はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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もろもろ、予定が狂って後編の更新が遅れました。
よって、今回は投降予約様の力をお借りしてお昼頃に更新しております。

大変お待たせいたしました(待ってる人がいるかは知らない


45悲しみの中の神頼み・後

 さて、どうするか。

 これは思ったよりもピンチかもしれない。

 敵と敵と敵と敵の中に、敵っぽいのが増えてしまった。

 おお女神よ、私を見捨てるというのですか!!

 

「やはり、お前を信用するのが無理な話だった」

「恭也君って、基本的に俺のこと嫌いだよね」

 

 なにを今さらとか言われたけど、俺は言うほど嫌いじゃないんだよなあ。

 高町の家系は、なぜかいじると楽しんだ。命がけだけど。

 

「あと、そっちのデカイ方のメイド。お願いしますそれ以上は左腕を捻らないで、そっちもなくなると困るんだよ痛い痛い痛い」

「ご安心ください。折れても治療は可能です」

 

 未来じゃなくて現在の話をしませんかね?

 まず折らない方向で対話を重ねるところから始めよう!

 あと、出来たら体重かけるのも止めて欲しい。こいつら、どう考えても成人女性の平均体重を20キロくらいオーバーしてるんですけど。

 けどまあ、これで背後に立たれたら勝ち目が消えた理由もわかった。

 アリサがドアを閉めて、ほぼノータイムで背後を確保。それまで目視範囲に気配は無かったとなれば、とんでもない移動速度だなあとは思ってたけどさ。

 ハハッ、人間じゃないとかバロス……

 

「まさか、管理外世界にガイノイド技術なんてあるとは思わなかった。それも2体。是非とも研究させてほしいね」

「うちの大事な家族を、はいどうぞなんて言うわけないでしょ。というか、あなた本当に魔法使いなの? もっと抵抗されると思ったのだけど」

「え、もっと凄い抵抗していいの?」

 

 手加減なんて出来ないけど、ホントにいいの?

 一応、すずかの家だからって遠慮してたんだけどホントにいいの?

 そんな感じのことを、思わせぶりに言ったら背中のメイドさんが本気出してきた。

 すいません嘘です。ただのブラフなんで、それ以上の握力上昇は手首が千切れちゃう!!

 

「魔法的な抵抗は可能だけど、このメンツ相手に逃げ切れる気がしなかったから速攻で諦めました」

「素直でいいわね」

 

 ノエル、と忍さんが一言かければあら不思議。

 なぜか握力が更に強まっていくという謎の展開に。

 あれ、今のは緩めろって合図じゃないかな?

 

「指先の感覚が……」

「ノエル、その辺にしてあげなさい」

「申し訳ありません。モーター制御回路の信号が逆転していたようです」

 

 お前、それ普通に故障じゃねぇか。

 なんだったら俺が診てやろう。

 なぁに心配ないよ。ついでにちょっと構造解析はさせてもら――うぎぃ千切れる……

 

「ノエル、やめてやれ。お前も少しは自重しろ。次は御神真刀流の真髄を見せることになる」

「なんて物騒な名前の流派、頭から真っ二つにされるところまで想像した」

「真っ二つにされたいのか」

「そんなバナナ」

「あなたたち、実は仲良いんじゃないの?」

 

 いやそれはないな。

 確かに嫌いじゃないとは言ったけど、仲良しなんてことはない。

 りぼんもちゃおも絶対にない。

 

「色々と予定が狂ってしまったわ。とりあえず、無駄な抵抗をしないのなら拘束は解くけれど?」

「隙あらば逃げます!」

「なんでヤクモさんは、その状態で自信に満ちあふれてるんですか……」

 

 飛び出して来た部屋の扉から、顔だけ出すようにしているすずかに聞かれて考える。

 どうしてだろう。

 その場の勢いで動いてるから、考えたこともなかった。

 

「無策、無謀、無計画と三拍子そろった俺に死角はなかった」

「それは自慢になるのかしら? ともかく、ノエルとファリンは彼を押さえたまま部屋に引き摺り戻してちょうだい」

 

 忍さんが鶴の一声を放ったことで、再び俺は交渉の席へと連れ戻される。

 どう考えても、このまま一方的な展開になりそうで怖い。

 あと、右腕の代わりに頭を掴むのやめてください。

 人間の首は、そんなに耐久度高くないんだからね!

