はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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ヒント1:投稿日


   最終話かもしれない ヤクモに竹を接ぐ

 不意に目の前で閃光が走り、遅れてきた爆風に体をなぶられる。

 痛い。正直、今すぐ逃げてしまいたい。

 ただまあ、そうするわけにもいかないから必死に態勢を元に戻す。

 このまま錐揉み状態で落ちれば、地上で前衛オブジェの未来が待っているだろう。

 

「もうちょい手加減とかあっていいと思うんだよな!」

「手加減だと? 笑わせる!!」

 

 なんとか足場を作って着地したところへ、シグナムが獰猛な笑みと共に突っ込んでくる。

 怖すぎてちびりそう。

 

「さっきも言ったはずだ! 主はやての所へ行きたいなら、私を倒していけ!!」

「どこの少年マンガだいい加減にしろ!!」

 

 アルターデコイと同時にハイド魔法を発動。幻影だけを残して後ろへ飛ぶ。

 さっきまでいた場所を、レヴァンティンが通過するのは見ていて肝が冷える。

 幻影とは言え、頭から真っ二つとか。

 殺す気だよこいつ。

 

「よおし、もう一度ちゃんと話し合おう。暴力はなにも生み出さない」

「お前が主はやてに会いに来た。だから守護騎士を代表して、私を倒せば通すと言っている」

「どうしよう、理論がぶっ飛び過ぎてて会話にならねぇ」

 

 再びシグナムが突進してくる。

 とりあえず、接近戦じゃ勝てるわけがない。バラージショットで弾幕を張れば、多少は牽制になるだろう。

 足止めになるかは別問題だけどな!

 その証拠に弾幕を斬ったり搔い潜ったり、進行速度をちょっとそぎ落とした程度の効果しかない。

 恭也に使った量の10倍出してこの程度だ。ホントに嫌になる。

 

「バレットブレイズ、チャージスタート。バラージショット、炸裂弾を強制発破!」

 

 命令と同時に、弾をばらまいた一帯が吹き飛んだ。

 誘爆したバックショット弾も相まって、ちょっとした破壊力になった。

 しかし、そんな攻撃ですらシグナムは一撃で切り裂いてくる。

 爆風を切り裂くってどういう理論だとか、これでホントに弱体化してるのかとか言ってる場合でもない。

 慌てて足場を蹴り、危うくかすりそうになるレヴァンティンを避ける。

 バックショットを背中に打ち込んでみるが、加速が早すぎて弾速が追いつかなかった。

 悪夢かな?

 

「マルチプル起動。アクティブソナー、ソニック」

 

 同じ工程を3度繰り返す。

 発動位置は自分を中心に前面180度。

 破壊力のある攻撃ではないが、流石に超音波まで斬れたりはしないだろう。

 しないよね?

 

「くっ、貴様の多彩さは本当に厄介だな!」

「全然うれしくなーい!」

 

 頭痛でシグナムの動きが鈍る。

 長期戦に望みはない。なら、この一点に全賭けだ。

 分の悪い賭けは嫌いじゃない!

 

「アルターデコイ・シングルモーション」

 

 映像がぶれるように、もう1人の自分が俺から分離する。

 1人は右へ、もう1人は左へ。

 まるで鏡合わせのように、それぞれの方向へ走りだす。

 そんな俺の姿を、シグナムが視線で追ったのは一瞬だった。

 獰猛な笑みを浮かべ、迷いなく左へ走った俺に斬りかかってくる。

 

「惑わせた上で収束砲といったところか! 収束した魔力まで誤魔化せていないぞ!!」

 

 大上段からの一閃が、右の肩にめり込む。

 峰打ちなのは優しさかもしれないが、肩の骨がまとめて砕ける威力だ。

 斬られた俺が、そのまま砕ける。

 収束砲の魔力も、一気に霧散した。

 残るのは驚きで目を見開くシグナムと、その背後から全力加速で接近する俺だけだ。

 

「収束砲なんて、わざとに決まってんだろうがあ!!」

 

 魔法なんて関係ない。

 義手になった右の拳と、今の加速度で十分な破壊力を生み出せる。

 慌てて回避運動に移るシグナムに、霧散した余剰魔力を利用してバインドをかけた。

 逃げ場なんてくれてやるか!

 

 

 なんとか八神家へと辿り着き、玄関を体重で押し開ける。

 最後の一撃。まさか避けられないからって、カウンターに肘を入れられるとは思ってなかった。

 やっぱ守護騎士は化物だわ。

 

「まあ、それ以上の魔王様が待ってるわけだが」

「フハハハ、よう来たなヤクモさん」

 

 玄関先に、仁王立ちした幼女が立っている。

 背中の黒い羽が、いかにもって感じだ。

 手に持った杖は十字架だが、悪魔なのか天使なのかどっちだよ。

 

「さあヤクモさん、始めよか。闇の書が欲しいなら、力尽くで奪ってみ!!」

「まったく、連戦とかキツいねえ」

 

 デバイスを呼び出し、M1903のスライドを引く。

 魔力は心許ないが、経験値の差で埋めるしかないだろう。

 楽しい楽しいラストダンスだ。

 ここはひとつ、気合を入れなおしてやるしかない。

 

「現役の傭兵なめんなよ!」

「ふふん! リインフォースと私は無敵なんやで!!」

 

 俺がストライクスファイアの魔法に乗せて引き金を引くのと、はやての杖が閃光を発したのは同時だった。

 爆発が生じる。

 その中を無理やり突破した俺に、はやての笑みが答えたようだった。




※ヒント2:タイトルの元になったことわざ

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