いや、エイプリルフールは別枠でやったんで。
え、理由?
これが木曜に更新されてるところで察してください(遠い目
喫茶翠屋でシュークリームを食べる。
黙々と食べていく。
もう、食べて食べて食べ続けた。
「ぐぅ、胸やけが……」
「に、20個もシュークリーム食べたらそうなるに決まってるじゃないですか」
どうしていいのかわからない。そういう表情で、正面に座るなのはがおずおずと言ってくる。
いやまったくその通りだわ。間違いないね。
どれだけ美味しかろうが、流石に20個も30個も食べるもんじゃない。
「あっ、また食べた! もうやめといた方がいいんじゃ……」
「はははっ! ムシャムシャしてやった、後悔は……ごめん、ちょっとだけしてます……」
胃の中を糖分に占拠されている気がする。
余分三兄弟もついにシェア争いか。人の腹の中で始めないで欲しい。
「ところで、さっきから俺が食ってばかりだが。お腹はいっぱいか?」
「えっと、気分的にいっぱいいっぱいって感じです」
誰が上手いこと言えと。
それにしても、目の前には山盛りのシュークリームと高町なのは。
さて、どうしよう。
はやてがイクゾー! というからホイホイ着いてきたけど、ホントそれでよかったのか、コレガワカラナイ。
てっきり、東京に行きたいのかと思ってたのに。ベコか山か知らないけど、噂の秋葉で買いたいものでもあるのかと思ってたわ。
魔法を使えば一瞬だし、アッシーにされるのはいいんだけどなあ。
「どうしてこうなった」
「どうしてでしょうね……」
なのはと2人して、少し離れたテーブルへ目を向ける。
はやてとアリサとすずかが座っている席だ。
さっきからちらちらこっち見てるけど、バレないとでも?
「お前の両親までグルになってシュークリーム祭りは始まるし。もうこれわかんねえな」
「は、はぁ……」
うーん、この一方通行な感じどうしよう。
ネタの共有とか以前に、お互いの会話が手探り過ぎるんだよね。
そりゃ最近ちょっぴり口論っぽいこともしたけどさ、たぶんもっと根本的に問題があるような気がするんだ。
これは仕方ないね。
「ああ、そういえばフェイトの方はどうなった?」
「へ? ああ、その。まだアースラで帰還の途中らしいです。断層を迂回して進むそうなので、時間がかかるってビデオレターで」
「ビデオレター?」
「はいっ! 数日前にフェイトちゃんから届いたんです。通信はできないけど、これならって」
つまり、あの艦長さんは守銭奴を上手く使ってくれているらしい。
管理局なんて大口の顧客が増えて、あいつに大きな貸しができたじゃないかぐへへ。
これでちょっとは借金もチャラにしてくれたり……うん、たぶんしないな。
それはそれ、これはこれだろうし。別件で譲歩させるときのカードにしよ。
「まあ、元気そうでなにより。あっ、そこの仏頂面した店員さーん。コーヒー貰えます? ちょっと濃いめのブラックで」
「…………」
ちょうど近くを歩いていた恭也に声を掛けたらすっげぇ睨まれた。そこは「はい喜んでー」って言おうよ。
まあ、なのはと違って物理的に喧嘩したし、この反応は予想してたけどね。
にしても、こいつまでここにいるってことはやっぱりそうなんだろう。
今日、どうしてここへ連れてこられたのか。
「この、お見合いに来てみたら相手が中学校で仲の悪かったやつみたいな空気。間違いなく仲直りしろとか、そんな感じのあれなんだろうなあ」
「変に具体的すぎてちょっと意味が……でも、お兄ちゃんとは仲直りした方がいいと思います」
「出来るもんなら今ごろ……仲直り、してる?」
「そんなこと聞かれても」
してないかもしれない。
メリットというか、必要性というか。なんかそういう感じのが、微粒子レベルですら存在していないような。
実際、困らないような気がする。
せいぜい、翠屋へ来るごとにガンを飛ばされるくらいか。本格的にどうでもいいジャマイカ。
「まあ、この話は保留で。そのうちなるようになるんじゃないかな?」
「そんなに適当でいいんですか……」
「イインダヨ! グリーンダヨ!」
「他のお客様の迷惑になるから、あまり騒がないで貰おうか」
アッハイ。
乱暴にコーヒーを机に置いて、恭也君が全力で睨みを利かせてくる。
マジこえぇっす。
「仲良くやろうよお義兄さん」
「今すぐ引導を渡したくなってきたがどうすればいいと思う?」
笑えばいいんじゃないかな?
