はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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この先、シリアス展開とかあるのに書くの苦手とかどうするかな。
ちょっとギャグで濁せるレベルのシリアスじゃないんだけどなあ……


結論
 なるようになる!


35隠してなかったけど見るるはなし・下

 身バレしてから数週間。

 もう、いろいろ開き直って結界無しの作業を今日も続ける。

 バニングス家の執事さん辺りは、いつの間にか運び込まれた機材に眉を寄せていたが。

 誤魔化すのは俺の仕事じゃない。

 がんがれアリサ。

 

「んー、配線がごちゃごちゃしてやがる。もうちょいメンテのこと考えて作れよな」

「あのヤクモさん。部品磨き終わりました」

「おうありがと」

 

 敷かれたブルーシートいっぱいに置かれた車の部品たち。そのどれもがピカピカに磨かれてある。

 これらは、ここ数日でアリサとすずかがやってのけた功績だ。

 いやもう正直びっくりだよ。女の子って、こういうの苦手だと思ってたから。

 あっ、守護騎士の女傑たちは別枠ね。

 

「私、機械とか触るの好きなんです。将来は理工系の学校へ行きたくて」

「なんか、小学生が『野球選手になりたい!』とか言ってるレベルじゃない将来設計が見えるな」

 

 はやてにしてもそうだけど、最近の子供ってこんなんか?

 好きなことやりたいのはいいとして、現実味ってやつがあふれ過ぎてやしませんかね。

 

「あんまり危ないものは触るなよ? あと、磨いてもらって悪いんだけど車体に手を付けるのもっと後なんだ」

 

 この間の件で業者に文句を言ったら、即行で各種部品なんかが送りつけられてきた。

 しかも、おまけに定型文の謝罪手紙付きで。

 リカバリーの速さは評価するけど、かなり腹が立つのはなぜだろう。

 

「あの。設計図とかで指示してもらえれば、細かい部分は組み立てられますよ?」

「うそん……お前はホントに小学生か?」

 

 いやまあ、実際にやってみたらできませんでしたってパターンもあるか。

 よし、やらせてみよう。

 これで出来なかったら、そっと横から俺が助言をやるわけだ。

 その的確さに惚れたすずかが、キャー素敵! 抱いて! とこうなる……なったらどうだって言うんだ俺!

 落ち着け、相手は小学生!!

 

「わあ、エンジンルームの構造ってこうなってるんですね。冷却水槽がここだから、ラジエータと繋ぎ合せがこうですか」

「……そう思ってた時期が、俺にもありました……」

 

 不安そうに、ごめんなさい。どこが間違ってますか? と聞かれたので、全部合ってますと答えておく。

 最近の小学生って、設計図見て車の組み立てできんの? マジか! マジか!!

 

「才能の格差社会を感じるよね」

「なにごちゃごちゃ言ってんのよ」

 

 不意に後ろからアリサの声が来る。

 どうやら、今日もお家への言い訳は済んだらしい。

 

「次から次へと物を増やされて、こっちはたまったもんじゃないわ」

「安請け合いした過去の自分を呪ってくれ」

 

 軽口に対し、いい笑顔とボディーブローを貰った所で作業を再開。

 フロントのエンジン周りはアリサとすずかの好きにさせよう。

 どうせ、後で俺がチェックするんだし。

 重いエンジンとギアには触れないよう厳重注意して、俺は後部の魔力炉だ。

 

「しかし、わかっちゃいたが改造が凄いな」

 

 アウディR8の修理にあたり、設計図を参照してわかったことだが。こいつのは本来、エンジンが後部についているはずの車だ。

 レースカーのテクノロジーが組み込まれている上に、とんでもない高級車である。

 カタログを見たときは元が高級車という情報しかなかったけど、蓋を開けてみればこれだよ。

 誰だ、こんな車に魔改造施した馬鹿。

 

「どう考えても、魔力炉を載せるのに邪魔だからエンジンをフロントに持ってったってことだよなこれ。車体バランスガン無視とはいい度胸だ」

 

 もうやだ。

 この世界の住民って、実は右から左までトチ狂ってるんじゃないかな。

 いやごめん。この世界じゃなくても、頭のネジが残らず吹っ飛んだ狂気のマッドサイエンティストがいたわ。

 とりあえず、文句を言っていても始まらない。

 車体は恐ろしく軽いので、フロントのエンジンとリアの魔力炉でバランスを取るしかないだろう。

 前か後ろが重過ぎて、曲がるごとにスピンの恐怖と戦うのは嫌過ぎる。

 なお、これは完全に余談なのだが。フロントにエンジンが載っているといことは、そこにあったはずの収納が死んでいるということだ。

 なんのことって、荷物を積み込む場所どこだよって話だよね。

 旅行? なにそれ美味しいの?

