はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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もろもろの事情から土・日はいなかったのあれなんですが。
本日の更新時間がズレたのは完全にミスです。
やっちまったぜ。

来週は通常通り日曜に更新予定


26痛い腹を探り合う

 先導するウーノに続いて、武骨な鉄板に覆われた通路を進む。

 さっきまでの、半分ぐらい自然洞窟だった隠れ家とはずいぶん雰囲気が違う。

 近代的という言葉もあまりしっくりこないが、なかなか巨大な人工物の中にいるようだ。

 なんせ、直接室内に転送されたんでね。

 ここどこだよ。

 

「それにしても、ウーノはでかくなったな?」

「確かに身長は伸びましたが、なぜ疑問形なのでしょうか」

 

 いや、クローン体の成長速度とか知らないんで俺。

 最後に会ったのは5年くらい前か。あのあと、ほぼ間を置かずにプレシアの仕事が舞い込んだからよく覚えている。

 というか、あの頃はまだ試験管の中にいたからなあ。

 適当に寄りかかったら、幼女が入っててガチビビりしたのはいい思い出。

 っていうか、あれ?

 どこからどうみても、今のウーノは高校生くらいなんですが。

 やっぱり、普通の判断基準で成長速度わかんないじゃないですかやだー。

 

「まあ、俺らがちゃんと喋ったのって最後の方にちょこっとだけだったよな。よく覚えてたね」

「それだけ印象が強烈だったということです」

 

 ははは、こやつめ。

 こんなに善良な一般傭兵を捕まえて強烈とか。

 そこら辺にいくらでもいる量産型ですけどなにか?

 

「そういえば、今はなんとお呼びすればよろしいでしょうか。前と同じではないのですよね?」

「ヤクモ・ナナミでよろしく」

 

 わかりました、と短く答えてウーノの歩みが止まった。

 通路の端によってこちらを振り返り、浅く頭を下げながら背後の扉へ進むよう言ってくる。

 彼女の道案内はここまでらしい。

 最後まで付いてこないのは、別にやるべきことがあるからだろう。なにかは知らないが、さっき首都防衛隊の対応がどうとか言っていたから、あるいはそれだろうか。

 まあ、別になんでもいいけど。

 適当に礼を言って、扉の奥へと進んでいく。

 かなり広い空間だ。

 大型のモニターに機材の数々。地下までぶち抜きのハンガーまであり、そこにはよくわからない機械が何台も押し込まれている。

 なんだあれ。

 

「あれはまだ試作機でね。解析作業が上手くいっていないんだ」

 

 大型モニターの方から声が来た。

 愉快気で粘着質な声色は怪しさ満載だが、慣れてみればどうということはない。

 むしろ純粋な知的好奇心に突き動かされる彼は、そこらの権力者より信用できる。

 裏切られるときは単純明快。最初から実験素材として見られていたか、利用価値がなくなるかのどちらかだろう。

 

「また変なもん拾って来やがって。相変わらず、碌なこと考えてないだろお前」

「酷い言われようだね」

 

 ジェイル・スカリエッティ。

 稀代の変人科学者が大仰に肩を竦めて見せる。

 まあ、信用できるって言っても芥子粒ぐらいの差だ。

 下手に気を許すと大変なことになるので、取扱いには注意しないといけない。

 とりあえず、はいはいと言いながら雑に手を振っておく。

 挨拶代わり冗談はここまでという暗黙の合図である。

 お互いに無駄話が好きすぎるので、仕事に支障が出ないように取り決めたものだ。

 

「まあ、積もる話は後でいいだろ。先に仕事を片付けよう」

「なるほど、では私から。大まかに解析作業とシステム構築を頼みたい。今は人手が足りなくてね」

 

 詳細として飛んできたデータを、空間モニターへ出して流す。

 多脚式の機械が解析対象。見たことのない無人機だが、どこかの新兵器だろうか。

 あとのシステムの構築は、個人兵装の適合補正。それに砲台らしき施設も載っている。

 どちらも質量兵器らしいが、なんぞこれ。

 

「えらくでかいな」

「管理局からの依頼でね。地上の防衛に使うそうだよ」

 

 それはまた。

 質量兵器禁止の集団が、ずいぶん思い切ったことをしてるね。

 反対意見は……まあ、出たんだろうな。

 じゃなきゃ、こいつに制作を任せるわけもない。

 

「個人兵装の方は、私の娘たちにだ。もうすぐ調整も終わるから、親としては贈り物の1つも必要だろう?」

「お前が親ね。まあ、その辺はウーノのときと同じか。了解した、優先度とかあるか?」

「砲台は後回しでかまわない。解析を優先させて欲しいが、兵装も娘たちの調整に合わせてほしいね」

 

