いやでも、もうこれ月曜更新だからって言いきると今度は火曜更新になるんだろうなあ。
だから、来週も出来るだけ日曜更新でがす。
モニターに目をやりながら、流れる文字の羅列を眺める。
内容はウーノの先天固有技能の稼働データ。
インなんとかさんっていう、略してISとかって能力らしい。
人口レアスキルがどうとか昔言ってた気もするが、忘れましたどうでもいいです。
「フローレス・セクレタリーの稼働率は悪くないか。でも、やっぱり兵装との同調率が悪いね」
「やはり、私のISに装備を乗せるのは難しそうですか」
別に無理じゃないけど。ただ、乗せても乗せなくても性能に差が出ないんだよなあ。
これなら、いっそ無くてもいいという話になってしまうんだから仕方ない。もう、必要ないならないで使わない方が建設的じゃない?
そもそも、フローレンス・セクレタリーは知能加速及び情報処理能力の向上させる技能なんだし。戦闘に出るような能力でもないじゃん。
高機能ステルスの能力も完備してるらしいから、こそこそ隠れて嫌がらせスタイルの確立した方がよくね?
「それは、ヤクモ様の行動を真似ろということでしょうか」
「おう、その本気で嫌そうな顔やめろ。俺のガラスハートが粉砕するぞ」
ちなみに、フローレンス・セクレタリーのモデルは俺のレアスキル。
とは言っても、こっちはただ思考の演算処理を上げるだけ。スペック的には圧倒的に格下なんで、大っぴらなことは言えないんですけどねぇ、白目。
こっちは頭が賢くなるわけでもなければ、情報の並列処理量が爆発的に増えるわけでもない。ホント、声を大にできない微妙なレアスキルだこと……
な、泣いてなんかないやい!
「同じ系統のスキル持ちとしてアドバイスするならだけど。兵装は超長距離で火力重視、変に意識が介入するとややこしくなるからストレージ型がオヌヌメってことろかな」
「一理あります。しかし、私はそもそも戦闘を主眼として生み出されたわけではありませんので」
そうなんだよなあ。
前の最終調整で用意したのは、ネットワークと直結するヘッドギア型の兵装だったのだが。しかし、まあこれがあってもなくても大して変わらないと。
むしろ、本格起動するとネットワークに意識がダイブするため、本体の方がガラガラになってしまう。
欠陥品もいいところですね本当にありがとうございます。
それでもあえて使用し続けてもらっていたのは、稼働データのサンプルを作るため。今後もいくつか固有兵装を作るとのことだったので、それに先立つ試運転をしてもらっていた形だ。
「産まれてくる妹たちのためにサンプルが取れたなら、それで十分ですが」
「まあ、ナノマシンで脳波とネットワークを繋ぐとかも考えたけど、お前ら半分くらい機械だからなあ。変なとこでエラーが出る可能性も否定できないし、今のままでも管制役としては充分だろ。あとは、個人的に戦略なり身につけるしかないと思う」
投げやりですねと聞かれたから、だって俺のことじゃないもんと答えておく。
俺のドヤ顔ダブルピースがお気に召したのか、ウーノさんが大変白い目でこちらを見てくる。
やだ、なにか目覚めちゃいそう。
「よし、稼働データは回収できた。もういいよウーノ」
「首尾はいかがですか?」
「上々だ。お前が特殊例なだけで、俺の作った兵装はとっても優秀ってことが証明された」
「今のお言葉、自分にも跳ね返ってくるということを忘れないでくださいね?」
ど、同系統でもスペック差は歴然としてるから大丈夫だよ…………たぶん……
そもそも、俺のデバイスは自作だけどちゃんと稼働して……ないな。どうしよう。
「そういえば、形状が変わったような気がしますね。前はもっと大きかったような?」
「デチューンですしおすし」
「おす? まあ、いいのですが。原始的な質量兵器の構造も見て取れます。その辺りはどういう」
「公開処刑とかやめてもらおうか!」
逆ギレ? 上等だよコノヤロー!
