だから、明日も更新あるよ!
久しぶりに帰ってきたなあと思ったら、もう夏真っ盛りだったでござるの巻。
やばい。マジやばい。
いやほらさ、俺も久々の研究でテンション上がってたって言うか。
そりゃ基本的には、傭兵としてどんぱちする方が多いんだけどね。レアスキルの特性上で言うなら、俺って研究者よりのそれだし。
思わず熱中してたら、ついつい時間を忘れたよテヘペロ的な?
「ヤバイよヤバイよ。これ、どう考えてもドックフードコースだよ。いや、もっとヤバイ可能性もあるけど」
既に玄関まで帰ってきといてなんだけど、やっぱり胃薬買ってからにしようかな。
でも「寄り道するとか、ずいぶん余裕やなぁ」なんて言われたら死ねる自信がある。
主に食糧事情的な意味で。
こういうのも、胃袋を掴まれるっていうんだろうか。
もしそうだったとして、尻に敷かれるの前提なんですがそれは。
「おっ。なんか不審者がいんぞ、シグナム」
「なんだと? よし、斬り捨てるか」
「ちょ、おま! ノータイムでアグレッシブな行動に出るのやめてくれませんかね!!」
買い物帰りらしい2人の発想が恐ろしすぎる。
なんで、こんな危険人物が世に放たれてるんだよ。
もしくはアレか。今宵のレヴァンティンは血に飢えてたりするのかもしれない。
そういえば、萌えよ剣とか読んでたもんなあ。
燃えよ剣じゃなくて、萌えよ剣ね。ここ重要。
「まあ、我々が手を下さずとも……」
「それもそうか。ヤクモ、強く生きろよ?」
こいつら……
それにしても、やっぱりはやてさんはご立腹か。
まあ、わかってたことだけどさ。
しばらく、飯の避難所を確保しといた方がいいかもしれない。
「あっ、俺ちょっと急用が」
「なるほど。やはり、機動力を削いでから主の前に連行するか」
「どうせなら、サンダーブレークっての試してみたいんだけど」
おい、それ機動力じゃなくて運動性削ぐやつ!
命中率80%の当たらなさ舐めんなよ!!
「すげぇ。まったく久しぶりの感じがしねぇ……」
「概ね通常運転と言うことだ、お前が」
「だいたいいつも通りってことだな、テメェが」
これは酷い言葉の暴力を見た。
まあ、でも守護騎士特攻隊長のヴィータと総番のシグナムが大人しいのなら一安心か。
場合によっては、もっとぴりぴりしていたはずで。少なくとも、俺を宇宙人が捕まったスタイルで引っ立てている場合じゃなかっただろう。
それにしても、どうしようかな。
こっちにはギル・グレアムの使い魔が来ているはずだ。
あまり多くのことを彼は話してくれなかったが、いくつかの懇願と共に特殊なデバイスも預かっている。
手出しする方法がないから諦めるが、もしやろうとしてることが失敗したらこれでうんたらかんたら。
これ以上の被害者を出さないためにとか言われたけど、俺がそんなの知るわけないじゃない。
世界を救いたいなら、英雄とかそういうのに頼んでほしいね。
なんにせよ、通信手段もないから使い魔は独自に動いていることになる。
自棄になってはやてに突っ込んでたらどうしようと思ったけど、この感じなら大丈夫そうだ。
「主、玄関前でうろうろしていた不審者を捕まえました」
「ケーサツ呼ぼーぜ、ケーサツ」
「お前ら、せめて洒落にできる範囲でお願いします」
え、もちろん冗談だって?
お前ら自分の目が笑ってない自覚あるか?
「おー、ヤクモさんやん。ようやく帰ってきたんやな」
「うわあ。はやてさんげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームじゃないですか」
だって言葉の柔らかさに反して、冷たい視線が俺の体に穴を開けようとしてるもの。
せいぜいムカ着火ファイアーくらいだと思ってたら、最大級の地雷を踏み抜いてたっぽい。
どうしようどうしよう、あわわわわ。
「まあ、いいわけくらいは聞いたる」
「え、ホントに? 実はね」
「いいわけするんやない!!」
「理不尽!!」
流石に冗談やと言って、はやてがいいわけを聞いてくれるポーズに入る。
五体投地状態になった俺の後頭部に、足を置く感じの姿勢だ。
車椅子のフットレストを畳むとあら不思議、人の頭を綺麗に踏めるよ!
