて落し蓋をして待つだけである。
◇ ◇ ◇
「出来たぞ~」
「もぉ、待ちくたびれわよ」
「ご飯だー!」
「チルノちゃん、落ち着いて」
調理が終わり、盛りつけも完了。俺は三人を呼び出して席につかせた。チルノはホントに子供のようにしており、大妖精は相変わらず申し訳なさそうにしていた。
「あら、煮魚ね」
「おいしそー!」
「わぁ、すごい......」
「陽斗のは?」
「俺は大丈夫だよ。それに魚は三匹しかなかったし」
「そうなの、残念ね~」
幽々子め、顔が全く残念そうに見えないぞ。まぁ、作る側からしたら、食べてもらうほうが嬉しいもんな。今回は我慢しよう。
「「「いただきます」」」
三人は手を合わせ、食事前の挨拶をした。チルノでも、やはりこう言ったことはちゃんとやるらしい。
「ん~美味しいわぁ~」
「どうだ?大妖精」
「すっごく美味しいです!」
「むぅ~これどうやって食べるんだー?」
二人の笑顔の中、チルノだけは煮魚に苦戦していた。まぁ、予想はしていたよ。見る限り、骨が撮りづらく食べられる身が少ししか取れていなかった。そしてそもそも、チルノは箸に慣れていなかった。
「むずかしい......」
「お箸はこうやって持つの」
「ん?」
すると、隣で見ていた幽々子がチルノにアドバイスをしてあげた。
「今回は陽斗が頭を取ってくれてるから。魚はね、最初に上身を先に食べるの。こんな風に」
幽々子はチルノにそう言い、手本を見せてあげた。チルノは見様見真似でする。箸をちゃんと持ち替え、魚の上身の部分を食べ始める。
「そしたら、端っこに骨が付いてるでしょ?ここをお箸で持って取るの」
「え?裏返したら簡単じゃん」
「残念。それはマナー違反なのよ」
「まなーいはん?」
「やってはいけない事よ」
「なるほど」
「それで、骨を掴んだらゆっくり剥がすの。そしたら、後は裏にある部分を食べたらいいわ」
「おぉー綺麗に取れた!」
最後はニコッと笑顔で幽々子の魚の食べ方講座が幕を閉じた。流石幽々子だ、食のマナーを知り尽くしているな。俺も多少は知っているが、幽々子程ではないし、妖夢と多分そうであろう。
──しばらくして──
「「「ごちそうさまでした」」」
「はい、お粗末さまでした」
食事が終わり、みんなで食器を片付け始める。
「あ、大ちゃん。食器持つよ」
「いえいえそんなっ!片付けくらいやらせて下さい」
「そんな事言わずに、な?」
「で、でも甘えてばかりでは......」
「それにもう暗くなってきたし、帰らないとダメだろ?」
気づけば辺りは暗く、もう夜になりそうだった。冥界にはそれほど危険な事はないが、幻想郷に帰るのは早めの方が良いだろう。
「す、すみません」
「大丈夫だよ、謝らなくても」
そう言っても、大妖精は深々と頭を下げてくる。なんだろ。俺が悪いことしたみたいになってきそうである意味怖いわよな。
「ご飯、美味しかったです」
「また来てやってもいいんだぞ!ご飯食べに!」
「おう、いつでも来ていいぞ」
「二人とも、気をつけてね」
「じゃーねー!」
「それでは、失礼します」
大ちゃん、もう頭は下げなくていいから。心の中でツッコミして、二人は冥界門へと飛んでいった。その二人の背中を見ていると、ホントに子供のように見えた。でも、チルノはともかく、大妖精って妖精だよな?
「大人だなぁ~」
「大人ねぇ~」
俺と幽々子をそう思わせる、少し変わった大人な大ちゃんであった。
大人な大ちゃんマジ可愛っす!
いいですね、幼女に保護されたらどんなに幸せゲフンゲフン。
はい、終わり方ですが、次回も頑張りますので!
意見や感想、気軽にどうぞ!
ではまた次回!