はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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評価コメントに、何匹か謎の四足歩行が発生していました。
これは駆逐せざるをえない┌(_Д_┌ )┐


48痩せ吸血鬼、魔法使いを恐れず

 ガチムチ1号をなんとか確保し、構造分析してわかったことがある。

 俺がいない間に機動兵器の装甲解析を終えたのかと思ったけど、どうやらそうじゃないっぽい。

 アンドロイドのフレームとして構造を成型する際に、透過の効力はなくなってしまったようだ。

 よかった。これで透明化なんてされてたら、苦戦ですまなかかっただろう。

 ガチムチ1号はなかまをよんだ!

 ガチムチ2号があらわれた!

 ガチムチ3号があらわれた!

 なんとガチムチたちが……!?

 くんずほぐれつしてキングホモになった!

 

「気持ち悪い、普通に気持ち悪い。この発想を、あの変態に教えてはいけない気がする」

 

 せめて、助言は合体ロボくらいにしとこう。

 もしかしたら、継ぎ目ができて弱点になるかもしれん。

 

「にしても、装甲の強度は保ったまま加工できたのか。あいつ、研究者のくせに技術屋の仕事とるなよな」

 

 それが証拠に、ぶん殴ったらスパナが曲がってしまった。

 こちらに魔法アシストがあったとは言え、流石に道具が歪むとは。

 武器そのものを強化するか、相応の質量をぶつけないと効果は薄いかな。

 

「その辺、ベルカ系は効果ありそうだなあ。まさか、量産機をこのレベルで揃えてくるとは思えないけど」

「量産? これが量産されるかもしれないの?」

 

 不意に忍さんの声が割り込んできて、思わずドキッとする。

 声にびっくりしたっていうより、その内容にだけど。

 ガチムチ量産とか勘弁してください。

 世紀末が到来するぞ。

 

「せっかく部屋をくれたのかと思ったら、プライバシーとはいったい」

「いいから教えてもらえるかしら?」

「どうせ逆らえないし、いいけどね」

 

 とりあえず、これがいかに非効率で製造コストの無駄かを教えてやる。

 わざわざ人型にする辺り、作者の嫌がらせが見て取れるようだ。

 なにをどうやって売り込んだのかしらないが、頑張れば量産できそうでしょ? って構造なのも含めてだが。

 実際は、こんなの作るぐらいならラジコンに銃を背負わせた方がマシかもしれない。

 

「精巧な人型なら、汎用性の広さもあるんじゃないかしら」

「それは意見の相違だな。汎用性を求めるくらいなら、安くて大量投入できる専用性を重視すべきだ。餅は餅屋だよ」

 

 目的と用途に合わせて分業させる方が、構造も簡略化できるしね。

 ロマンは認めるけど、単機に全部やらせるとか効率が悪すぎるだろ常考。

 無駄が省ければ、それだけコストダウンも見込める。安くなれば量産しやすいし、製造ラインの削減もできるだろう。

 道具ってのは、ただ強力な物を作ればいいわけじゃない。

 

「なるほどね。1機しかいなかった理由も、それで説明がつくわ」

「まあ、敵さんが何機ぐらい保有してるかは知らないけどな」

 

 わからんと言えば、あのタイミングで出てきた理由もか。

 ガチムチ1号を倒したあと、当然のように恭也と施設を調べまわった。しかし、あの施設に重要なものは見付かっていない。

 防衛のためでもなく、決戦のためでもなく。

 じゃあ、なんで出てきたんだろう。

 今のところは、嫌がらせが一番ありそうな理由だけど。

 

「とりあえず、これはこっちで製造できる代物じゃないから。相手の保有量が増えることはねえよ」

「そうかしら? 造れなくても、新しく仕入れる可能性があるわよ?」

「ルートは抑えさせたから、たぶん大丈夫だと思うけどな。ちなみに伝手について尋問するのは自由だけど、俺の所属と同じで聞き出したあとは自己責任だからよろしく」

 

 少し考えた素振りのあと、わかったわと言葉を残して忍が部屋を出ていった。

 引き続き、機体の解析でもやってろってことかな?

 

「んー、時間の経過に違和感はないか。記憶の混濁なし、整合性もおっけー。今回は使われなかったか」

 

 まあ、違和感すら消せるレベルの暗示なら意味ないんだけどさ。

 どっちにしても、判断基準としては曖昧だよねー。

 暗示がかかる前の俺、なにか布石の1つでも置いとけよ。

 孔明先生が草葉の陰で泣いてるぞ。

 

「布石……布石、ねぇ。俺の性格を考えたら、あんまり期待はできないんだけど。アンドロイド関係で、なにか忘れてるような?」

 

 はて、なんだろう。

 この辺りの違和感を突き詰めていけば、意外と簡単に答えが出たりするかもしれない。

 突き詰める前に、暗示の邪魔が入らないという前提は必要だが。

 ……はいはい、無理ゲー無理ゲー。

 まさか、一般人に顎で使われる日がこようとは。プロの傭兵ってなんだっけ?

 

「あんぱんっ!」

「えっ……お腹が減ったんです、か?」

 

 本日2度目のビックリに振り返ると、入口でもじもじしているすずかを見つけた。

 姉妹そろって、気配を消すのが上手すぎて困る。

 とりあえず、ご飯は出てるからおかわりは結構です。

 

「今日は来客が多いな。どうした」

「いえ、その……やっぱり、怒ってますよね」

 

 強張った表情で、肩を縮めながらすずかは声を震わせる。

 しばらく見ないと思ったら、どうやらなにか言われるのが怖いから逃げてたらしい。

 悪態を吐く相手くらい選びますけど?

