はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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しばらく出番のなかったキャラたちも、徐々に出番がやってくるよ。


_人人人人人人人人_
> はやて以外は <
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65死んだヤクモが咲きほこる

 闇の書を抱えた漱石さんのボディを、聖王協会に送る手続きを終えて帰路につく。

 車の調子はすこぶるいいが、向かう先は迷走中だ。

 今日はどの隠れ家にするか。殆どウーノに特定されているが、なぜかなにも残ってないので普通に使えてしまうのが悩みどころ。

 隠しカメラとか盗聴器とか、そういうのが一切ないのはどういうことだろう。

 逆に怖い。

 なぜかベッドシーツとか風呂上りに体拭いたタオルとか、そういうのもなくなってるけど。

 あれ、こっちは普通に怖い。

 

「あいつ、着実に人の道踏み外してるよなあ」

 

 戦闘機人ってみんなあんな感じなのかな。

 そういえば、ドゥーエに武装作ってくれって言われたときも似たような気持になったなあ。

 だって殺傷能力は高いけど、使い方次第ではじわじわダメージを蓄積できるような武装とか言われたんだよ?

 そりゃ作ったけどさ、あのときの目はホントやばかった。

 嗜虐性の塊みたいなマジキチ系の眼光だったし、姉妹って似るんだなって思ったよ。

 性能テストは面白かったけどね。

 いや、マゾに目覚めたとかじゃなくて、使い方のバリエーションを見れたって意味で。

 

「腰を落ち着けて、偽造戸籍とかちゃんと確認しとかないとなあ」

 

 花火の打ち上げ方とか考えないといけないし。

 っていうか、名前だけでも確認しようと思ってチラ見したのが間違いだった。

 誰だ、名義に『寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、藪ら柑子の藪柑子、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助』とか書いたやつ!

 どう考えてもはやてだろいい加減にしろ!

 このままだと俺の人生が早口落語になってしまう。

 ご丁寧にも、聖遺物の窃盗がどうとかで聖王協会を追放された身分らしいし。これは早々に処分してしまわなくては。

 というか、はやてのやつ今度会ったらどうしてくれようか。

 

 

 次元断層の影響とはいえ、ミッドチルダへの帰路はずいぶん長いものになった。

 場所が近かったからとジュエルシードに関する事件に関わり、フェイトを保護してから約1年の道のりだ。

 主犯ではないが、状況をややこしくしてくれた彼には言いたいことが山ほどある。

 だがまあ、それもあと2ヶ月ほどで終わる。

 帰還すれば、フェイトの裁判や小規模とは言え次元断層が発生してしまった報告書。そういったデスクワークをこなさなくてはならない。

 もろもろ骨の折れる仕事だが、それらはフェイトの今後にも関わってくるだろう。

 母さん……リンディ艦長も、思うところがあってこっそり動いているようだし。

 

「だというのに、お前は性懲りもなく……」

「えぇ、お前らが出張ってきたのは俺のせいじゃないんだけど……誰だっけ、肩パッドくん?」

 

 名前くらい覚えとけよ!

 そう叫びたくなるのを我慢して、僕とフェイトはデバイスを構えている。

 目の前にいるのは、誰でもない状況をややこしくしたバカだった。

 

「えっと……なんでお兄さんがここに?」

「ん? 俺を誰かと勘違いしているようだなフェイト。俺はジュエルシード集めを手伝ったお兄さんではない。ジュゲムだ!」

「じゅげ、え?」

「正確には、寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、藪ら柑子の藪柑子、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助だ!」

「ご、ごめんなさいもう一度」

「いやフェイト。もう偽名なのが丸わかりだから聞かなくていい」

 

 どうせ、まともな回答が返ってこない。聞けば聞くだけ、こちらが混乱するだけだろう。

 あと少しで帰港だったというのに。聖王協会から遺物を窃盗した犯人が、近くいるようだから向かってくれなんて命令さえ来なければ。

 ギル・グレアム提督のことを、今日ほど恨んだことはない。

 

「他人だとか言っときながら、普通にフェイトの名前を呼ぶ安易さ。あとで情報操作が大変なのはこっちなんだぞ!」

「ちょっとなに言ってるかわかんないですね」

 

 掠れた音で口笛を吹き始めたバカが、余計に腹立たしい。

 というか、僕の名前は完全に忘れていたくせになんなんだこいつは。

 

「ごほんっ。まあ、必要ないところは編集でカットしてもらうとしてだ。誰でもいいから管理局員よこせって言ったのが失敗だったかなあ。っていうか、なんでフェイトもいんの。護送中じゃ?」

 

 なにやら、ピースを作った両手で何かを切断するような動作が非常に腹立たしい。

 フェイトがここにいるのは、裁判の結果を少しでもいいものにするためだ。

 余剰戦力がない状態での犯人確保。これに協力したという事実は、かなりプラスに働いてくれるだろう。

 そういう判断のもとで、彼女も僕と一緒に出撃している。

 艦長の許可も得ているため、公式の記録としてちゃんと残るのだ。

 

