はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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凄い勢いで独自解釈が入っております。
ご了承ください


28言うはヤクモ行うはウーノ

 さて。頼まれていた解析作業だが、多脚式の機動兵器というのがかなり厄介だ。

 半分以上ブラックボックス化してるどころか、システムと構造の両面で異様に固いプロテクトがかけてある。

 中身を開けてみないと、ホントにブラックボックス程度で済むかもわからないのに。

 これで、本格的なオーパーツとか出てきたらどうしよう。

 

「ぐぎぎ……こいつ、CTも受け付けないのかよ。超音波の構造解析はどうよ」

「進展はありませんね。以前からドクターと話していたことではありますが、やはり切断してみるのが早いかと」

 

 ウーノに言われて、思わず吐息が漏れる。

 わかっちゃいたけど、既に一通り試したあとだよね。

 お手軽じゃない方法を取るから、人手が足りないんだろうし。

 

「どこまで切れば、内部を傷つけないかによるなあ。せめて、装甲の厚さとかわかればいいんだけど」

 

 関節を外して無理やり引っぺがすのもありだが、装甲そのものも特殊なステルス仕様らしい。

 貴重なサンプルだ。出来れば、完全な状態で解体したいな。

 構造解析を邪魔してるのも、おそらくこの装甲だろう。それだけの完成物を、わざわざ壊すだなんてご冗談。

 

「それにしても、ホントわけわかんないなこれ。見た目はただの鉄板のくせして、目視困難レベルで透過しやがる。構造解析を阻害してる辺り、ただの透過ってわけでもなさそうだが」

 

 そこらのステルスが裸足で逃げ出すわ。

 ハイド系魔法でも似たようなことは可能にしろ、人と機械じゃ意味が一気に変わってくる。

 こんなのが量産された暁には、管理局の転覆くらい余裕じゃないかな。

 

「AMFに干渉されていない辺り、私たちのインヒューレントスキルに近いのかもしれません」

「んー、どうかな。確かに、最初から特殊な素材を使ってる可能性も否定はできないけど。量産されてたことを考慮するなら、機構として組み込まれてたはず。そう考えたら、やっぱり後から処理したって可能性の方が高いんじゃないか?」

 

 まあ、その処理方法はさっぱりなんですけどね。

 やっぱ、ばっさり切るか。ついでに、剥がした装甲の成分解析とかもしときたいし。

 

「……あれ、今AMFって言ったよな。まさか、アンチ・マギリンク・フィールドのこと言ってたりする? あ、もうこれフラグだよの略じゃなくて?」

「あなたは、まだふざけ足りないようですね」

 

 偶然か意図的か判断しづらいが、凄い上手いこと返されてしまった。

 そして、心なしかウーノさんの視線が冷たいような。

 あ、でもこれはこれでなんか……いややめとこう。

 とりあえず、空間モニターに資料を開き直して目を通す。

 機械的構造とシステムで発動するAMF。あれって確かAAAランクの高位魔法だったと思うんだけど、そんなことできんのかよ。

 小型の魔力炉を積んで、術式をあらかじめ転写しとけば……

 いやいや、発動はするかもしれないけど誰が制御すんだ。全部にインテリジェントデバイス並のAIでも積むつもりか?

 

「途方もないな。システム面からアプローチかけて、とりあえず仮組やるか。このトンデモ装甲よりはわかりやすそうだ」

 

 はい。ってことで、装甲はばっさりやりまーす。

 ぶっちゃけ、わからないこと多杉ワロタって気分なんで全体の構造解析は後回しだ。

 装甲の成分解析と、ついでに内部の調査を先にやろう。

 OSの吸い出しとか出来るかな。

 まあ、何台か解体してればその内なんとかなるだろ。

 そんじゃあまあ、ここは様式美というやつで。

 

「はい、ウーノもご一緒に。いってみよう!」

「……は?」

 

 そこは、やってみよう! って返して欲しかったけど、はやて以外にこれを求めるのは酷か。

 うん、だからそのゴミを見るような目を止めてもらっていいですかね!