 

「よし、俺がまだ原形を留めてる内に話をしようぜ。流石に命の危険を感じてきた」

「これで少しは普通に会話できそうで安心したわ」

 

 ん? 今までも割と普通に会話のキャッチボールしてたじゃないか。

 今さらなにを言って、すいませんでした調子に乗りました。

 

「迂闊だったわ。まさか、勘違いしてこちらの秘密を喋らされるなんて」

「泣いてもいいのよ……すいません、手をどけてください頭蓋が砕けそうです……とりあえず、俺は秘密を漏らさないと約束しよう。今日のことは聞かなかった、お前らも見なかった。それで手を打とう?」

「駄目よ。さっきも言ったけど、迎撃したのはあなたなの。それも私たちの知らない力でね。次に来たとき、きっとあいつらは警戒して来るわ。そうなったときに、あなたがいないと厄介なことになると思わない?」

 

 それ、俺にどう関係が……

 いやそうか、すずかの家に関係してるんだっけ。

 過去には誘拐されたこともあるって話だし、場合によってははやてが黙ってなさそうだな。

 今や守護騎士という最高戦力を保有してしまっている彼女だ。余計なことをしたやつらを殲滅、なんて恐ろしい未来が見えてしまう。

 しかも、実際できるだろうから手に負えない。

 

「あんたらが負けなければいいんじゃ? 協力者が他にもいるって相手が気付いたとして、それ以前に倒しとけば問題ないと思うけどな」

「俺1人で守れる範囲には限界がある。今日までは危ういバランスで睨みあいをしていたが、こちらに新たな協力者がいるとなれば……」

 

 もっと力を付けられる前に、なんとか手を打とうって考えるかもね。

 そこまでしてくる相手なの? マジで?

 

「そもそも、なんで狙われてるんだよ。特殊な家系とか、血とか、吸血鬼とか、流石に断片的すぎて判断のしようがないんだけど」

「……いいわ。どうせ今の敵をなんとかするまでは、手を貸してもらわないと困るもの」

 

 小さく吐息して、忍さんは眉間を解しながら語りはじめる。

 夜の一族というのが、見た目は人間と変わらないこと。

 物語上の吸血鬼みたいに、日光で溶けるとか十字架が嫌いというわけでもないらしい。

 長命かつ人間離れした身体能力を持つ代わりに、人の血を摂取しないと長生きできないとのことだ。

 そこからしか吸収できない栄養とかあるんだろうか。

 でも、血中にはアンモニアとか混じってるからあんまり綺麗なものじゃないと思うけど。

 これは言わない方が吉だろうな。頭に手を置いてるメイドさんによって、俺の頭身がいくつか減らされそうだ。

 

「ふーん、血液摂取による特殊能力の維持ね。面白い事例だな。で、具体的にそれのなにを狙われてるんだよ」

「狙ってきているのが親族の誰かなら、月村の遺産だけで済むからいいのよ。でも、中には夜の一族という血筋そのものを狙っているやつもいるわ」

「血筋? え、なにそれ混ぜられる血なの?」

 

 てっきり、純血種同士じゃないとダメなのかと思った。

 そういえば、さっき物語の吸血鬼とは違うって言ってたか。ということは、家系の中にランダムで発現する特性なのか?

 いやいや、親族はいるらしいから純血なら確実に発現するんだろう。

 つまり、一般人との混血になった場合のみ確立論になると。あるいは、血が薄まって能力が劣化する可能性も……

 どうでもいいなこれ。よし、考えるのやめ!