「軽い冗談はさておいて、士朗さんと桃子さんの好意が胃に重くてな。暇なら一緒に食っていかない? けっこう限界ギリギリなんだよね俺」
「生活習慣病になればいいと思うが」
「糖尿はちょっと……」
あれ割としんどいらしいし、なによりまだ若々しさとか残ってるんで!
お、おっさんちゃうわい!
そんなことをやっていたら、再びジロリと睨まれた。
もうやだこのお兄ちゃん、普通にマンドクセー。
「コネクティブはやて!」
「残念デカップリングや!!」
いやお前、アクセプトって言えよください。
でも、不意に叫んで反応してくれる優しさには感謝しよう。
例え「しもた!? つい、いつものノリで……」とか言ってても、今の俺は聞かなかったことにしてやる。
なんせ、この山盛りシュークリームを処理しないといけないからな! 答えたからには巻き込まれてもらうぞ!!
さあ食らい尽くせ! 俺もう無理だから!!
‡
まさか、お代を払おうとして拒否られるとは思ってなかった。
一応、半額だけ無理やり払ってきたが。
あれだけシュークリームを放出して、食いきれなかった分は持ち帰り用に包み。挙句の果てにお金はいいなんて。
かなり至れり尽くせりだが、あの人たちは商売するつもりあるんだろうか。
いや、嬉しいんだよ? 嬉しいんですけどね?
「謙虚な日本人としては思わず遠慮しちゃう場面ですわー」
「ヤクモさんが出生地を詐称しはじめた件について」
たまに、本気で地球出身な気がしてくるから不思議だわ。
過ごした時間は3カ月くらいなのに不思議な話だ。
「そういえば、もうじき夏休みやなー。みんなでどっか行きたいわ」
「毎日夏休みみたいなやつがなに言ってんだ。海は足が動かないと危ないし保留として、山とか? レンタカーで旅行って手もあるけど」
「なんやかんや言いながらも、行き先考えてくれるヤクモさんのツンデレ乙!」
「これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!」
予想以上にポニーテール好きやんな。ポニテ萌えだってこの前言ったじゃないですかやだー。
なんて言いながら八神家への帰り道をてくてく歩いていく。
いつの間にか日も長くなってきて、つい最近まで梅雨だったなんて嘘みたいだ。
まあ殆ど引き籠りだったから、雨? なにそれ美味しいの? 状態ってのが本音だけど。
「普通にピクニック行くんもアリやなぁ。運転手に一抹の不安は残っとるけど」
「ふふん、甘いなはやて。最近じゃ、戦車に乗り込んで戦場にも出てる俺を舐めてもらっては困る。ネトゲだけど!!」
「一抹どころか不安で埋め尽くされてもうた。どうしてくれんのや! これは控訴も辞さない!!」
「まあまあ、落ちつけよ。あれだな。ゆっくりできる釣りとかどうだ? クッキーダソクパートノイザヨイヤクザ的な意味で」
「おう、釣りキチおばさんやめーや」
ホント、はやてはどんなボール投げても拾ってくれるからびっくりするわ。
未だに守護騎士たちは半分も理解してないってのに。
「この場合、もうそこまでネタ仕入れてるヤクモさんがおかしいやろ」
「ほら、俺は極めて特殊な訓練を積んでるから」
「素人がなにを言うとるんや」
「素人? 違う、スペシャリストだ!」
ふもっふが好きだったよ。わかっとるやないか。
とか言ってるうちに、我が家の玄関へとたどり着いた。
ヴィータ辺りがシュークリームで狂喜乱舞しそうだな。虫歯になったら笑ってやろう。
「んー、旅行のことなんて言おう? 変に気ぃ使われて、行き先が絞られるんとか嫌なんやけど」
「それくらいの心配はさせてやれよ。愛されてるってことだろ?」
「忍びないなあ」
「かまわんよ」
言いだしたら、俺だって色々と気遣ってもらってるし。今日の仲直り会らしきものとかね。
必要だったかは微妙なところだけど。
「あ、やっべ。そう言えば仲直りっぽいことしてない気がしてきた」
「茨の道やな。あんまり時間経ってからやと、ごめんなさいし辛くなんで?」
「あっ、問答無用で悪いのは俺なんですね、察し」
「何があったかは知らんけど、こう言うときはだいたいヤクモさんのせいやろ。常識的に考えて」
ひでぇ。
俺のハートがブロークンなので、今日のディナーはカリーを所望します。
「カレーやからルー語とか、安直やなあ」
「この高等なギャグが理解できないとは。説明されて俺のライフはもうゼロです……」
ご希望通りカレー作ったるから、と半笑いで言われつつ俺は玄関のドアを引き開けた。
もう1話くらい日常書いて、また本編進めますのん