というわけで、今回は2連続の特別編、正月バージョンをお送りいたします!
ではごゆっくり
「陽斗さん」
「ん?なんだ?」
「お年玉ください」
「......へっ?」
俺は妖夢の言ったことに凄く驚いてる。だってあの妖夢がお年玉ください!?誰だってあの妖夢だぞ!?真面目で仕事熱心で礼儀正しいあの妖夢が!
「えっと、陽斗さん......汗、凄いですよ?」
「妖夢。お年玉って何か分かってるのか?」
「いえ、知りませんが......」
「んん!?」
え?...お年玉の事を知らないでくださいって言ったって事か?俺は脳を必死に回転させ、考えた。だがその答えは意外と簡単に出てきた。
「...紫。出てこい」
俺の予想では、紫がきっと妖夢に変な事を教えたに違いない。そう思った。
「なんであなたは真っ先に私を疑うのかしら」
「え?紫じゃないのか」
「まぁ私だけど」
「やっぱりかよ!」
「という訳で、私にもお年玉、ちょうだい」
「いや、どうしたら犯人探しからお年玉になるんだよ」
少なくともこんな会話をする奴がまず居ないとだろう。
「そもそも紫は大人だろ?逆にあげる側だろ」
「なによぉ。私だって見た目は大人でも心は少女なのよ?」
「はぁ。紫が少女だったら全世界の大人が少...あ!すまん!もう言わないからスキマに落とすのはやめろぉぉぉ!!!」
喋っている途中に紫の怒りに触れたのか、紫は俺の足元にスキマを出してスキマに落とそうとしてきた。俺はスキマの端を必死に掴んで落ないようにする。
「あなたねぇ。私だって乙女なのよ?そのくらい考えるわよ」
「いや、紫が乙女とか絶対に...痛い!手を!手を踏まないでぇ!落ちるから!手を踏んだら落ちるから!」
「なら絶対に......なに?」
「絶対に可愛いな!うん、紫も乙女だからな!だからぁ!」
「そう、ありがと」
紫はクスッと扇子を口元に当てる。そしてやっと許してくれたのか、俺をスキマから助けてくれた。危ないな。今後は紫に対する言葉を選ばないとな。
「陽斗さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとかな」
俺が膝をついていると、妖夢が近づいてきて心配してくれた。妖夢は優しいなぁ。
「...そういえば、幽々子の姿が見えないわね」
すると紫が不思議そうに言った。
「幽々子は、多分まだ寝てるよ」
「もう起きてるわよ」
「あ、幽々子様。おはようございます」
「おはよう。それで、紫は何しに来たの?」
「その前にあんたは着替えてきなさい」
確かに俺もそう思った。幽々子はまるで寝起きの学生みたいな格好だった。髪には寝癖、服装は肌蹴ていてダラしない格好だった。
「まぁいいじゃない。私には何の問題もないわよ?」
「「「いやいや、そういう問題じゃなくて」」」
そして綺麗に俺と妖夢と紫の声がはもった。
「それで陽斗さん。お年玉ってなんですか?」
しばらくしてから、幽々子がいつもの着物を着替えて話を続ける。
「そうだな。お年玉っていうのは...親が子供にお金を封筒に入れた物を渡すんだ。そしてその封筒がお年玉って言うんだ」
「あ、そうだったんですか。そうと知らずに、すみません」
「いやいや、知らなかったならしょうがないよ」
俺はお年玉の事を簡単に説明すると、妖夢は頭を下げて謝ってきた。流石妖夢だな。
「「陽斗、お年玉ちょうだい」」
「そして2人は妖夢を少しは見習えよ!?」
「ふふっ。冗談よぉ」
「.......」
「そして紫は残念そうにするなよ!」
幽々子は少し笑ってそういうが、紫は少し残念そうにうつむいて黙ってしまった。いやいや紫よ、あんたはもう大人なんだから少しは立場を考えようよ。
「ふっ、私だって冗談よ。長年生きてる私がそうでもない亡霊からお金を貰うわけないじゃない」
「そうでもないとか言うなよ!」
もうそれってただの暴言じゃねえか!?
