はやてに勁草を知る   作:焼きポテト

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え、ちゃんと日曜更新ですよ?(やつれ気味


24課題を見て犬を見ず

 今日も今日とて平日の昼下がり。

 適当にパスタでお昼を済ませ、週に数日あるお約束のお時間がやってきた。

 いや、ゲームじゃなくて。それもそうだけど。

 

「はい、じゃあここに60円のリンゴと80円のリンゴがあります。お買い物に来たヴィータは、手元に5万7千とんで30円持ってるとします。買えるだけ買ったとき、60円が最大個数になるようにした場合と80円が最大個数になるようにした場合でそれぞれの量を答えなさい」

「無駄に手持ちのケタがでけぇよ!」

 

 それでも律儀に答えを出そうとする辺り、ヴィータは素直で扱いやすい。

 これがはやてだと。

 

「まず60円のリンゴの中から質のええもんを選ぶとっからやな」

「おいそこの主婦、そういう問題じゃないから」

 

 なんで安い方からいいもの選んだら勝ちみたいなルール作ってんの?

 自宅学習の時間くらいボケなくていいから。真面目にいこうよ、真面目に。

 

「皮を剥くのが大変そうだな」

「ちょっとそこの腹ペコ騎士は黙ってろ! 冷蔵庫にプリンあるから、それ食いながら大人しくしててくれませんかね!!」

 

 む、プリンだと? といいながらシグナムが台所へ消えていく。

 騎士の本懐はどこ行った。もうちょっとプライドっていうかさ。ほら、ねぇ?

 

「プリン……リンゴでプリン?」

「もうお前は料理からいったん離れろ。ってかお願いだからお勉強くらい普通にやらせて! 真面目に計算してるのヴィータだけじゃねぇか、どうなってんだこれ!!」

 

 ホントに勉強しなきゃダメなやつが遊ぶんじゃありません!

 

「いや、根本的に問題のチョイスが間違っていると思うが?」

「それは言わない約束だろ?」

 

 お前が真面目にやらんかと、ザフィーラの犬パンチを貰った。いい右を持ってやがる。

 まあ、そんな冗談は置いといて内容を変更。ヴィータにはひらがなの書き取りドリルを渡しておいて、はやての方は学校で出ている課題から引っ張ってくる。

 歴史について喋りはじめると、どこからともなくシグナムが顔を出すので今日はやめよう。

 特に日本史の幕末と、世界史でゲルマン大移動とかやると確実に……いや、やらないって言ってんだろ。大人しくプリン食っててくれるかな? ハウス!

 

「じゃあ、今日ははやても国語の勉強にしよう。ごんぎつねと100万回死んだねことどっちがいい?」

「私を泣かしてどうしたいんや!」

 

 あれ? 読み甲斐のある内容を選んだだけだったんだけどな。

 それならエルマーの竜とかでどうだ。これならわりと読みやすいだろ。

 

「ああ、それやったら普通に読んだことあるで?」

「ですよねー。仮にも文学少女だってこと忘れてた。じゃあもうこれにしよう。これまで読んだことのある作品のあらすじを完結まで800文字で書きなさいってやつ」

 

 そこ、雑とか言わない。こまけぇこたぁいいんだよ!

 と、こんな感じでお勉強の時間へと突入していく。

 最初ははやてが自宅学習をする時間で、俺がそれを手伝う立ち位置だったが。

 しかし、守護騎士たちやってきてからは手持ち無沙汰なのか周りをうろうろしはじめ。

 ええい鬱陶しい。そんなに気になるならお前らも勉強しろ! と俺がちゃぶ台をひっくり返し。

 そうして始まった八神家お勉強タイムである。

 いや、八神家にちゃぶ台ないんだけどさ。

 

「それにしても、ヤクモさんが思いのほか勉強できる件について」

「まあ、次元世界によって通貨の単位とか違うし。文化とか言語は勉強しとかないと困ることもあるからなあ。習慣?」

 

 驚きと困惑の目が俺に集まった。

 なんだお前ら、喧嘩売ってんのか?

 

「でも、教えるんは相変わらず回りくどいと」

「ぐっ……や、やかましい」

 

 性格なんだよ慣れてください。

 

「つぅか、テメェもなんか読んでるよな。なんだよそれ」

「え? 簡単にできる家庭菜園」

「フラテッロは誰や」

 

 いや、社会福祉公社とかに勤めるつもりはないから。

 ってか、それ本編開始前に死ぬキャラじゃねえか。

 眼鏡のプレゼントだけはしないように気をつけないと。

 

「傭兵なんてやってるとな。どこで手に入れた知識が役に立つかわかんないもんなの」

「おー、なんか本物みたいなこと言うとるな」

「いや本物ですけどなにか?」

 

 再び驚きと困惑の目が俺に集まる。

 さっきからなんだこれ。そういうレクリエーションか?

