はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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気付かなかったら、この話って3年後に投降される予定だったんだぜ。
マジビビりました……


52舌の根を乾かすうちに

 クリスマス会から一夜明けて、現状の酷さを再認識した。

 お正月前でよかったぜ。

 これで業者が年末休業に入っていたら、目も当てられない状況だっただろう。

 粉砕したガラスの修理に業者が来て、ぶち抜いた居間のドアに段ボールを貼り、ガチムチに引っ剥がされた玄関の戸を金具ごと取り替える。

 案の定、俺は隻腕なので作業させてもらえなかったが。代わりに指示だけ出したら、殆どザフィーラがや ってくれた。

 こいつ、手先の器用さがはんぱない。

 

「ザフィーラすげぇ」

「さんをつけんかいデコ助野郎」

 

 いや、禿げてねーし。

 

「譲歩してザフィーラ兄貴と」

「略してザフィニキやな」

 

 ビバッザフィニキ! ザフィニキサイコー! ザフィニキサンダー!!

 そんな感じではやてと連呼してたら、なぜか俺だけ拳骨を食らった。

 解せぬ。

 

「日頃の行いやな」

「主従の問題だと思う件」

 

 追加で獣化したザフィーラが噛みついてくる。

 いや、なんでだよ。

 そんな感じで、楽しく? やっているお昼下がりの居間にて、はやてが神妙な面持ちで俺を見てくる。

 惚れたか? はいはいそやねー、と雑なやり取りを挟んで本題へ。

 

「実は、ヤクモさんに頼もうと思っとったことがあんねん」

「なんじゃらほい」

「魔法の使い方教えてくれへん? 石田先生曰く、足の麻痺が徐々に回復しだしたって驚いてはったんやけど。これって闇の書が止まったからなんやろ?」

 

 まあ、厳密には止まってないんだけどね?

 主の登録データを読み込んでリンカーコアへアクセス。しかし、リンクは切断済みだからエラー。生体データの検索。はやてのダミーデータを検出。読み込んでアクセス。エラー。検索。読み込み。アクセス。エラー。検索、読み込み、アクセス、エラー…………

 たぶん、今の闇の書はこんな感じで無限ループに入ってるはずだ。

 なに、それは本当かね!?

 それは……お気の毒に……

 

「前にも言ったがな。下半身の麻痺は、はやてのリンカーコアが闇の書の過負荷で圧迫されてたからだ。原因がなくなれば、そりゃ回復するに決まってる。けど、それがなんで魔法覚えたいになったの?」

「なに言うてんの、将来的にヤクモさんを捕まえるって言うたやろ? 習得できるもんは、今のうちからやっとこうと思てな」

 

 あぁー、言ってた言ってた。

 闇の書を顔面セーブしたときね。そういえば、そんな話になってたなあ。

 本気だったのか。

 

「これ敵に塩を送ってるような……まあいいか。けど、年明けまでは座学だけね。実技は禁止の方向で」

「えー、私も魔法でどかーんってやーりーたーいー!」

「魔法の先入観がおかしなことになってる!?」

 

 どかーんってなんだよ、どかーんって。

 言っとくけど、始めるなら浮遊魔法とか基礎からだよ?

 それに、はやてのリンカーコアは最近まで過負荷に晒されてたんだ。

 問題ないとは思うけど、一応ちゃんと休めてやった方がいい。

 急ぐ必要はないんだから、せっかく治った体を酷使するのはNGで。

 

「ホントなら、リインフォースの機能があれば一瞬だったんだけど。その辺は仕方ないね」

「あー……ユニゾンデバイス、やっけ? そんなに凄いもんなん?」

 

 まあ、個人的な感想を言うとチートクラスの代物だな。

 ユニゾンデバイスってのは、使用者と融合して魔力の管制や補助をしてくれたりする。

 もちろんそれだけならインテリジェントデバイスと変わらないが、そこは流石のベルカ式だ。

 尖った性能というか、こと殴り合いならとんでもない威力を叩きだす。

 アレだね。主人公機が複座型になって、常に熱血を積んでる感じに近い。

 一撃必殺系が怖すぎる。あと高い。

 

「そんなにお金かかってるん?」

「そりゃお前、原形は古代ベルカの遺産だぞ。素体のデータなしでゼロから作るってなると、一大プロジェクトになるレベルだな。あとは、適合率ってのもある。ダメだと体中の穴という穴から血が噴き出すらしい」

「なんやそれ怖い……」

 

 確か、その辺とコスパの問題で製品化しなかったと聞いている。

 あまりにも酷いんで、管理局が違法研究として取り締まった例もあったぐらいだ。

 1体造るだけで金とか金とか金が凄いことになってたろうに、きっと研究者は破産してるな。

 世の中、金さえあればだいたいのことはできる!