「はやてさん、これなんかおかしくね?」
「ええから言ってみ」
ウッス、姐さん。
ということで、いなかった2ヶ月くらいの話をかいつまんでしていく。
技術者としての仕事をしただとか、未知の技術を解析してたとか。あとは幼女にドロップキックくらって2回転したとか。
ギル・グレアムについては伏せておこう。
あえて話す必要はないだろうし。はやてにとって、いいおじさんのままでいてもらう方が建設的だ。
「なるほど、仕事をしとったと。そんで?」
「そんで、って言われてもなあ。それだけですけど?」
こういうとき、顔が見えないって怖いなあ。
もし理解してやってるとしたら、はやての将来が非常に心配だ。
そのうち悪女になるかもしれない。
あるいはやり手のネゴジエイターとか。最後には物理で交渉するタイプのだけど。
「シャマル」
「えっと……はやてちゃん、ホントにやるんですか?」
シャマルさんの不安そうな声が追加される。
あの方向は台所かな?
さっきまでいなかったし、そっちに引っ込んでたんだろう。
うん、嫌な予感しかしないんですけど。
「えっとその……この前に試しで作ったときは、思ったよりもドロっとしちゃいましたけど」
「ええんよ。どうせなら、もっとドロっとさせてもええで」
「わかりました。頑張ってみます!」
「ねえ、なにを頑張るの? 努力の方向音痴って言葉しってる!?」
どうやら台所へ戻っていくシャマルさんの耳に、俺の悲痛な叫びは聞こえなかったらしい。
だいたいドロっとってなんだよ、ドロっとって。
それ食べ物の話でいいんだよね? 変な新物質とかの話してません?
というか、俺の記憶が正しければシャマルさんの飯って頑張れば食えるレベルだったよね。
もしかして悪化してんの?
え、悪化じゃない。レベルアップ……そんな馬鹿な。
「まさか、ドックフードよりも酷いものが待っているなんて。誰が予想できるよ」
「今は別の居候がドックフードを独占しているからな」
「ザフィーラ、お前とうとうドックフード食うようになったの?」
おそらく、シャマルさんと入れ替わりで台所から出てきたのだろう。
久しぶりの青犬様は、なんの躊躇もなく脇腹に噛み付いてきた。
痛い。抉れる。千切れる。いきなり野生に還るのはやめちくり~!
「お前は相変わらずそうでなによりだな」
「おかしいなあ。俺の生活環境が、どんどんハードモードになってる気がするんだよなあ」
自業自得やろ、とはやてに言われてしまってぐうの音も出ない。
変わりにお腹がぐーと鳴いたけど。
「お腹減ってんのやったら、丁度よかったんやない? なあ、ヤクモさん」
「いやこれは腸の収縮運動であって、必ずしも空腹を示す音ではないと言うか!」
ドロっとしたのは勘弁してくれませんかね。
まだ流動食頼るような歳でもないんで。
「ホンマにもう……無断外泊とか、八神家では極刑なんやで?」
「とんでもない治外法権っぷりを見た。いやあの、ホントすいませんでした。なにしてたか正直に言うんで、どうか堪忍してつかぁさい」
「……内容によりけりやな。言うてみ」
「ハイ、ヨロコンデー! いや実はね。はやての足を治せるかもしれない算段をつけてきたんだわ」
不意に、がたりと色んなところから動揺の音が上がった。
まあそりゃそうだよね。
あえて言葉にはしなかったけど、みんな気にしてたことだし。
とりあえず後頭部からの重みも消えたので、そっと顔を上げる。
目の前には期待と不安で、よくわからない表情になっているはやて。
その後ろに買い物袋からお菓子を取り出そうとして固まっているヴィータ。
真横にお座りするザフィーラと、なぜかレヴァンティンを大上段で構えているシグナムもいた。
ん? なにやってんの?
「や、ヤクモさん! 今の話は本当なんですか?」
「おう、ホントだよシャマルさ――うわっ、なんだそのどろどろの鍋!!」
鍋の中身じゃなくて、鍋がどろどろってどういう状態だよそれ!
へ? フルーチェ?
嘘だろ。ってか、なんでフルーチェを加熱したのか教えてくれませんかね。
「まあ、もろもろ思うところがあるのはわかる。あくまで可能性だから、期待されても困るんだけど。俺が戻ってきたのは一定の目処が立ったし、準備をしようと思ったからだ。はやての足も、あんまり放っとくとよくないみたいだしな」
「……歩けるようになるん? 私が?」
「歩く? まさか、とんでもない」
ぐっと周りの空気が重くなる。
心持ち、シグナムのレヴァンティンが降りてきたるのは気のせいだろうか。
あれ? おかしいな。ここは喜ぶところじゃね?
……あ。
「すまん、言い方が悪かった。治れば、流れる汗もそのままに走れたりするよ」
「誰が爆走スランプや!!」
瞬間、かっと目を見開いたはやてが車椅子を全力で前進させた。
足元の方で、とても鈍い音が鳴ったような希ガス……
たとえ今は小さく、弱い痛みだとしても。
言葉もない俺の声、ひどく熱くなった俺の脛。
ごろんごろんのた打ち回る俺に、紛らわしいこと言ったらあかんとはやてさんが説教をくれました、まる。
最近、微妙にリズムがなあ