決して「うわっマジだデイリーランキングに入ってる!!」ってなってびびってるわけじゃない。
ということで、なんかデイリーランキングの20位から30位前後をうろうろしていたようです。
ありがとうございます(胃薬飲みながら
賽は投げられた!
神々とか、俺たちを侮辱した敵のいるところへ行くわけじゃないが。2つのダイスはテーブルの上をころころ転がっていく。
「おっ、どうだ99だぜ。なかなかでかい数字が出たじゃねぇか」
「こいつ、よりにもよってファンブルしやがった!?」
「あちゃー……どないしよ。とりあえず、この戦闘中は精神鑑定せな発狂したままってことにしよか」
そんな無慈悲な。
たかがSAN値チェック失敗して、1D6で最大値出した上にアイデアロールをクリティカルしただけじゃないですか!!
よく考えてみたら逆にすげえなこれ!?
「ちょい待ってな。えっと、一時的狂気の種類は……あっ」
「……そういう不穏な発言はやめてくれませんかね?」
サイコロを転がしたはやてが、気まずそうな顔でカードを差し出してくる。
ご丁寧なことに、ホラー文字で書かれていたのは『殺害癖』という単語だった。
え、なにこれ俺らに死ねと?
「やべぇ、どうしよう……しゃ、シャマルは精神鑑定できたよな? せめて一時的狂気だけでも解除しよう」
「え、あっはい。でも今はちょっと、シグナムの治療で手が離せそうになくて」
そうだった。ついさっき、神話生物に特攻かけた馬鹿がいたの忘れてたよ。
おっと、これひっそり詰んでるような。
「やばい。ゴールが見えてるのに、辿りつける気がしない!?」
これにははやても、ちょっぴり困り顔だ。
まあ、全員初心者だからハウスルールは優しめでってことになってたし。まさかこんなことになるとは、思ってもみなかったんだろう。
普通にしてればクリアできるシナリオなのに、なんだこれ。
「ちょっとタイム。キーパー考える時間をください」
「ええよ。とりあえず、ここで時間止めとくからよう考えてクリアしてや?」
今、確実にハードル上がったよね。
クリアできそうもないシナリオをクリアしろって言ったよね!?
ちょっとライフカードとかください。選択方式でいいから解決策を俺に!!
「これもしかしてやばくねぇか?」
ここにきてとか、遅いよヴィータさん。
今更だけど、これ小さな数字出す遊びだからね?
「う……うっせーな!」
「あれ、なんで逆ギレされたの俺?」
くそう。ミ=ゴ4体に囲まれてて、仲間が瀕死と殺害癖の発狂。医師は動けないし戦力にもならないから……
駄目だどうしようもない。
俺のキャラだって普通に探索メインの探偵だから、攻撃面に振った技能って組みつきと武道(柔道)だけなんですけど。
シグナムとヴィータにアタッカー任せたのが運の付だったとは、そこまで予想してキャラ作れるわけないだろ。
「あ、主! 私のキャラはまだ動けないでしょうか!」
「うーん、シグナムのキャラはかなり深手を負ったからなあ。体力の8割は回復せんと、気絶状態からの復帰はでけへんな」
因みに、今のシグナムが復帰するにはシャマルが2回連続で最大値を出す必要がある。
どこまでダイスの女神に愛されていたとしても、今から数えて3ターン目から参戦じゃ遅い。
そのころには、みんな仲良く脳缶になってることだろう。
仕方ないな。
「よし、最終手段だ。個人的には、最後まで全員生き残ってる方が好きなんだけどしかたない」
ん? と全員の視線がこっちへ向く。恥ずかしいじゃないか。
「じゃあキーパー、組みつきを宣言する」
「組みつき? ミ=ゴに特攻でもするつもりなん?」
まっさかー。
「いや、組みつきの相手はヴィータで」
えっ、という声を聞いた気はしがた無視してダイスを振る。
そう。既に賽は投げられたのだ。
こうなったらなにをしてでもゴールする。
「よしきた、クリティカル!!」
「ちょ、おまっ」
大人しく組みつけるかは賭けだったが、これは流れが来ているに違いない。
自動成功をもぎ取ったので、そのまま武道(柔道)の使用も宣言。
無難に成功したので、もうあとはロールプレイで全部誤魔化す。
「すまない、君の尊い犠牲は忘れない! といいながら俺は、ヴィータを背負い投げでミ=ゴに向けて投げつける」
「なっ!? テメェェェェ!!」
「いやあ、先にシグナムが突っ込んだことによってミ=ゴが密集していたから助かった。これで発狂した彼女は、殺害癖の行動に沿って限界バトルをはじめるだろう。っと、キーパーここまでいいか?」
「ぷっ、ははははっ! 確かに、シグナムは4体全部から攻撃もらっとるから密集してるやろうな。ええよええよ、通したげるわ。くふふふ」
笑いを堪えてもらってるとこ申し訳ないですが。こっちも綱渡りなんで余裕ないんですよね!