文句があるなら言ってみろ。聞かないけどな。
アァン? ナンダコラヤンノカ!? セーゾコラヌッコロスゾ!!
「セーノコラヨッコラショ?」
「なにそのミラクルな聞き間違い方」
こいつ、真面目な顔してボケ担当だったか。
はやてに合わせたら楽しいことになりそうだな。
立ち上がるのは自由ですが、仕事をお願いしますと言い置いてウーノは部屋から出て行く。
とりあえず、お達しどおりやることをやろう。管理局のサーバーに闇の書の記録があるらし、とりあえずそこから手をつけようかな。
ここの端末なら前ほど面倒なこともない。ぱぱっと目的の情報を引っ張り出してしまおう。
「さーて、超働いちゃうよぉ!」
この無駄なハイテンションに反応はない。
静まり返った部屋の中で、機械音だけが微かに聞こえるだけだ。
最近、無駄に賑やかだったからなあ。
い、いや別に寂しくなんてないんだからね!
‡
管理局のサーバーへ侵入するのも何度目だろう。
今回に限らず、結構な割合でお世話になっている気がする。
まあ、それもこれも無限書庫なんて便利な施設を持ってるからだけど。
無断使用、待ったなし!
「惜しむらくは、資料の整理がされてないところだよなあ」
噂によると、文字通り無限の空間を持つ資料室らしい。
あまりにも広大すぎて、どこになにがあるのかもさっぱりなんだとか。
必要な情報を探すときは捜索隊を組み、見付かるかどうかは運任せ。
見付かればラッキー。そうじゃなくても、元から大して期待してない。
そういうイメージの場所らしい。
果たして、それは機能していと言えるのかが謎だ。
誰か、汚部屋の掃除とかしてくれないかなあ。
「相変わらずのザルファイアーウォール、進入し放題だけどいいのかこれ」
そろそろシステムの保守性とか見直さないと、管理局は酷い目にあうと思うんだ。
例えば仮面の反逆者が出たときに床を崩されたりとか、変態研究者に足元すくわれたりとか。
……前者はともかく、後者はやりそうだな。
あの機械群とか、どう考えてもそれの準備じゃないのか?
管理局に攻め込むメリットがあるのかは知らないけど、面白半分とかでやりそうだから困る。
下手にそっちまで足突っ込みたくねえと愚痴りつつ、なんなく壁を突破してお目当ての記録を呼び出していく。
とは言え、遠隔操作で現物を触れるわけでもない。
探す場所は、一度抽出されてバンクの中に保存されたデータだけだ。
数年前にも闇の書に関する事件があったようだし、そっちだけ探せば足りるだろう。
「足りなかったらどうしよ……」
え、侵入?
無限書庫に忍び込むの? マジで?
それやるなら、とんでもない準備期間とか必要になるんですけども……
「情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ。そしてなにより金が足りない……悲しいけど、これって現実なのよね」
いつもならここら誰かのレスポンスがあるってのに、ホント1人って寂しくて泣きそう。
まあ、言ってても始まらないので作業へ集中する。
いったいどれが必要な情報か、正直なところよくわからない。
とりあえず、検索ワード『闇の書』に引っかかるものは全てコピペしておくのが無難か。
流石に、管理局のサーバー上で取捨選択していれば発覚のリスクもある。
今回は回線も太いので、遠慮なくやらせてもらうとしよう。
「……ん?」
回収したデータの中で、一番最近のを開いてみる。
どうやら映像ファイルらしく、作成日は11年ほど前。内容は、闇の書が輸送中に暴走したというもので。
どうやら、当時の状況が映像記録として残っているらしい。
クライド・ハラオウンなる人物の行動により、被害は最小に抑えられたようだ。代わりに、彼は侵食された輸送船と運命を共にしたようだが。
「ハラオウン? どっかで聞いたような……」
管理局の関係者だと思うんだけど…………ああっ!
