気づけば桜の亡霊が傍に居てくれる   作:死奏憐音

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最近、足をつってしまう事が増えた気がする......。
痛いですよね、足をつっちゃうと、ホント。

はい、今回は前回の続きですね。
主人公である陽斗が急に倒れてしまった。その後の話です!

ではごゆっくり


13話:空に舞うは反魂蝶

 

寝込みなう。

 

言葉の通り俺は今、寝込んでいる。

理由は昨日、台所に行こうとしたら視界がブレ、倒れてしまったからである。それを幽々子と妖忌に話したら安静にしなさい、と言われたからだ。

今は平気なんだけどなぁ~。

 

「ねぇ陽斗、身体は大丈夫?」

 

すると俺の近くに幽々子がやって来た。手には水の入ったコップとタオルを持っていた。幽々子は近くに座り、俺の頭にタオルを置く。水で濡らしたのか、冷たくて気持ちいい。

 

「ありがとな、幽々子」

「もぅ、無理はダメよぉ?」

 

幽々子は俺を心配してくれているが、やはり笑顔だ。まぁ笑顔で居てくれる方が良いんだけどな。

 

「じゃあ私は向こうでタオルを冷やしてくるわね」

 

そう言い、タオルを取り、幽々子は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫、居るんでしょ?」

「まぁ、よく気づいたわね。でも、幽々子も薄々気づいてるでしょ?」

「えぇ.......わかってる、わかってるわ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───陽斗が危ないって事に.......」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「幽々子、遅いなぁ」

 

幽々子がタオルを冷やしに行ってかれこれ30分は経っている。だが未だに帰ってこず、少し心配になる。

 

「お待たせ。タオル、持ってきたわよ」

 

少し時間が経って、やっと幽々子が戻ってきた。

 

「遅かったけど、何かあったのか?」

「ちょっと紫と話しててね」

「なるほどな」

 

幽々子は俺の頭にタオルをもう一度置く。あぁ、冷たい、そして気持ちいい。

 

「ねぇ、陽斗..............」

 

すると幽々子が少し間を取り、俺を呼ぶ。いつもは笑っているが、今回呼ぶときは何故かちょっと落ち込んでる様な顔だった。

 

「なんだ、幽々子?」

「もし、もしも............」

 

少し間を空け、幽々子が再び口を開く。

 

「私が........陽斗の為なら死ねる、て言ったら、どう思う......?」

「そんなの、ダメに決まってるだろ」

 

俺は少し口を震わせながら答える。

当然だ。俺は幽々子の事を愛している。俺の恋人だ。その恋人が俺の為に死ぬ?冗談じゃない!

 

「幽々子、お願いだ。俺の為に死ぬ、なんて言葉を、言わないでくれ.........」

「ごめんなさい、何となく、聞いてみたかったの」

「そうか」

「陽斗も、今は寝ていなさい」

「あぁ、そうだな」

 

今はまだ昼前。きっと夕食になったら幽々子が起こしてくれんだろう。そう思い、俺はゆっくりまぶたを閉じて、眠りにつく。

 

 

 

 

 

「陽斗、ごめんなさい。私は............」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「もう、夜か......」

 

目が覚め、辺りを見渡す。

周りは暗く、月が出ている。その月が散っていく桜の花びらを光らせる。そんな綺麗な風景の中1人、西行妖の前に立っている幽々子の姿があった。

 

「幽々子、何してんだ、風邪引くぞ?」

 

俺は寝ていた布団の中から庭に出て、幽々子の所に行く。だが幽々子は俺の方を向かず、西行妖をずっと見つめていた。

 

「幽々子?」

 

俺は少し心配になり、幽々子の肩をポンポンと叩く。それでも幽々子は振り向かずにいる。おかしい。いつもなら呼んだらこっちを見てくれるのだが..........