えっと、次は。
「確か、今回のセッションってミ=ゴの採掘場ぶっ壊せば勝ちだったよな。よしシャマル、シグナムの治療中断! 持ってきた爆薬出して、大急ぎで設置するぞ!」
「え、でもそれじゃあ」
「いいから幸運ロール。ヴィータも頑張れ、お前の働き次第でシグナム担いで逃げられるかもしれん」
「テメェ、これ完全にあたしは詰んでんじゃねえか!!」
いや、そもそもお前がファンブルしたのが原因なんで。
そんな感じで、あれよあれよと言う間に爆薬をバラ撒いていく俺とシャマル。
予想以上に善戦してしまったヴィータのおかげもあり、無事にシグナムを回収して脱出することができてしまった。
「いやあ、集合墓地にはなったけどデカイ墓でよかったな」
「なんもよくねぇよ! 宇宙生命体と一緒に埋め立てやがってこの! この!!」
ちょ、脛はやめろ。地味に痛い。
はやても笑ってないで、助けてくれたっていいと思うんだ。
「いや、まさかあこでプレイヤーを神話生物に投げつけるとは思わんかったわ。これは貴重な体験やね」
「次は、ヴィータにプレイ動画見せて雰囲気つかませてからやろう。このまま次のセッションもやったら、行動が読めなさ過ぎて酷いことになる」
あと、そこで視線を逸らしてる劣化の将もな。
なにが仲間を守るためだ。かばうばっか使いやがって、自分が攻撃する前に沈んでどうするんだよ。
まともに動いてたの俺とシャマルだけじゃないか。なにこれびっくり。
「む、終わったか」
「ああ……開幕5分で留置所送りになった、永遠1回休みのお前がいたの忘れてた」
ザフィーラ、お前はロールプレイからやり直しだ。
‡
氣志團……違う、これ別のやつらだった。
騎士組が笑顔の動画でTRPGのお勉強を始めたため、こちらは新しいシナリオのネタを探しに図書館へ。
車椅子を押しながらどんどこどんと進んでいく。
「ルルブのシナリオを使えばいいのに」
「それでもええけど、ストーリを作る楽しさってのもあるんやで」
まあ、そういうもんなのか。
そういう方面の想像力が乏しい俺には、ちょっとわからないジャンルだな。
「それに、図書館には別の用事もあるしな」
「ん? そうか、あいつらの騎士甲冑だっけ」
「そや。本はよう読む方やけど、甲冑のイメージなんてわからへんからな」
なんだろう。
いっそ、射手座の化身っぽいのとかでいいんじゃなかろうか。あっ、素手で戦うやつ1人しかいないから駄目かもしれない。
じゃあ兜に愛の文字とか刻んでやろう。それが駄目なら長槍二本持ちとかで。
「熱血α波はどないしようかな……」
「俺が言うのもなんだけど、やめたげてよぉ」
「んー、それやったらビキニアーマーとか」
「ザフィーラが見るに絶えない格好をすることに……キリン装備くらいで許しといてやれ」
あれなら男と女で住み分けもできるだろ。個人的にはベリオでもいいけど。
ナルガ装備が出えへんとか、ヤクモさんもまだまだやな。というはやての言葉に驚愕しつつ、市営図書館へ辿りつく。
見に行くのは、もっぱら西洋文化の棚だ。適当に一冊引き抜いてみる。
「ロンドン塔の拷問史。この図書館、いろんな意味で大丈夫か……」
「ヤクモさんは、もうちょい図書館学に数値振っとくべきやな」
まったくだ。どうせ引き抜くならアーサー王伝説とか、そういう系のをお願いしたいね。
そう思いつつ本を戻そうとしたとき、ふと向こう側に知った少女の顔が見えた。
狭い隙間からだが、相手もこちらに気付いたらしい。というか、ばっちり目と目が合う。
「よう、久しぶりだな幼女」
「あ、あははは。まさかまた逢うなんて」
それはいったいどういう意味でだ。場合によっては泣くぞ。
「ヤクモさんがロリコンの変態やったなんて。おまわりさんこいつです」
「公共の場所でそういう冗談いくない!」
本棚をぐるりと回りこんで現れた彼女は、つい最近知り合った子だ。
確か名前は……
「えぇっと、サーキットさんだっけ?」
「いっけぇマグナム!」
はやてさんは今日も絶好調ですね。
目の前でサーキットさんがすっごい困った顔してるってのに。
「あの、すずかです。月村ずずか」
「俺の記憶力も衰えたな。歳か」
「ぴっちぴちの20代とか言うてたん誰やの」
俺ですね。
「名前を間違えるとは無礼千万。俺の名前は七海八雲なんで、好きなように間違えてくれてもいいんだよ?」
「日本語おかしいし、女の子困らしてどうすんのやナッパさん」
「へへへ、かわいいヒヨコ達に挨拶してやろうかな。って上手いこと言ったつもりか!?」
これじゃあ俺が本格的に変質者なんですがそれは!?