 まあ、せっかく出てきてもやることありませんじゃ手持ち無沙汰か。

 解析ちょろちょろ兵装ぱっぱ、意見を言いつつ調整して、管理局泣いても砲台取るなって感じで行こう。

 基礎設計図は完成してるようだし、管理局のために働くのも嫌だしな。

 

「資料に目を通したら作業を始めよう。で、今度はこっちの要件だけど。今から送るデータを見てくれ、こいつをどう思う?」

「……とれも、興味深いね」

 

 セーフ。ギリギリだけどセーフ。

 作業服じゃないし、ベンチもないから大丈夫。たぶんきっとおそらく……

 

「これは、誰のバイタルデータなんだい?」

「現闇の書保有者のデータだ。下半身に身体的障害とは別の理由で麻痺が広がっている。理由の解析と治療方法を探して欲しい」

 

 ふむ、と唸りつつスカリエッティは画面から視線を外さない。

 あそこにあるのはただのデータだけど、なぜか犯罪の匂いがする。

 変態科学者が幼女の身体的データを凝視。

 字面だけ見るとダメなやつだなこれ。

 

「出来れば、本人を連れて来てくれる方がわかりやすいんだがね」

「それはダメ。あと、そのデータから個人を特定しようとも思わないこと。この条件が飲めない場合は、俺が自動的にお前と敵対することになる」

 

 つまり、イエスロリータノータッチだ。

 わかるな?

 

「まあ問題ないだろう。闇の書のデータがもう少し欲しいところだが」

「確か、何年か前に暴走した闇の書が管理局の次元艦食ったんだろ? あのときのデータが管理局にあるはずだ。あとでクラックしてくるから、それを参考にすればいい」

 

 回線借りるぞ? と付け加えて、可能な範囲で解析した闇の書のデータも送っておく。

 端末がデバイスだったため、表層部分の情報しかないが。それにしたってずいぶんな情報量だ。

 解析の役には立つだろう。

 

「闇の書の保有者に対しては不可侵を約束しよう。だが、闇の書を解析するにあたって手に入れたデータは私の自由にさせてもらうよ?」

「それくらいは好きにしてくれ。保有者とその周辺にお前が手を出さなければ、俺はなにも言わない。管理局に嗅ぎつけられても、俺を含めて他言は無用で頼む」

 

 わかったとスカリエッティは頷くも、こんなの所詮は口約束だ。

 冗談半分くらいに信じておくしかないだろう。

 最終的には、こちらではやての安全を確保していくしかない。

 ホント、こいつは興味を持った対象なら無遠慮に突っ込んでくるド変態だから困る。

 これだから頼りたくなかったんだよなあ。

 

「君の作業部屋を用意しておいた。ウーノに案内させよう」

「わかった。とりあえず、ウーノの兵装から稼働データを取りたいんだけど」

「自由にしてくれ。機材も揃えてある」

 

 さっき入って来たドアが開く。

 そこに佇んでいるのはウーノだ。もしかして、あそこでずっと突っ立ってたんだろうか。

 ばっかもーん、廊下にたっとれー! 的な?

 

「君のレアスキルは、私にとって非常に有用だ。上手くやってくれたまえ」

「はいはい、報酬分はしっかり働きますよ」

 

 振り返りざまに、もう一度機械群に視線を向ける。

 ハンガーに収められてるってことは、おそらく稼働兵器だと思う。

 つまり、さっきの多脚機が試作機? でも、やることは解析なんだよね。

 あのままでもハンガーの機械群は稼働しそうなんだけど。もしくは、解析してまで組み込みたい機能があるのだろうか。

 うーん、そこら辺を探ればはやての防波堤にできる情報が出るかもしれない。

 叩けば埃がぽろぽろでるような人間だし。いや、俺も人のこと言えないけど。

 

「じゃあウーノ。とりあえず脱いでみよっか?」

 

 無言のパンチが顔面を襲う。

 あざっす!!

 

「確か目が覚めたときの第一声は、いい尻してるねでしたか。欠片の進歩も見られないようですが」

「ウーノは羞恥心と右ストレートがいい感じで育ったね」

 

 羞恥心ではなく条件反射ですと短く返して、ウーノはさっさと歩いて行ってしまう。

 背後でにやにやしている馬鹿も気になるところではあるが、ここは選択肢を間違えるとフラグが折れる場面だ。

 冷静に選択肢を見極めよう。

 

「へーい彼女、ちょっとお茶しない?」

「仕事をするべきかと思います」

 

 アッハイ。

 




昔書いた普通の小説を探していたら、なぜか二次創作のファイルがサルベージされてしまった。
内容が痛々しすぎて泣きたい……

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