アースラの乗員リストで、艦長と同行の執務官がそんなファミリーネームだったような。
あの微妙に世紀末な肩をした少年と、食えない女艦長さんは血縁のようだが。
はて、いったいどんな関係だろう。
「でも、問題はそこじゃないんだよなあ」
更に詳しく検索結果を絞って、最新の報告結果を探してみる。
もちろん、管理局サーバーの中に置き忘れがないかも含めてだ。
「細かい情報の更新はともかく、ないとおかしいデータが見当たらねえなあ。つまり……」
どういうことだってばよ。
ないとおかしいデータというのは、当然のことながらはやてに関するものだ。
いっそ、見付けたら消去してやろうかとも考えていたんだが。
「家の近くにあったスフィア。あれの調査報告がないのはなんでだ?」
もちろん、闇の書が起動してからは俺とはやての2人暮らし風に映像処理はしている。
だが、監視スフィアは俺が来る前からあったようだし。なにより、闇の書の本体は一目でわかっちゃうような場所に堂々と置いてあったのだ。
未起動状態だから手が出せないだけで、管理局はこのことに気付いていると思っていた。
というか、そうだったとしたらあのスフィア誰のだよ。
「なーんか、キナ臭いんだよなあ」
いっそ今からでも回収して、発信元の解析でもしてやろうか。
地球に戻って、またここに来るのも手間だが仕方ない。
守護騎士たちに頼んで、せっかく隠蔽していた存在が露見するよりはマシだ。
だが、あのタイミングではやてを襲わずに見張っていただけだったし。発信源は間違いなく管理局だろう。
変に人道主義なところがそれっぽい。
暴走するとわかってても、発動前なら強硬手段には出ませんとかそういうの。
「あのスフィアが、個人的に幼女の私生活を覗こうって目的じゃなければ。あるいは……」
誰かが個人的に所有して、隠している可能性もある。
あっ、これはどっちにしても1回は管理局に忍び込む流れですわ、察し。
どうすっかなあ。
「とりあえず、どうでもいい情報しかでなかった。凄く嫌だけど、聖王教会の方にも顔出さないとダメかな。今度こそ、頭から真っ二つにされそうなんですがそれは」
あそこの暴力シスターマジ怖い。
ついでに腹黒騎士もオメガ怖い。
用があるのはヴェロッサって言う、昔スラムで知り合ったやつだけなんだけど。
やだなぁ~、怖いなぁ~。
軽く吐息しながら、集めたデータを適当にまとめてスカリエッティの端末に放り込んでおく。
殆どどうでもいい情報しかなかったが、11年前の映像みたいに掘り出し物的な収穫はあった。
放っておけば、その内なにかしらヒントを見つけてくるはず。今度はどれそれを探せ、とかRPG的な指示が来るのを待つだけだ。
「じゃあ、休憩挟んでから解析ってことでー」
「お茶をお持ちしました」
くぁwせdrftgyふじこlp!?
お前、今どっから出てきた!
「普通に入口から入って来ましたが。飲み物をお持ちしたら、ちょうど休憩という言葉が聞こえましたので」
当然のことでしょ? と言わんばかりの表情で、ウーノがトレイ片手に首を傾げている。
なんだこれ。ステルス機能ってここまで有効だったのか。
「どうぞ。お茶とお菓子を用意いたしました」
「おう、ありがとう」
横の簡易テーブルに『2人分』のお茶を置いて、ウーノが何気なく対面の席に座る。
ん? なんのようでがしょ?
「解析作業を、私もお手伝いするようにと言われてきました。固有能力の稼働テストにもちょうどいいだろうと」
「ああ、なるほど。まあ助かるからいいんだけど、このお茶は?」
「先ほど、お茶しないと言ったのはヤクモ様ですが」
うわぁお、そんなの真に受けてたのか!
まあ、今さら冗談とか言ったら回し蹴りくらいやられそうだ。
ここは大人しく席につこう。
「じゃあ、久しぶりの再会にかんぱーい!」
「お酒が欲しいのなら余所へ行ってください」
なんだよもう! 冷たいのか優しいのかどっちだ!
あれか、これが噂のツンデレ?
デレはどこいったんですかね……