 

「なんにしても、頭で負けてる気がすんのは気に入らねぇ」

「じゃあ、まずは鉛筆をグーで握るのから直していこうか?」

「箸も未だ満足に使えんしな。いっそ手に括りつけてみてはどうだ?」

「普段、皿に顔を突っ込んで食べるお前が言うのか」

 

 プリン食いながら揚げ足取るお前もどうだろうね。

 いや、じゃなくて勉強!

 あのさぁ……どうしてこう脱線ばっかりするかなあ。

 

「はいヤクモさん。とりあえずあらすじを完結まで書いたで」

「ここでボケないとか、お前はやてじゃないな?」

「私になにを求めんてんのや」

 

 まあ、今のは無茶ブリだった自覚あるんで勘弁してくだちい。

 そんな感じで、勉強になってんだかよくわからない時間を過ごす。はやてと一緒に勉強したがったり料理本凝視したり萌えよ剣熟読したり、みんなやることは割と自由だ。

 ザフィーラなんて洗濯してたりするしね。主夫の貫録とか出てる気がするんですがそれは。

 

「んー……気になるのは、無暗に変に難しい言葉で書こうとしなくていいってことくらいかな。内容はちゃんと纏まってるから、よく書けてると思うぞ」

「ほほう、ずいぶん上から目線やな。それやったらヤクモさんのお手本とやらを見せてもらおうやないか。四畳半神話体系を三行で!」

「いや褒めたよね俺!? 完全に三行でって言いたかっただけじゃねえか!!」

 

 しかも、あの内容を三行に纏めろって? どんな鬼畜仕様の難易度だよ!

 

「えぇっと……」

 

 これは、主人公が選んだサークルによって如何に違う大学生活を送ったかを描いた作品だ。

 並行世界として描かれる作中、必ず小津という悪友に関わって主人公は酷い目にあう。

 最後には主人公が並行世界を横断するなど、魅力溢れる作品である。

 

「うん、絶対伝わらないよねこれ!」

「微妙なところやな。読んだことある人やったら、それで通じると思うけど?」

 

 誰がマジレスしろって言ったよ。

 まったく無茶苦茶やらせやがって、これは責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

 

「また阿呆なこと言いだして。ヤクモさんもそれ言いたいだけやろ」

「どうせやるなら、ここまで言っとかないとね」

 

 じゃないと、お前らなにやってんの? って目で見てくる守護騎士たちの視線に晒されただけになってしまう。

 それはもう、俺の心が耐えられない気がするんだよね。

 

「四畳半神話……この国の宗教か?」

「違う違う! 違うからベルカの教会みたいなの想像するのストップ!」

「え、でも神話なんですよね? そういうことなんじゃ?」

 

 シグナムとシャマルさんが、そろって首を傾げている。

 変な知識を植え付ける前に、小説読ませた方がいいだろうか。

 あ、でもこれがその宗教のコーランとか言われてもめんどくせぇな。

 いや、言わないよね? 流石にそこまで突飛な思考回路してないよね?

 

「なにを騒いでいる。四畳半ならアニメの録画があるだろう。それを見せれば済む話だ」

「お前天才か!」

 

 急に現れたザフィーラがいいこと言ったので、さっそく録画DVDを引っ張り出してくる。

 言いだした本人は、なにやら洗濯カゴを抱えて庭に出て行ったが。あれ放っといていいのかな。

 もうあれ、完璧に家政婦さんだよね。守護獣の威厳どこいった?

 

「どうした、早く再生しろ」

「私、この国のアニメ好きですよ。凄く面白いので」

 

 こいつらもこいつらで騎士の誇りはどこいった。

 もう、完全にサブカルで毒される直前の一般人じゃねえか。

 いいのかなこれ。

 

「かまわん、やっておしまい」

「あらほらさっさー」

 

 はやてさん、混ぜるな危険って言葉知ってますかね?

 そんなことを思いながら、円盤をプレイヤーに入れて再生ボタンを押す。

 始まったアニメに、いつの間にか一番前を占領していたヴィータも含めて全員が視線を向ける中。あれ? そういえばなんでザフィーラはアニメのこと知って……なんて思ったけど口には出せない俺だった。

 




ザフィーラ先輩マジリスペクトっス!
うちのザフィーラ先輩、なんでか知らないけどマジパネェっス!!

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