 

 

 どうも、魔力炉を作ろうとした前任者は独学で作業を行っていたらしい。

 機構はむちゃくちゃだし、無駄な配線は多いしで。挙句の果てには、未完成の物体だということも発覚した。

 これもう修理っていうか改修じゃないかなあ、なんて思いながらも進捗具合は良好である。

 まだまだ問題点は多いが、この調子なら9月の後半くらいまでになんとかなるだろう。

 はやての件に関しては、もろもろの手回しも込みで11月くらいに縺れこむかもしれない。

 微妙なラインだなあ。

 どっちにしろ、俺のリンカーコアが回復しないと詰むんだけど。

 闇の書が吸い出したページ数は1ページと少し。これくらいなら、言ってる間に復活しそうな気はする。

 ……いや、決して俺の魔力量が悲しいことになってるとかそういうアレじゃないんであって西から昇ったお日さまが東へ沈むあっ大変なんてことはないんです。

 察しろください……

 

「で、なんで今日ここに来たのかって言うとだな。すまん、俺が魔道師だってアリサとすずかにバレちゃった」

 

 てへどろ。

 

「そ、そんな!?」

 

 なのはの顔が、みるみる青くなっていく。

 ちょっともちつけ。身バレしたのは俺だけで、お前も魔道師だとは言ってないから。

 

「まあ、俺も魔法を使って見せたとかじゃないから。半信半疑くらいだとは思うけどな」

 

 バレたくないなら、リアクションとかに気をつけるよう言い含めておく。

 でだ、本題はそこじゃない。

 こちとら、恭也に睨まれるのを承知でわざわざ翠屋まで来ているんだ。

 まさか、そんな報告をするためだけに来るわけないじゃないですかやだー。

 

「2人をこっそりスキャンして、リンカーコアがないのは確認した。そうなってくると、どうやって結界に侵入したのかが気になる。思い当たる節は?」

「……いえ、特には」

 

 あれ、そうなの?

 てっきりなのはが警備用サーチャーとか2人につけてて、それが干渉したのかと思ったんだけど。

 え、違う?

 ストーカーと一緒にするな?

 おい待て、それじゃあはやてに監視用サーチャーつけてる俺はどうなるってんだ。

 

「は、はやてちゃんにそんなことしてたんですか!?」

「おっと、思ったよりもリアクションが大きいぞ?」

 

 もしかして、本格的にダメなやつだっただろうか。

 知らないうちに、また新たな犯罪行為へ手を染めていたとでも?

 ハハッ、流石は俺。なぜか警察のブラックリストに登録されているだけはある。

 ホントまさか無意識でやらかしてしまうとは、たまげたなぁ。

 

「ヤクモさんって、ストーカーさんだったんですか?」

「違う。いやホントに違うから、ちょっと椅子を放すのやめてもらってもいいですかね?」

 

 大丈夫です、私信じてますから! と欠片も信用してなさそうな表情のなのはに言われた。死にたい。

 

「……とりあえず、心配ならアリサとすずかに関しては調べとけよ。ここが管理外世界だからって、魔法と無縁ってわけじゃないんだ。どっから事故に繋がるかわかったもんじゃないからな」

 

 例えば、どこかの馬鹿が戦闘時に隔離結界とか張ってそれに巻き込まれるとか。

 隔離したはいいけど、相手が思ったよりも強くて戦闘が派手になるとか。

 あまつさえ、そいつを取り逃がしたら2人の方に直進しちゃったとか?

 

「おい、なんで目を逸らした」

「ユーノ君には聞かせられないなあ、と思って……」

「どういうことだってばよ。まあいいけど。いくら非殺傷設定の魔法でも、一般人が直撃したら大怪我もんだ。都合よく魔法適正があって、デバイスが降って湧くわけ……なんなの? 実は後ろ暗いことでもあんの?」

 

 いえ、別にとかなのはは言ってるけど。じゃあこっち見ろよ!

 お前の兄貴ですら、汚物を見るような目をこっちに向けてるんだぞ!!

 

「恭也君の妹って、実は反抗期入ってたりする?」

「膝の関節を明後日の方向に砕くぞ変質者」

 

 あぁん、ひどぅい!

 というか、曲げるんじゃなくて砕くのか。

 なんでこう、高町家の思考回路はえぐい方に天元突破しちゃうかな。

 飽和魔力かき集めて地球破壊ビームとか、狂気の波動に目覚めた父親とか、将来有望すぎて心配になるレベルの兄とか。

 この店だけで、世界ビックリ人間博覧会ができそうだ。

 

「なるほど、遺言は聞いておこう」

「そもそも給仕するふりして、後ろをうろうろしてたシスコンがうわなにするやめ!?」

 

 ギブギブ!

 違うわギブミーじゃねえよ、ギブアップの方に決まってんだろ!!

 男の照れ隠しとか欠片も可愛くねえから、今すぐ首に入ってるスリーパーホールド外してもらっていいですかね!?

 

「いぎ、いぎが……川の向ごうで、誰がが手を振っで」

「そのまま向こう岸まで渡れ! 今すぐ!!」

「お、お兄ちゃんもうダメだよ! なんかヤクモさんが、これまで見たことないくらい顔真っ赤にしてるから!!」

 

 それ以上いけない。

 あと、立場逆だから! このままだと、俺が自由になって救われちゃうから!!

 

「ぐ、か……あぁ…………ぬ、るぽ……」

「え、え? えっと、えっと!? あっ、ガッ! ガッ!!」

 

 なのはさん混乱しすぎワロタ。

 というか、これははやての仕込みかな?

 せっかく増やした友達を毒で染めるのはどうかと思うよ、俺。

 遠くなる意識の中で、やたら白くて顔の長い2人組みを見た気がする。

 

『早く来て』

『あなた来れば』

『『星になる』』

 

 なにかピースにした両手で図形を作っているようだが、あれに混じるくらいなら川を渡ろう。

 そう固く心に誓って、俺は意識を手放した。

 




ところで、明日は7月7日! つまり奈々ちゃんの日!!
作者は、水樹奈々さんの回復を心よりお祈りしております。
なんせあの人の歌、私の生きる活力なんでね!!

フェイトちゃんぺろぺr……アッハイ、両手ですね。
いつもご迷惑おかけします、お巡りさん。

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