 

「どうしたんだ、幽々...........子.........」

 

俺は幽々子を少し力を加え、後ろに振り向かせる。

すると、幽々子は落ち込んでいる表情を見せ、俺に話しかける。

 

「陽斗。私には、約束事は向いてないようだわ」

「はぁ?」

 

急に何を言い出すんだ。俺はまた、いつもの冗談だと思った。

だが、幽々子の表情は変わらず、今度は俺に抱きついてきた。

 

「ど、どうしたんだ急に?」

「......め.......な......い」

 

すると幽々子は何かを言い出す。だがその声は俺の耳にはなんて言ってるのか分からなかった。

 

「な、なんて言った?」

 

俺は幽々子になんて言ったのかを聞く。すると幽々子はゆっくりと顔を上げ、

 

「ごめ....んなさ...い.......」

 

涙を流しながら言ってきた。

 

「ゆ、幽々子!?..........っ!」

 

俺はビックリして驚きを隠せなかった。別に幽々子が泣いていた、という理由もあるのだが、俺が驚いたのはその事ではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽々子の身体が消えていっている事。

 

「幽々子、お前.......何をしたんだ!!!」

 

俺は必死に幽々子に質問をする。だが幽々子は泣いており『ごめんなさい、ごめんなさい』と繰り返していた。そう言っている間にも、幽々子の身体はどんどんと消え始めている。

いや、正確には身体の消えていく所から、反魂蝶が飛んでいく様な消え方だったのだ。

俺はその反魂蝶を目で追い、どこに向かって行くのかを見ていた。その反魂蝶が向かう先には、ある一本の桜。

 

「西行妖..........。幽々子、お前まさか!」

 

俺は少し考える。だが答えはすぐに出てきたのだ。

 

「陽斗には.........無事に居てほしかったのよ。陽斗は今、西行妖に精気を吸い取られているの。だから、私がこうするしかなかったの.........」

 

幽々子はまだ涙を流しながら、俺に言ってくる。

 

「だから、西行妖を封印するの。..........私、自身で.....」

 

『私自身で』.......その意味はすぐにわかった。

 

生贄になる、幽々子はそう言いたかったのだろう。

 

「だ、だからって!なんで俺の為にそんな事を......!」

「..........陽斗、あなたは私の恋人同士よ。だから命を掛けてでも、守りたいのよ」

「そんな!俺なら、俺なら平気だ!だから止めてくれ!」

 

俺は少し、涙を流して幽々子に叫ぶ。

 

「安心して、陽斗。これが私の決意、だから」

 

幽々子は涙を拭き、抱きついていた状態から元に戻る。そして幽々子は西行妖の方へ近づき、胸を手を当てる。

 

「陽斗、楽しかったわ」

「な、何を言ってるんだ!まだ間に合う!今からでも封印を止めてくれ!」

 

俺は全力で幽々子に叫び、止めようとする。

だが幽々子は止める気配もなく、西行妖を見つめる。

そして、西行妖と幽々子が桜の花びらに包まれてゆく。

 

「頼む........お願いだから........止めてくれぇ......!」

 

気づけば俺も涙を流しており、声が震えていた。

 

「泣かないで陽斗。これは私が決めた事......」

 

幽々子も俺の方を向き、再び涙を流す。

 

「紫と藍、それと妖忌に宜しくね」

「何を言い出すんだよ!これからもずっと一緒に、この白玉楼で住むんだろ!」

 

まだ、これからもいい思い出を作るんだろ!ここからだろ俺達は!

 

「幽々子.........待ってくれ、いかないでくれ.......!」

 

お前が居なくなったらどうすればいいんだ!

 

今までの生活が崩れてしまう!

 

まだまだいい思い出をお前と一緒に作りたい!

 

お前が居なくなったら.............

 

 

 

 

........俺はどうしていけばいいんだよ!!!

 

 

 

「お前が居なくなったら........何を想っていけばいいんだよぉ...........!」

 

喉が潰れようと関係なく、俺は叫ぶ。

 

だが幽々子、悲しい別れをしたくないのか、

 

「陽斗........楽しかったわ、また会いましょ?」

 

涙を流しつつも、満面の笑顔で俺に言う。

 

 

 

 

 

「今度はお互い...亡霊として......ね.........」

 

 

 

目の前が光だし、俺は眩しくて目をつぶる。

そしてしばらくして光が止み始め、目を開ける。空には沢山の反魂蝶が飛んでいき、俺は視線を空から前を向く。

 

 

 

そこには.....俺の愛した西行寺幽々子の姿はなく、花をつけていない桜の木、だけであった。

 

 

 

 

 

 

 




ついに、ゆゆ様が居なくなってしまいましたね.......。
今回の作品を書いていて、作者も切なくなってしまいました。
陽斗はこれからどう生きていくのでしょうか。

感想や意見、気軽にどうぞ!
ではまた次回!

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