 

 

 もうやだ、お家にかえりゅ……

 危うくそんなことを口走りそうになる今日この頃。

 八神家のみなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 今回も無断で外出して、早1ヶ月になりますね。

 ぶっちゃけ、今から帰ったときが非常に恐いです。

 なんにしても、これで前回の記録も更新となりました。やったぜ。

 

「うふふふふ、この恥ずかしがり屋さんめ。そろそろ観念して、俺の言うことを聞いてもらおうか」

「い、いけませんヤクモ様。ドクターに呼ばれていますから、早く行かないと」

 

 顔を逸らし、抗議してくるウーノなんてなんのその。

 あんなやつ待たせとけばいいんだよ。そんなことより、俺の欲を満たす方が先ジャマイカ。

 手を滑らせるように動かし、輪郭をはっきりさせるように撫でる。

 すべすべの手触りと、ひんやりした温度が心地いい。

 顔を上げれば、不満のこもったウーノの表情がうかがえた。

 

「じゃあ、続けるぞ?」

「…………っ」

 

 手を下へ。

 慎重に動かしながら、内側へと潜り込ませる。

 指に絡みつくモノを押し退けて、奥へ奥へと進んでいく。

 目指す場所は一番深いところ。そこにある大事なところに触れたくて。

 

「あばばばばばばば」

「通電を停止します。やはり起動状態のコアを確認するなら、取り出した方がいいのでは?」

 

 ごもっともだね。

 もうそろそろ、この感電マラソンも疲れてきましたわ。

 

「ともかく、ドクターが呼んでいますので来てください」

「今いいとこなのに」

「電気ショックを浴び続けて、脳活動に異常がでていませんか?」

 

 失礼な、俺の頭は今日も絶好調だぞ。

 そんなことを言っていたら、ウーノが強固手段に訴えかけてきた。

 首根っこを掴まれて、荷物よろしく引きずられていく。

 体に機械を埋め込んで強化してあるらしいが、少女が成人男性を引きずるって凄くね?

 これすっごいゴリラだよ! ゴリラにしようぜ! かなりゴリラだよコレ!

 

「今、なにかとんでもない中傷を受けたように思うのですが」

「気のせいだよきっと。ほら、まな板ではないし?」

 

 まな板? と不思議そうな表情をされたが、詳細は知らないほうがいいと思うんだ。

 俺の命とか危険が危ないし。

 

「それにしても、不思議な装甲だな。成分は特に変なところもなかったし、やっぱ構造なんだろうけど。金属の精製段階で、光を透過するように処理する方法なんてさっぱりわからん」

 

 要は、携帯の覗き見防止シート逆転バージョンみたいなものだ。

 電子制御で分子を綺麗に整列させてやれば、それで光が通るかもしれないが。

 ただ、そんなこと金属みたいな高密度の物質で可能かは怪しい。なにより、無闇に分子を弄って素材の性質まで変化しては意味がない。

 仮に脆い装甲に変化したとしたら、それはもう兵器として使えない代物だ。

 雑に言うなら、光の透過はできたけどダイヤモンドが炭になったとかね。

 

「AMFの方は、ただのブラックボックスだったしなあ。構造を真似すれば、すぐに量産はできると思うけど。あの装甲は諦めたほうがいいかもね」

「そういう話はドクターとしてください。私に言われてもなんと答えていいか」

 

 声に出して確認くらいさせてよ、あんまり頭よくないんだから。

 しかもこれ、1人でやってるとブツブツうるさいって言われるんだぜ?

 ははっ、超理不尽!

 

「ところで、これいつまでこの感じなんですかね?」

「もう、面倒なのでこのまま行こうかと思います」

 

 ああ、なるほど?

 せめて、もうちょっと丁寧に扱ってくれませんか。

 このままだと、人としての尊厳的ななにかがアボンしそうなんですけど。

 なんなら、お姫様抱っこでも可。

 

「ご要望とあれば、そうしますが」

「すいません冗談なんでやめてくだちい」

 

 いい加減、ウーノの中で俺の株が大暴落してるよねこれ。

 大丈夫かな? 大丈夫だよね?

 気にすんなよ! くよくよすんなよ! 大丈夫、どうにかなるって! ドントウォーリー! ビーハッピー! なんて迷言もあるくらいだし大丈夫かな、たぶん。

 うん、とりあえずお米食べろ!

 

「それで、俺はなんの用で呼ばれてるの?」

「私たちの固有兵装に関して、意見の交換がしたいそうです。あとは、解析の進捗具合などではないでしょうか」

 

 まあ、そんなところか。

 解析対象を一機バラしてるわけだし、ここらでちょっとくらい進歩とか欲しいよね。

 とりあえず、俺は資料の準備とかしとけばいいのかな?

 もうこのまま連れてってくれるらしいので、今からちゃちゃっと作ってしまおう。

 わかったことは多くないが、まったくないわけでもない。

 ただ、これをスカリエッティに見せる上で、不安もあるにはある。

 例えばラボに着くまで、襟の耐久度がもつかとかそういうの。

 大丈夫、だよね?

 




ここに来て、お気に入り数が一気に100くらい増えたと思ったらランキング先輩のおかげなんですね。
ホント、この人の影響力パナイの……

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