そして、相変わらず置いてけぼり状態なすずかさんの目が据わってきてる希ガス。
「え、えっと……とりあえず、こっちは八神はやて。俺の家主というか、ちょっと複雑な事情があれこれしてるんだけども。その辺は置いといて、今日はなんの本を探しにきてるんだ?」
「あ、いえ。今日は本を探しにきたんじゃなくて、友達と勉強をしにきたんです」
なるほど、そういう利用方法もあるのか。
確かに資料が近いだけあって、勉強向きの環境だ。
「そいつは偉いな。はやて、お前ちょっと混ざってきたらどうだ」
「唐突やなぁ。その心は?」
「よく考えたら、はやてが同年代の子と関わってるのみたことないなと思って。正直ボッチじゃないかって心配だったけど、これがチャンスだ!」
うわ、視線が超冷たい。
あと足痛いんで、車輪で地味に踏むのやめてくださいませんか?
「ハァ……なんやごめんな月村さん」
「ううん、気にしないで。この前からなんとなくわかってたし。私のことはすずかでいいよ。よかったら、一緒にお勉強しない? 向こうの2人にも紹介したいな」
「勉強道具も持ってへんねやけど、お邪魔にならへんかな?」
大丈夫だよ、と笑顔満面のすずかに照れ笑いではやてが答える。
結論はでたようだ。
「じゃ、野暮なのは消えるとしよう。勉強会が終わったら連絡してくれ、迎えに来るから」
「ほんま、ヤクモさんは変な気ぃばっかりつかうな」
そりゃまあ、身内ですからね。
同年代の友達ってのは、思ったよりも大事なものなんですよ?
車椅子のハンドルをすずかに預け、奥の学習室へ向かっていく2人を見送る。
はやてならきっと大丈夫。新しい家族もできたし、これで友達も増えるだろう。
いよいよ、俺もお役ごめんかなあ。
「あれ、そういえばなにしに来たんだっけ……まいっか」
今回、冒頭でセッションを行っていますが。実はこれ、その昔に私が参加したセッションが元ネタとなっております。
そこそこ前の話なので、多少盛ってはありますが大筋は変わらないという驚愕の事実。
友人A→序盤から神話技能を使ったり、意味不明な行動を取ってキーパーを悩ませる。揚げ句、シナリオ存続の危機をまねいたことで逆鱗に触れてしまった馬鹿。
問答無用で警察の職質から、強制連行により留置所で永遠の一回休みに突入。以降、他プレイヤーの喉が乾くごとにパシられる立場に。
セッション内では一番安全な場所にいたため、おそらく私たちが全滅していたら唯一のクリアキャラ。
友人B→ネトゲ脳のメインタンク。
全てのSAN値チェックを無傷で切り抜けるという超絶鈍感な猛者。しかし、なにを勘違いしたのか全ての攻撃は俺が受けきると宣言したドMさんでもある。
せっかくのカンストCONを、最終局面の開始ターンで残り1にされて気絶。目が覚めたらなにもかも解決していたため、浦島太郎の気持ちを理解する。
友人C→ダイス神に見放されたクリティカル野郎。
別に彼はなにも悪くない。ただただ普通にプレイしていたが、まさかの局面でトリプルコンボを決めた残念さん。
神話生物と共に埋没した、唯一の犠牲者。
友人D→こいつがいなかったらやばかった。
事あるごと前へ行こうとするメイン盾を、必死に治療し続けた縁の下の力持ち。お前らもう結婚しろよってくらい絶妙のタイミングで回復をする。
おそらく、一番普通にTRPGしていたプレイヤー。
私→探索ばっかで戦わない探偵。
目星と聞き耳が猛威を振るい、まさかのミ=ゴに奇襲を許さなかったと言うとんでもないちゃん。しかし、その実体は戦闘になると逃げ回るという情けないやつ。
最終局面では、やらかした友人Cを生け贄にセッションをクリアへと導く。後に外道認定が下された。
もしやるなら、よい子のみなさんは普通にTRPGを楽しんでください。おじさんとの約束な?