 

「あんまり知っても厄介そうだから、血の話はもういいや。言い方的に、今回は後者だと思ってるってことでいいの?」

「ええ、少なくとも親族の誰かじゃないわ」

 

 やけに確信もってるなと聞いてみたら、信頼できる人が教えてくれたのよと返ってくる。

 どうやら敵ばっかりって状況でもないようだ。

 

「さて、ここまで聞いて思ったんだけど。俺にどうして欲しいの? 敵の殲滅か、もしくは捜索かな?」

「いいえ、そんなに難しい話じゃないわよ。とてもシンプルな解決方法があるの」

 

 なんだそれ。

 そんなのあるなら先に言って欲しいね。

 俺がメイドにボコられたの意味ないじゃん。

 

「ま、待て忍。やっぱり考え直そう。改めて思ったが、やっぱりどうかしてる」

「恭也君の一言で、碌でもないことだってのは理解した。今度こそやめよう? なにも言わない方が、お互いにとって最良の結果になるって! ほら、すずかからもなにか言って!!」

「えっと、その……ヤクモさんは、夜の一族が怖いとか思わないんですか!」

「おい俺じゃなくてお前の姉に……まあ、場所によっては怪獣大決戦みたいなの相手にしたりとかしてるし。見た目が人間ならいいんじゃないか? ヘボな科学者が改造人間を作ろうとして、鷹と蛇とライオンと熊をぶち込まれた人間の方がよっぽど危なげな格好してたよ」

 

 なんだそれ、と恭也君が眉間に皺を寄せている。

 流石に、俺もあれを見たときは焦った。

 なにがって、あれで新人類作ろうとしてたって事実に本気で焦った。

 バカじゃないの? もうただのキメラだからねそれ。

 

「ちょっと待て、話が逸れてんじゃねえか! とりあえず、あまりよくない考えは捨てろ。穏便に話し合って決めよう。な?」

「大丈夫よ、とても穏便に済むもの」

 

 にっこり笑顔の忍さんが、なぜか怖い。

 背中の冷や汗は、蛇口がぶっ壊れたみたいに凄い勢いで流れている。

 なんだこの嫌な予感は。マッハで死亡フラグしか見えない。

 

「簡単なことよ。八雲さんが、うちへ婿入りすれば全て解決するわ。すずかの旦那様ってことね」

 

 ……………………………………ん?

 

「忍、やっぱり俺は賛成できない。人格的にも問題はあるが、そもそも歳の差を考えるべきだ」

「大丈夫よ。きっとすずかの方が長生きするもの」

「えっ、その理論はおかしくね?」

 

 というか、それ以前にすずかの意思を確認しろよ。

 なにを勝手にトントン拍子で決めてんだこいつらは。

 ほら見ろよ。いきなりこんな話になってるから、本人も相当困惑して。

 

「そっか、ヤクモさんは怖くないんだ……えへへ」

 

 ダメだ。なんか取り込み中らしいから、今は触れないでおこう。

 というか、落ちつけよ俺! すずかの意思を確認ってなんだ!!

 なんでちょっと乗り気になってんだよ、現実を見ろって!!

 俺は20歳。すずかは10歳未満。

 数字をよく見ろ、見事な犯罪だよこれ! ただの事案じゃねぇか!!

 確かに可愛いし優しいし女神だし、あれおかしいな最高の婚約者じゃね?

 どの道、法律的に16歳までは婚約なんだろうし心変わりとか考えたら今のうちはそのままでも首が縮む痛いぐぎぎぎぎ……

 

「ははっ、まさか頭掴みっぱなしのメイドに助けられるとは……あの、もう正気に戻ったんでそれ以上の荷重は首の骨ががが」

 

 顎の位置がごりごり沈んでいくのを感じる中、自首すればセーフやでと言う誰かの声を聞いた気がした。

 誰って、言うまでもないわな。

 お巡りさん私です!!

 




話数を分割する際の告知方法なのですが。
更新が1週間くらいなかったら、分割の話を書いてるんだなって察してください。
という結論に達しました。

もうこれ、一週間更新じゃなくて私の気分で一週間くらいの更新だよね! と思ったのは内緒です。
申し訳ありません_(:3」∠)_

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