「私も、お金より...陽斗が傍に居てくれればいいわ」
「お、おぅ.......」
そう言い、幽々子は俺に笑顔を見せた。な、なんか、嬉しいけど照れくさいな......。
すると俺の隣はでは妖夢がちょっと悲しそうにうつむいていた。幽々子はそれに気付いたのか、妖夢に近づいてき妖夢に抱きついた。
「もちろん、妖夢も傍に居てくれるだけで十分、私にとってのお年玉よ」
「幽々子様......」
幽々子がそう言いギュッと妖夢を包み込むように優しく抱いた。妖夢はそれに感激して幽々子の胸に顔をおしつける。ほぉ、幽々子って結構いいこと言うんだな。それに......
「なんか、親子みたいだな」
「あら、妖夢が羨ましいかしら?」
その風景を見ていると、紫が俺に言ってきた。
「別に羨ましくはないよ。ただ......」
「ただ?」
「見ていて和む...かな」
「そう」
「ほら、陽斗も来ていいのよ?」
すると先ほどの会話を聞いていたのか、幽々子が俺に向けて手招きをする。
「いや、俺は大丈夫だよ」
「陽斗さん。ここは甘えときましょうよ」
「妖夢。まさかお前からそう言われると思わなかったよ」
まさかの妖夢から言われるとは......。
「ほら、陽斗も......」
すると幽々子が俺に手招きをする。うぅ......行きたいのは山々なんだが、やっぱり抵抗があるよな。亡霊だけどいい歳した男がまるで母親のような幽々子に甘えるなんて......。
「もぅ、陽斗ったら」
「んっ!?」
突然、幽々子が俺に近づいてきて俺を抱きしめた。幽々子は抱いてはいるが、まるで包み込む様に優しく抱いてくれた。そしてとても居心地が良く感じてきて、身体の力が全て抜けて行くようなものだった。
「......」
「あらあら。陽斗ったら、照れてるのかしら?」
「そ、その、照れてるよりも...恥ずかしいな......」
「ふふ。顔まで赤くなっちゃって」
「し、仕方ないだろ!」
今俺の顔、絶対真っ赤になってるだろ!めちゃくちゃ熱いもん!見えなくても分かるくらいだ。
それに......幽々子に抱きしめられるって、懐かしいな。もう何年ぶりだろうか。あの日からずっとだったよな。
「あの、イチャイチャするのはまた後にしてくれないかしら?」
「あら紫。ごめんなさいね」
そんな事を考えていると、隣にいた紫が顔を隠すように扇子を当ててこちらを見てくる。
「それで陽斗。お年玉は...」
「いやもうしつけぇよ!」
「冗談よ、冗談」
いくら冗談でも流石にしつこいぞ紫...ていうか逆に欲しいよ!
◇ ◇ ◇
しばらく幽々子と妖夢と紫で話をしていると、白玉楼の庭の方から藍と橙が歩いて来た。理由は単純にご飯が出来たため、紫を連れ戻しに来たそうだ。
今、俺たちはご飯の準備を終えたところだ。
料理は何段も積み重ねたおせち料理だ。最初は普通に2、3段だったのだが、幽々子が『もっと食べたい』と言うもんだから最終的には10段になってしまった。
「ねぇ陽斗~、早く食べましょうよー」
そしてその幽々子がおせち料理をジーッと見つめながら言う。はぁ、少しは休ませて欲しいもんだな。ちなみに妖夢も10段のおせち料理に疲れきっている。なかなかわがままだ。
「わかった。わかったから」
その言葉を聞いて、幽々子は子供のように笑顔になった。でもそんな幽々子でも、こう言った笑顔は俺は好きだった。
「その前に、正月だから言わないといけない事があるぞ」
「...あぁ。わかったわ」
「そうですね」
俺が食べる前にそう言うと、2人は小さく頷いた。
「「「あけまして、おめでとうございます」」」
と、みんなで頭を下げてそう言う。
「幽々子、妖夢。今年も宜しくな」
「はい。こちらこそお願いします」
「宜しくね、2人とも」
お互いにそう言い合って、俺たちは料理を食べ始めたのだった。
そして、幽々子が1番に食べ終わった。
やっぱり、紫はあげる側ですよね。妖夢は年齢は分かりませんが、作者的にはもらう側でしょう。
今回はあんまりいいネタも少なかったと思います。
なぜなら急いで書いたから!(ドヤァ)はい、どうでもいいですね。
ついに年をあけましたね。なので改めて......
あけましておめでとうございます。
今年も『気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる』を宜しくお願いいたします!