「ま、いっか。とりあえず仕切り直しで」

 

 わざとらしく咳払いをして、バカが謎のポーズをとった。

 腕を体の前で平行に交差させるような……ホントなにしてんだこいつ。

 

「フゥーハハハハハ! 我が名は狂気のマッドサイエンティスト、ジュゲム。愚かな聖王協会役員共は、俺の才能に理解もしないまま切り捨ててくれやがった。だからぶっちゃけどんなものか知らないけど、聖遺物とか盗んでやっちゃったぜ!」

「おい……」

 

 やるなら最後までまじめにやれよと言いたい。

 どんなものか知らないけど盗んだってどういうことだ。

 

「えっと、あの、お兄さん。悪いことは、しちゃだめなんですよ?」

「うわなにこの良心の呵責に訴えてくる最終兵器金髪ロリ。マジかよ。管理局ズルくね?」

「よくわかりませんけど、ごめんなさい?」

 

 謝らなくていいぞフェイト。おおむね、こいつの言っている意味が分からなさすぎるのが悪い。

 それにしても、なにがしたいんだこいつは。

 さっきから聞いていると、どうにも通報すら自作自演らしい。

 謎の偽名に、犯罪歴のでっち上げ。管理局員をここまで引っ張り出した理由はどこにあるんだろうか。

 

「フェイトの説得にやや心折れ気味だけども! 俺の野望はこんなところで潰えたりはしない。お前たちに捕まってやるなんて、できない相談だ。そんなに確保したいなら、力尽くでやってみせ、うわフェイトはっや!?」

 

 いろいろバカがわめいている途中に、フェイトが最速で突っ込んでいった。

 迷いのない初動に、正直僕もちょっと驚いている。

 確保できそうなら躊躇わずにいけとは言ったが、このタイミングでいくとは思ってなかった。

 バルディッシュの一撃をもろに受けた右腕が、防御魔法も展開していなかったのに甲高い音を鳴らす。

 あれ、質量兵器なんじゃないか?

 

「よし、罪状が増えたなジュゲム」

「これは予想してなかったでござる……」

 

 バルディッシュを弾いたバカの腕は、なにやら金属製の部品が見え隠れしている。

 上から人工皮膚のようなものでも張っていたようだが、それがほぼ吹き飛んでしまった形だ。

 

「まあいいけど。どうせ遅かれ早かれバレることだし。だが、この程度で勝ったと思うなよ管理局! 俺には奥の手があるんだからな」

 

 不敵に笑ったバカが、勢いよく右腕を天高く掲げて見せる。

 なにを、と思ったときには遅かった。どこからともなく現れた、カプセル型の機動兵器が彼に向って殺到したのだ。

 その数5機。

 見ている前で、それぞれの機動兵器が変形していく。

 1機は右腕に、1機は左腕に、1機は右足に、1機は左足に。そして最後の1機は頭から上半身を覆うように、バカの体を包んでいく。

 

『見よ! これぞ六機合体、ゴットジュゲムの真の姿だ!』

 

 6機? 6機とはいったい……5機と1人じゃないのかそれは。

 それ以前に変形とか言っているが、実質内部に空間を開けて体を収めるスペースを作っただけだ。

 なんだろう。出来の悪い着ぐるみを見ている気分だ。

 

「ど、どうしようクロノ。あんなの、どうやって取り押さえれば」

「落ち着けフェイト。僕ももう少し冷静になるから」

 

 そう、冷静になろう。そうでもしないと、砲撃魔法をぶち込みたい衝動にかられる。

 非殺傷モードも切ってしまいたくなる。

 あれは、この世に生きていていい存在だろうかとか考えてはいけない。

 

『フゥーハハハハハ! 慌てているな? 慌てているだろう! この姿になった俺に隙は……あれ、ちょっと待て。なんかジェネレーターが熱い。ん? AMF発生装置が競合してる? ウッソだろお前! なんで5機揃ったくらいでシステムが競合してるんですかね!? あ、やばい。これ結構やばい。脱出! 脱出ボタ……ああああ、システムエラーとかマジクソゲー!!』

 

 そう叫んだと思ったら、六機合体ゴットジュゲムは爆散した。

 隣でフェイトが、力いっぱいお兄さああああああんと叫んでいる。

 僕には、これがただの茶番に見えたわけだが……

 どうしよう、泣き崩れたフェイトになんて説明したらいんだろう。

 そこらに転がる残骸から、バカの肉片が出なければ安心してくれるんだろうか。

 なんにしても、胃がキリキリと痛みを訴え始めていた。

 きっと、あいつは僕の仕事を増やすためだけに現れたに違いない。

 次に会ったら吊るしてやる。

 




にほんごであそぼ とか懐かしい世代

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