 もしくは、キレキャラだとでも思われてたのかな。

 

「その、ごめんなさい! 私にできることなら、なんでもしますから!!」

「ん? 今なんでもって」

 

 いやいや、いかんいかん。

 なんか、すずかの相手をしてると変なタガが外れそうになるな。

 自制心が吹っ飛ぶというか、思考が勝手にそっちへ傾くというか……

 

「あれ、この感覚は暗示? お前も使えんの!?」

「え、いえ。よくわからないです」

 

 じゃあ、無意識に?

 なんて迷惑なロリコン製造機。これは俺が貰うしかな、ちげーよ落ち着け。

 マルチタスクをフル回転させろ。邪な思考と正常な思考を切り離せ。

 必要な内容だけ推考を続け、不要なものはプールし続るんだ。

 大丈夫。いける。

 絶対、暗示なんかに負けない!

 

「よし、あとはこれで邪な思考をサーキットさせて閉じ込めれば」

「凄い汗ですけど、大丈夫ですか!?」

「おう心配するな。しかし、ホントすずかは優しい上に将来美人になりそうで優良物件――ダメだこれ!」

 

 暗示には勝てなかったよ……

 もう、いろいろ投げ捨てて楽になりたい。

 お巡りさんこっちです!

 

「レアスキルとか専門外すぎてどうしようもないよね。魔法構築理論とかになるのかな? いや、そもそもこれレアスキルなのか?」

「ごめんなさい! あの、暗示にかけたいわけじゃないんです!!」

「わかってるから落ち着け、無意識下の発動なんだろ? となると、嫌われたくないっていう深層心理からきてるのか」

 

 強い思いが、隠された力を発動させている。

 うはっ、なんて中二チック。

 内容が強制ロリコン電波じゃなければ、少年漫画展開も夢じゃなかっただろうに。

 それにしても、どうするかな。

 原因はわかったけど、記憶が消えてる間にやられたことのフォローなんて俺にはできない。

 なに言ったかも覚えてないし、なにされたのかもわかんないからね。

 

「嫌われたくない、の反転だから強制ロリコン電波までは理解したんだけどなあ。ともかく、俺がお前を嫌うことはないから安心しろよ。お前の姉がやったことだって、許すことはないけど理解はできる」

 

 隠したいことがあるから記憶を消す。

 信用できない相手に、余計な情報を持たせたくはない。

 能力は必要だから、自分が有利になるよう状況を整える。

 まあ、この辺は道理だな。やり方は強引だけど。

 

「ここは管理外世界だ。俺の基準から言えば、お前らなんてただの珍しい能力を持ってるだけの人間だがな。基本的に、周りと違うの言うのは迫害の対象になる。この世界じゃ、お前らの能力は不必要に強力なんだろうよ」

「…………けど、私たちは血を飲みます。人の血を。ヤクモさんの世界でも、やっぱりそれは異端なんじゃありませんか?」

「血? お前、血液はアンモニアを含んで――いや、これはやめとこう。はっきり言うが、そんな理由で俺の記憶が消されたなら泣きたくなるレベルだ。吸血? お前、ガチのドラゴン目の前にしても同じこと言えんの?」

 

 え、ドラゴン? と困惑気味なすずかちゃん可愛いです。

 ……ダメだな。もうこの感情抑制は諦めよう。

 手を出さなきゃセーフだ。

 イエスロリータノータッチ。いい言葉を教えてもらっていてよかった。

 

「それにお前らの暗示って、別にレアスキルじゃなくてもできるだろ? こっちにだって、5円玉くるくる回して空に投げると蟲が飛ぶって聞いたが?」

「確かにそうですけど、蟲は飛ばないと思います」

 

 え、そうなの? これははやてに騙されたかな。

 まあいいや。

 

「こっちじゃ、生体技術もそれなりに進んでるからなあ。その気になれば、脳みそに電極刺して洗脳とかもできるぜ? そこへいくと、お前らの場合は良心が邪魔して能力が半減してるだけマシだよ」

 

 やろうと思えば、記憶全消しの廃人とかもできそうだしね。

 制御できてないすずかでこの影響力だ。なにかの条件があったとしても、忍の方はやろうと思えばできただろう。

 

「そんなことより、確か機械いじり好きだったよな? ちょっとこっち来て手伝ってくれ。長年の恋人に愛想尽かされてな。左腕1本だと不便でしかたない」

「恋人? よくわかりませんけど、お手伝いなら任せてください!」

 

 ようやく入口から1歩踏み出して、すずかがこちらへ駆け寄ってくる。

 さっきよりは、表情もいくらか明るい。

 元気になてくれたようでなによりだ。

 

「このロボット、首のところが凄いことになってますね。どうやったらこんなことに」

「ああ、俺の魔法に音響探知系のバリエーションがあってな」

「振動だけ抽出して、高周波に変換したんですか? 超音波振動メスなんていうのもありますけど、魔法って本当に便利なんですね」

 

 お、おう。音響探知って聞いただけで、そんなに出るのか。

 やっぱこの子ぱないわ。

 暗示とか吸血より、この学習能力の方が異常じゃね?

 




ホモからのマジメ回とか、ギャップありすぎて私の脳みそが混乱しそう。

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