 やったぜ、涙目。

 

「そうなんや。まあでも勉強すればええだけやし、リインフォースはなんも悪くあらへんよ」

 

 最後の方は、パソコンを見ながらはやてが言う。

 電源が落ちているはずの本体に、ほんのり光が灯る

 不可視モードのサーチャーが1つ、彼女の目と耳になっているはずだ。きっと、今のやり取りもセーフモードで聞いていたのだろう。

 2人して場所を移し、会話に参加者が1人加わった。

 

『その、申し訳ありません主』

「どっちも気にせんでええよ。皆が無事やってんし、私は一安心やわ」

 

 画面に映し出されたリインフォースは、俺が漱石さんとして見たときと同じ姿だ。

 そういえば、ボディを用意するって言ってたな。

 暗示の影響がこんなところにまで……

 あれ? 今なら作れるんじゃね?

 

「突然ですが朗報です。外のガラクタ流用して、リインフォースの体が作れるかも?」

「ホンマか!?」

 

 ホンマでっせ。

 とはいえ、フレームの再生成とか専用の施設がないと厳しいけど。

 それを考えたら、廃品利用しないで新品つかってやりたいなあ。

 月村邸でやった解析結果もあるんだし、こっちでパーツを……どこで加工するんだよ。

 

「そうだな。年明けに、はやてが実技を始めるくらいまでには……なんとか、うん……」

「またそれかいな。はいはい、期待せんと待ってますー」

 

 懐疑的な目で、はやてが投げやりに言ってくる。

 やだ、俺の信用度低すぎ!?

 いや知ってたけど。

 

「今さら信じてよ! なんて言わないけどな。俺の領分で俺の仕事なら、誰かに任せたりはしねえよ。腐ってもプロだからな」

『私はまだ付き合いが浅い。お前がそう言うのなら、私は信じて待っていよう』

「……なんや、私がワルモンみたいなんやけど」

 

 いやいやいや。

 全面的に、俺の自業自得だから心配しないでください。

 

「で、魔法の練習に話を戻すか。リインフォース、お前の中に魔法理論の記録は?」

『む。残っているが、ところどころが抜けている。講師には向かないだろうな』

「そうか。じゃあ、ベルカ系の基礎教本でも取り寄せるか。リンカーコアの安定もだけど、無知なまま魔力が暴発しても困る」

 

 たぶん、教材さえあればシャマルさんとかシグナムが教えられるだろう。

 ヴィータ? あいつはダメだ。

 きっと説明の殆どが擬音になる。

 

「さっき誰かに任せたりせんとか言ってたくせに、もう投げとるやないかい」

「ははは、俺は技術者であって教師じゃないからノーカンですよ。領分でも仕事でもないしな!」

『それは屁理屈というのでは……』

 

 おっと、さっきまで味方だったリインフォースが敵に。

 こういうことしてるから、逃亡生活ばっかりなんだろうなあ。

 わかってて直るもんでもないんだけどさ。

 

「では、今日はざっくりベルカ式とミッド式の魔法特性について講義をします」

「お、やる気になったん? 授業してる限りは、当然家におるんやんな?」

「……すいません、今晩からちょっとお出かけします」

 

 再び、はやての目が懐疑的な色を含む。

 こいつはまた、とかたぶん思ってるんだろう。

 いつものことですがなにか?

 

「1回、縄でぐるぐる巻きにでもしてみよかな」

「蓑虫スタイルからの大脱出。これが、ハンドパワーです!」

『それは、お前の頭がきているという意味か?』

 

 うわっ、きっついこと言ってくるなこの人。

 頭はきてねえよ! むしろキレッキレですから!!

 

「教本は業者に頼んどくから、とりあえず特性に関するパワーポイントでも作ってくれませんか」

『引き受けよう』

 

 なんやかんやで、第一回はやての魔法訓練講座が始まった。

 俺の説明に乗せて、リインフォースが説明図を構成していく。

 これ、実はこのままの方が便利なんじゃないですかね……

 




<いっぱいきた感想見た直後>
すずかの人気が凄いことになっててワロタwww
勢いに任せて婿入りプロット「心頭滅却すれば火もまたすずか」とか書いてるんで、しばらく待ちやがってくださいwwwww


<明けて次の日>
な、なんだこのプロット……
え? えぇ? こんな量の内容を三話でまとめようとしたの?
バカじゃないの俺!


<今>
な、なんとかします(震え声

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